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2013年05月28日

【オススメ!】『コミュニケイションのレッスン』鴻上尚史


コミュニケイションのレッスン
コミュニケイションのレッスン


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、元劇団「第三舞台」主宰として知られる鴻上尚史さんのコミュニケーション本

帯の「コミュニケイションは技術だ。野球やサッカーと同じように、やればやるだけ上達する」というフレーズに納得できる、テクニカルな内容でした。

アマゾンの内容紹介から。
この本は「コミュニケイションは技術」という視点から、どうやったら、あなたのコミュニケイションのレベルが向上するかを伝え、練習方法をアドバイスした本です。30年間、演出家をやりながら、ずっとコミュニケイションに関して考え、実践してきたことを書きました。

確かに、私自身気を付けたいポイントが多々。

思わず付箋も貼りまくりました!




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【ポイント】

■1.身体の重心を下げてリラックスする
 人間の精神と身体は、相互に影響します。インタラクティブというかツーウェイというか、一方通行ではなく、お互いがお互いに影響し合っているのです。
 つまり、「落ち着いている時は、体の重心が下がっている」ということは、逆に「身体の重心を強引にさげる」ことによって「落ち着く」ことが人間は可能なのです。
 そんなバカなと、あなたは思うでしょうか? 人間は、気持ちが身体の状態を決めるだけではなく、身体の状態が気持ちを決めるのです。
 深く呼吸して、空気を下に入れるイメージを持って、身体の重心を下げて下さい。あなたは徐々にリラックスする自分を感じるようになるでしょう。


■2.呼吸を一致させて感情移入する
 演劇において、俳優に対する観客の究極の感情移入はなにかご存じですか? 俳優の演技に一喜一憂するのはもちろんですが、観客がその俳優に(つまりはその役に)没入すると、俳優と呼吸を一致させます。
 数百人の観客が、俳優が息を吸ったら吸い、息を吐いたいら吐くのです。(中略)
 つまりは、感情移入をすれば、相手と属じ呼吸になるのです。当然、同じ動きになることはあるでしょう。逆から考えれば、感情移入したい人の動きを真似することで相手に感情移入しやすくなる、ということはあるでしょう。
 そして、感情移入される側としては、自分と同じ動きをし、自分に合わそうとしている相手に好感を持つことはあっても、反感を持つことは少ないだろうということです。


■3.共同体に合わせた言葉で心をつかむ
「人の心を一気につかむ」とか「親しみやすい」という評判の政治家は、意識して、「世間」で流通する言葉を使っています。小泉進次郎氏は衆院選挙の全国応援演説の時、必ず、その土地の方言で挨拶を始めました。それは「私はあなたの『世間』の一員なんです」というアピールです。故田中角栄をはじめとして、演説で地元の方言丸出しで話し続けた人は何人もいます。それは、「私は特別な人間ではなく、あなたと同じ共同体に属する人間なんだ」という宣言です。


■4.声の種類を使い分ける
 まず、声の5つの要素、「大きさ」「高さ」「速さ」「間」「声色」に気をつけて話してみて下さい。(中略)
 つまらない話し方は、この5つの要素が単調で変化しません。大きさはずっと同じ、高さもずっと同じ、速さも同じ、間の長さも同じ、そして声色も同じ。じつに単調な話し方です。
 逆に、「あの人の話は内容はそんなに面白くないと思うんだけど、なんか、聞いてしまうんだよなあ」とか「あの人の話は、後から思い出すと大したことないのに、その時は引きこまれるんだよね」という人の話し方は、この5つの要素が変化に富んでいるのです。間が絶妙に上手いとか、声色が多様だとか、大きさが変化する結果、飽きないのです。


■5.ここ一番のときは「声を低く始める」
 緊張したら身体の重心が上がるように、緊張すると声が高くなります。落ち着いた時、本音をしゃべる時、声は低くなります。
 身体の重心で使った同じテクニックをここでも使うのです。つまり、ここ一番大切なことを話す(面接やプレゼンや大事な人と会う)時に、強引に声を低くして始めるのです。そうすると、低い声はリラックスしている時の身体の状態ですから、あなたの身体もリラックスしようとするのです。


