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2013年05月20日

【組織崩壊?】『崩壊する組織にはみな「前兆」がある』今村英明


崩壊する組織にはみな「前兆」がある: 気づき、生き延びるための15の知恵 (PHPビジネス新書)
崩壊する組織にはみな「前兆」がある: 気づき、生き延びるための15の知恵 (PHPビジネス新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、「東大法」「三菱商事」「スタンフォード大MBA」「ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)」という経歴をお持ちで、現在は信州大学経営大学院教授である今村英明さんによる「企業分析本」。

タイトルにもあるように「崩壊する組織」の前兆を15個列挙されています。

アマゾンの内容紹介から。
「社長の発言がころころ変わる」「社員が上司の顔色ばかり見ている」……多くの企業を見てきたプロが明かす、組織崩壊の前兆とは?

アナタの会社は大丈夫ですか……?


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【ポイント】

■1.出席者が会議で沈黙する
役員会での沈黙、部門会議での沈黙、労使懇談会や職場をよくする会での沈黙。せっかく議論するために集まっているのに、みな口を開かない。(中略)
 多くの場合、沈黙の会議は、その組織に何か大きな不具合が生じていることの「兆候」と考えてよい。役員会が静かで、議論が活発化していない企業は、おそらく経営的に問題があると疑ってよい。この例の会社もそれから間もなくして、経営不振に陥り、社長も退任させられてしまった。


■2.経営者が美術品や馬にはまる
 これも有名な話だが、ある成功した技術系新興企業の経営者が、ふとしたはずみで馬主になったらその魅力に取りつかれ、ついには巨額の資金を競馬に投じるようになってしまった。しばらくして彼は、会社の役員会で社長を電撃的に解任されてしまった。一説には、彼が「競走馬育成事業」を会社の中核事業にしようと目論んだため、他の役員がそれを阻止するためだった、とも言われている。そのまま競馬事業に突き進んでいたら、その会社の経営はどうなっていただろうか。


■3.「はしご外し」が蔓延する
 正しいことやチャンスがあることでも、そのリスクが目について、自分ではなかなか先頭を切れなくなる。そこで他の人にやらせて、その成否を見極める。うまくいけばすかさず前に出て、自分の手柄にするし、うまくいかなければ首を引っ込めて、責任をそいつに押し付けて逃げる。(中略)
 もちろん、こうした「はしご外し」行動が蔓延すれば、その組織には徐々に活力が失われ、もはやかつてのようなダイナミックな成長は期待できない。緩やかに衰退していくしかない。


■4.幹部社員が不審な行動をとる
 会社の社員、特に幹部社員に不審な行動が目立つようになると、危険な兆候であることが多い。ひそひそ話、密談、長時間の離席、非常階段や喫煙コーナーなどでの長い携帯電話、会議の席などで目を伏せる、目を合わせない……。こうした行動がしばしば目撃されるのは、組織崩壊の前兆である。幹部や社員は、さまざまな理由で、会社を逃げ出そうとしている可能性が高い。


■5.利害関係者が多い
 こうした体験を通じて、私が考え出したのは、「ステークホールダーの数と意思決定スピードは二乗に反比例する」という法則である。
 この意味は、ステークホールダーの数が、たとえば4人から8人へと2倍にになると、意思決定のスピードは、2×2=4の逆数で4分の1に落ち、意思決定にかかる時問は逆に4倍に延びるということである。
 ステークホールダーが多いことは、それだけ組織の足を引っ張り、うすのろの組織にする絶大な効果があるということだ。


■6.「やつら対われわれ」と言いだすようになる
 合弁会社や統合会社は、男女の結婚のようなものである。
 最初は、相思相愛の熱烈な恋愛感情で結ばれたカップルも、結婚して一緒に暮らすようになると、「こんなはずではなかった」という思いが生じ、両者の間に冷ややかなすきま風が吹くようになる。(中略)
 会話の中に、「やつら対われわれ」というような表現が出てくるのは、パートナー間に不信感が蔓延していることの表れである。こうなると、組織の崩壊も間近である。


■7.組織の中に浸かってマヒする
 想定外の事故が起きたとき、事故調査委員会などが組織されて、事故原因を調査する。そうすると、経営が緩んでいた兆候や、事故が起きる伏線あるいは予兆がいたるところに出てくる。それに対して、調査委員会もまたメディアも「想定できたじゃないか」とか、「事前になぜ手を打てなかったのか」とか、「経営陣の怠慢だ」と責めることになる。(中略)
 しかし、実際に事故発生前の組織の中にどっぷりと浸かっていると、そうした兆候がいたるところにあったとしても、気がつかない。あるいは気がついていても手を打とうという行動にはならない。「まあ今まで大丈夫だったし……」とか、「自分の任期中には目をつむろう……」となるわけである。


