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2013年05月17日

知らないと損する『嘘の見抜き方』


嘘の見抜き方 (新潮新書)
嘘の見抜き方 (新潮新書)

【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、タイトルそのまんまで「ウソを見抜く技術」を伝授してくれる1冊。

著者の若狭 勝さんは、職業柄その膨大な量の「嘘」に接して自論を検証するだけでなく、心理学をも勉強したといいますから、なるほど本書の内容にも説得力があるわけです。

アマゾンの内容紹介から。
特捜部直伝! 「プロの技」教えます。「取調べのプロ」は嘘をどう崩すのか? 相手の目を見ず質問する、嘘を言わずにカマをかける、「話の筋」を読む……検事経験26年、元特捜部検事がそのテクニックを徹底解説!

それほど厚い本ではないのですが、付箋も貼りまくり!

なお、タイトルは「ホッテントリメーカー」作でございます。


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【ポイント】

■1.「記憶にない」は嘘つきの常套句
 政治家の証人喚問などでは、「覚えていない」「記憶にない」などのフレーズが飛び交います。(中略)
 ただし、「覚えていない」「記憶にない」というフレーズは、嘘の常套句としてあまりに有名になってしまいました。たしかに言質をとられず、法的追及をかわすという点においては有効ですが、「嘘をついています」と言っているようなものなので、疑いを抱かれたくない場合には避けるべき言葉です。


■2.嘘がうまい人に多い「話のすりかえ」
 核心的な質問をされたとき、直接答えずにはぐらかしたり、過度に一般化した話し方をしたり、逆に同じ質問を投げ返したりする。
 分かりやすく言えば、「○○さんは彼女がいるんですか?」と聞かれた際に、「僕はともかく、□□くんに彼女ができたらしいよ」(はぐらかし)、「彼女がいると楽しいよね」(一般化)、「そういう君は彼女がいるのかい?」(逆質問)と答えるやり方です。


■3.「聞き返し」は時間稼ぎ
 たとえば「昨日、どこかに行きましたか?」と相手に聞いたとしましょう。間違いなく聞こえる声の大きさで、はっきりと聞きます。小学生でも分かるような平易な言葉です。しかも、昨日のことですから、特殊な事情がない限り忘れることもありえません。
 でも嘘をついている人は「えっ、何ですか?」「今なんて言いました?」「それって昨日のことですか?」などと聞き返してくる人が多い。別のことに集中しているときに話しかけたのであればまだしも、向かい合っている状況ではあまりに不自然です。
 これは、聞き返すことによって時間を稼ぎ、嘘がばれないよう自分の中で答えを用意しているからです。


■4.「媚びたり情に訴える」のも嘘つきの特徴
「僕を疑うなんてひどいなあ」「信じてくださいよ」「そんなことをするはずがないでしょう?」「僕がそういう人間に見えますか」など、媚びたり情に訴えたりする人も多いですが、こういう物言いは嘘をついている人の特徴です。もし本当に無実であるならば、説得力のある弁解を模索し、なんとか信じてもらおうとするはずです。
 この手の「嘘つき」は意外と日常にも潜んでいます。交渉、相談事、投資話などで相手がこのようなセリフを言ってきたら要注意です。情に流されるのではなく、客観的で合理的な説明を求めなくてはいけない。


■5.嘘つきは「怒りの表情」を持続できない
演技なのか本心なのかを見分けるヒントを1つ紹介します。それは怒りの表情の「持続時間」です。無実の人間は、自分が疑われているということに本当に怒っているので、それがずっと持続する傾向にあります。逆に嘘をついている犯人は、演技として怒りの表情を一時的に作るにすぎない。内心は焦りや不安に満ちていますから、その演技をずっと続けることが難しいのです。


■6.嘘の追及は「木」をイメージして行う
事象の大筋は幹、個々の事象は枝、さらにディテールは葉をイメージします。このとき、1箇所の枝葉を丹念に聞くより、幹や枝葉の間をどんどん飛ぶように質問するほうが、相手の供述の綻びを引き出すことができます。もし本当のことを話していれば、どの部分を聞かれても正確に答えられるでしょうが、木が「幻」の場合はそれだけで混乱してしまうからです。


■7.嘘つきは「事件に無関心なフリ」をする
 事件やトラブルが身近に起こった場合、普通の人なら興味をひかれ、誰がなぜそんなことをしたのかと想像をめぐらすものです。もちろん仲間内の話であれば、特定の個人の名前を挙げたりすることに抵抗はあるでしょうが、「参考程度に色々な観点からの意見を集めている」と説明すれば、たいていの人なら1人2人は挙げてくれるものです。
 一方で真犯人は、「分かりません」「見当もつかない」などと答えがちです。特定の名前を挙げたところで、その理由を色々問われればボロが出るかもしれない。もっともらしい動機を説明しようとすれば、自分の本当の動機を説明するようでためらわれるものです。


