2013年02月11日
【TDR】ディズニーランド経営のヒミツ7選
【はじめに】
◆今日は三連休最後の日ということで、ディズニー、特にTDR(東京ディズニーリゾート)の経営のヒミツについて掘り下げた本をご紹介してみようかと。今まで鬼のように出版されてきたディズニー本を基本的にスルーしてきた私ですが、先日読んだ『そろそろ会社辞めようかなと思っている人に、一人でも食べていける知識をシェアしようじゃないか』でディズニーの収益ネタの話が気になっていたので、思わずリアル書店で購入してしまいました。
アマゾンの内容紹介から。
30年間右肩上がりの「経営マジック」とは?夢の国の「儲けのしくみ」を徹底解明。
今回は特に「なるほど!」と思わせられたポイントを7つ選んでみましたので、ご覧ください。
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【ポイント】
■1.従業員からはたらきかけない「ソフトセル」という販売戦略The Pooh Corner sweet shop / Loren Javier
「ソフトセル」はゲストに過剰な接客は避けるという販売手法です。
商品を売りつけるような「ハードセル」に対応するもので、売ることが直接目的ではなく、ショーを楽しんでもらうために店舗を運営する、結果として売り上げがついてくる、という考えに成り立っています。したがって、呼び込みや安売り表示、バーゲンを一切しません。並べられている商品も店の景観もショーの一部です。
■2.日本人に欠かせない「遊・食・ショッピング」の3点セット
Diner at the Ambassador Hotel Disney Tokyo / rich115
レジャーや遊びで楽しさを満喫した人々はすぐに家路につかず、飲食をしたり思い出をモノに託して買い物をしたりします。その度合いが欧米人とは比較にならないほど高いのです。
日本人はごく一般的な旅行でも、せっかく来たのだからとその土地の特産物を買い込み、その地のおいしいものを食べて帰ります。この風習は江戸時代の「お伊勢参り」に端を発するといわれています。お土産は自分や家族だけでなく、ときに親戚や近所の人たちにも配ります。
このように、日本人のレジャー行動には飲食とショッピングがつきものです。遊、食、ショッピングの3つがセットになって初めて人々の満足度が高まるのです。
■3.映画とテーマパークは川上と川下の関係
Tokyo Disneyland / Rudy Herman
テーマパークと映画は、産業構造で見たとき、川の流れのような関係にあります。映画が川上で、テーマパークが川下にたとえることができます。
まず、カネと人材をつぎ込んでいい映画をつくります。ヒットすれば、ビデオやテレビチャンネルなどの映像ビジネスに乗り出す一方、キャラクターをテーマパークやグッズに使用します。収益力が高まった企業は、今度は巨額の資金をかけていい映画をつくる。同じような繰り返しにより、エンターテインメントビジネスが増殖するというわけです。
■4.縮尺の効果を計算して作られた施設
P1010601 / fortherock
映画製作者のウォルトは「縮尺」の持つ効果を計算し尽くしていました。たとえば、商店の高さを1階は通常建物の8分の7に、2階は8分の5に、3階は8分の4と、上にいくにつれて徐々に縮小しています。そうすることで、見る者の目に心地よくすんなりと入ってくるというのです。
園内を走る汽車を実寸の8分の5としたのも、人間の目にうまく錯覚を起こさせるためです。建物から樹木、べンチ、ゴミ箱にいたるまで、すべてがショーを盛り上げるための小道具です。これらはすべて、映画のセット製作の手法をパークに応用したものです。
■5.外の日常の風景は遮断する
Gadget's Go Coaster, Tokyo Disneyland / e_chaya
ゲストを夢の世界に引き込むには、パーク内から現実の世界を見せないことが大切です。そのため、外周をバームと呼ばれる土盛りと植栽によって囲み、外界をシャットアウトしています。園内から周辺の建物、工場やアパート群など日常の風景が視界に入ることはありません。
非日常性の演出には、樹木や植物が一役買っています。東京湾の潮風が吹き込むのを防ぎ、入園者に心地よい緑陰を提供する役割も担っています。樹木の数は、約30万本。TDLの24%にあたる20へクタールが植栽緑地面積です。
■6.「3分の1の不満」がリピートをうながす
Toontown, Tokyo Disneyland / e_chaya
パークが広いことから、ゲストは段取りよくいったとしても1日では3分の2程度しか制覇できず、楽しみ損ねたアトラクションが多数残ります。ゲストはディズニーランドで遊んだことには満足しますが、一方で心残りを抱えて帰宅しなくてはなりません。