【感想】

◆冒頭で申しあげたように、本書の著者の今村さんは、BCGにいらしたことがあります。

ですから、実際にコンサルティングの一環として、ご自身が会社に送り込まれたり、同僚や知人の体験談を聞く機会も多かった模様。

実際、本書では守秘義務の関係等で具体的な会社名は明らかにされていないものの、数多くの具体例を収録しています。

また、一部「公刊された企業事例を要約・加工」したものも掲載されているのですが、こちらは匿名にしなくともよかった気が(バランスの問題かもしれませんが)。

いずれにせよ、15の「前兆」すべての元ネタが、「実際にあったこと」をベースにしているわけです。


◆さて、今村さんによると、この「前兆」の発生に大きく影響する要因は以下の3つであるとのこと。

(1)企業のライフサイクル・ステージ

(2)企業のDNA

(3)そのときどきのリーダーのタイプ

例えば、ライフサイクルステージについて言うなら、下記目次の第1章〜第4章あたりまでは「創業期」に起こりやすいこと。

逆に第12章〜第14章あたりは「衰退期」のお話になります。


◆そして「創業期」の会社を大きく左右するのがリーダー(創業者)のタイプで、上記ポイントの2番目のように本業以外にハマるケースもあれば、「なんちゃってジョブズ」とばかりに、自分の考えで強引に推し進めるケースも。

ちなみに、「経営者が本を出す」ことも「本業以外にハマる例」として挙げられているのですが、同じようなことがこの本でも言われていましたね。

5700人の社長と会ったカリスマファンドマネジャーが明かす 儲かる会社、つぶれる会社の法則
5700人の社長と会ったカリスマファンドマネジャーが明かす 儲かる会社、つぶれる会社の法則

参考記事:【ブラック企業?】『儲かる会社、つぶれる会社の法則』に学ぶヤバイ会社の7つの特徴(2013年02月25日)

リーダーネタとしては、他には途中から入った「二世経営者」と「番頭さん」の争いですとか、今村さんのように「コンサルティング会社から送り込まれた経営者」と「待ち受ける従業員」の対立、といったお話もありました。


◆ところで今回のエントリーでは、「前兆」のみを挙げ連ねましたが、実は本書の方はそれだけには留まらず、それぞれのケースについて対応策が講じられています。

例えば、上記ポイントの4番目の「不審な行動」のケースですと、まずそういう現象が起きているのは、「大量退社」と「バブル崩壊」によって、活力のない「悪魔のサイクル」に陥っていることが原因である、と。

そして、それを活力のある「天使のサイクル」へ切り替えるためには、「4つのモノ」が不足している、とのこと。

具体的には本書をお読み頂くとして、ほぼこの調子で、キチンと問題解決に触れられているのが、本書の大きな特長だと思います。


自らの会社を支えるために読みたい1冊!

崩壊する組織にはみな「前兆」がある: 気づき、生き延びるための15の知恵 (PHPビジネス新書)
崩壊する組織にはみな「前兆」がある: 気づき、生き延びるための15の知恵 (PHPビジネス新書)
はじめに 「沈黙する」「どなり合う」
第1章 「ブンブン回る」
第2章 「飾り立てる」
第3章 「コロコロ変わる」
第4章 「誇大妄想する」
第5章 「はしごを外す」
第6章 「浮かれる」
第7章 「MBAする」
第8章 「面従腹背する」
第9章 「密談する」
第10章 「ぐちゃぐちゃになる」
第11章 「からめとられる」
第12章 「別居する」
第13章 「マヒする」
第14章 「落下する」
おわりに 「理想の組織を求める」


【関連記事】

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ビジネスの達人がこっそり教えてくれる『7つの危険な兆候』の真実(2011年11月07日)


【編集後記】

◆同時発売のPHPビジネス新書からは、小宮先生の新作も。

はじめてでもわかる財務諸表 危ない会社、未来ある会社の見分け方 (PHPビジネス新書)
はじめてでもわかる財務諸表 危ない会社、未来ある会社の見分け方 (PHPビジネス新書)

こちらは「財務諸表から見た危ない会社」が分かるようです。


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