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2013年01月13日

【裏ワザ?】『弁護士に学ぶ!交渉のゴールデンルール』奥山倫行


弁護士に学ぶ!交渉のゴールデンルール
弁護士に学ぶ!交渉のゴールデンルール

【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、現役の弁護士である奥山倫行さんによる交渉術の本。

サブタイトルに「読めば身に付く実践的スキル」とあるのですが、リアル書店で立ち読みした際に、何気に開いたページの小見出しが「相手に無断で会話を録音しても大丈夫?」で、「こりゃ確かに実践的w」と納得しました。

アマゾンの内容紹介から。
心理戦・情報戦に勝利する!誰でも簡単に習得して、すぐに応用できるノウハウを惜しげもなく開示。

私も交渉術の本を結構読んで参りましたが、類書とはひと味違う1冊でした!


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【ポイント】

■1.やっかいな相手とは第三者がいる場所で会う


Great hamburgers at IAD, Dec 23, 2008 / dionhinchcliffe

 なお、交渉の内容にもよりますが、暴力団のような反社会的勢力との交渉など、特にやっかいな相手の場合には、監禁される可能性だってあります。このような相手の場合には、ファミレスやホテルの喫茶店など、必ず中立の第三者がいる場所を選んでください。まわりに人がいる場所では、相手も大きな声を出したり威圧的な態度をとったりしづらいですし、粗暴な言動があった場合には、警察に通報して対応を要請することも考えなければなりません。まわりに人がいれば、後々、まわりの人が証人になってくれることも期待できます。


■2.相手の決算期を考えて交渉する


TSA Negotiation 2012- Contract Signing / AFGE

 さらに、時期でいえば、ビジネスの世界での交渉の場合には、相手の決算期を考慮しながら交渉を進めていくことも検討の意味があります。たとえば、相手から1000万円の請求を受けていて、こちらは1000万円をすぐに支払うことができないような場合で、相手の決算期が近づいてきているとき、最終的には相手も不良債権を抱えているよりは……ということで、ある程度の金額のー括払いで納得してくれることがあります。(中略)
そのため、相手の決算期を事前に確認しておいて、それに合わせてノラリクラリと交渉を続けながら結論を先延ばしにして、決算期の近くで一気に交渉を煮詰めて勝負をかけるということをやったりもします。


■3.同席している仲間を恫喝する?


Menacing / B Rosen

 これはやくざ相手の交渉でよく使われる手口です。同席している相手を徹底的に怒るという方法です。「そんなに怒らなくてもいいのに……」と思いますが、今にも殴りそうな勢いで怒ります。机を叩いたり、椅子を蹴ったりすることもあります。直接交渉の相手を脅すと脅迫罪(刑法222条)や恐喝罪(刑法249条)や強要罪(刑法223条)にあたるので、そのようなことはしません。このような話を聞いたことがある方も多いのではないかと思いますが、私もこれまでに、5回ほど、こういった場面の交渉を経験したことがあります。


■4.相手に無断で会話を録音しても大丈夫?

OLYMPUS ボイスレコーダー VoiceTrek 2GB スタンダードモデル 単4電池2本使用 VN-702PC ブラック/シルバー

 結論からいえば、相手に無断で会話を録音しても全く問題ありません。実際に裁判になった場合に、相手に無断で録音した音声データの証拠能力が争われるケースがありますが、民事裁判の場合にはまず大きな問題にはならないでしょう。裁判所も当事者の一方が相手に無断で録音した音声データを判断の材料としてもよいのかどうか、相手の承諾がなければフェアーじゃないのではないか、そういった観点で証拠能力(判断する際の証拠になりうるか)の有無が検討されますが、よほどの事例でなければ録音データの証拠能力が否定されることはありません。ですので、のちに争いになる可能性があったとしても、録音しておくのが望ましいと思います。


■5.自分で現行犯逮捕をする?


