2013年02月15日
【オススメ】『平凡な仕事をすごいプロジェクトに変える教科書』安東邦彦
平凡な仕事をすごいプロジェクトに変える教科書
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、必ずしも起業に限らず「プロジェクトを立ち上げる」ことにより、自分の仕事を一新してしまおう、という1冊。著者の安東さんは、あの『はじめの一歩を踏み出そう』のマイケル・E・ガーバー氏に直接教えを受けたというマーケティング・コンサルタントであり、現在までに支援した企業は500社を超えるのだそう。
アマゾンの内容紹介から。
どうでもいいことで時間を棒にふるな! あなたの中の3つの人格「職人」「起業家」「マネージャー」が目を覚ます!
内容が濃く、思わず付箋を貼りまくってしまいました!
いつも応援ありがとうございます!
【ポイント】
■1.いまのやり方を続けても成果は出ないある会社の社長は、売上げを増やすために「いままで以上に営業に力を入れたい」と考えます。あるリーダーは目標を達成するために「いままで以上に部下にハッパをかけなければ」と考えます。
ようするに、悩める人たちの答えは、いつも「もっとがんばります」なのです。
それではダメです。
なぜなら、「いままでのやり方」で効果が出なくなったじり貧の状態で、同じやり方を「いままで以上」にやっても、効果は見込めないからです。
■2.自己実現こそ「ひとりよがりの願望」
世のなかには「地域一番の店になる!」というビジョンを掲げる会社がたくさんありますが、これを裏読みすると、「地域で一番もうける店になる」という願望です。
自分がこの店の株主であったり、身内がこの店に勤めていたりする場合を除けば、地域で一番もうけたいと考えるこの店に協力する理由がまったく見えてきません。そのため、社内、社外のパートナー、顧客から応援してもらえず、プロジェクトとして継統していくことができなくなり、プロジェクト・リーダーの充実感、達成感、本当の満足感にもつながらないのです。
みなさん「そりゃそうだよね」と笑っているのではないでしょうか。
しかし、いざ自分で夢を書き出してみると、「業界の有名人になる」「地域ナンバーワンになる」「世間をあっといわせる商品を開発する」「新たな自分の可能性を発見する」といった自分のための夢が並んでいるものです。
■3.ビジョンだけでは未来は変わらない
「夢があれば、未来が変わる」「ビジョンさえあればプロジェクトが立ち上がり、何かが勝手に動き出し、未来が変わる」
そう信じている人は思いのほかたくさんいます。
しかし、それは誤解です。夢やビジョンが未来を変える出発点になることは事実ですが、夢やビジョンを実現する計画や行動が伴わなければ、メンバーや家族を食わせられないのが現実です。
この思考にはまらないためには、夢やビジョンを持つだけでなく、現実のものにするための方法をさまざまなアプローチから検討していかなければならないのです。
■4.「顧客満足」を追求しない
誤解を恐れずにいえば「顧客満足」を迫求してはいけません。
顧客のためになる商品やサービスは、顧客の満足を高めるためにつくるのではなく、顧客が潜在的に抱えている不満や問題を解消するためにつくることが重要なのです。
なぜ満足を追求してはいけないのでしょうか。
理由は単純で、満足感に限界がないからです。(中略)
顧客は、事業者の採算性のことなど考えることなく満足させてほしいと考えます。顧客満足を追求するということは、永遠にエスカレートしつづける欲求にとことんつき合うということです。その先にあるのは、顧客によるプロジェクトの奴隷化です。
■5.プロトタイプは縦ではなく横に展開させる
プロトタイプが作れたら、つぎに規模を拡大していく段階に入ります。
ただし、ここで多くの人がミスをします。せっかく最小化したプロトタイプを、単純に大きくしようとしてしまうのです。これを「縦展開」といいます。
「売上げを増やそう」と考えてしまうのも、その一例です。(中略)
縦展開が悪いということではありません。しかし、それよりも先に「横展開」です。プロトタイプを複製し、アレンジして、別のエリア、別のターゲット層に向けて展開したほうが、プロジェクトは安定しやすく、成長しやすくなるのです。
■6.成長している会社は「社員が主役」
私は「社長の責任」という言葉を盾にしていましたが、そのじつ、自分の基準しか信じず、自分が主役の会社を作っていたのです。
それからというもの、私は成長している会社を徹底的に分析しました。
そして、成長している会社のほとんどは、「社長が主役」ではなく「社員が主役」の会社であることに気づいたのです。つまり、「会社が成長すると社員が幸せになる」のではなく、「社員が幸せになるほど会社が成長する」のです。私が必死に考えて努力していたことは、さかさまだったのです。
