2013年04月16日
【待望の新刊!】『経営センスの論理』楠木 建
経営センスの論理 (新潮新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、ベストセラー『ストーリーとしての競争戦略』(『スト競』)で知られる楠木 建さん待望の新刊。あれだけのヒットの後、この3年間新刊を出されていなかったワケですから、『スト競』ファンの私としては、リアル書店で迷わずゲット致しました!
アマゾンの内容紹介から。
会社をよくしたければ、スキルよりもセンスを磨け! 「よい会社」には根幹の戦略に骨太な論理=ストーリーがあり、そこにこそ「経営センス」が現れる――。気鋭の経営学者が縦横に語り尽くした「経営の骨法」。
確かに、様々な事象に関して縦横無尽に語られていました!
いつも応援ありがとうございます!
【ポイント】
■1.すぐれた戦略をつくるにはセンスが必要スキルとセンスをごっちゃにすると、だいたいスキルが優先し、センスは劣後する。スキルであれば、定義できるし(「私は英語ができます」とか)、測れるし(TOEIC800点とか)、すぐに他人に示せる(英語で流暢に会話する)からだ。(中略)
ところが、本来はセンスの問題であるはずのことをスキルとすり替えてしまうと、悲惨なことになる。モテようと思って雑誌を読む。「こうするとモテますよ!」というスキル(めいたもの)が山のように紹介されている。そこにあるファッションやデート方法をそのまま全部取り入れたらどういうことになるか。ますますモテなくなる。間違いない。
戦略も同じである。本を読んでスキルを身につけて、それでうまい戦略がつくれたら誰も苦労はしない。必要な要素の大半はセンスなのだ。
■2.センスを磨くには、好き嫌いを意識しこだわる
ではどうすればセンスが磨かれるのか。もちろん即効性のある答えはない。しかし、物事に対する好き嫌いを明確にし、好き嫌いについての自意識をもつ。これがセンスの基盤を形成するということは間違いない。ありとあらゆる事象に対して自分の好き嫌いがはっきりしている。そして、その好き嫌いに忠実に行動する。ジョブズさんはその典型だろう。
鋭敏な直感やセンスの根っこをたどると、そこにはその人に固有の好き嫌いがある。好き嫌いを自分で意識し、好き嫌いにこだわることによって、経営者として重要なセンスが磨かれるのではないかというのが僕の仮説だ。
■3.イノベーションとは「思いつくかつかないか」
技術進歩は「できるかできないか」の問題であると考えるとわかりやすい。(中略)
これに対してイノべーションは、「できるかできないか」よりも「思いつくかつかないか」の問題であることが多い。難しいからできないのではなく、それまで誰も思いついていないだけなのだ。だから、ドラッカーは言う。「『なぜこれが今までなかったんだろう』。これがイノべーションに対する最大の賛辞である」。社会にインパクトをもたらし、人々の生活を変えるようなイノべーションほど、「言われてみれば当たり前」という面がある。
■4.「できる」と「する」の違いにこだわったアップル
最近のスマートフォン(iPhone)に限らず、アップルがこの10年で最もイノべーティブな企業のひとつであることは間違いない。そのひとつの理由は、アップルほど「できる」と「する」の間のギャップに敏感な会社はないということにある。顧客から見て明らかに非連続なものを提供する。その一方で、ユーザー(=ごく普通の大衆)の側にある大いなる連続性を直視する。多くの人々があからさまにそそられ、自然と「する」という確信がもてる製品しか出さない。だから、必然的に製品のバリエーションは少なくなる。あれほど巨大な企業になったのにもかかわらず、アップルの出している製品をすべて並べても、大きめのテーブルに収まってしまう。
■5.具体と抽象の往復運動をする
どんな仕事も最後は具体的な行動や成果での勝負である。ただし、具体のレべルを右往左往しているだけでは具体的なアクションは出てこない。抽象度の高いレべルでことの本質を考え、それを具体のレべルに降ろしたときにとるべきアクションが見えてくる。具体的な現象や結果がどんな意味を持つのかをいつも意識的に抽象レべルに引き上げて考える。
具体と抽象の往復を、振れ幅を大きく、頻繁に行う。これが「アタマが良い」ということだと僕は考えている。
■6.注意のフィルターのレベルを上げて、情報量を制限する
注意と情報の間に必然的なトレードオフがある以上、ITが進歩すればするほど注意が貧困になるのもまた必然。仕事の質を低下させないためには、強い意志を持って注意のフィルターを強化するか、情報を意識的に遮断するしかない、というのが僕の結論だ。それでは皆さん、情報との上手なつき合い方について、いい方法があったらどんどんツイートしてくださいね……。
とか言っているうちはロクな仕事にならないということだ。
■7.自分が面白がれることを掘り下げる
