2013年02月24日
【オススメ】『「プライスレス」な成功法則 クライアントの落とし方、マーケットの動かし方』ケヴィン・アレン
「プライスレス」な成功法則 クライアントの落とし方、マーケットの動かし方
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、久々に「ガチ」なマーケティング本。全世界110ヶ国で展開したマスターカードの「プライスレス」キャンペーンを率いた著者による、「顧客とつながる」手法が明らかにされています。
アマゾンの内容紹介から。
不利だった広告コンペでマスターカードの契約を勝ち取れたのはなぜか。マスターカード側の「隠れたアジェンダ」を察知していたからだ。この場合の「隠れたアジェンダ」とは、無敵のように思えるビザを何とかして負かしてやりたいという本能的な欲求だ。相手の心の中に宿る沈黙の感情的動機を解き明かすことができれば、プレゼンテーションや売り込みは必ず成功する。マスターカードの「プライスレス」キャンペーンを生み出した敏腕広告マンが、勝利の方程式を公開する。
「プライスレス」以外の事例でも「なるほど」と納得させられた濃厚な1冊です!
いつも応援ありがとうございます!
【ポイント】
■1.感情的動機を理解し、絆を結ぶ私は人の感情を透かし見る心理のX線装置を持っている。それは本能的に人びとを読む能力だ。25年間というもの、この天与の感覚が、クライアント候補の感情的動機を理解し、絆を結ぶ手段になってくれた。私のような人間の話を聞くのはおかしいと思うかもしれないが、無数のプレゼンをこなしてきた今、自信を持って断言できる。人びとはあなたのアイデア、会社、製品に説得されて買うのではない。あなたについていかずにはいられないのだ。それはあなたが、彼らの心の中に横たわっているものと、深い絆を結んだからだ。
■2.隠れたアジェンダを解き明かす
イーニッドは市場環境がどれだけ複雑でも、成功する売り込みの根本は、人のウォンツ、ニーズ、バリューがあるということを理解していた。彼女は、見込み客の心を読んだ。「とても単純なことよ、ケヴィン。問題は願望ですよ」。イーニッドは言った。「若い母親は百科事典が欲しいかもしれない。でも彼女の願望は、息子に大統領になってほしいということよ」相手の人となりをひとたび知ると、イーニッドは心を結ぼうとした。子どもに百科事典を求める母親たちとは、百科事典がもたらす力を信じる人びとだった。要するに、こうした女性たちは、イーニッドのように自分の商品に宿る価値を信じている人びとを信用するのだ。
■3.マスターカードの隠れたアジェンダ
質問のきっかけは、先のオリエンテーションで聞いた事実だった。15年間というもの、マスターカードはビザに対し、およそ歯が立たなかったのだ。(中略)隠れたアジェンダ:我われは市場でビザを圧倒する得点を上げ、それによって名を上げなけれぱなけれぱならない……だが形勢は不利だ。彼らの心の奥底に潜む願望を推察したおかげで、実績に基づいた大胆不敵なプレゼンが生まれた。マーケティング分析、市場機会、デザイン、トーン……あの運命のプレゼンの構成はすべて、彼らの隠れたアジェンダに突き動かされていた。マスターカードのCMOラリー・フラナガンは言う。「『プライスレス』の調査結果はほかの案に劣っていた。しかし結局、直感に従った。さらに、当社の顧客ともども我われの心を理解してくれる代理店と一緒にやっていくことにした」
■4.感情に火をつけて従わせる
我われは水際で戦い、上陸地点で戦い、野戦を挑み、市街戦を拒まず、丘陵地でも戦う。我われは決して降伏しない……。この演説の原稿を書いた時、チャーチルは自分の考えを英国民に押しつけたのではなく、国民が胸に抱いていた集団的決意を言葉にしたのだと思う。そんな国民共通の心情を明確な言葉にし、ただ宣言しただけだ。彼は英国民が心に抱いていた感情に火をつけることで、人びとを従わせたのだ。
■5.「概念的ターゲット」を定義する
調査の結果、2つの重要事項が明らかになった。1つ目は、彼らに共通する深い疎外感だった。彼らは、誰も自分のことなんか気にしちゃいないと思っていた。ジョーは「彼らの声や貢献など、もはやどうでもいいと言わんばかりだった」と振り返る。2つ目は、かつて偉大で強大だった彼らの国が弱体化し、ほかの強国、たとえば経済的には日本に、軍事的にはソビエト連邦(当時)に負けつつあると感じていることだった。
ジョーはこの概念的ターゲットを「怒れる白人」と明確に言い表した。これがキャンぺーンを活気づけた。彼らを共有する価値や心配ごとで「コミュニティー」にまとめるという目標が立ったのだ。そしてこれはいずれも、ロナルド・レーガンの強みや、彼のリーダーとしての資質に結びつけられるものだった。
■6.ジョンソン・エンド・ジョンソンでのプレゼン
「自己紹介の前に、本日の我われの使命と考えることのために、まずはこの部屋で私たちが面会した6人の人びとを紹介いたします。最初は、マリア・ゴンザレス、偏頭痛の患者です。彼女の痛みはとてもひどく、月に1度は真っ暗な部屋に閉じこもらなければならないほどです。(後略)」。彼は情熱的に部屋を歩き回りながら、ほかの5人の患者についても紹介し、最後にこう締めくくった。「このプレゼンで大切なことは、そして何よりも貴社との仕事で大切なことは、これは単なる売り出しではなく、人びとを癒すための共同作業であるということです」。私たちは勝った。後にその理由を先方に聞くと、「君たちはわかっていたから」が答えだった。
