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2013年06月20日

【ぶった斬り?】『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』山田 修


本当に使える経営戦略・使えない経営戦略
本当に使える経営戦略・使えない経営戦略

【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも注目を集めていた1冊。

お恥ずかしながら、私は「名著」と呼ばれる経営本の多くをキチンと読んでいなかったのですが(ヲイw)、本書によって、概略的に学ぶことが出来ました。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
本書はマイケル・ポーター以来、世に溢れてきた経営セオリーで主要なモノを取り上げ、それぞれの限界や実経営にそぐわない点を挙げ、理由を述べる。
さらに実経営に貢献できる経営セオリーを指摘し、その活用方を示す。

今回は特に、「使えない経営戦略」を7つ列挙してみましたので、ご覧下さい!


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【ポイント】

■1.消えた『エクセレント・カンパニー』

In Search of Excellence

原書では43の会社がエクセレント・カンパニーの企業事例として掲げられましたが、翻訳版ではその中から14の会社が例示されていました。私は、2001年に自分が著した『タフ・ネゴシエーターの人を見抜く技術』(講談社)の中で、「これら14のエクセレント・カンパニーのその後」を検証してみました。
 すると、何とその時点で4社を除いてすべての会社が倒産や他社に吸収、あるいは深刻な不調による大規模なリストラなどに見舞われていたのです!


■2.自信のない経営者に響いた『コア・コンピタンス経営』

Competing for the Future

 実際には世の中に存在する多くの会社では、キヤノンのような力強いコア・コンピタンスを持っていません。そんな大多数の会社の経営者たちがコア・コンピタンスの必要性、有用性を説かれれば、「そうだ、当社にはそれが欠落している」、だから「ぜひ持ちたいものだ」となるわけです。つまり自信のない経営者の自虐、あるいは自省の心情にぴったりのセオリーだったのです。


■3.並みの会社になった『ビジョナリー・カンパニー』

Built to Last: Successful Habits of Visionary Companies (Harper Business Essentials)

追跡調査をしたフィル・ローゼンツワィグは、『なぜビジネス書は間違うのか』(原書は2007年、邦訳は桃井緑美子訳/日経BP社/2008年刊)で、17社の業績とアメリ力大手500社であるS&P500社の平均業績とを比較させました。(中略)
そして、結論として、
「長期にわたって成功しているという条件で選ばれたはずのビジョナリー・カンパニーは、ほとんどが並の会社になってしまった」
 としています。


■4.現実には応用できない「ゲーム理論」

Co-Opetition

イスラエルのゲーム理論の大家アリエル・ルービンシュタイン自身が、ネットメデイアであるThe Browserのインタビュー(2012年6月6日)で次のように言っています。
「(自分は)ゲーム理論が現実に直接応用できるという主張には与しない。(略)ゲーム理論家たちは、極めて複雑な状況を抽象化し、その各要因を定式化することに非常に長けている。自分に言わせればそのように定式化されたモデルは寓話である。(略)自分の人生において、ゲーム理論家が理論に基づいて素人より有益な助言をしたのを見たことはただの一度もない」


■5.青い鳥幻想な『ブルー・オーシャン戦略』

Blue Ocean Strategy: How To Create Uncontested Market Space And Make The Competition Irrelevant

 当社が「競争のない市場空間を切り開く」ことはすばらしいことです。「新しい需要を掘り起こす」?―つまり現在存在しない市場を作り出しなさい、そうしたらそこでは「競争を無意味とする」ことができます。その通りなんでしょうね。
 問題は、当社にそんな能力があるか、です。ブルー・オーシャン戦略は、当該社にその業界で「抜きん出た一番」となることを求めています。日本を業界分けすると、統計の方法にもよりますが、数千業界という数え方がせいぜいでしょう。ブルー・オーシャン戦略は、当社が全業界を通じて上位数百とか数千に入ることを求めています。背伸びをすると火傷をします。一歩一歩前進していくことを考えたほうがよいと私は思います。


■6.わかったつもりになるけど役に立たない「SWOT分析」


Concept Image: SWOT Analysis / Dave_Hallmon

「強み」と「弱み」はもちろん主観的なもので、判断基準は個々人により異なるどころか、それぞれで曖昧な場合が多いのです。
「機会」と「脅威」に関しても、参加者たちが保持している限定された情報に基づいたものであり、憶測や期待をも伴っていますから、それらの実現機会についての蓋然性の度合いを論じるべースさえありません。
 経営戦略策定の立場から言うと、SWOT分析は有効なものとは言い難いのです。


