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2013年02月05日

【説得術】『嫌われずに人を説得する技術』伊東 明


嫌われずに人を説得する技術 (ちくま文庫)
嫌われずに人を説得する技術 (ちくま文庫)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、相変わらず当ブログでは高確率でヒットを出し続けている伊東 明さんのコミュニケーション本

10年程前に出た単行本の文庫化になります。

アマゾンの内容紹介から。
「人を説得する技術」は、多くの人が身につけたいと望むものだろう。しかし、相手を説得すれば、それで問題は解決するのだろうか。説得に成功しても、イヤなヤツと思われ、長期的には自分にマイナスになる例も多い。必要なのは「頼りになる」という評価を受けながら、相手を思いどおりに動かす方法だ。―効果的かつ長期的な人間関係にも配慮した「日本人向け」の説得スキルを提示する。

私は比較的最近「自己説得」の手法を知ったのですが、今から10年も前に、このようにキチンとまとめられていたとは!?


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【ポイント】

■1.「説得できればOK」ではない
 しかし、考えるべき問題がひとつある。「相手をこちらの思うとおりに動かして、それで万事うまくいくのか」ということだ。本当にそれだけで効果的なコミュニケーションが完成したと言えるのだろうか。(中略)

 気持ち良く、心から満足してその説得に応じたという印象を相手自身に残せないと、「イヤイヤながら応じた」「仕方がないから承諾した」「すっかり言いくるめられた」「よく考えるとだまされた」など、長期的な関係のなかではマイナスの印象となってしまうことが多い。「説得できればそれでOK」という説得術・交渉術は、その場では得をしても、長い目で見れば損になる危険性をはらんでいることを、ここではっきりと申し上げておきたい。


■2.自分で自分を説得させる「自己説得」
 「お客さまにどうして保険が必要なのか、お教えいただけますか?」

 このようにセールスマンから質問されたとしたら、あなたはどう思うだろうか。まず、突拍子もないことを質問されたと感じるだろう。しかし次の瞬間には「保険が必要な理由」を頭のなかで考え始めているはずだ。

「やっぱり老後とか、将来の不安もあるから」
「健康のことがいちばん心配だから」(中略)

 このように、自分で自分が生命保険に入らなければならない理由を考えるだろう。
 そして「ああそうか、やっぱり保険は必要だ」という答えにたどり着く。セールスマンがたった一言、問いかけたセリフによって、顧客であるあなたは「自分には保険が必要だ」と、自分で自分に対する説得を開始する。


■3.意識的にリピートする
販売員「お客さまは当社のクルマには、どんなイメージをお持ちですか?」
客「そうですね、伝統があるということや質実剛健だというイメージ、あとは安全性ですかね」
販売員「ああ、やっぱり"安全性"ですか! じつは当社のクルマの安全基準はですね……」
 相手がたくさんテーマを出してきたときに、とりあえず自分が導きたいテーマをリピートするといい。
 強引と言えば強引な方法なのだが、やってみると意外なほどすんなりと持っていきたい話題に導くことができるから不思議なものだ。
 もちろん、社内コミュニケーションでも使えるテク二ックである。


■4.情報を小出しにして話題に引き込む
 いわゆる"聞かせ上手な人"が、よくこういうテクニックを使っていることにお気づきの方もいるだろう。

「いやあー、昨日はビックリしちやったよ!」
「えっ、何ですか?」

 というように、一瞬で相手の注意を引くのがうまい。こんな言い方をされると、「何ですか?」「それで?」「どうしたんですか?」と反応せざるをえない。
 こういったセリフを受けて、「聞きたい? それじゃあ話すけれど……」というように、「聞きたいなら話してあげよう」と、話者として優位な立場から会話を支配することができるのである。


