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2013年03月26日

【文章術】『いい文章には型がある』吉岡友治


いい文章には型がある (PHP新書)
いい文章には型がある (PHP新書)

【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、久々に文章術のご本。

それなりにこの手の本は読んでいるツモリでしたが、結構目からウロコが落ちました。

アマゾンの内容紹介から。
文章はざっくりと三つの型に分かれる。論理的な「主張型」の文章では、「問題→解決→根拠」の構成が読者にとって親切であり、接続詞「そして」は使わないほうがいい。物語や経過報告は「ストーリー型」に属し、小説では情景や行動の描写によって人物の心情を示すといった手法が用いられる。三つ目はエッセイなどの「直観型」。本書では幸田文の名文などから、個人的体験を普遍的思考につなげる過程を学ぶ。

書く側だけでなく読む側にとっても、きっと得るところがある1冊です!


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【ポイント】

■1.文章の3つの型
 この本では、文章の型を3つにざっくりと分ける。主張型・ストーリー型・直観型。まずストーリー型とは「昔々あるところにおじいさんとおばあさんがいました。おじいさんは山に柴刈りに……」という具合。具体的な場所・時間で登場人物が行動する。すると、事件が起こり、意外な方向に話は転がっていく。(中略)

 それに対して、主張型の代表は論文、つまり意見を言う文章だ。皆で何かを話して「どうしようか?」と迷っている。そこに自分が「こうしたらいいのでは?」と述べる。皆が考えている問題に対して「答えはこうだ!」と鮮やかに解決をする。これが意見だ。(中略)

 最後の「直観型」はエッセイや随筆だ。まず元となる体験がある。それに対する感想を「良かった」とか「感動した」とか書く。そこから「人生とは……」「仕事とは……」などという深い考察につなげる。


■2.主張型文章では公共的な問題を提起する
 たとえば「私は、どうやったら結婚できるのか?」という問題を立てて論じても、「自分で工夫してね」としか言いようはない。それを「現代の若者には出会いの機会が少ない。こんなことでは少子化も進む。どうしたらいいか?」という問題にすれば「私もそうだ!」「息子も同じ状況だ」と興味を持つ人が続々と出てくるだろう。つまり、似たような悩みや不安を持っている人が一定のボリュームで存在すると予想できるなら、一般化できるのだ。


■3.主張型文章では解決は問題提起の直後に置く
 解決を置く位置は、問題提起をした直後がべストだ。つまり、問題を書いたら、その次にすぐ解決を書く。つまり問題→解決→根拠。これは読者にとって知りたい順序だ。読者はせっかちだから、まず結論=筆者の立場を知りたがる。理屈や例は後からでよいし、頭がよい読者は説明がなくても分かるだろう。(中略)
 思考の順序に忠実に書けば、問題→根拠(例示から説明、理由という順序)→解決となるが、読者にはまだるっこしい。書き手にとっては些か不自然だが、問題→解決→根拠という順番が読者にとって親切なのである。


■4.接続詞は読み手のスピードを速める
接続詞の選択は読むときのスピード感を上げる。次の文がどのように現れてくるかを予想させる役目を果たすからだ。内容がどこに行き着くか分からなくても「たとえば」とあれば、次は例示だと分かるし、「しかし」とあれば、今までと反対の内容だと身構える。「ちなみに」とあれば、横道にそれるから読み飛ばす。
 要するに、接続詞は、車で走るときの道路標識のような役目を果たしている。標識があれば、数秒前に心の準備が出来るから、体もスムーズに動く。それと同じように、次の文がどういう内容なのか、0.1〜2秒前に教えてくれるので、反応が速くなるのである。


■5.ストーリー型では人物の心情は外観の描写に対応する
 しかし、一番物語に特徴的なのは情景描写だろう。どういうわけか、物語、とくに近代小説では人物の心情と外界の描写は1対1に対応するというルールになっている。外が土砂降りだったら、それに対応して心情も暗く/悲しくなる。外は土砂降りなのに、気持ちだけは明るいなどということはないのである。もし、そういう心情を描きたいなら、「外は土砂降りなのに、私は元気だった」と逆接の接続詞をわざわざ使わなくてはならない。つまり風景と心情は互いに共鳴しあって、全体のムードを作っているのが原則なのである。


■6.書く文章によって「よい文章」の基準は異なる
よい物語的文章を書くには、主張型文章とは別な技法が必要になる。どんな文章を書くかによって「よい文章」の基準も違ってくるのだ。小説家が書いた批評がしばしばぼけていたり、批評家の小説が面白くなかったりするのは、自分の確立した1つの文体を別ジャンルにも強引に適用しようとするからだろう。
 その意味で、文章を書くときは、どんなタイプが求められているか、だけでなく、どんなタイプが自分に合っているのか、も自覚する必要がある。理屈っぽい人はフィクションを書くには適さない。だが、理論的・論争的な文章なら競争力がある、というように。


