2013年02月12日
【実践的!?】『瞬時に人の心をつかむ── 人生を変えるプレゼン術』井上岳久

瞬時に人の心をつかむ── 人生を変えるプレゼン術 (朝日新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、元・横濱カレーミュージアム館長としても知られる井上岳久さんのプレゼン本。井上さんといえば「PR本」が有名ですが、実は1つの新商品のカレーが出来上がるまでに、大小100回以上はプレゼンをしているそうで、ほぼ365日プレゼンし通しなのだそうです。
アマゾンの内容紹介から。
プレゼンは最初の「つかみ」が特に重要だが、実は行う前にほぼ勝負は決まっている。
ターゲットの好みや趣向の事前調査を怠ってはならないし、電車やトイレでのイメージトレーニングも欠かせない。
PRの達人が教える最強のプレゼン術!
なるほど、収録されたTIPSもなかなか実践的でした!

【ポイント】
■1.「あがる」を解消する4つの秘策(1)和やかな会話
(2)リズムを取る
(3)発声練習
(4)割り切り
(詳細は本書を)
■2.企画書は問いかけ式にすべし
企画書には、まず表紙に興味を引くタイトルがあることが重要です。
そしてここがポイントですが、企画書をただの説明でなく、問いかけ式にしていくのです。見出しで問いを投げかけて、本文で答えを出していきます。
例えば「月間の売上を1.5倍にする秘訣とは?」「それは……です」というようにすると、単に「月間の売上を1.5倍にするには弊社の○○が有効です」という文章よりも、ずっと興味深く読み進めてもらうことができます。
これはプレゼンでも同じことで、途中で問いかけを挟んで、相手に考えてもらうのは、関心を持続させる鉄則です。
■3.プレゼン相手のキーマンの属性を分析する
例えばその人が今、会社でどんな立場にあるかによって、思考も自ずと左右されてくるでしょう。経営が鈍化していて、経費の引き締めを強いられている部署の長ならば、派手さは無くとも、少しでも安上がりで、お金が浮かせられたと感じる企画が心を動かすでしょう。一方、企業の成長を担っている部署の長で、前向きな成長戦略を取っている人が相手ならば少しお金をかけてもグレードの高い企画が向いているといった具合です。
■4.第一声で「おやっ」と思わせる
プレゼンにおいては、初めの一言が担う役割は極めて重要です。
聞く側が「え? 何それ?」と思わず前のめりになるようなキーワードやキャッチコピーを簡潔に盛り込み、「これは何か面白いことが聞けそうだ」という期待感を煽るのです。
「御社では10年前に、かの○○が空前の大ヒット商品となりましたが、以降はなかなかそれに続く商品に出会えていないのが実情ではないでしょうか? 本日はその○○を超える、御社の歴史に新たな1ぺージを刻む画期的な商品をご提案いたします!」
取引先との関係性にもよりますが、こんな風に少しくらい挑発的な言葉を使ってもいいでしょう。とにかく相手の目を自分に向かせるのが第一声の役割です。
■5.タイトルにはクライアントの求めるキーワードを入れ込む
重要なのは、タイトルの中に必ず「クライアントの求めるキーワード」を入れ込むことです。
例えばこれは講演の例ですが、「企業と社員のへその緒がつながった関係」という言葉をクライアントの社長が非常にお気に入りだったとします。そういう場合は、内心ちょっと微妙だなと思っていても、タイトルには「へその緒がつながった関係」という言葉を入れるのが鉄則です。ここを勝手に「リレーションシップ」などと変えれば、タイトルコールの時点で「ワシの考えと違う!」と社長の機嫌を損ねて、もう相手にしてもらえない可能性もあります。
■6.ボディアクションはフィンガーサインとアコーディオンハンドから
恥ずかしがり屋の人にお勧めなのは、フィンガーサインとアコーディオンハンドです。
フィンガーサインは要点の数が決まっている場合、「まず1つ目は」と言いながら指で数を表すアクションです。相手に伝わりやすく、印象に残ります。
アコーディオンハンドは、商品の大きさや速度などを、両手を広げて伝えるボディアクションです。この2つをマスターしたら、プレゼン中にホワイトボードへ要点を書く演出をしたり、広い舞台なら歩いて移動したり、サプライズを用意するなど、どんどん大げさなアクションを取り入れていってください。
