2013年02月18日
【コミュニケーション】『橋下式 絶対負けないケンカ術』向谷匡史

橋下式 絶対負けないケンカ術 (祥伝社黄金文庫)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、お馴染み・橋下 徹さんの「ケンカ」戦術について言及した1冊。橋下さんの政治家としての思想は置いといて、「こういうやり方もあるんだな」という意味で読んでおくのはアリだと思われ。
アマゾンの内容紹介から。
ケンカは「技術」だ! 本書は「ナニワのケンカ師」――橋下徹氏の実戦ケンカ術を、『兵法三十六計』の視点からノウハウとして解説したものだ。『兵法三十六計』は十七世紀に中国でまとめられたもので、第一計から第三十六計までの策略が記されている。兵法書としては『孫子』が有名だが、『兵法三十六計』には時代を超えた故事・教訓が収められており、中国ではビジネスや日常生活においても幅広く活かされている。橋下氏のケンカ術は、まさに「兵法三十六計」の現代版である。
本書の帯には『「兵法三十六計」に適った橋下徹市長の闘い方をビジネスに活かせ!』とあるんですが、果たして!?

【ポイント】
■1."本気度"というブラフで相手を屈服させる大阪府知事当時、「大阪維新の会」のタウンミーティングでのこと。大阪市長選に出るつもりかと会場から質問され、出馬の意向を示して、橋下氏はこうまくしたてた。
「大阪市職員は政治活動をしている。政治活動に公務員が首をつっ込んでくるのはおかしい。負けたときは一族郎党どうなるか。われわれが勝ったときには覚悟しとけよ」
当時、現職の平松邦夫市長を応援する市職員を恫喝したのである。いくら脅しとはいえ、「一族郎党どうなるか」というセリフは、フツーの人間でも使うまい。まして府知事の言葉とは思えないだけに、職員は意表を突かれ、"本気度"を感じ取ったにちがいない。「政治活動はヤバイぞ」――と思った者は少なくなかったろう。少なくとも政治活動への意欲が削がれたことは確かだ。
■2.正義感で涙を流す
また、2011年10月に滋賀県大津市で中学2年の男子生徒が自殺していた問題では、翌年7月、記者団から感想を求められ、涙ぐみながら、
「ああいう問題は難しいところもあるが、もうちょっと早く気づいてあげられなかったのかと思う」
と、声を詰まらせ、途切れ途切れに語っている。(中略)
海江田(万里)氏の涙は「自分のこと」に対するものだが、橋下氏のそれは正義感から出てくるものだ。「大阪を立ち直らせたい」という正義感の涙であり、教育現場に対する批判の涙であり、自殺に対する無念の涙であることを世論が認めているから、激励になり、人気に作用していくのである。
■3.譬喩(ひゆ)力で相手をこき下す
たとえば大阪府知事だった2009年2月21日、大阪周辺の知事たちが出席したフォーラムで、持論の"霞ヶ関解体"についてこう言ってのけた。
「悪代官がひどいと一揆が起きるということは、霞ヶ関の役人も歴史に学んでいるはず」
悪代官――という譬喩によって、霞ヶ関の官僚たちが悪いという印象を強烈に与えたのだ。しかもメディアがこのフレーズに飛びつくことを計算してのことで、『橋下語録(産経新聞大阪社会部著)』として拡大再生されていく。
■4.長老をヨイショする
「みなさんが誰をリーダーにするのがいいのか、僕は一国民として石原総理を見てみたい」
とは橋下氏の街頭演説。容赦のない批判をする橋下氏の言葉であるから、歯が浮くようなヨイショで、石原氏の歯は文字どおり浮いたことだろう。
「橋下さんとは非常に強い共感で結ばれてきた」「この人は義経だよ。私は彼に惚れた武蔵坊弁慶」――そう言って、石原氏は始終ご機嫌になるのだ。
■5.敵を引きこんで活かす
押して引く――は彼の得意とするケンカ術だが、次のような高等戦術を取ることもある。2008年2月3日、テレビ番組『たかじんのそこまで言って委員会』(読売テレビ系列)でのこと。何かにつけて橋下氏を批判したり、イヤミを言う田嶋陽子氏(フェミニスト運動家、元参議院議員)と、村田晃嗣氏(同志社大学教授)に対して、こう言った。
「ぜひこの委員会のみなさんに、僕に対するアドバイザーというか、諮問委員会みたいになっていただきたい」
お二人は苦笑するしかなかったろうが、"敵"とは、対時するのではなく、引き込んで活かすというケンカ術の王道を、橋下氏がいかに熟知しているかというエピソードであろう。
■6.過ちには潔く白旗を上げる
橋下氏は当初、週刊朝日が、橋下氏の出自に関する記事を掲載した当該号を母親に送りつけてきたことに対して、
「朝日新聞出版と週刊朝日は鬼畜集団だ」
と怒りをあらわにしたが、橋下氏はこれが勘違いだったことに気づくと、ツイッターですぐさま謝った。(中略)
週刊朝日は、このケンカは全面降伏であるし、橋下氏の事実誤認は枝葉末節のことで、問題の本質とは無関係。わざわざ謝罪しなくても、週刊朝日には咎める余裕はなかったはずだ。それなのに橋下氏は、きちんと謝ってみせた。