■6.言葉のレベルを変えて注目を集める
 例えば、ザワザワとした聴衆を前に、僕は時々、「第一の輪」の言葉、つまり「独り言」で話し始めることがあります。聴衆は、「みなさん!」と自分達全員に話しかけると思っていたから、驚き、注目します。聴衆の注目が徐々に集まった所で、「第三の輪」の言葉「みんなと話す言葉」に切り換えます。
 小さな講演会だと、時々、客席にいる一番偉い人や退屈そうにしている人に向かって「第二の輪」の「あなたと話す言葉」で直接話しかけます。
 そうやって、自分の言葉のレべルを変えることが、コミュ二ケイションの技術なのです。
 あなたが言葉のレベルをいろいろと変えながら話せば、あなたの話は多様になり、変化に富んだものになります。聴衆はあなたから目を離せず、集中して聞くようになるのです。


■7.相手によって言い方を変える
 僕が22歳で劇団を作って、俳優達を演出し始めて最初に気づいたことがありました。それは、「人は人を説得する方法で説得されやすい」ということです。
 情熱的に人を説得している相手には、情熱的に説得すると成功する。理論的に人を説得している相手には、理論的に説得すると話がうまくいく。とにかく情で人を説得している相手には情でアプローチするとうまくいく。
 人間と深くつきあう演出家という職業について、最初の発見でした。
 それからは、注意深く、その俳優が他人にどうアプローチし、どう説得しているかを観察しました。そして、その人と同じやり方でその人に話しかけました。


【感想】

◆今回のエントリーでは、今まで当ブログにおいて反応の良かった「テクニカルな面」にばかりフォーカスしてみましたが、その背景となる部分についても、本書は極めて「濃厚」でした。

まず、本書の前提としてあるのが、日本人は「世間」という「利害関係が現在ないしは未来にある世界」と、「社会」という「現在も未来も関係がない、もしくは生まれる可能性が低い世界」に生きている、という事実。

分かりやすい例として挙げられていたのが、「電車の中で化粧をする人」で、その人にとって電車内は「社会」であるのに対し、そこに会社の上司が乗り込んで来たら、そこはいきなり「世間」に変わってしまいます。

それに対して、欧米では「世間」は存在せず、すべてが「社会」であるため、例えばお店のドアを手で押さえて、後から来る人のために待つことが当たり前。

同様に、お年寄りや妊婦に席を譲るのも、欧米ではほぼ100%に近いのだそうです。


◆本書の第2章では、この「世間」と「社会」について言及。

ただし、このテーマに関しては、鴻上さんご自身、以前ご紹介したこちらの本にて既に掘り下げてらっしゃいます。

「空気」と「世間」 (講談社現代新書)
「空気」と「世間」 (講談社現代新書)

参考記事:【結構スゴ本】『「空気」と「世間」』鴻上尚史(2010年09月07日)

今回の新作では、これを受けて「では具体的にどうすればよいのか」を指南。

たとえば、「世間」には5つの特徴があるのですが、「世間」の人を説得するには、この5つの特徴に沿ったものにする、といった具合です(詳細は本書を)。


◆もちろん、そういう鴻上さん独自のTIPSだけでなく、一般的なものも本書には収録されていますのでご安心を。

たとえば、こんなところです。

・相手の目を見るのは「あいづち」や「うなづき」「言い換え」の時が目安

・常に微笑むのではなく、ここぞという時に微笑む

・「オープン・クエスチョン」と「クローズド・クエスチョン」を使い分ける

・自分から先に挨拶する

……ちょっと前に「挨拶」が話題になったことがありましたが、鴻上さんによると、挨拶がうまくできないのは、コミュニケーションの基本を学ぶ「世間」である家庭に問題があった可能性がある、とのこと。

「過度に愛された家庭」に育った子供と、「完全にコミュニケーションが崩壊した家庭」に育った子供は、共に、挨拶の重要性に気づかないまま成長することがあるのだとか。

ただ、毎日しつこく言い聞かせているものの、挨拶がなかなかできないウチのムスコを見るにつけ、本人の性格というか資質のような気もするのですがw


◆なお、上記ポイントの6番目の「言葉のレベル」の件で追加しておきたいのが、「第三の輪」である「みんなと話す言葉」を使う際の注意点。

こちらからは全員に向けて話しかけていますが、聞く人にしてみたら「こちら一人」の話を聞いています。

ですから、全員に向かって「みなさん」と話しかけるのは、「ああ、聞いているのは自分だけじゃないんだ」と改めて知らせているようなものであり、愚の骨頂。

ゆえに、スピーチの中に「みなさん」という単語は入れない方が良い、とのことです。

これは、「パーソナルなメディア」であるブログやTwitter、Facebookも同様で、読んでいる人は「こちら一人」に向かっているのに、わざわざ「みなさん」と言うのは「ああ、読者は私だけじゃないんだ。私は大勢の中の1人なんだ」と思わせてしまうので、やはり「百害あって一利なし」の行為とピシャリ!