■7.自分からうなずいて同意を得る
期待通りの反応が起こらない場合に、聞き手からうなずきや相づちを引き出す簡単な技は、「話しながら自分でうなずくこと」です。聞き手側についての情報や立場、経営理念などをプレゼンの最初や最後に組み込んでおいて、相手にとって同意してほしい場面でうなずくのです。
例えば、「御社A代表の経営理念は○○と伺っております。今回ご紹介させていただいておりますプロジェクトはこの理念に沿ったもので……」などと話しながらうなずくと、「私はあなたたちの会社理念を肯定しています。あなたたちの味方です」という印象を与えることができます。
【感想】
◆冒頭で「実践的」と申し上げましたが、表現を変えるなら「泥臭い」とでもなるかと。本書は「優れたプレゼン」よりも「相手から選ばれるプレゼン」を目指している感じ。
それも「問いかけ式にする」「"おやっ"と思わせる」というくらいなら、単なる反応の問題ですが、「キーマンの属性を分析する」となってくると、もう一般的に考える「プレゼンの技術」とは少々違ってきます。
実際、下記目次にもあるように、本書の第3章は「舞台に立つ前に勝負は決まる【準備編】」であり、まさに「本番以前の心がけ」が満載。
今回は割愛しましたが、プレゼンの相手のみならず、ライバルの動向まで探る「スパイ活動をすべし」というTIPSまでありました。
◆逆に第2章の「私をプレゼンのプロにした「虎の穴」」では、井上さんが「プレゼンのプロ」になった経緯が明かされています。
何でも井上さんは、かつて中小企業診断士の資格を取得しようと某人材開発会社が開講している講座を受講し、試験に合格。
講師にお礼を言いに行くと、そこで「講師養成プログラム」への参加を打診されたのだそう。
合格率3〜4%の試験に合格した中小企業診断士の中でも、特に優秀なメンバーをブラッシュアップするだけあって、このプログラムは過酷で、模擬プレゼンや模擬講座で、参加者同士がお互い手厳しく批評。
講師からも罵声が投げかけられたりする等、極めてハードで、井上さんも気分が悪くなってトイレで嘔吐したり、ストレスで胃炎になったのだとか。
◆その苦労が活かされているのが、第4章の「「つかみ」を成功させる技術【実践編】」と第5章「本番の全体像と、有効なテクニック」。
上記ポイントの4番目以降は、すべてこの2つの章からになります。
一般的に「プレゼン本」と言われる書籍のコンテンツは、この2つの章の内容と同じなので、純粋に「プレゼンのTIPS」をお知りになりたい方は、こちらを中心に。
また、最後の第6章では「5つの名人芸」として、「ジョブズ式プレゼン法」や「ユダヤ式プレゼン法」「ハーバード式プレゼン法」等を解説。
この辺は、自分のスキルやプレゼン対象を考慮して使い分けるべきでしょう。
◆もっとも、第4章以降のノーマルなプレゼンスキルのお話は、正直類書でも学べると思います。
それゆえ本書のキモは、むしろ第3章の「舞台裏」部分ではないか、と。
まともにプレゼンをしたことのない私が言うのもナンですが、プレゼンのクオリティでは勝っていても、プレゼン自体では負けることがあるとしたら、こういう些細な理由かもしれません。
例えば、上記ポイントの5番目にあった「へその緒がつながった関係」というクダリには、私も「はぁ?」っと思ったものの、ライバルはそうやって勝っているのかも!?
選ばれるプレゼンをするために!

瞬時に人の心をつかむ── 人生を変えるプレゼン術 (朝日新書)
序章 プレゼンの力で人生は変わる
第1章 なぜ最初の3分が重要なのか?
第2章 私をプレゼンのプロにした「虎の穴」
第3章 舞台に立つ前に勝負は決まる【準備編】
第4章 「つかみ」を成功させる技術【実践編】
第5章 本番の全体像と、有効なテクニック
第6章 応用したい5つの「名人芸」
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【編集後記】
◆大変長らくお待たせしましたが、この本の在庫がやっと復活!
面白い本 (岩波新書)
まだお読みでない方は、この機会に是非!
参考記事:【これはヤバいw】『面白い本』成毛 眞(2013年01月24日)

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