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2013年03月03日

お前らもっと『ヤバい経営学』の凄さを知るべき


ヤバい経営学: 世界のビジネスで行われている不都合な真実
ヤバい経営学: 世界のビジネスで行われている不都合な真実


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、東洋経済新報社さんの「ヤバい」シリーズの最新刊。

「経済学」「社会学」と来て、今度は「経営学」であります。

アマゾンの内容紹介から。
欧州No.1ビジネススクールの人気若手教授による初の著書。世界で行われている、経営のおかしなこと、間違っていることを痛快に解き明かす。余談たっぷりで読み口は軽いものの、内容はすべてアカデミックでの知見や、豊富な企業の調査やコンサルティングの経験から得た事実に基づいて記述されている。常識を裏切る内容の数々、読み物として面白さと新しい視点の気づき・発見の多さは『ヤバい経済学』にも匹敵する。紹介するトピックは、M&A、リストラ、成果主義、イノベーション、経営戦略、組織改革など。

今回は特に、経営上「良い」と思われているものの、実はそうでもないものについて7つ選んでみました。

なお、タイトルは「ホッテントリメーカー」作であります。

161011追記:Kindle化されました!


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【ポイント】

■1.ほとんどの買収は失敗する
 ただし、最初に1つ覚えておいてほしいことがある。それは「ほとんどの買収は失敗する」ということだ。もうほとんど議論の余地がない事実だ。この問題については、実際に有り余るはどの信頼できるアカデミックな研究が存在する。買収案件のうちの7割は、企業価値を損ねていて、この傾向は何十年にもわたって続いている。

(詳細は本書を)


■2.ストックオプションは博打につながる
ストックオプションを会社の指揮官に与えると、彼らはプラスの「儲け」だけを気にするが、マイナス面の大きさはどうでもよくなる。会社が10億円損しようが100億円損しようが、経営者のストックオプションはどちらにしても無価値になるだけだ。
 これはさらなる悪循環を引き起こす。ワシントンDCにあるアメリカン大学の張暁萌教授とその同僚は、ストックオプションと利益操作の関係について調べた。もちろん利益操作は違法行為だ。教授たちは、1265件の利益操作のケースを調査し、次の事実を見つけた。「アウト・オブ・ザ・マネー」となって株価が権利行使価格を下回っているストックオプションを多く抱える経営者ほど、会社の財務状況を偽って報告していたのだ(そして逮捕もされていた)。


■3.コアビジネスへの集中は「原因」ではなく「結果」
『本業再強化の戦略』の著者クリス・ズックとジェイムズ・アレンが、調査対象の1854社のうち、優良企業の78%が1つのコアビジネスに集中しているのに、低迷企業は22%しか1つのコアビジネスに集中していない、ということを発見した。(中略)
 この2人の「アドバイス」が、見過ごしていることがある。低迷企業は、もっと儲かるビジネスを探そうとして、多角化することが多い。つまり、1つの事業に集中していないのは、業績低迷の原因ではなく、結果なのだ。それに対して、うまくいっている企業では、成功しているビジネスに集中するのは一般的な戦略だ。先ほどと同様に、1つの事業への集中は成功の原因ではなくて、結果なのだ。


■4.シックスマグマ等の流行の経営手法は何の役にも立たない
 カリフォルニア大学バークレー校のバリー・ストー教授とリサ・エプスタイン教授は、こういう経営手法を導入した企業のその後を、綿密な統計分析で調査した。2人はフォーチュン500社のうち、100社のデータを集めた。(中略)そして、2人はこんな発見をした。
 流行りの経営手法を導入した会社は、導入していない会社と比べて業績が良いわけではない。経営手法と企業の業績に相関関係がもしある場合でも、それはマイナスの関係だった。つまり、流行りの経営手法は何の役にも立たないのだ。


■5.ISO9000は革新的なイノベーションを阻害する
 企業がIS09000を導入すると、既存分野の発明が急激に増えていた。その反面、新しい革新的なイノべーションが犠牲になっていた。IS09000のせいで「同じような」特許ばかり増えると、全く新しい技術や製品の発明は出てこなくなるのだ。
 なぜこういうことが起きるのだろう。それは、IS09000は、会社が「物事を進める最適な方法」からの逸脱を最小限にするからだ。優れたイノべーションは偶然に発見されることが多い。遺伝子の突然変異は、地球に全く新しい種をもたらす。これと同じように、組織のやり方から外れたところから、新たなヒット商品となるような「間違い」が生まれる。ポスト・イットがどうやって生まれたか考えてみよう。


■6.過去のデータベースはデメリットが大きい
 しかし、2人の予想は間違っていた。驚くべきことに、内部データにアクセスすればするほど、入札で負けていた。同じように、社内専門家にアドバイスを求めれば求めるほど、入札で負けていた。この結果は、経験豊富なコンサルタントはど顕著だった。つまりベテランは、内部データや社内専門家に頼らず、自分の知見に頼ったほうが、良い結果を得られたのだ。
 2人は過去のノウハウにアクセスすることの機会費用はとても大きいと結論づけた。デメリットがあまりに大きすぎて、あるはずのメリットを消し去ってしまうのだ。


■7.給与格差は成績に悪影響を与える
 その結果はというと、前者の勝ちだった。つまり、選手間の給与があまり変わらないほうが、チームとしての(メジャーリーグの)成績が良かったのだ。給与格差が大きいほど、個人成績は低くなった。そして、想像できるかもしれないが、給与の低い選手は特に個人成績が振るっていない。しかし面白いのは、チームで給与が高い選手も中ぐらいの選手も、チーム内の給与格差が大きければ大きいほど、個人成績が悪いのだ。