■7.勝利の戦略の3つのステップ
(1)隠れたアジェンダを明らかにする。顧客の動機の中心にある感情的な欲求である。そしてそれが、欲求なのかニーズなのかバリューなのかを判断する。
(2)自分の本当の野心、信条、コアから1つを選択する。いずれも道具箱の中の道具のように思えばいい。隠れたアジェンダに埋め込まれている感情的ニーズを最も満たすものを選ぷのだ。
(3)隠れたアジェンダを追求し始めた時に与えられる、正式な「課題」と結婚せよ。
(詳細は本書を)
【感想】
◆本書を書店で見かけた際、タイトルの「プライスレス」がそのままマスターカードの事例にかけてあるものだと知り、「これはよくある一発屋の本か?」と思ったワタクシ。しかし中を読むと、確かに「プライスレス」キャンペーンが一番メジャーではあるものの、「一発屋」とは程遠く、汎用性、再現性があるものだと分かりました。
紹介されている事例も、上記のジョンソン・エンド・ジョンソンのほか、マリオット・ホテルズ、エリクソン、ルフトハンザ等々、結構多め。
というか、原書のタイトルは『The Hidden Agenda: A Proven Way to Win Business and Create a Following』であり、「プライスレス」という単語は入っていません。
この原書、本国ではかなり好意的なレビューに溢れている模様。
The Hidden Agenda: A Proven Way to Win Business and Create a Following: Kevin Allen
◆ただ、私たちにとっての身近な事例は、やはり「マスターカード」であり、その意味ではキチンと掘り下げてくれているのは有り難いところ。
何でも、このプレゼンにおける最大の難敵は、競合代理店ではなく、「商品の同質性」だったのだとか。
と言うのも、ビザとマスターカードの顧客層は、あまりにも似通っていたから。
しかし彼らは、マスターカード・ブランドのDNAに響く「感情的共通性」を見つけだします。
それは「愛する人々に最高のものを与えてやりたい」という隠れたアジェンダ。
そこから「お金では買えない価値がある」というコピーが生まれ、110ヶ国、数十ヶ国語での「プライスレス」キャンペーンが展開されるワケです。
◆また、ポイントの1番目にあるように「私は人の感情を透かし見る心理のX線装置を持っている」と言われてしまうと、本書収録のTIPSの汎用性が気になるかもしれませんが、ご安心を。
テクニカルな内容は、上記ポイントの7番目くらいしか抜き出していませんが、他にも私たち自身で実践するためのTIPSが紹介されています。
例えばこんなものが。
・概念的ターゲットの規定の仕方
・ターゲットと接触する際の5つのステップ
・自分(自社)のコアを掘り出す3つの方法
・本質を蒸留・抽出する「六角スパナ」
・物語に必要な7つの要素
事例と併せて読めば、理解も深まるハズ。
◆実は本書の帯には(アマゾンでは帯は見えませんが)「プレゼンの勝敗は、プレゼン以前に決まっていた!」とあるため、いわゆるプレゼン本と思われる方もいるかもしれませんが、むしろ本書は、マーケティングや営業に携わる方に読んで頂きたく。
さらには、上記ポイントの4,5番目のように、政治のシーンでも本書のテクニックは有効なようです。
もっとも、具体的な事例の多くはプレゼンのお話であり、しかもプレゼンでは圧倒的に他を制しているよう(負けた話を書いてないからだと思いますが)なので、プレゼンで思うような結果が出ない方が一番響くのかも。
私自身が全くプレゼンをしない業界で働いているので、あまり説得力はないかもしれませんが、書かれている内容は腑に落ちまくりました。
人や業界を選ぶものの、これまたオススメせざるを得ません!
「プライスレス」な成功法則 クライアントの落とし方、マーケットの動かし方
第1部 誰に? 隠れたアジェンダを発見する
第1章 隠れたアジェンダを定義する
第2章 概念的ターゲット
第3章 隠れたアジェンダを暴く
第2部 何を? 隠れたアジェンダとつながりを持つ
第4章 あなたのコア
第5章 信条
第6章 本当の野心
第3部 どうやって? 隠れたアジェンダに語りかける方法
第7章 勝利の戦略
第8章 法廷弁護士の主張法
第9章 物語の力
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「ある広告人の告白」デイヴィッド・オグルヴィ(著)(2006年07月12日)
【編集後記】
◆ウチでは日頃扱ってませんが、ちょっと気になる本。5700人の社長と会ったカリスマファンドマネジャーが明かす 儲かる会社、つぶれる会社の法則
「美人受付嬢の法則」や「スリッパの法則」というのは、ホントなのかもw
ご声援ありがとうございました!
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