■7.実ビジネスに使いにくい「プロダクト・ライフ・サイクル」


DSC_1767 / jamesbastow

 わかりにくいのが、成長スピードが鈍ってきてから。まだ成長期にいるのか、もう衰退期に入ってしまっているのか、という判断です。
 たとえばコカ・コーラはプロダクト・ライフがとてつもなく長い世界商品で、まだ成長を続けています。未だ成熟期に入ってしまったかさえもわかりません。すべてのことが理解できるのは、その製品が終了・撤退してから、というのが厳密な話となります。しかし、それでは実ビジネスの展開には使えませんね。


【感想】

◆ポイントの初っ端にあるように、『エクセレント・カンパニー』の収録会社が、その後不振となった、と言う話は、私もどこかで読んだことがありました。

ただ、それを持ってアマゾンの内容紹介にあるように「でっち上げ」というのは言い過ぎだと思っていたら、どうも本書によると著者であるトム・ピータース自身が「データをねつ造した」とインタビューで認めたのだとか(詳細は本書を)。

……いや、もう全世界で600万部以上売れちゃってるんですがw

それに比べると、まだ『ビジョナリー・カンパニー』はまだマシで、データをねつ造したわけでもないですし、収録された会社も『エクセレント・カンパニー』の14社ほど壊滅的になったわけではありません。

とはいえ、『ビジョナリー・カンパニー』の「6つの原則」は絶対的な結論ではなく、あくまで「恣意的な選択」だった、とのこと。

つまり、ある程度もっともな経営行動をいくつか選んで、「良い経営をするために重要な経営行動はこれ」と誰かに決めつけられたら、「経営実務家は誰も反論できない」のだとか。


◆同じように『コア・コンピタンス経営』も、「企業が中長期的に戦っていける中核的な能力(コア・コンピタンス)を涵養(かんよう)せよ」と説かれたら、多くの経営者が「なるほど」と思うモノ。

ただ、この本の中で具体例として挙げられていたEDS社は、2008年にヒューレット・パッカード社に買収されて消滅してしまっています。

Electronic Data Systems - Wikipedia

それなら、『ブルー・オーシャン戦略』はどうか、というと、本書の著者の山田さんは「初めから論理破綻したセオリー」とバッサリ。

曰く「当社が実現できるようなことは、同業の競合ができないことはない」「1社だけの抜け駆け的な成功などなかなかあり得ない」のだそう。

ちなみに『ブルー・オーシャン戦略』を論ずる際の代表的な事例であるシルク・ドゥ・ソレイユとイエローテイルに関しては、本書でも分析されているのですが、なるほど「飛び地ニッチ」とは言い得て妙だな、と(詳細は本書を)。


◆「じゃあ、戦略を立てるにはどうしたらいいの?」という疑問に答えているのが、本書の第3章と第4章です。

ここでは「戦略カード」を用いて、頭の中にある思索を引きずり出し、経営戦略として組み立てるために「シナリオ・ライティング」という技法を駆使。

「重要課題」をあぶり出して、さらに「解決策を策定」します。

……と、この辺のお話は、本来本書の「キモ」なんでしょうけど、断片的に抜き出しても分かりにくいので、やはり割愛させて頂きたく(スイマセン)。

詳しくお知りになりたい方は、本書を熟読されることをオススメします。

というか、自分が経営戦略を立てる立場でないと、なかなかピンと来ないのではないでしょうか(私含む)。


◆むしろ、私たち一般ビジネスパーソンにとって本書は、さまざまな経営戦略の特徴や問題点を凝縮して学べる点で、大変有益だと思います。

今回割愛した中でも、我が国ならご存知ユニクロや、『ストーリーとしての競争戦略』の楠木さんや、星野リゾートの星野さん。

海の向こうならGEのジャック・ウェルチやマイケル・ポーター教授等々がドーンと鎮座しております。

本書を読めば、今まで敬遠していた「経営戦略」も、身近に感じられる事必至かと。←私の場合w


経営陣でなくても、読んでおきたい1冊!

本当に使える経営戦略・使えない経営戦略
本当に使える経営戦略・使えない経営戦略
第1章 「使える戦略」で読むユニクロの成功とコダックの倒産
第2章 伸びる会社は戦略で勝負している
第3章 「戦略カードとシナリオ・ライティング」で自社戦略を立てる
第4章 社員に火を付ける戦略とは
第5章 使えない、大企業御用達の舶来セオリー
第6章 SWOTは分析ツール、戦略ではない
第7章 神様、マイケル・ポーターがやって来た
第8章 学者は新学説を、コンサルタントは請求書を求めて


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【編集後記】

◆経営戦略と言えば、この本も話題です。

経営戦略全史 (ディスカヴァー・レボリューションズ)
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その厚さや、お値段の割には、売れているというウワサが!?


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