ここで肝心なのは、不満なのだが必ずしも不快ではないということです。ゲストはTDLやTDSに満足しているからこそ、回りきれないとか帰らなければならないという「現実」に対して不満を抱いているだけで、パークそのものには満足しているのです。
■7.キャラクター関連商品が売り上げの8割
TDRでは、キャラクター関連商品が商品売り上げの80%を占めています。ゲストはパークの楽しい雰囲気につられて、ついティズニー商品を手にしてしまうのです。
ディズニーグッズの商品化やデザインは、日本国内の業者が一定の特許料をディズニー商品の日本の総代理店であるウォルト・ディズニー・ジャパン社に支払って製造しています。製造業者が支払う特許料は売上高の3%分です。それだと、3%上乗せのはずですが、ディズニー商品は一般品と比べて2割か3割も高額です。
【感想】
◆冒頭で「鬼のように出版されてきた」と書いた「ディズニー本」ですが、特に私たちが対象とする「ビジネス書」で見た場合、その多くが「サービス面」について言及したものだと思います。例えば、この本は50万部を突破しているとのこと。
9割がバイトでも最高のスタッフに育つ ディズニーの教え方
その後類書も結構出ていますし、この手の一連の作品で、ディズニーのサービスについてはご存知の方も多いことかと。
それゆえ今回のエントリーでは、本書の第3章『「サービス」の魔法―なぜ、アルバイトでもスタッフの質がいいのか?』は、丸ごと割愛。
上記に挙げたような「サービス以外」のポイントを取り上げてみました。
◆まず以前も出ましたが、TDRでは「遊・食・ショッピング」のうち、「食・ショッピング」の割合が高い、というお話。
これは、初めから計算されていたものではなく、運営するオリエンタルランド社はもちろん、米国ディズニー社でも想定外だったとのこと。
元CEOのマイケル・アイズレーは、TDLを経営委託ではなく直営にしなかったことを自著でこのように後悔しています。
「キャラクター商品の特許使用料を見ただけでも、私たちが逃したものの大きさがよくわかる。……あとになって、旅行先で必ず土産物を買う習慣のある国ではキャラクター商品の販売で莫大な利益が上がることがわかった。東京ディズニーランドに対する所有権を持たなかったことは、手痛い打撃となった」……確かにTDRに行くと、私もヨメも職場で配るために「お菓子のお土産」は毎回買っていますしね。
ディズニー・ドリームの発想〈上〉
ディズニー・ドリームの発想〈下〉
◆一方、縮尺のお話は、お恥ずかしながら私は知りませんでした。
この部分を読んでから思いだしても、「やや小さめ」だった印象(違和感)はないのですが、それが「本物でないほうが本物らしく感じる」ということなのでしょう。
さらに、「ワールドバザールを抜けたところでシンデレラ城を見ると、すごく遠くに見えるのに、逆にシンデレラ城からワールドバザールを振り返ると近く感じる」とのこと。
これも、同じ距離でありながらそう見えるように、「建物の大きさや道幅を工夫している」のだとか。
皆さま、次回TDLに行った際には、ぜひ意識してみてください。
◆本書は「図解」と言いつつも、よくある「1ページずつポンチ図を掲載しているムック本」とはワケが違います。
図解は4ページに1つとかで、それもグラフ等が多く、必然性を感じるものがほとんど。
装丁が軽く「お手軽本」のイメージがありますが、ザーッとディズニーに関する知識を身につけるには、なかなかよい本ではないでしょうか。
もっとも、本書で得た知識(「縮尺がうんぬん」等)をうんちくとしてデートで披露すると、嫌われそうですがw
「夢の国」が「夢」たりえる秘密を知るために!
図解 ディズニーの経営戦略早わかり (1時間でわかる)
第1章 したたかに計算しつくされた「消費の王国」
第2章 「空間」の魔法―「夢の国」のつくり方とは?
第3章 「サービス」の魔法―なぜ、アルバイトでもスタッフの質がいいのか?
第4章 「囲い込み」の魔法―「リゾート」に進化した理由とは?
第5章 「セールス」の魔法―なぜ、グッズが大人の女性にうけるのか?
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【目から鱗の経営本】『どうする? 日本企業』三品和広(2011年08月21日)
【編集後記】
◆本書の巻末には参考文献がずらっと載っているのですが、その中でも読んでみたいのがこちら。海を超える想像力―東京ディズニーリゾート誕生の物語 (ディズニーストーリーブック)
元オリエンタルランド社社長の加賀見俊夫さんのご本です。
アマゾンレビューもかなり好評な模様。
ご声援ありがとうございました!
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