■7.結果が出せるシステムを作る
優秀な人材が成果をあげるプロジェクトに価値があるのではありません。平凡な人材が成果をあげるプロジェクトに価値があるのです。しかし、平凡な人材が成果をあげるため本当に必要な能力と、実際の能力との間にあるギャップを埋めなければなりません。その役割を果たすのがシステムなのです。
プロジェクト・リーダーは、平凡な人材がいつも結果を出せるようなシステムを作ろうとしなくてはならないのです。これこそが、プロジェクト・リーダーが心血を注ぐべきことなのです。
【感想】
◆冒頭の内容紹介に『「職人」「起業家」「マネージャー」』という3つの人格が登場しますが、これは、マイケル・E・ガーバー氏の『はじめの一歩を踏み出そう』に登場するそれと同じもの。はじめの一歩を踏み出そう―成功する人たちの起業術
参考記事:【スゴ本!】「はじめの一歩を踏み出そう」マイケル・E・ガーバー(2008年09月10日)
「起業家」はその名の通り、未来の姿を想像し、前向きなビジョンを持っている人格。
「マネージャー」は管理能力が高く、目の前の仕事をいかに効率的に実行するかを考えている人格。
「職人」は細部にこだわり、決められた手順に従って仕事をしているときに幸せを感じる人格。
そして、今現在多くのリーダーが業績やノルマに追われて、「職人」の人格だけで仕事をしてしまっている、とのこと。
……いや、まぁ私もその1人なんですが。
◆本書では、その「職人」の人格だけで働いている状況を変えるべく、「マネージャー」と「起業家」を起こすことを提言。
中でも重要なのが「起業家」であり、「起業家」は目の前の「作業」をこなすだけではなく、新しいアイデアを実現させようとします。
とはいえ、「起業家」は具体的な方法論に欠けるので、それを補うのが「マネージャー」。
その辺については、上記ポイントの3番目等でも指摘されている通りですね。
要は、これら3つの人格のバランスを、自分の中で取る必要がある、ということ。
『はじめの一歩を踏み出そう』でも言われていたことですが、本書でも改めて強調されていました。
◆また、個人的に「なるほど」と思ったのが、上記ポイントの4番目の『「顧客満足」を追求しない』というお話。
顧客やクライアントの要望を残らずかなえようとすると、採算が取れなくなることがよくあります。
そこで多くのプロジェクト・リーダーがどうするかというと、「顧客満足」と「採算性」を天秤にかけ、「そこそこの顧客満足で、そこそこの採算性がある」プロジェクトを作ってしまう、とのこと。
しかしこれではだめで、「顧客不満足の解消」を目指さなくてはいけません。
◆本書でその具体例として挙げられている中の1つが、「スタジオアリス」。
ここは、「親が着せたい(子供が着たい)服がない」「衣装を買わなければならない」という「不満足」を解消しています。
こういった「潜在的な不満足」に気がつくかどうかが、プロジェクトのキモ。
そして、その「不満足」を織り込んで、ビジョンを描くワケであり、そのための「5つの質問」が本書には収録されていますので、是非ご確認を(ネタバレ自重)。
◆安東さんのクライアントには、脱サラして起業するような人だけではなく、売上不振に陥った企業や、事業再編を目指す企業等もあるところからも分かる通り、本書は単純な「起業本」ではありません。
たとえ自分が企業の中で働く「ビジネスパーソン」であったとしても、プロジェクトを立ち上げ、ビジョンを描くことは可能かと。
本書は『はじめの一歩を踏み出そう』に比べるとページ数は少ないですが、あちらは物語形式だっただけに、本書の方が「ネタは詰まっている」とも言えます。
まさに、現状のビジネスに行き詰ってらっしゃる方なら、「マスト」な内容。
これはオススメせざるを得ません!
平凡な仕事をすごいプロジェクトに変える教科書
第1章 プロジェクト・マインドに目覚めよう
第2章 成功するプロジェクトはここがちがう!
第3章 誰にでもできるプロジェクトの作り方
第4章 プロジェクトはシステムだ
第5章 自分がいなくても機能するプロジェクトを作ろう
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【編集後記】
◆その安東さんの前作がこちら。営業のミカタ
アマゾンでも評判良さそうですし、今回の本もクオリティが高かったので、ぜひ読んでみようと思います。
営業本はウチでは鬼門なんで、ご紹介できるかは微妙ですが。
ご声援ありがとうございました!
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