【感想】

◆冒頭で『「ヤバい」シリーズ』と申し上げましたが、本書は「経済学」「社会学」のような、「一歩間違えたら警察のお世話になる」的な「ヤバさ」はありません。

というか、今思いだしても、上記2冊は「相撲の八百長の有無」だとか「ヤクの売人と暮らす」といった、逮捕どころか本当に死に至ってもおかしくないテーマを扱っていたのですから、むしろあちらの方がビジネス書として異常なんですがw

一方本書は、経営者にとって「ヤバい」真実の集大成。

訳者の本木さん、山形さんがそう思ったように、本国イギリスでも「『ヤバい経済学』を彷彿とさせる」というようなレビューが掲載されたのだそう。

要は、「サラッと読めるのに、キチンとした論文の裏付けがある」ということ。

本書でも、「MBAで出てくる100以上の重要な論文のエッセンスが詰め込まれている」とのことです(巻末の参考文献をご参照の事)。


◆さて、本書の著者であるフリーク・ヴァーミューレン氏ですが、イギリスの方ということもあってか、日本ではほとんど無名かと(私も全く存じませんでした)。

経歴的なものは、アマゾンの「著者について」をご覧頂くとして、本書の「訳者あとがき」によると、「ヨーロッパのあちこちの企業から引っ張りだこ」で、「講演や企業研修、コンサルティングなどの予定がぎっしり詰まっている」のだとか。

しかも氏の授業を受講した多くの学生が「メロメロになっている」とのこと。

ご本人の動画がYouTubeにあったのでそちらを。



なんでもロンドン・ビジネススクールではベストティーチャーに選ばれたり、最優秀授業賞も獲得しているそうです。

原書もUKアマゾンではなかなかの高評価ですね。

Business Exposed: The Naked Truth About What Really Goes on in the World of Business Financial Times Series: Amazon.co.uk: Freek Vermeulen: Books


◆実際、つい3日ほど前に本の画像をアップしたばかりなので自重したものの、本書はそれを上回る量の付箋を貼りまくり

上記ポイント以外にも、読みどころは満載でした。

それらとは逆に「実は経営上良いこと」を選んでみると、例えば

「ビジネス環境の変化を(脅威でなはなく)チャンスと見る」

「危機的状況の時こそ大胆な手を打つ」

「ストックオプションはダメだが、業績連動給はプラスの影響アリ」


といったところが。

もちろんこれらも、研究結果等のエビデンスが付されていますので、説得力がありました。


◆本書は300ページちょっとのボリュームなので、書店で手に取ると、一瞬躊躇してしまうかもしれません。

もっとも、テーマが多岐に渡り、かつ、それぞれ事例が豊富なせいか、私は一気に読み切ってしまいました。

また、この手の翻訳本にしては、お値段がお手頃なのもありがたいところ(セコスw)。

お堅い経営本が苦手な方でも、楽しめることウケアイだと思います。


「ヤバい」シリーズファンなら、マストでしょう!

ヤバい経営学: 世界のビジネスで行われている不都合な真実
ヤバい経営学: 世界のビジネスで行われている不都合な真実
Introduction モンキーストーリー
Chapter 1 今、経営で起きていること
Chapter 2 成功の罠(とそこからの脱出方法)
Chapter 3 登りつめたい衝動
Chapter 4 英雄と悪党
Chapter 5 仲間意識と影響力
Chapter 6 経営にまつわる神話
Chapter 7 時間の中での歩き方
Chapter 8 目に見えるものと目に見えないもの
Epilogue 裸の王様


【関連書籍】

◆ここで過去の「ヤバい」シリーズ関連本をご紹介しておきます。

ヤバい経済学 ─悪ガキ教授が世の裏側を探検する
ヤバい経済学 ─悪ガキ教授が世の裏側を探検する

◆この本の登場は、今思いだしても鮮烈でした!

下記改訂版が出たことにより、絶版になった模様。

参考記事:「ヤバい経済学 」スティーヴン・レヴィット&スティーヴン・ダブナー (著)(2006年05月07日)


ヤバい経済学 [増補改訂版]
ヤバい経済学 [増補改訂版]

◆前版を受けて「犯罪と中絶合法化論争のその後や、犬のウンコ、臓器売買、脱税など、もっとヤバい話題を110ページ追加した」改訂版。

110ページも増やされたら、買わないわけにはいかないでしょう……。

参考記事:ヤバい経済学 [増補改訂版](2007年05月16日)


超ヤバい経済学
超ヤバい経済学

◆「ヤバ経」コンビの現時点における最新作。

相変わらず、日本の学者では有り得ないテーマ選択ぶりでありますw

参考記事:【ヤバ経再び】『超ヤバい経済学』スティーヴン・D・レヴィット,スティーヴン・J・ダブナー(2010年09月27日)


ヤバい社会学
ヤバい社会学

◆『ヤバ経』にも登場する社会学者、スディール・ヴェンカテッシュの「ギャング団潜入記」。

すいませんが、レビューは当ブログではなく、当時連載していた雑誌『宝島』の方に掲載されております。

参考記事:【お知らせ】雑誌「宝島」にまたもや寄稿させて頂きました!(2009年03月25日)


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【編集後記】

◆すいません、今さら気が付いたんですが、『ヤバい経済学』がDVD化されてました。

ヤバい経済学 [DVD]
ヤバい経済学 [DVD]

本は速読できるのですが、映画は早送りできないのがツライところです……。


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