どんな分野のどんな仕事でも、優秀な人というのは「面白がる力」の持ち主だ。面白がるのは簡単ではない。人間の資質なり能力の中でももっとも奥深くコクがあるところだ。時間をかけてでもそうした才能を開発できるかどうか、ここにアウトプットが出てくる人とそうでない人との本質的な分かれ目がある、というのが僕の見解だ。
自分のケースで考えてみてほしい。多くの人があからさまに面白がることでなくても、仕事や勉強に関して、自分で面白がれるようになったことが、誰にも1つや2つはあるはずだ。なぜそのことを面白がれるようになったのか。まずはその背後にある「論理」を考えてみることをお勧めする。
【感想】
◆冒頭の「はじめに」にあるように、本書は『ストーリーとしての競争戦略』とは違って、「統一的なメッセージ」のようなものはありません。楠木さん曰く、世の中の事象について「論理で本質がつかめないとどうも落ち着かない」のだそうで、思考の結果「こういうことか」と自分なりに本質がつかめると「スカッとする」、と。
そして、その考えをまとめると、今度は周りの人に話したくなり、そうした「論理」を集めたのが本書なのだとか。
確かに上記ポイントを見ても「仮説だ」「考えている」「見解だ」といったフレーズが、ちらほら見受けられますね。
◆そもそも当ブログも、1つの流れに沿って引用するのではなく、付箋を貼ったところを断片的に拾っているため、本書のこうした特徴は望むところ。
ただし、付箋を貼った箇所から「これは」と思う部分を抜き出したところ、章的に見てかなり偏った抽出になってしまいました。
下記目次の通り章が6つあるのに、第3章から第5章までの3つの章からは、1つも拾っていないので、ここで簡単にサワリだけでも。
まず第3章は「グローバル化」で、「グローバル化」と言えば、やはり「英語」。
楠木さんは、「英語がそれほど上手でもないのにコミュニケーションはすごい人」を観察することを勧めてらっしゃいます。
なんでもそういう人は、日本語の時と英語の時とで、「受ける印象にまったく違いがない」のだそう。
◆続く第4章では企業戦略や金融面での「日本」の特徴を掘り下げていて、それはそれで興味深い(CEOの平均報酬が米国の1/10、英国の1/6とか)のですが、途中からロンドンオリンピックの話になって飛ばしまくりw
国別メダル数の順位は「金メダルの多い順」なので、ロンドンオリンピックでの日本は11位でした。
しかし獲得メダル数にしめる「銀」「銅」の割合は日本が1位。
これは「競争戦略論」で言うところの「ポジショニング戦略」をとっていない、つまり「能力」がある人が能力を発揮すればその結果メダルがもらえる、という考え方によるものである、と(詳しくは本書を)。
一方第5章では、「大学生が選んだ就職人気ランキング〜」に異議申し立てを。
楠木さん曰く、これは単に「世間一般に知名度の高い会社のランキング」に過ぎず、むしろ「働きがいのある会社ランキング」に注目せよ、と。
なぜなら、実は「働きがいのある会社」と「戦略が優れた会社」は重なっているから……というお話は長くなるので、これまた詳しくは本書にて。
◆ちなみに、『ストーリーとしての競争戦略』でもちらほら散見されましたが、楠木さんは、かなりジョークと言うかギャグがお好きなよう。
第2章では、自らに訪れた容姿の劣化(ハゲ&デブ)について、「H」と「D」と略して、自虐気味にその問題解決(?)に当たられています。
また、このパートに限らず、文章内にカッコを用いて、ギャグを散りばめてらっしゃるんですけど、これがもう「単行本では無理でしょう」というレベルw
ちょっと小難しい話でも、こうしたギャグや具体例(上記ポイントでは割愛しまくっていますが)を用いて、私たちの理解を促そうとされている点はさすがだと思いました。
『スト競』ファンならマストな1冊!
経営センスの論理 (新潮新書)
第1章 「経営者」の論理
第2章 「戦略」の論理
第3章 「グローバル化」の論理
第4章 「日本」の論理
第5章 「よい会社」の論理
第6章 「思考」の論理
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【編集後記】
◆当ブログの読者さんなら、既にお読みだと思いますが。ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books)
この厚さとこのお値段で、16万部突破する、って普通アリエナイと思います(レビューは上記「参考記事」にて)。
ご声援ありがとうございました!
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だいぶ前に読んだので、書ける内容がない。。。
単に「読んだ」というメモにしかならない。
ただ、内容は良かった、という印象だけが残っている。
僕は精読派ではなく、多読・乱読をして、脳内で勝手にそれらが
『経営センスの論理』【月のブログ】at 2014年04月19日 18:06
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