2012年12月15日
【仕事術】『キャリア官僚の仕事力 秀才たちの知られざる実態と思考法』中野雅至
キャリア官僚の仕事力 秀才たちの知られざる実態と思考法 (ソフトバンク新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、『朝まで生テレビ! 』や『たかじんのそこまで言って委員会』といったテレビ番組への出演等でも知られる、元キャリア官僚・中野雅至さんの仕事術の本。短時間でインプットとアウトプットの両方をこなさなければならない、「キャリア官僚ならでは」のTIPSが多々ありました。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
本書では、厚生労働省の元キャリア官僚であり、官僚の実態を知り尽くす著者が、日本のトップエリート・キャリア官僚の仕事力を徹底解説。
また、彼らが組織の一員として、また個人としてどういう仕事力を持っているのかを通じて、生々しい霞が関の現場をも知ることができる1冊となっている。
エリートはこんな風に働いていたとは!?
いつも応援ありがとうございます!
【ポイント】
■1.「書く」ために「読む」具体的に言うと、「報告書を書かなければならない」という必要に迫られて本や資料を読み込むことで、必然的に効率的な読解力が身についてくるということだ。
自分が主体となって何かを書くとなると、責任感が生まれる。おのずと、資料探しにも必死になるし、必死に探した資料から少しでも役立つものを読み取ろうとする。ある意味、切羽詰まった状況が効率的な情報の検索力や読解力を育ててくれるのだ。
■2.情報の検索力は新書で身につける
ゼロべースで考えると、まずは関連分野の新書を読むといい。新書は専門書とは違い広い読者層を対象にわかりやすく書かれていることが多いので、その分野の取っ掛かりのまとまった情報としては打ってつけだ。なるべくなら、巻末に参考文献を掲載しているものがいい。
新書を読んでその分野について土地勘がついたら、巻末に掲載されている少し難しそうな文献を読んでみる。次に、その少し難しそうな文献に記載されている参考文献から、もっと難しそうな学術論文を選んで読んでみる。
■3.英文資料は「要約→結論→序章」の順で読む
ポイントは、律儀に全部読まないこと、何度か読み直すことだ。とてもじゃないがすべてを精読する時間はない。ポイントをつかむのだ。そのうえで、何度か読み直したほうが読み落としは少ない。
読み進める順番はSummary(要約)→Conclusion(結論)→Introduction(序章)が最も効率的。英文には、この3つが必ずある。まずはSummaryで全体的に何が書いてあるかを把握。その後、Conclusionで最終的な落としどころを把握。Introductionでは、その英文でどういうテーマを扱っているかを大まかに把握できる。
■4.他人の報告書を参考にする
官僚仕事の多くは締め切りとの闘いだ。アイデアが自然に生まれるまで待つということが許されない。(中略)
こういう状況に追い込まれたとき多くの官僚は、他人の報告書を参考にする。もちろん、そのまま書き写せば盗用で著作権の侵害になる。そうではなく、目次を熟読するのだ。すると、どういう論理で目次が立てられているのか、全体像が見えてくるようになる。
それこそ必死に他人の目次を読み込むので、論理的に目次を立てるノウハウが身につくようになる。「すべての創造は模倣から出発する」(池田満寿夫著『模倣と創造』中央公論社)というが、優れた報告書や文献ほど勉強になるものはないと思う。
■5.官僚の文章作法(抜粋)
●帰納法を用いる帰納法を用いて文章を書くようになると、日ごろから論理的に物事を考える癖がつく。また、相手を論理的に言い負かしたり、説得したりする論法としても非常に役立つ。●抽象と具体をセットにする抽象的に何かを表現した後、必ず具体例を示してわかりやすくするわけだ。抽象的な表現がわかりにくくても、その次の具体例を見れば、大まかなことは理解できるので、このパターンの文章は効果的だ。
■6.相場観のある人が出世する
僕の経験からすると、仕事に相場観のある人は間違いなく出世する。