■7.エッセイは個人的な体験が普遍的思考へと昇華する
 たとえば、「愛犬が死んで悲しかった」は、本人にしか分からない感情だが、それとの生活を具体的に書いていけば、犬をなくした人の共感を呼ぶかもしれない。さらに「人間とぺットの関係」と一般化すれば、イヌ好きでなくても理解できる内容になる。ネコが好きな人も、犬の話には興味をひかれなかったとしても「ぺット一般」の話になったところで、自分にも関係あると身を乗り出す。筆者にだけ関係がある「体験」が、「感想」「思考」となるにしたがって、読者にも関係ある普遍的な内容になっていくのだ。


【感想】

◆今まで文章術の本は色々と読んできましたが、正直なところ、タイプについてはあまり意識していませんでした。

と言うより、そもそもどの本も、本書で言うところの3つの型のどれか1つにだけついて述べたものであり、縦断的に比較等はしていなかったハズ。

それ以前に、いわゆる「ビジネス文書」は、必ずしも意見を言うものでもない(報告、謝罪等々)でしょうから、絶対に「主張型」とも限りません。

また、「ストーリー型」については、「書き方」の本はほとんど読んでいなかったと思います。

そんな状態のところに、ドーンと「書き方(読み方)」指南をしてくれたのが本書という次第。


◆「読み方」に関しては、上記では引用できませんでしたが、本書内では3つの型ごとに具体例を挙げて、解説がなされています。

それもオリジナルの文章だけでなく、新聞記事やセンター試験やら大学の入試問題からもいくつか。

さすが、『東大入試に学ぶロジカルライティング』なんてご本を出されている吉岡さんだけのことはあります。

東大入試に学ぶロジカルライティング (ちくま新書)
東大入試に学ぶロジカルライティング (ちくま新書)

もっとも、主張型の問題ならまだ何とか分かる(と言っても解けるのではなくて、読んで意味が分かる、という意味で)ものの、ストーリー型や直感型だと正直お手上げ。

直感型のところで、京大の入試問題として出された幸田文の随筆が取り上げられているのですが、推論部分が多すぎて涙目となってしまいました。

正直、エッセイを舐めていた自分、ハズカシス……。


◆結果、私を含め、ビジネス書好きには、主張型が展開される第1章が一番親和性がありそうです。

付箋を貼ったのもこの第1章が一番多かったですし、ビジネス文書として利用できるのも、おそらくこの部分だけになるかと。

また、ブログ等で「主張したい」方にとっても、主張型文章の基本構造や論理展開は参考になると思います……って、主張が強すぎると炎上しかねませんがw

ちなみに本書では、主張型文章については「読み手がツッコミを入れてきそうな所にあらかじめ答えておき、疑問の余地をなくしてしまう」ことを推奨しています。

つまり、意図的な炎上は別として、結果的に炎上してしまうエントリーは、こういう「ツッコミ」が読めていなかった、ということ。

……私の場合炎上が怖いんで、とりあえずあまり主張しない方向なんですがw


◆本書は文章術の本ですが、「てにをは」レベルの話は皆無でした。

「まえがき」で吉岡さんも、こうおっしゃってます。
細かな文章の書き方など信じるな。大まかな手順を覚え、後は自分でやってみる勇気を持て!
つまり、「が」と「は」の書き分けや読点の打ち所は後で良い、と。

結局、こまかな規則よりも、3つの型の特徴を意識して、それぞれの方向を間違えないのがポイントなワケですね。

私もとりあえずは第1章を再読して、主張型のマスターから始めなくては。


読むときっと腑に落ちる1冊!

いい文章には型がある (PHP新書)
いい文章には型がある (PHP新書)
まえがき 文章は自由に書けるか?
第1章 主張型文章の型
第2章 ストーリー型文章の型
第3章 直観型文章の型


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【文章術】『100ページの文章術 -わかりやすい文章の書き方のすべてがここに』酒井聡樹(2011年03月24日)


【編集後記】

◆そう言えば、小宮一慶先生もライティングの本を出されていました。

書く力ドリル (ビジネスマンの「必須スキル」シリーズ)
書く力ドリル (ビジネスマンの「必須スキル」シリーズ)

こちらは完全にビジネス文書仕様のようです。


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この記事へのコメント
               
はじめまして、いつもブログのほう拝読させていただいております。

最近、自分で書評や記事などを書きたいと思い始め、雛型などがでている参考になる書籍を探しております。

まずは徹底的に型を真似ていきたいと考えておりますが、管理人さんお薦めの書籍や参考にしていらっしゃる書籍があれば、教えていただけると幸甚に存じます。

どの記事にコメントすればよいかわからなかったため、個人的にテーマの似たような当記事にさせていただきました。

お手数をおかけいたしますが、宜しくお願い致します。

Posted by にもた at 2013年10月11日 21:12
               
>にもたさん

はじめまして、コメントありがとうございます。

お薦め本というのは、基本的にあまりやらない(相手の目的やレベルがわからないため)のですが、参考になったという点では、以下の本が挙げられます。
いずれもこの本と同じライティングのカテゴリーからレビューをさがしてください。

『いい文章には型がある』
『20歳の自分に受けさせたい文章講義』
『書くことが思いつかない人のための文章教室』
『いますぐ書け、の文章法』

偶然にもすべて新書なので、お財布にも優しいと思います(笑)。

Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2013年10月12日 10:14