……今まで当ブログで何度「読者の皆さん」と連呼したことでしょう。

   ∧∧ 
   /⌒ヽ)  < やってもた
  i三 ∪
 ○三 |   
  (/~∪    トボトボ
  三三     
 三三
三三三



◆本書はタイトルこそ若干抽象的(?)ですが、具体的にどうすべきかの指示が明確であり、実践しやすいと思います。

さすが著名な演出家さんは、違うな、と(偉そうw)

その適用範囲も、日頃の生活圏から、ビジネスシーン、果ては面接やプレゼン等をもカバーしており、幅広いシーンで活用できそうな。

さらに、上記ポイントの7番目を含め、「男女のコミュニケーション」(ナンパ含む)にも使えること必至。


これはオススメせざるを得ません!

コミュニケイションのレッスン
コミュニケイションのレッスン
第1章 コミュニケイションとは何か?
第2章 「世間」と「社会」
第3章 コミュニケイションの技術「聞く」
第4章 コミュニケイションの技術「話す」
第5章 コミュニケイションの技術「交渉する」


【関連記事】

【結構スゴ本】『「空気」と「世間」』鴻上尚史(2010年09月07日)

【オススメ】『話し方! こう変えればうまくいく パワートーク36の技術』ジョージ・ウォルサー(2013年04月11日)

【こんな方法あったんだ】『伝え方が9割』佐々木圭一:マインドマップ的読書感想文(2013年03月05日)

【話し方】『言いたいことは1分で! 10倍伝わる話し方』渡辺美紀(2013年01月05日)

【これは使える!】「“聞き上手”の法則―人間関係を良くする15のコツ」澤村直樹(2010年01月23日)

【これは使える!】「キラークエスチョン」山田玲司(2009年08月19日)


【編集後記】

◆本書の中で「参考書籍」として挙げられていた、鴻上さんの作品。

あなたの魅力を演出するちょっとしたヒント (講談社文庫)
あなたの魅力を演出するちょっとしたヒント (講談社文庫)

内容紹介を読んでみると「モテ本」として使えそうなんで、アマゾンアタック!

それにしても、10年前の文庫本で120円も付いている、というのは結構スゴイことだと思います。


人気blogランキングご声援ありがとうございました!

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この記事へのコメント
               
五条勝の中の人も、この本に大いに興味を持ちました。
これは購入の意志を決めて本屋に行かねばなりませんと申しております。

18歳から74歳まで幅広い層と関わっているだけに、コミュニケーションスキルは必須。

特に「感想」の『◆なお、上記ポイントの6番目の「言葉のレベル」の件で追加しておきたいのが、「第三の輪」である「みんなと話す言葉」を使う際の注意点。』
についての記述がとても心惹かれました。

これはオススメされているだけありますね!!
おそらく大型書店じゃないとて手に入らないのと、今クレジットカードの使用を禁止しているので、今週末に買いに行こうと思います。

良き本の紹介ありがとうございました!
Posted by 五条勝 at 2013年05月28日 11:19
               
>五条勝さん

クレカ禁止はご自身の意志でですか?
だとしたらスゴイですね〜。

ちなみにこの本は、ノーチェックでお買い求め下さって結構です!(`・ω・´)キリッ

ちなみに、クレカ以外でも代引きやコンビニ支払もできますので是非ww(アサマシ)

Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2013年05月29日 07:19
               
褒められて嬉しい五条の中の人です。

カード禁止は使いすぎて、支払い危険領域に入りそうだからなのです…

債務不履行は嫌ですので、しっかり金銭を管理するため、6月末日までは現金払いのみです!

