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2013年07月03日

【モノの言い方】『その一言が余計です。』に学ぶ日本語の7つのNG


その一言が余計です。: 日本語の「正しさ」を問う (ちくま新書)
その一言が余計です。: 日本語の「正しさ」を問う (ちくま新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、サブタイトルにあるように「日本語の正しさ」を考える1冊。

著者の山田敏弘さんは、日本語文法の専門家ということで、類書に比べてかなり「ガチ」な内容でした。

アマゾンの内容紹介から。
「見た目はいいけど」「まあ、がんばって」何気なく使った言葉で相手を傷つけた経験はありませんか。よりよいコミュニケーションのために日本語の特徴に迫る一冊。

今回は本書の中から「やったらイカン」的なNGを7つ選んでみましたのでご覧ください!


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【ポイント】

■1.「コーヒーでいいです」の「で」
人は代わりの表現がある場合、その複数の表現間の差を知りたくなります。「コーヒーいいです」と言えば直接的であるのに「コーヒーいいです」というのはなぜだろう。そんなふうに考えると、「ああ、『コーヒーでいい』というのは、不満足の表明なのだ」と捉えてしまうのです。
「コーヒーお願いします」と言っても同様で、「コーヒーお願いします」という表現があるのに「で」というのは「不十分だからだ」と伝わってしまいます。選べるということは、優劣を付けるということでもあるのです。


■2.「見た目はいいね」の「は」
「この料理、見た目はいいね」という文について考えてみましょう。「この料理」が主題です。この場合、「見た目は」の「は」が、特に音声的に強められればやはり対比の意味をもちます。つまり、「見た目以外はだめ」との暗示をすることになるのです。
 こうして、「見た目しかよいところがない」という意味に受け止められれば、ほぼ、料理の基本である味は全面否定されることになります。


■3.「まあ、がんばってください」の「まあ」
「食べる」のような結果までを表す動詞に「まあ、〜てください」というのは、「動作を完遂すれば、今のところ見通しが十分ではありませんが、結果は何らか得られます」という意味になるのに対し、「がんばる」のような、結果までわからない過程を表す動詞を用いて「まあ、〜てください」と言えば、「どうせ結果は十分に得られませんよ。せいぜい努力してください」という意味になる。これは、大きな違いです。


■4.会話の流れを止める「でも」「しかし」
「今度の中期計画は、この方針で行く。」
「しかし、まだ予算の問題が残っていますが。」
 接続詞の「でも」や「しかし」で答えると、反対しているように受け取られます。まさに「余計な一言」です。それは、これらの接続詞が逆接と呼ばれる、前に述べられたことを否定する力の強い接続詞だからです。
このような逆接の接続詞が口癖になっていも人は、やはり聞き手に疎まれがちですので気をつけなければなりません。相手にとっては何でも否定してくる嫌な奴と思われるからです。


■5.自分を正当化する「だって」
「だって」をよく使っている人は、それだけで嫌がられます。「だって」は、「なぜならば」と同様、理由を述べる接続詞ですが、論理的な「なぜならば」と異なり、自分を正当化するために主観的な理由を述べる表現だからです。「だって、しょうがないじゃない」が、その最たるものです。「もう帰るの?」と咎められたとき、「もうしわけない」とまず謝ったら印象も一変しますね。


■6.終わらない「あと」「あと」……
 私は、学生時代、バレーボールに打ち込んできました。あと、大学以外でも、NPO団体にも所属していて、海外にも行きました。あと、専門は物理学で核融合の研究もやってました。あと、……
「あと」ばかり何度も繰り返せば、聞き手は次第にイライラしてきます。「あと」のような加算的に添加する類の接続詞は、延々と並べ立てていくことができて、どこで終わりか予測が付きません。全体像が見えないまま、森の中をぐるぐると歩いているようなものです(中略)
だからこそ、接続詞などをうまく用いて、文章構成を相手に「見える」ようにしなければいけません。そのために、小学校でも中学校でも、繰り返し「まず」「次に」「最後に」のような接続表現を使うよう練習しましたが、どうも文章では書けても話しことばでは使えないという人が少なくありません。


■7.全体像の前の「たとえば」
「学生時代に打ち込んできたことを、教えてください。」
「たとえば……」
「たとえば」と聞けば、具体例が来ることを聞き手は予測します。それが、全体像を示す前に発せられれば、「ああ、この人は部分的にしか物事が見られない人だ」ということがばれてしまいます。面接試験では致命的です。
 一度、全体像を把握し、その中で具体的な話に降りてきた段階で「たとえば」とすれば話がわかりやすくなります。「たとえば」を使うのを、ぐっとこらえてみてはいかがでしょうか。


【感想】

◆当ブログでは、今まで何度か「話し方」「ものの言い方」をテーマにした本をご紹介してきました。

それらに比べて本書が際立っているのが、「文法的」なアプローチがなされていること。

例えば上記ポイントの1番目の「コーヒーでいいです」の「で」は「格助詞」に該当します。

もっとも、そう言われても、私自身「ピン」とこなかったのですが。

格助詞 とは - コトバンク

格助詞には他にも色々ある中、この「で」は「脇役的」なものであるのに「出しゃばっている」のが問題であるそう(詳細は本書を)。


◆同様にポイントの2番目に関連して、「は」「が」の使い方についても本書では触れられているのですが、例えばこんな文が。
この車は、燃費がとてもいい。
「この車」と「燃費」のどちらが主語か。