Cuffs3 / banspy

 ある程度理屈が通じる相手であれば、「あ、今の発言は恐喝ですね。現行犯として逮捕します」と言う方法を使う場合もあります。

 意外と知られていませんが、実は警察でなくても逮捕ができるのです。刑事訴訟法213条は、「現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる」と規定しています。「何人でも」は、「ナンビトでも」または「ナンピトでも」と読み、「誰でも」という意味です。「何人でも」とあるように、誰でも逮捕ができるのです。


■6.相手の上部団体や監督団体を利用する


Met Eireann (Irish Meteorological Service) / infomatique

 たとえば、金融機関相手の交渉の場合のキラーフレーズは、「金融庁に申し入れます」とか、「○○銀行協会の苦情相談窓口に相談します」です。銀行などの金融機関の監督は、金融庁が行っています。金融機関は、監督官庁である金融庁ににらまれるのを嫌います。交渉の過程で対応に不適切な部分があれば、金融庁から改善指導を受けたりすることがあります。(中略)

 また、同じような発想で不動産屋に対しては、「宅建協会に苦情の申立てをします」とか、弁護士に対しては、「弁護士会に懲戒請求をします」などといったやりとりも相手をけん制する効果が期待できます。


■7.方言を使って交渉をスムーズに進める


Farmers on a Haycart - Mara Valley - Maramures - Romania / Adam Jones, Ph.D. - Global Photo Archive

 事前に相手の故郷や出身地を知ることができれば、そこをくすぐるのもひとつの方法です。さりげなくその話題を振って、距離を縮めるのです。(中略)

 また、都会での交渉の際には、方言を使うと、「人のよさ」や「人なつっこさ」を醸し出すことができます。方言から連想するのは田舎です。田舎から連想するのは「人のよさ」や「人なつっこさ」や「純心さ」や「愚直さ」や「誠実さ」や「実直さ」です。そのイメージを利用しましょう。故郷がある人にとっては効果的です。


【感想】

◆いかがだったでしょうか?

冒頭で「類書とはひと味違う」と申し上げた理由が、お分かり頂けたのではないか、と。

もちろん、「十分な資料を用意しよう!」といった、類書同様の「王道的なTIPS」も収録されているものの、やはり本書で目を引いたのが、上記のような「非王道的なTIPS」です。

著者の奥山さんは、弁護士になって最初の5年間を、国際案件も扱う大規模渉外事務所で送られていましたが、次の5年間は故郷の札幌で自分たちの事務所を開き、そこでかなりディープな案件を取り扱ってこられたのだそう。

そのおかげで「警察はすぐ来てくれないから、隣の部屋で待機してもらう」なんてシャレにならないTIPSも出てくるわけです(詳細は本書を)。


◆中には、「服装を意識しよう!」という小見出しのところに、「スーツは紺か黒、ワイシャツは白、ネクタイも紺か黒で統一しています」とあって、「これは王道」と納得したワタクシ。

それに続くエピソードに登場する「交渉相手の地上げ屋」も、七三分けの2人の紳士で、話し合いは穏やかに進みます。

ところが、いよいよ立ち退き料を決める、という段階で、中心になって話をしている紳士が会話をしながら上着を脱ぐと、その裏地には虎と龍の刺繍が!

「節子、それ紳士やない、ヤ●ザや!」

なるほど、弁護士相手に下手に威圧的な態度を取ると、すぐに刑事事件にされるので、「合法的に威圧」しているわけですね(真似できませんがw)。


◆ちなみに別の章では「相手に脅された場合は、こっちのものです」とあって、脅迫罪から侮辱罪、恐喝罪等々、具体的な犯罪名が列挙されております。

相手に該当する言動があった場合には「あなたの発言は○○罪にあたります。刑事告訴しますよ」でOK。

ただし、これらの犯罪名は、とっさに出せなければ意味がないので、そうできるまで条文を読んでおく必要があるとのこと。

続くページに一覧が掲載されておりますので、必要になりそうな方(?)はそちらでご確認を。


◆なお、ここまで極端でなくとも、通常の交渉に際して役立つTIPSも多々ありました。

 ●アポイントは電話ではなく書面でとる

 ●時間がなくてもあるようにふるまう

 ●交渉は複数で対応し、1人はメモを取る

 ●交渉内容や結果を交渉相手の上司に送付する
等々……。

本書は、実際に交渉する予定や必要のない方には、活かしようがないかもしれませんが、そんな方でも、いつなん時、交渉する事態が起こるかもしれませぬ。

アマゾンでも在庫が切れがちなのと、数式もないのに横書き(専門書の出版社だからか?)なのを除けば、これは結構な見っけもののだと思われ。


読む人を選ぶかもしれませんが、オススメ!

弁護士に学ぶ!交渉のゴールデンルール
弁護士に学ぶ!交渉のゴールデンルール
第1章 交渉前

第2章 交渉の場面で

第3章 交渉のクローズの場面で


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【編集後記】

◆本書の中で、奥山さんが推奨されていた作品。

表情分析入門―表情に隠された意味をさぐる
表情分析入門―表情に隠された意味をさぐる

「交渉の場面だけでなく、日常生活のさまざまな場面で活用できる」とのことです。


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