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2013年02月28日

【オススメ】『評価と贈与の経済学』内田 樹,岡田斗司夫 FREEex


評価と贈与の経済学 (徳間ポケット)
評価と贈与の経済学 (徳間ポケット)

【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、昨日の「未読本・気になる本」の記事でも取り上げた、岡田斗司夫さんと内田樹さんの対談本。

「まえがき」で、岡田斗司夫さんが本書の「よみどころ」等々を解説してくれているのですが、お二人は「未来はこうなる」というお話で意見が一致するものの、それ以外の多くの部分で激論(?)を繰り広げてらっしゃいます。

アマゾンの内容紹介から。
本書で示されるのは、新しい「交易」と「共同体」のありかた。貨幣も、情報も、評価も、動いているところに集まってくる。ならば、私たちはどのような動きをする集団を形成すればいいのか。そのために個々ができる第一歩とは。キーワードは「情けは人のためならず」。若者と年長者の生態を読み解き、ポストグローバル社会での経済活動の本義にせまる変幻自在の対談。

何やかんやで、結局こんなに付箋を貼ってしまいました……。




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【ポイント】

■1.自分の気持ち至上主義
岡田 例えば魔法とかUFOとかを信じる気持ちってあるじゃないですか。あれは論理的に考えて信じる信じないじゃなくて、信じたいと思うから信じるわけなんですよ。(中略)
 だからもし自分がなにかを否定するとしたら、自分が持つその否定的な気持ちを補強する情報ばかりを集めるっていうのが楽しく、やりがいのあることになってくる。自分が肯定しようと思ったら、肯定ばっかり。某テレビ局が韓流ドラマばかりを流すことに自分が憤りを感じたら、憤りを感じてるっていう気持ちをできるだけちゃんと尊重したいんですよ。なので韓流ドラマに対して批判的な意見ばかり集める。そのうえで自分と相容れない人はみんなで炎上させたり叩いたりすることで、自分の気持ちっていうのを長持ちさせる。


■2.若い男子が草食化するワケ
岡田 いま、若い男子が一番嫌なことっていうのは、誰かにいいように利用されるっていうことなんですよ。利用されたり、いいようにされたり。だから草食系になっちゃうのはなぜかというと、欲望というものを持ってしまったり、それが他人にばれたら、巧みに利用されてしまうと思っているから。欲望を逆手にとって操られるのが怖いから、欲望に背を向けようとしているんですね。欲望というのを意識したくないし、できれば持ちたくない。そうすると女の子のほうはイライラしてくる。欲望あるでしょ、と。


■3.「努力はいつか報われる」と信じる
内田 「努力した分についてすぐ報酬よこせ」「苦労していい大学入ったのに就職がないのは理不尽だ」って言っている人は結局「努力した人はどこかで最後に報われる」っていうことをほんとうは信じていない。
 ほんとうに信じていたら、努力してなかなか報酬がやって来なくても、「そのうち、いいことあるよ」って思っていられるはずでしょ。ちょっとやって、「あ、来ない」って怒り出すやつは努力と報酬の原理的な相関をほんとうは信じていないんだよ。すぐに「報酬がないぞ」「見返りが来ないぞ」って言ってるやつはダメだよ。努力してるのにすぐに適切な報酬がないのは社会システムが間違っているからだって言う人がいるけど、社会システムなんて、もともとそんなものなんだって。


■4.人前でケータイをいじるのは「礼儀」
岡田 ぼくらの古典的な考えでは、第一世界のほんとうに大事なときはケータイいじらないって思いますけど、ほんとうに大事なときでも彼ら彼女らはいじるんですよ。それは「自分のなかで複数世界がレイヤー構造になっているという真実」を目の前で見せるという行為を通じて、「各レイヤーのマネジメントをするリアルな姿まで見せてるのは、あなたが大切な人だからだよ」というメタ・メッセージを送っていることになると考えているからだと思います。

内田 なるほど。さすが、岡田斗司夫は鋭い! いまの例はほんとすごい。よくわかった。マネジメントね。複数世界の自分をマネジメントしてる姿を見せるのが、「素の自分」を見せているっていう。そうか、それがある意味で親しみや信頼の表現なんだ。大切な人の前では誠実でありたいからこそ、第二世界でのふるまいをあえてご覧に入れる、と。


■5.惜しみない親切を
内田 若い人って、確かにいまはすごくきびしい環境に置かれているから、「贈与しなさい」なんて言われても「ふざけんなよ」というリアクションをする人が多いと思うんです。「ひとのことなんかかまってられないよ。自分の尻に火がついているんだから」って。でも、「自分には余剰がないから誰にも贈与することができない。そのうちお金持ちになったり出世したりして、余裕ができたら、贈与について考えてもよい」というふうに考えている人には贈与のサイクルに参入するチャンスは永遠にめぐってこない。


