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2013年04月04日

【データ分析】『データ・サイエンティストに学ぶ「分析力」』ディミトリ・マークス,ポール・ブラウン


データ・サイエンティストに学ぶ「分析力」    ビッグデータからビジネス・チャンスをつかむ
データ・サイエンティストに学ぶ「分析力」 ビッグデータからビジネス・チャンスをつかむ

【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、前回の「未読本・気になる本」の記事で、真っ先に取り上げて注文までしてあったのに、読むのが後回しになっていた1冊。

遠出した際に一気に読破しようと取っておいたら、橋本大也さんのところに先を越されてしまいました。

アマゾンの内容紹介から。
米ハーバード・ビジネス・レビュー誌が「21世紀で最も魅力的な職業」と呼ぶデータ・サイエンティストの手法をわかりやすく解説。シスコシステムズ、UPS、BT(ブリティッシュテレコム)、イーベイ、シーザーズ・ホテルチェーンの企業事例やソーシャルネットワークの活用事例などを満載。

本書では、実際に著者の推進する方法を用いた事例が豊富に収録されていましたので、そちらを中心にまとめてみます!


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【ポイント】

■1.大型小売チェーンにおける顧客生涯価値の計算方法
仮にいま、高価値の顧客から年に1000ドル、中価値の顧客から500ドル、低価値の顧客から50ドルの売上をあげているという結論になったとしよう。そして私が高価値の顧客であると考えてみてほしい。(中略) 
 仮にこれらのモデルによって、私が顧客を辞める確率が20パーセント、低価値になる確率が10パーセント、中価値になる可能性が30パーセント、高価値のままで留まる可能性が40パーセントであるという結論になったとしよう。私の来年度における価値は、次のように計算される。
2年目の価値= 20% × 0 + 10% × $50 + 30% × $500 + 40% × $1000 = $555
 この結果が2年目の予測である。そして2年目の予測を基にこの計算を繰り返し、3年目がどうなるかを予測するわけだ。


■2.顧客の声をサイトに反映させたシーザーズホテル
例えばシーザーズは、同社のパリ・ホテルの宿泊客が、部屋から見えるラスべガス大通りの素晴らしい景色が気に入ったと書き込んでいることを知った。その情報から、シーザーズはウェブサイト上の画像を、部屋からの景色に変更した。宿泊客が部屋のサイズや食事のオプション、サービスといったアメニティに大きな関心を示していることに気づいたときには、スイートルームの面積や食事のメニューをウェブサイトに掲載した。こうした工夫の結果、オンライン上で予約が行われる率は10パーセント以上も上昇した。


■3.消費者のニーズに合わせてマーケティング活動を変えたIBM
IBMはオンライン上の会話を調査し、同社のテクノロジーがいかに素晴らしいかを話している人がほとんどいないことに気づいた(本当に素晴らしいテクノロジーを提供しているのだが)。その代わりに「テクノロジーが可能にする素晴らしいこと」について話されていたのである。消費者はテクノロジーがどう機能するかに興味はない。なぜ携帯電話で通信ができるのかなど、気にも留めていない。消費者は単に、携帯電話を使って誰かと会話できればよいのだ。この結果、IBMのマーケテイング活動の焦点は、VoIP技術やクラウドデリバリーモデルについて解説することから、会話やミーティングをより快適にする方法について語ることへとシフトした。


■4.ピンポイントで顧客をターゲティングしたペリエのキャンペーン
私たちはフランスで、iPad用キャンぺーンをぺリエ向けに実施し、大きな成功を収めることができた。このキャンべーンでは、ランジェリー姿の女性たちが登場するバーレスク風のバーチャル空間を用意し、そこにユーザーたちを招待したのである(単純な印刷広告よりも彼らを引きつけたことだろう)。
 この広告を開始したところ、クライアントであるぺリエの関係者は、自分たちのiPadでウェブをサーフィンしていても、広告を目にしないと文句を言ってきた。私たちが本当に広告を実施しており、しかもターゲティングをしっかり行っているため、最も潜在的価値のある人々にしか広告は表示されず、ぺリエの関係者はそのグループに含まれない(彼らはぺリエ製品をタダで入手できるからかもしれない)ことを納得させるのに長い時間がかかった。


■5.バナー広告キャンペーンの間接的効果
私たちはゼロからスタートし、広告配信会社から提供されるログファイルを解析することにした。
 このログを解析したところ、40パーセントの「ビュースルー」効果(15日間以内)が確認された。つまり売上総額に対するバナー広告キャンぺーンの貢献度の40パーセントが、最初にバナー広告を見たときにはクリックせず、それを見てから15日間以内に部屋を予約した人々によってもたらされていたのである。これは非常に重要な発見だった。もしバナーをクリックした人々によって直接もたらされる売上だけに注目していたら、バナー広告を生み出す売上の40パーセントを逃していたことになる。そして実際には非常に上手くいっているキャンぺーンを終了させてしまうことにつながっていたかもしれない。


■6.A/Bテストでパフォーマンスを改善した某ハイテク企業
先ほどのハイテク企業においては、私たちは当初、A/Bテストと呼ばれる実験を実施した。(中略)
例えば、詳細情報を入手できる「詳しく知る」というボタンをメール内に設置すると、メールへの反応率を上げられるだろうか。テストの結果、その答えは圧倒的に「イエス」であることが判明した。このケースでは、「行動のきっかけになるもの」を与えることで、メールのパフォーマンスを50パーセント上昇させるることができたのである。


