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2013年03月11日

【お金】『なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?』山口揚平


なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?
なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、2月のランキングのトップとなった(かつ上半期ランキングトップの有力候補の)『そろそろ会社辞めようかなと思っている人に、一人でも食べていける知識をシェアしようじゃないか』の著者、山口揚平さんの新作。

タイトルにゴッホやピカソが出てきますが、芸術関係の作品ではなく、あくまで本書の中心的なテーマは「お金」になります。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
「お金」の変化に伴って、私たちは、食い扶持の稼ぎ方や、人との付き合い方など、生き方を大きく見直すべき岐路に立たされています。
著者が、M&Aコンサルタントとして見聞きしたガイシ大資本の論理や、独立・起業で痛感した価値と価格の差を生む信用の大切さなど、独自の経験というフィルターを通して見た「お金」の変化を整理し、どうすれば幸せをつかめるのか、経済的に生き抜いていけるのか、これからの世の中にフィットする考え方や行動様式のあり方について、淡々と軽妙なエッセイ風につづられています。

「お金稼ぎ」の本ではなく、むしろ「お金との付き合い方」が学べる1冊です!


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【ポイント】

■1.小さな確率を大きく捉える性質に留意する
 多くの人は、宝くじの250万分の1という当選確率の極小さを忘れ去り、「3億円が当たるかもしれない」と根拠もなく期待して宝くじを買う。そして「ひょっとしたら事故に遭うかもしれない」と不安になって保険に加入する。このような感情に基づいた判断を繰り返せば、自然と財布の中身は寂しくなる。期待と不安は、それらが的中する確率以上に大きな代償を僕たちに課している。
 これからの僕たちにとって大切なことは、お金を使うときに、それはいったい何の対価なのか、いったん立ち止まって考える姿勢だ。それは、本格的な資本主義世界を生きる僕たちの義務だ。


■2.やりたいことがなければ、やるべきことをやる
 もし、世界に価値を産み出したいなら、価値をお金に換える「バリュー to マネーの世界」で生きていきたいなら、何よりもまず"好き"を追求しよう。やりたいことがみつからないなら、やるべきことをやろう。「やるべきこと」とは、「貢献につながること」だ。自分の才能がわからないなら、わずかなことでいいから、人の役に立つことを手がけよう。それが仕事でなくてもいい。最初はお金が入らなくてもいい。貢献は信用を生み、それが未来の自立と社会的評価につながるだろう。その積み上げの果てに、使命を授かるときがくる。


■3.日本で根性論が賞賛される理由
事業の成功に一番厳しいのは、ティッピング・ポイント(閾値)を超えるときである。崖を登る最後のひとがんばりが一番大変であり、お金を必要ともする。しかし、そのステージで会社は価値を顕在化できていないし、信用も貯まっておらず、出資や融資を受けにくい。僕の感覚値では、独立すると、信用は10分の1くらいまで落ち込む。
 資金がつきにくい以上、ティッピング・ポイントは気台いと根性と体力で登り切るしかない。日本で根性論が賞賛されるのは、本質的に根性が有効だからではない。一番大変なときにお金を調達することが叶わず、根性で乗り切るほかないからである。


■4.HBS(ハーバードビジネススクール)出身者の成功の陰に「信用(クレジット)」あり
 HBS出身者が持つ信用を抜きにして、普通の人が彼らの手法を真似たとしても成功はおぼつかない。僕らが学ぶべきは、彼らが起業してからの事業手法ではない。むしろ起業"以前"に彼らが貯めてきた学歴を含めた信用のつくり方のほうなのである。信用を築くために、学校や会社を含め一流の組織に帰属することはやはり有効な戦略である。


■5.信用の覇権をめぐって争う「国家」「企業」「個人間の紐帯」
 ウィキリークスのアサンジ氏の拘束は、単なる個人の刑事・民事事件と捉えるべきではない。情報を暴露された国の安全保障の問題でさえない。アサンジ氏の拘束は、「国家」と「個人間の紐帯」という層(レイヤー)間における覇権をめぐる戦いなのだ。
 台頭する「紐帯」の脅威を察知した「国家」が互いに連動し、彼らにとって共通の敵たるアサンジ氏の拘束につながった、という見方が妥当ではないだろうか。


■6.みずから価値や信用を創造する
信用のありかが多極化する分散型"信用主義経済"において、よりよく生きていくコツは、今流通しているハードマネーを1億円持つ、といったことではなくなる。誰と付き合うか、どう信用を創造するか、信用とは何か、といったことを丁寧に考え、咀嚼し、行動に結びつけていくことこそが重要である。
 "貨幣化"していない部分を含めた総信用量こそ、僕たちが意識すべきものであって、単純にお金さえあれば、ハッピー! というわけにはいかなくなるのである。もしかしたら、今手に入れたそのお金は、信用の負債という形で調達したものかもしれない。

 
■7.上野動物園は有機経済で拡大してきた
 有機経済の例として挙げられるのは、上野動物園の動物トレードである。上野動物園は、お金で動物を買うのではなく、動物たちを他の動物園と交換することによって発展してきた。たとえば、虎をヒグマに、タンチョウをゾウに、交換しながら拡大したのである。面倒ながらも、動物の一体一体にお金というラベルをつけないことで、その個体としての価値、個々の存在の必然性を意識的に担保してきたのだ。