■5.相手にデッドラインを設定させる
上司「この1年で結果が出せなかったら、キミの立場がどうなるかわかるか?」(中略)
 このように、他人からデッドラインを押しつけられると非常に不快な気持ちになり、リアクタンス(反発)が生まれる。
 では、リアクタンスを回避しながら、デッドラインをうまく利用するにはどうすればいいだろうか。それには説得する側がデッドラインを設定するのではなく、相手自身にデッドラインを設定させることがポイントである。
上司「キミとしてはいつぐらいまでに実行したいと思っている?」
部下「そうですね。1年以内には結果を出しておきたいですね」


■6.相手の確約をとりつける
客「この200万円という価格には、オプション用品もついているんですか?」
販売員「では逆に質問させていただいてよろしいでしょうか。200万円にオプション品も含まれているとしたら、ご購入を決めていただけますか?」
 このように、相手の「……はできますか?」「……をつけることはできますか?」「……してくれますか?」という質問に対して、「では、もしそうだったら買っていただけますか?」と切り返しの質問を投げかけ、意思決定を迫る。これにより相手にプレッシャーをかけることができるのである。


【感想】

◆会話部分があるせいか、ボリューム的に膨らんでしまったので、今回はこの辺で。

本書のスタンスは上記ポイントの1番目にあるように、「チカラ技」で説得する「欧米式説得術」ではなく、「相手の話を聞き」「質問する」ことにより、相手を誘導する、というもの。

そのための一番の「武器」が、上記ポイントの2番目の「自己説得」です。

本エントリーでは、事例を1つだけ挙げて簡単に説明していますが、実は本書では、かなりのスペースを割いて言及されているという。

特に「自己説得の5つの効果」の部分は必見。

この「自己説得」は、私が営業職に就いていたら、「是非とも身につけたいスキル」だと思います。


◆さて、今回割愛したテクニックはいくつかあるのですが、そのうちの1つが「オルターナティブ・チョイス・クローズ」と呼ばれるもの。

これは、相手が「買う」ともまだ言ってない段階で「キャッシュでの割引がよろしいですか? ローンの優遇のほうがよろしいですか?」等の選択肢を提示するやり方です。

問いに対して、相手がどちらかを選んだ時点で「買う」という意思表示をしたことに。

「え? それって"言いくるめ"じゃね?」と思ったら、補足として「ワンクッションはさむ」というテクニックが登場。

これは「オルターナティブ・チョイス・クローズ」に「仮に……だったら?」と付け加えるというもので、少なくとも付いていない問いよりは、反感はもたれにくいでしょう。


◆また、補足と言う意味では、上記ポイントの5番目の「相手にデッドラインを設定させる」ケースで、相手の提示したラインがアマアマだった場合の対処法も収録されていました。

こういう時でも、いったんは相手の考えを受け止めます。

例えば上記のケースで、部下が悠長に「2年くらい先ですかね」と答えたら「なるほど2年か。では、それを半年間で実現できる方法を考えてみないか?」と返すという。

確かに「何? 2年だと!?」と、頭ごなしに叱責するよりは、建設的な話し合いが望めそうです。


◆本書は、さすがに10年前の本だけあって、類書とネタがかぶったりもしていました。

本のテーマ的にしょうがないのですが、類書同様フット・イン・ザ・ドアドア・イン・ザ・フェイスも登場しますし。

ただ、そもそも私が読んでいる類書というのは、そのほとんどが本書の単行本より後に書かれたものですし、それ以前に大もとは洋書でしょう(巻末に参考文献アリ)。

本書のメインテーマである「自己説得」の手法を中心に学ぶのであれば、未だ一読の価値はあると思います。


好かれながら説得するために!

嫌われずに人を説得する技術 (ちくま文庫)
嫌われずに人を説得する技術 (ちくま文庫)
第1章 自己説得のメカニズムとその効果
第2章 情報収集の技術を磨く
第3章 当事者意識を持たせる
第4章 決断を後押しする
第5章 満足感を分かちあう
第6章 質問を駆使した自己主張


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【編集後記】

◆その伊東先生のモテ本!?

話し方を変えると男と女は、もっとうまくつき合える! (王様文庫)
話し方を変えると男と女は、もっとうまくつき合える! (王様文庫)

男女の性差のお話は好きなので、これも読んでおこうかと。


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