相場観とは、仕事の段取りを着想する能力ともいえる。「現状→問題点→課題→解決策」という一連の流れをごく短時間で思い浮かべられる能力といってもいい。
なぜ相場観のある人は出世するのか。まず相場観の持ち主は、トラプルに遭っても冷静に判断できる。(中略)
次に、相場観のある人は人の嫌がるトラプル処理にも適している。(中略)
そんな仕事で相場観を発揮して処理すれば、周囲の評価は一気に上がり、信頼が高まり人心掌握も一気に進むのだ。
■7.質疑応答力をつけるためには「想定問答集」を作る
官僚は日ごろの仕事で、常に質疑応答の訓練をしている。「想定問答集」をつくって、マスコミや国民から聞かれそうな質問と模範回答を用意しているくらいだ。(中略)
僕自身も「こういう質問があるんじゃないか」「週刊誌の取材に備えて相当突っ込んだ部分についても答えを用意しておいたほうがいい」などと同僚たちと議論しながら、想定問答集をつくり上げたものだ。
これは質疑応答の力をつける格好の訓練機会になる。模範回答を考えることもいい訓練になるが、むしろ質問を考えることのほうが訓練になる。
【感想】
◆本書はキャリア官僚の仕事術全般について述べているものなのですが、今回は当ブログの趣向的に、第4章の「文章術」の部分を中心(というかほぼ全部)にまとめてしまいました。というのも、官僚の業務には「書き仕事」がやたらと多いから。
「政策の企画書」「白書」「予算書」「報告書」等々、いずれも膨大な資料を読み込んだ上で、「自分ならではの分析を加えた上で」アウトプットする必要があります。
さらには各大臣の「国会答弁」まで!
あの答弁は「ヤラセ」というか、実際には答弁の前日までに質問内容を入手して、官僚が徹夜で答弁書を作っているという……。
◆もっとも、この答弁書自体は、末端の係員か係長クラスが午後6時くらいには書き終えています。
ところがここからが大変!
その中身を課長補佐→課長→局長と上げていき、それぞれの承認を貰う必要があります。
さらに、質問内容が複数の省庁に絡む場合だと、今度は「省庁間の合意」を形成しなければなりません。
こうなってくると、もう文章術うんぬんの次元ではなく、むしろ交渉術の世界。
上記では割愛しましたが、「上司も相手も騙して突破口を開く」なんてTIPSもありました(詳細は本書を)w
◆官僚には、他にも必要とされる能力がいくつもあります。
例えば「短時間で難しい物事を説明する」能力。
本書で紹介されている極端な例が、「国会議員から『申し訳ないが、急ぎの用事があるので、社会保障制度について1分間で説明してくれ』と言われる」といったもの。
もちろん「できません」とは言えず、相手が納得するように1分間で説明するしかないのだそう。
……それはスキルも磨かれます罠。
中野さん曰く、こうした「ポイントを突いた説明が達者」であるがゆえに、最近、官僚出身のテレビのコメンテーターが増えているのではないか、とのこと。
◆ただ、いずれにせよこうしたノウハウや能力があるにせよ、官僚の皆さんの仕事が激務であることには変わりがなく。
事実、中野さんの同期入省者は19人で、40代半ばであるにもかかわらず、既に2人が亡くなっているのだそうです。
こんなハードな職場環境で生き延びるための仕事術なら、私たちにも得るべき点はきっとあるはず。
特殊なスキル以外で、真似できるところは真似たいものです。
日本の「エリート層」が磨き上げた仕事術がここに!
キャリア官僚の仕事力 秀才たちの知られざる実態と思考法 (ソフトバンク新書)
序 章 官僚仕事はブラックボックス?
第1章 官僚の実態
第2章 官僚の仕事体力
第3章 官僚仕事はスケジュール観がキモ
第4章 霞が関に学ぶ最強の文章術
第5章 官僚の発想力
第6章 官僚は相場観で勝負
第7章 難攻不落の相手を落とすプレゼン術
第8章 情報分析は官僚の真骨頂
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【編集後記】
◆まだちょっと先の本ですが。論理的に読む技術 文章の中身を理解する"読解力"強化の必須スキル! (サイエンス・アイ新書)
これはかなり気になってます!
ご声援ありがとうございました!
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