【感想】

◆タイトルがタイトルだけに、ピカソとゴッホの違いについて、気になる方は多いかと。

本書では、冒頭の「はじめに」にて、その謎解きがされていますので、申し訳ないのですが、詳細はそちらにてご確認を(ネタバレ自重)。

ただ、1つだけピカソのマネーリテラシーを窺い知る逸話をご紹介しておくと、ピカソは日常生活の少額の支払いであっても、小切手を使ったのだとか。

というのも、ピカソは当時から有名であり、小切手をもらった商店主が銀行に持ち込まず、直筆サイン入りの作品として飾るなり、大事にしまっておくことが多かったから。

そうなると、小切手は換金されず、ピカソは実質的にタダで買い物を済ませることができるわけです。

これは、今で言うところの「信用創造」の考え方に相当するという。

恐るべし、ピカソ!


◆また、上記ポイントの4番目では、「HBS出身者」の成功について触れていますが、本書では具体的な起業家の名前も登場しています。

それは、楽天の三木谷浩史さん、DeNAの元CEO南場智子さん、ライフネットの岩瀬大輔さんのという面々。

お三方の経歴やビジネスモデルは、ご存知の方も多いと思いますので割愛しますが、山口さん曰く「彼らのいずれのやり方も、普通の人が模倣するにはリスクが大きいと思っている」とのこと。

なぜなら、その成功が「HBS出身者しか持ちえない信用に大きく依存している」から(詳細は本書を)。

上記ポイントの3番目に「独立すると信用は10分の1くらいまで落ち込む」とありますが、それを補うのがこうした経歴による「信用」なんでしょうね。


◆ところで、この「信用」を高める効率的な方法が、本書で紹介されていました。

デービッド・マイスターの『プロフェッショナル・アドバイザー』という本からなのですが、こういう式で信用は定義されるとのこと。

信用度=(専門性+確実度+親密度)/ 利己心

それぞれの語句の定義については長くなるので割愛しますが(すいません)、要は、分子の「専門性」部分を高めるより、分母の利己心(エゴ)を減らす方が、信用創造への貢献度は高くなるということ。

それにしてもこの本、「中身はいいけど翻訳がダメ」の大合唱なのがカナシイです……。

プロフェッショナル・アドバイザー―信頼を勝ちとる方程式
プロフェッショナル・アドバイザー―信頼を勝ちとる方程式


◆私は丁度最近、内田樹さんと岡田斗司夫さんの『評価と贈与の経済学』を読んだばかりであり、本書もそれに近いスタンスだと思いました。

本書には『ニートの歩き方』のphaさんもちょこっと登場しているのですが、私がphaさんの本のパトロンになったのも、phaさんの「信用」ゆえですし。

なお、本書で山口さんは、自分の回りにおいて「できるだけお金を介さない経済をつくってみてほしい」と言われています。

さすがに上記ポイントの最後の「物々交換」までは難しいものの、私も少しずつでも取り入れてみたいな、と。

実際、下記の関連記事を読んでみると、時代が徐々に「非貨幣」に向かっているように感じましたし。


まだピンと来なくとも、いずれ常識になるのかも!?

なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?
なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?
はじめに
序章 お金とは何か?
1.ハゲタカが跋扈し、お金でお金が殖えた時代
2.自分の価値をお金に換える覚悟と難しさ(バリューtoマネー)
3.企業や個人が国家に代わってお金をつくる世界へ(クレジットtoマネー)
4.お金を媒介とせず、モノや価値を直接交換できる環境の広がり(バリューtoバリュー)
5.信用でつながる新たなコミュニティづくり:資本より信用を貯めよう(クレジット・ライン)
付録 お金について身につけたい3つの習慣
おわりに
参考図書


【関連記事】

【起業の心得】『そろそろ会社辞めようかなと思っている人に、一人でも食べていける知識をシェアしようじゃないか』山口揚平(2013年01月31日)

【オススメ】『評価と贈与の経済学』内田 樹,岡田斗司夫 FREEex(2013年02月28日)

【2軸で考える!】『「キャリア未来地図」の描き方』原尻淳一,千葉智之(2013年01月22日)

【いい人?】『超情報化社会におけるサバイバル術 「いいひと」戦略』岡田斗司夫(2012年12月21日)

【祝『ニートの歩き方』発売!】ホッテントリメーカーに、私がいかにお世話になったかを確認してみた件(2012年08月18日)

【幸せ】『LESS IS MORE 自由に生きるために、幸せについて考えてみた。』本田直之(2012年06月15日)


【編集後記】

◆今年の花粉症はひどいです。

花粉症がいますぐラクになる本―これ一冊でOK!最新薬から体質改善まで完全ガイド! (ぶんか社ムック)
花粉症がいますぐラクになる本―これ一冊でOK!最新薬から体質改善まで完全ガイド! (ぶんか社ムック)

今さらこういう本を買っても手遅れかもしれませんが、少しでも症状が緩和されれば、と……。


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