■7.スキャンダルを逃げずに認める
昔の話とはいえ、現職大阪市長。しかも「日本のリーダーにふさわしい政治家」で第1位という人気絶頂のとき(産経新聞FNN合同世論調査/2012年1月)、"総理にしたい男ナンバー1"が、ラブホで愛人ホステスとコスプレH――となればメガトン級のスキャンダルである。まさに正念場。対処の仕方を誤ると、橋下氏はもとより「大阪維新の会」は大炎上となる。
橋下氏はどう対処したか。逃げないで素直に認めた。(中略)
かつて橋下批判の報道をした週刊文春のことを「バカ文春」と罵ったが、そのことを踏まえ、橋下流の言い方で今回の記事を認めたうえで、
「公人になる前でも、僕自身の人間性を判断する要素として報じられてしまうのは仕方がない」
とも付け加えた。
【感想】
◆橋下さんと言うと、やたらと怒っている印象があったものの、本書を読むと"硬軟とりまぜて"発言していることが分かります。もちろん"硬"の方が圧倒的に多いんですが、逆に、日頃"硬"が多い分、時折"軟"を混ぜられると効果絶大と言うかw
今回取り上げなかった"硬"としては、上記ポイントの6番目で軽く触れられている週刊朝日の件があります。
詳細については、皆さんご存知だと思いますので割愛しますが、橋下さん、こんなツイートを……。
よくもこんなことを公にできたものだ。こういう話は、フィクションとして想像の世界でやれ。佐野は一度俺の前に出て来い。お前のその妄想、思い込みが何に基づいているか確認してやる。朝日新聞社グループよ、過ちには二つある。謝って何とか済む話と、謝っても済まない話だ。
— 橋下徹さん (@t_ishin) 2012年10月19日
とはいえ、上記で触れているように、週刊朝日の当該号は妹さんが買ってきたのだと判明すると、「鬼畜集団」と呼び捨てたことについては謝罪。
この辺りは、一見感情的に見える中にも、「弁護士」としての論理性のようなものを感じます。
◆同様に上記ポイントの7番目のスキャンダルの件については、ほぼ全面謝罪。
さらに本書で言及されているのは、橋下さんが会見で「妻」と「家庭」を持ち出したことです。
「妻は記事を見ています。正直大変な状況です。もう本当に」と、神妙に語るのはいいんですけど、コスプレに関して「娘に制服を着ろと言えなくなった」なんて、誰が上手いこと言えとww
これが逆に「昔の事だ」と居直ったり、何もコメントしないでいたら、違った結果になっていたと思われ。
取材相手のみならず、「メディアの向こう側にいる大衆の感情」までも意識しているからこその発言ではないか、と。
◆もう1つ割愛したネタで興味深かったのが、「ウソをつくときには、思い切りつく」というTIPS。
そもそも大阪府知事出馬が取り沙汰された2007年頃には、橋下さんは出馬について「2万パーセントない」と断言していました。
……「2万パーセント」って、まるでウチの子どもが「一億万円」とか言ってるのと変わらない気がw
結局この否定発言は「ウソ」だったわけですが、これも「絶対ない」「100パーセント出ない」と言っていたら、また違った反応になっていたのかも。
そこまで考えてこういう発言をしているのだとしたら、やはり只者ではない(当たり前)と思います。
◆正直、政治家、特に橋下さんのような敵も味方も多い方を掘り下げた本をご紹介するのは、若干抵抗があるのですが、冒頭でも申しあげたように「1つの考え方」として読んで頂ければ。
また、内容紹介にもあるように、本書では橋下さんの戦術を「兵法三十六計」と絡めて解説されてはいるものの、無理に関連づけなくても良かったと思います(←ちゃぶ台返しw)。
やはり橋下さんは弁護士なだけあって、「相手をやり込めるスキル」と同時に、裁判官という「外野(第三者)を味方につけるスキル」に長けているのではないか、と。
今後の橋下さんの発言や動向は、表面的な部分のみならず、その「真意」まで考えてみたいところです。
「ケンカ」しながらも人心掌握を目指すなら!

橋下式 絶対負けないケンカ術 (祥伝社黄金文庫)
第1章 主導権を握っているときのケンカ術
第2章 接近戦をモノにするケンカ術
第3章 効率よく「勝ち」を得るケンカ術
第4章 混乱に乗じて「実」を取るケンカ術
第5章 同盟軍の中でイニシアチブを握るケンカ術
第6章 劣勢をどんでん返すケンカ術
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【編集後記】
◆こちらは橋下さんご自身が、自らの戦術について語った1冊。
最後に思わずYESと言わせる最強の交渉術―かけひきで絶対負けない実戦テクニック72
以前こちらの記事で知って、読みたいと思ったのですが、絶版&プレミアが付いて、手が出せませんでした。
橋下知事のこと - medtoolzの本館

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