そういえば、Amazonは代引やコンビニ支払いできたな〜と今気が付きました。
いつ買うの?今でしょと独り言ちながらAmazonでポチってきます!
Posted by 五条勝 at 2013年05月29日 10:00
               
>五条勝さん

ちょw
そんなにカード使われていたとはww
私は基本的にアマゾンでも本くらいしか買わないし、アマゾン以外でカードを使わないので、いい年こいて、危険領域までまだまだです。

またアマゾンアタックありがとうございます(笑)。
人と接する機会の多い五条さんには、この本マストだと思いますよ〜!
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2013年05月30日 07:38
               
病気に苦しむ五条であります。
金欠病という不治の病であります。

さて、この本届きました。
目次をざっと見て興味を持ったところからつまみ読みしましたが、「オススメ!」されているのが実感できる濃い内容です。

時間をしっかり取って本腰入れて読みます!
ノートも用意せな。
これは全力を挙げてモノにせないかんです。
Posted by 五条勝 at 2013年05月31日 22:50
               
>五条勝さん

アマゾンの料率が6月から下がるので、私も金欠病必至でございます(涙)。

そして本書の濃さにご賛同頂きありがとうございます。
五条さんのお仕事(詳細は存じませんが)にきっと役立つと思います!
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2013年06月01日 07:03
               
読めば読むほど書いてある事の有効さに驚いております。

仕事先にとても喧しいじいさまが居るのですが、この方は「世間」と「社会」の区別ができていないのだなと、客観的に考えることができるようになりました。
その上で、こういう輩は嫌いだと再確認し。排斥するか排斥するか排斥するか、気まぐれで受け入れるか考え中です。

いずれにせよ、幅広い年齢層へ話す機会が多い私には実に役に立っています。

コメントに記載がある私の「お仕事」ですが、コンピュータ講師兼社労士です。

コンピュータの方は専門学校と市の委託、社労士はボチボチと食虫植物のように気長に獲物を待ってます。

良き本の紹介ありがとうございました!
本を活用して、上記のようなじいさまと関わらなくて済むようにステップアップします。
Posted by 五条勝 at 2013年06月13日 21:06
               
>五条勝さん

おー!前回から今までの間に、この本読み込まれてましたか。
私自身「スゴ本」だと思ってましたが、同意して頂き光栄です☆

お仕事も同じ「サムライ業」でしたか!
実はつい先日、顧問先の地区の算定基礎の説明会に行ってきたところですw

そのご老人の事は何とも言えませんが、本書を活用して、善処なさってくださいね!
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2013年06月14日 00:53
               
このコメントは公開していただかなくていいです。
しつこくて本当にすいません。

この本は使えます。心の底からそう思います。

前コメントのじい様の件みたく「他人を避ける」ため。
そして、本来の使い方の「他人と歩み寄る」ため。こちらは学生と良い関係を築き、しっかり勉強してもらうためにフル活用してます。


昨日、私は第三者でしたが揉め事に遭遇。そのときに、この本で取り上げられていた「壊れた世間」というものを垣間見ました。

また、この本では「挨拶」の大事さも取り上げられていたのですが、私の学校では「挨拶」を重視しています。
友人を連れて学園祭に行ったときに「よく挨拶するね!」感動していました。
その話を学生にしたら実に嬉しそうで、伝えた私もいい気分になれました。


買ってから1月もしないうちに、本の内容が役に立つことが多いのです。

それ、嬉しくて申し訳ないなと思いつつ、しつこくコメントしました。
それくらい、この本を紹介してくださったことに感謝しております!

ですが、いい加減にしつこいので、このコメントは公開されなくても落ち込んだりしません。

Posted by 五条勝 at 2013年06月19日 14:54
               
>五条勝さん

いつもコメントありがとうございます。

公開していいのかわからなかったのですが、「しないでください」となかったので、公開してます(もし非公開にした方がよければ、その旨コメント下さい。そうしたら、そのコメントと今回のと両方非公開にしますので)。

当ブログはサイドバーに新着コメントを出していないので、この記事を見る方以外の方には、特に問題ないかと。

それよりも、この本がそれだけ役に立ったことが、編集者さんや著者の鴻上さんに伝わったら、きっと喜ばれるのではないでしょうか。

丁度今日、HONZでも取り上げられましたし、五条さんのようにこの本のファンになる方が、少しでも増えるといいな、と思います……。
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2013年06月19日 15:12
               
心遣いありがとうございました。
迷惑でなければ、ガンガン公開してください!
Posted by 五条勝 at 2013年06月19日 23:16
               
>五条勝さん

いえいえこちらこそ☆

引き続き宜しくお願い申し上げます!
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2013年06月19日 23:42