■7.オバマ大統領のホームページを改善した「多変数テスト」
 先に結論を述べておこう。ダンと彼のチームは、これから解説するテクニックの一部を活用し、ホームぺージを先ほど掲載した左のバージョンから右のバージョンへと変えたのである。しかしこれらの間には2つの変化しか存在しない。掲載されている画像の変更と、ボタンの名前を「サインアップ」から「詳しく知る」へと変えることしか行われていないのである。この2つの単純な違いが、表7-1に示すように、事態を一変させたのだ。
 新しいObama.comのホームページは、オリジナルのバージョンよりも40パーセント良いパフォーマンスを記録した。その結果、28万8千人の追加ボランティアと、5700万ドルの追加資金(もしくは対立候補であるジョン・マケイン氏がオンラインを通じて得たトータルの資金の25パーセント以上)を得られたのである。

(詳細は本書を)


【感想】

◆著者の一人であるディミトリ・マークスは、アマゾンの著者紹介によると「オグルヴィ・アンド・メイザー・グループのデジタルおよびダイレクト・マーケティング部門「オグルヴィ・ワン」のマネージング・ディレクター。同社のデータ分析の第一人者。米フォレスター・リサーチ社が業界No.1と認めるグローバル・データ・プラクティス・チームのリーダーでもある」とのこと。

そもそもオグルヴィにダイレクト・マーケティング部門があることすら私は知らなかったのですが、その業務を受け持つのが「オグルヴィ・ワン」であり、本書を監修されている馬渕さんが代表取締役を務める「オグルヴィ・ワン・ジャパン」が日本法人のよう。

ちなみに「広告」というと、一般的には「テレビCM」を思い浮かべる方も多いと思いますので、一応、下記に「ダイレクト・マーケティング」についての説明も。

ダイレクトマーケティング - Wikipedia

古くは通信販売の頃から行われていたものであり、当ブログでも今まで何冊か関連本をご紹介してきました。

例えば本書の「イントロダクション」でも登場するこちらとか。

ザ・コピーライティング―心の琴線にふれる言葉の法則
ザ・コピーライティング―心の琴線にふれる言葉の法則

参考記事:【フツウにスゴ本】「ザ・コピーライティング」ジョン・ケープルズ (著), 神田昌典 (監修)(2008年10月20日)


◆テレビ(やラジオ)の登場によって広告の主戦場がそちらに移ったため、長らく日陰の身(?)であったのですが、インターネットの普及により、再度その重要性が認識されてきた次第。

とはいえ、データが集まってもそれを正しく分析できなければ意味がないワケで、そこで登場するのが、本書の著者であるディミトリ・マークスのような「データ・サイエンティスト」。

データをキチン分析して対処すれば、上記ポイントに挙げられたような実績が挙げられるという。

もちろんデータはネットだけでなく、リアル店舗での購買履歴等も非常に有効です。

それが故に、あまりに律儀に店員が確認している某カードの場合、こんな対策(?)も練られていますがw

店員の機先を制して買い物を円滑にする「Tポイントもってないよカード」誕生 - GIGAZINE


◆ネットの方も、従来の「A/Bテスト」のレベルを大きく凌駕する「多変数テスト」の登場によって、より「最適化」が行われるようになりました。

例えばイーベイのケースでは、サイトの領域を6つに分け(「左カテゴリー」「トップコンテンツ」等々)各領域のために4つの異なるバージョンを作成。

これらを組み合わせると、4096通りの「微妙に異なるウェブページ」が完成することとなり、これらをテスト期間中に表示させて、どのバージョンが最も効果的だったのか確認したのだそう。

その結果、何とコンバージョンレートが2桁アップ!

それは、テレビ広告に出稿する企業も減ります罠……。


◆本書では、こうした数々の事例を通して、「どういう風に考えて」「どういう事ができるのか」について、詳しく述べられています。

ただし、実際に「どのようにすればいいのか」の詳細については、広告の専門書ではないので基本的に割愛。

もっとも、代理店の方でしたら、本書に書かれているような内容は、アバウトであれご存知でしょうから、むしろ本書を読むべきは広告を出す企業の側でしょう。

もし「広告費は売上の●%とする」なんて非効果的な決め方をされているなら、本書は必読かと。


数字はウソをつきませぬ!

データ・サイエンティストに学ぶ「分析力」    ビッグデータからビジネス・チャンスをつかむ
データ・サイエンティストに学ぶ「分析力」 ビッグデータからビジネス・チャンスをつかむ
イントロダクション:数字はずっと魅力的だった
監修者まえがき
第1章 リトルデータでビジネスを成長させる
第2章 ターゲティング――誰にアプローチするか
第3章 メッセージ――何について話すか
第4章 ロケーション――どこで顧客を見つけるか
第5章 予算――いくら費やすべきか
第6章 測定――何が有効か、有効でないかをどう把握するか
第7章 最適化――有効なものをさらに活用し、無効なものを排除するには
第8章 アナリティクスの未来
謝辞
訳者あとがき


【関連記事】

【スゴ本】「費用対効果が見える広告 レスポンス広告のすべて」後藤 一喜(2009年07月30日)

【フツウにスゴ本】「ザ・コピーライティング」ジョン・ケープルズ (著), 神田昌典 (監修)(2008年10月20日)

【4つのパーツ】「お客のすごい集め方」阪尾圭司(2007年07月13日)

【スゴ本】「ECサイト4モデル式 Google Analytics経営戦略」権 成俊, 村上 佐央里(2009年02月05日)


【編集後記】

◆今日の気になる1冊。

東大ドクターが教える集中術 (小学館101新書)
東大ドクターが教える集中術 (小学館101新書)

「東大」「ドクター」「集中術」と、食指が伸びる要素が満載ですw


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