■6.最後は人柄
岡田 社会人というのはスキル、ネットワーク、そして人柄の三要素からできていると思うんですね。彼はそれを順番に育てていった。まずはシンセサイザーのスキルやキャリアを積んだ。次に信頼できる先輩の仕事をこなすことでネットワークを広げていった。べースにスキルがあったからコミュニティを築くことができたんです。そして最後に彼はみんなに信頼される、好かれる人柄というものを手に入れた。
 贈与経済というものがもし復活するのだとしたら、最後に人柄が出てくるから、やっぱりいいやつという認知が欠かせない。人となりを知ってもらわないと贈与経済は作動しませんよね。スキルもネットワークも大切なんだけど、贈与経済を見据えるなら最終的に「いいやつなんだ」と思ってもらうことが大切だと思います。


■7.決断が必要な時点で既に負けている
内田 「真の勝者」は誰か? よく聞かれるんです。「危機的状況を乗り越えるために正しい選択をするにはどういう能力がいるんでしょう?」とか。でも実は、そんな問いをしている時点でもう手遅れなんですよ。AかBのどちらかを選んだら生き残る、どちらかを選んだら死ぬ、というような切羽詰まった「究極の選択」状況に立ち至った人は、そこにたどり着く前にさまざまな分岐点でことごとく間違った選択をし続けてきた人なんだから。(後略)

岡田 ぼくも講演会で「どうやれば決断力が身につきますか」って聞かれたときに、決断を迫られてるのはもう負け戦だから」って答えています(笑)。


【感想】

◆上記の引用はできるだけお二人の分量が近くなるように調整していますが、ぶっちゃけ、付箋の数は、岡田さんの方が結構多い結果になりました。

本書の成り立ちも、岡田さん曰く「内田樹ファンの岡田斗司夫が、内田さんに直にお話を聞く機会を得て大はしゃぎでいろんなことを聞く」とあり、岡田さんサイドからの働きかけのような感じ。

話しのフリも岡田さんからが多く、岡田さんがご自身の考えに内田さんを誘導しようとしているような部分もチラホラ。

典型的なのが、「第一世界(リアル)と第二世界(ネット等)」のお話で、内田さんは「最終的に第二世界は第一世界のおまけ」というスタンスであるのに対し、岡田さんは「両者は等価、あるいは人によっては第二世界が主」というスタンス。

岡田さんが内田さんを説得しようと、あれこれ事例を挙げるものの内田さんもなかなか納得せず、最終的に落ち着いたのが、上記ポイントの4番目の事例だったという。


◆また「まえがき」で明らかにされているのですが、二人の対談は2011年の9月と1年半弱も前とのことでした。

何でそんなに間があいたかというと、文字起こしされた対談原稿を、内田さんが1年半かけて手直ししたから。

逆に岡田さんは、半日で原稿を返し、合計で20行ほどしか修正しなかったとのことです。

「内田さんが丁寧に手直ししたから、岡田さんが簡単にできた」とも考えたのですが、どうも本文を読む限り、岡田さんが二人の「相違点」については丁寧に「内田さんを説得」し、「一致点」については「詳細を確認」している気がw

さすがホリエモンが「(切れ者なので)会うと緊張する数少ない人」と評するだけの事はあります。

恐るべし、岡田斗司夫!


◆一方、お二人の「一致点」の主たるものが、下記目次の第5章の「贈与経済、評価経済」で、上記ポイントの5番目、6番目がそこからの引用になります。

岡田さんが「まえがき」で言うには「内田さんの『贈与経済』と僕の『評価経済』は、まるで同じ風景を反対の位置から見ているように似ているから不思議」とのこと。

丁度本書のタイトルもそこから持ってきていますし、元々そのつもりで対談が企画されたのかもしれません。

……ひょっとして「一番盛り上がったのがそこだから、タイトルにしちゃえ」というオチである可能性もありますがw


◆対談内で、内田さんも「岡田さんの若者分析は鋭い」的な発言をされていますが、それは私も強く感じました。

というか、今回付箋を貼った部分の多くが、上記ポイントのいくつかがそうであるように、私の世代からは理解しにくい事象の分析だったりします。

逆に若い世代からしてみたら、「当たり前」な話かもしれないので、その部分をどう評価するかによっても、本書の価値が違ってくるかもしれません。

いずれにせよ、私にとっては「目からウロコ」な考察にいくつも接することができましたし、本書を読んで良かったと思っております。


これまたオススメせざるを得ません!(主に30代以降の方にw)

評価と贈与の経済学 (徳間ポケット)
評価と贈与の経済学 (徳間ポケット)
第1章 イワシ化する社会
第2章 努力と報酬について
第3章 拡張型家族
第4章 身体ベースの人間関係を取り戻す
第5章 贈与経済、評価経済
第6章 日本の豊かな潜在力
第7章 恋愛と結婚


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【編集後記】

◆今日の本のテーマに関連して、読んでおきたい1冊。

利他学 (新潮選書)
利他学 (新潮選書)

勝間和代さんがメルマガで激賞して、一時は在庫切れになっていましたが、今は復活しております。


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この記事へのコメント
               
すごい付箋の量ですね。
色んな学びのある本ですね。

Posted by マグロ船の齊藤正明 at 2013年02月28日 11:49
               
>マグロ船の齊藤正明さん

コメントありがとうございます。
お二人とも思考が深いだけあって、勉強になりました。
オススメです!

Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2013年03月01日 07:44