【感想】

◆冒頭で付箋を沢山貼ったことを申し上げましたが、いざ写真を撮ろうとしたところ、なまじ本が厚くないこともあって、付箋が重なりまくってしまいました。

同じページの表と裏にそれぞれ貼ったり、同じ面に2枚貼ったりと、とにかくネタが多過ぎ。

事例等で中身を盛って、ページ数を増やせばいいのに、と思ったくらいです。

ちなみにアマゾンの書影では、本書の帯にある3つのネタが確認できますが、ネタバレ自重して、それらは割愛。

気になる方は、直接ご確認ください。


◆興味深かったのが、上記ポイントの2番目にある「話のすりかえ」がうまい人として、橋下徹・大阪市長が挙げられていたこと。

先の衆院選で争点となっていた「TPP交渉参加」や「脱原発」問題について、記者会見でも「問題を一般化」してはぐらかし、聞かれた質問に最後まで正面からは答えませんでした。

また「君が代の起立斉唱問題」では、質問した記者に「逆質問」で応酬し、結局この質問には答えぬままだったという……。

ちなみに、地方自治体の議会では、市長などの行政のトップに「逆質問」のような「反問権」を与えてないのだとか。

橋下さんの場合、嘘をついているというよりは、答えたくない質問に答えないために、このような手法を取っているのでしょうが、ポイントの1番目の「記憶にない」同様、「さぐられたくない腹がある」ことは確かな模様。


◆こうした「嘘つきが多用するセリフ」をまとめたのが第3章なのに対し、「嘘つきの仕草」について言及しているのが第4章です。

例えば「つま先の向き」のお話は、この本でも登場してましたね。

面白いほどわかる! 他人の心理大事典
面白いほどわかる! 他人の心理大事典

参考記事:【総まとめ?】『面白いほどわかる! 他人の心理大事典』おもしろ心理学会(2012年11月05日)

この本では、つま先まで行かなくとも、へその向きでもわかると。

FBI式 人の心を操る技術 (メディアファクトリー新書)
FBI式 人の心を操る技術 (メディアファクトリー新書)

参考記事:アルファギークもびっくり 驚愕の「FBI式 人の心を操る技術」(2010年06月28日)

意外だったのが、「取調室や法廷で大きなリアクションをとった人」で、何となく嘘っぽいようですが、逆に「たいてい嘘をついていない」ことが明らかになっているのだそう。

仕草についても、なかなかに「深い」です。


◆一方第5章では、「嘘を暴く質問」例が。

例えば著者の若狭さんは、1988年7月に起きた「なだしお事件」の取調べにおいて、証拠隠滅をした担当者の嘘を「あるやり方」であばいていきます(詳細は本書を)。

なだしお事件 - Wikipedia

さらに第6章では、若狭さんが取り調べを担当した「天才的な詐欺師」も登場。

なるほど、「すぐに確認できてしまうことは嘘をつかず、確かめようのないことは、細かく嘘をつく」といいんですね!(違


◆本書の事例の多くは、いわゆる「事件」ではありますが、ビジネスや交渉ごとでも応用が可能です。

そして我が家では、ムスメが「絶賛嘘つきまくり」中!?

本書によると、「子供は純粋だからわざと嘘をつかない」ということはなく、むしろ「理性や道徳心が働かず、大人よりも抵抗感なく嘘をつく」のだとか。

うーん、私の場合、本書を家庭内で活用することが多そうな予感……。


新書でありながら、中身がギッシリ詰まった1冊です!

嘘の見抜き方 (新潮新書)
嘘の見抜き方 (新潮新書)
はじめに
第1章 人が嘘をつく4つの理由
第2章 嘘を見抜くための心得
第3章 嘘つきはこのセリフを使う
第4章 仕草から本心を見抜く
第5章 嘘を暴く質問とは
第6章 難しい敵の攻略法
第7章 自ら真実を語らせるには
第8章 人は気づかぬうちに嘘をつく
第9章 社会は嘘をどう扱うか


【関連記事】

【総まとめ?】『面白いほどわかる! 他人の心理大事典』おもしろ心理学会(2012年11月05日)

【コミュニケーション】『橋下式 絶対負けないケンカ術』向谷匡史(2013年02月18日)

アルファギークもびっくり 驚愕の「FBI式 人の心を操る技術」(2010年06月28日)

【ウソ看破?】「相手の隠しごとを丸ハダカにする方法」デビッド・J・リーバーマン(2010年04月02日)

絶対に公開してはいけない『心を上手に操作する方法』(2012年06月29日)


【編集後記】

◆本書に似たテイストの本がこちら。

シャーロック・ホームズは なぜ外見だけで人を見抜けるのか? (宝島社新書)
シャーロック・ホームズは なぜ外見だけで人を見抜けるのか? (宝島社新書)

先日の未読本関係の記事でもご紹介済みです。


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