この例ですと、「この車」が主題、要は「この車について話します」という話題提示で、「燃費が」は「いい」にという述語につながる主語、ということになります。

……って、偉そうに書いてますが、「『主題』って何だっけ?」と思った漏れ、ワロエナイ。

国語「だけ」は、小学校、中学校と、必ずトップの成績だったのが、信じられませんw


◆結局「感覚的にダメ」と思っている使い方を、「何故だめなのか」について「文法的に」解説してくれているのが本書ということ。

「理由はわからないけどダメなものはダメ」と割り切れるなら、実は本書はそれほど読む必要はないかもしれません。

または「読んでも良く分からない」、という可能性もなきにしもあらず。

ただ、「感覚的」なものが「人それぞれ」な場合もあり、自分では「良い」と思って使ったものが、他人から見たら気分を害することもあるわけで。

そういう意味では、専門家の視点から見た「日本語の使い方」を知る上では、目を通しておくのも良いかと。


◆その「人それぞれ」で言うなら、「全然おいしい」のような「後ろに否定表現がこない『全然』」というものがあります。

私はさすがに違和感を覚えますが、今の若い人は、この使い方でも「全然大丈夫」かと。

もちろん文の構造的には、「全然」と言ったら「〜ない」のような否定の言葉が来ると考えるのが普通ですけど、実は明治時代の作家は、よく否定と呼応させずに用いていたそう。

夏目漱石の『坊ちゃん』にも
一体生徒が全然悪るいです。どうしても託まらせなくちゃ、癖になります。
という一節があるのだとか。

こうなると、いったい「何が正しいのか」分からなくなってきた気が……。


◆それでも言えるのは、「相手にとって正しい」使い方をすべき、ということではないか、と。

特に上記ポイントの1〜3は、いずれも相手が「カチン」とくる言い方です(程度の差はあれど)。

また5番目の「だって」も、ビジネスシーンではあまり耳にしませんが、日常生活では多用している方もいらっしゃるかも。

結局、「ダメ」なものが「なぜダメなのか」を知ることで、正しい使い方が身につくのではないか、と思います。


「日本語」のスキルを上げる1冊!

その一言が余計です。: 日本語の「正しさ」を問う (ちくま新書)
その一言が余計です。: 日本語の「正しさ」を問う (ちくま新書)
第1章 ほんの小さなひとことに人は傷ついて
第2章 「…」って伝えたくて、あなたに伝えたくて
第3章 もしも使えたなら、すてきなしあわせがあなたにも来る
第4章 子どもの頃に使ったことばを道連れに


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【編集後記】

「あの」ベストセラーに続編が!

できる大人のモノの言い方大全 LEVEL2
できる大人のモノの言い方大全 LEVEL2

相変わらずの良コストパフォーマンスな予感w


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この記事へのコメント
               
書評を読みました。

助詞の使い方って難しいですよね。

ポイント1は注意してます。その場で、『「コーヒーで」やなかった「コーヒーが」』やったみたいな感じで言い直してます。
熟年夫婦の中が悪くなるのは、この「で」の使い方が悪いからではないのかと漠然ですが思ってます。


ポイント2、3は言い直しの余地なくそもそも使ってはダメな表現でしょって思いました。
普段は温厚な私でも聴いた瞬間にムカっとします。


ポイント4はだいぶ改善しました。否定で返さないってのは、様々な本でも言われているので大事なことなのですね。
私が「付き合いにくい」「関わりたくない」って思う相手は「否定で返す」人ばかりでした。


ポイント5は意識してませんでした。これは行動を振り返ってみないといけません。


ポイント6はさすがにやってません。これやってる士業は廃業すべしと思います。

ポイント7…、これやってるかも。もっと授業内容を高めるためにも行動を振り返って修正しないと!

ポイントだけでも痛い指摘ばかりです。痛いってことは改善の余地があると無意識に自覚しているからです。
そして、人前で喋る職業なので、これは勉強し直すためにも必携の書と思いました。
文庫本で買いやすいので、今月中に予算を工面して買います。

鴻上尚史さんの「コミュニケイションのレッスン」と合わせて勉強して、自分を高めて、他人の信頼を得て、商売の機会を増やし、収入を増やしたります!


長いコメント失礼しました。

Posted by 五条勝 at 2013年07月03日 11:09
               
>五条さん

コメントありがとうございます。

5番目は「だって」を封印すればいいと思います。
言うなら「なぜならば」でw

7番目は私も意識していませんでした。
頭の中で全体像の話を進めていて、口にするのが「例えば」の可能性もある気がします(汗)。

無理にお買い求め頂くようなタイプの本ではないのですが、知っておくとよいお話が結構ありました。
余裕があれば、ご検討を。
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2013年07月04日 06:00