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2012年11月25日

【ウラ技?】『気づかれずに相手を操る交渉の寝技』間川 清


気づかれずに相手を操る交渉の寝技
気づかれずに相手を操る交渉の寝技

【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、弁護士・間川清さんの交渉術を明かした1冊。

タイトルにある「寝技」とは、実際に弁護士業界で使われている用語で、「紛争やトラブルを裁判にしないように交渉し、穏便に問題を解決するための働きかけ」のことを言うのだそう。

アマゾンの内容紹介から一部引用します。
年間200件以上、数多くのジャンルのトラブル解決を行う弁護士秘伝の、理不尽な相手にも屈しない方法。
基本・応用の技術だけでなく、会議編・商談編・お願いごと編・お断り編のケーススタディも充実。誰でも、簡単にどんなシーンでも“気づかれずに相手を操る"ことができる。

孫子の言うところの「戦わずして勝つ」ための手法が満載です!


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【ポイント】

■1.小さな許しを手に入れる
 怒り心頭の被害者に対していきなり、「直接お会いして話がしたい」と言っても、それは被害者からすれば大きい許しであり、簡単には応じてくれません。
 いきなりそこを目指すのではなく、まずは「弁護士が書いた手紙を受け取ってくれるかどうか」というとても小さな許しをもらうようにするのです。
 そして重要なポイントは、「人は本能的に一貫した行動を取りたいという欲求を持っている」ことです。そのため、一度でも「小さな許し」をすると、その後も「相手を許す」という一貫した行動をとりたくなるのです。


■2.回答をあえて遅くする
 交渉の回答に時間をかけることは、相手により多くのコストを投資させることになります。交渉の期間が長くなればなるほど、相手は交渉の結果を心配しなければなりませんし、弁護士に何度も相談したり、いろいろな調査をしたりしなければなりません。
 そのように多くの投資をしたにも関わらず、交渉が決裂してしまった場合、それまでの投資はすべて無駄だったことになってしまいます。
 そうすると、人は非常に苦痛を感じ、なんとしても投資したコストを無駄にしないために交渉を成立させたいと考えるようになるのです。
 その結果、多少自分たちにとって不利な内容であったとしても、少しくらいは妥協して示談をまとめてしまおうと考えるようになるのです。


■3.最悪のシナリオを作っておく
 正直なところ、交捗や人間関係のトラブルは、常に結果が予想できない人間を相手にしますので、どれだけ考えたところで、どのような交渉をするのが良いのか正解は出せません。
 だから、正解を求めるのではなく、最悪な結果を想定しておき、それを受け入れられる覚悟をすることが重要になるのです。
 やってみるとわかると思いますが、大抵の場合、最悪の結果というのは実際には起きないものです。
 そして、最悪なシナリオを想定し覚悟を決めて交渉に臨むと、その覚悟が自然に伝わるのか、思うような結果が出ることが多いのです。


■4.事前に想定問答を用意する
 実際に相手と交渉ややりとりをするときに、何も準備をしていない場合、うまく立ちまわることができません。
「あのときこう言われたら、ああ言って切り返せぱ良かった……!」と後悔することは多いと思いますが、想定問答を作成しておいて対応にあたれば、言うべき内容を漏らすことがなくなります。
 想定問答をつくる際のポイントは、まず、必ず紙に落とし込むということです。(中略)
 次に、質問に対する相手の答えによって、シナリオを場合分けして、それぞれの対応策を考えておくことです。

(詳細は本書を)


■5.感情的になったら回答を寝かせる
 私は、相手の無礼な対応が頭にくるようなことがあった場合、そのときの判断で「これが正しい」と思ったことでも、必ず一度回答を留保してその場で回答をせず、後日回答するという方法をとっています。
 ついついカッとなると、すぐに回答を出してしまいがちになりますが、そこをグッと我慢するのです。(中略)

 特にメールを送るような場合、メールは細かな感情を表現するのが難しいツールですから、感情的な内容を送ると相手と大きなトラブルになる場合があります。
 文章は相手の手元に残り続けるもので、法的にも裁判で重要な証拠となるため、注意が必要です。実際に、感情的に書いた手紙やメールが決定的な証拠となり、裁判で敗訴となってしまうこともあります。「感情的になったら判断ミスをする」ことを覚えておきましょう。


■6.相手に「勝った」と思わせる
 弁護士が、相手と交渉をするときに、最初相手に請求する内容は、弁護士として実際に落とし所であると考えている内容の1.5〜2倍増しになっています。(中略)

 素直に考えれば、現実的な落とし所を早く提示したほうが、相手もすぐに合意することができるので、交渉に無駄な時間を掛ける必要がなくなり合理的とも思えます。
 しかし、そこは人間の心理の面白いところで、合理的には解決できない部分なのです。
 つまり、人はいつも本能的に「相手に勝ちたい」と思っており、上手く問題を解決し、相手に気がつかれずに優位に立つためには、相手に「勝った」と思わせることが必要なのです。
 最初から落とし所だと思う金額を提示してしまっては、相手に「自分が交渉で相手に勝った」という気持ちにさせることはできません。


■7.大量の書類を持参する
人は大量の資料を目にすることで、意識的にせよ無意識的にせよ、その人の主張が客観的な根拠資料に裏付けられている、確実性の高いものであると誤解してくれるのです。
 実際、私が交渉を直接面談して行うような場合、絶対に使わないだろうと思うような資料であっても、全て持参し交渉の席で相手が見えるような場所にそれをおいておきます。
 持ち運ぶのが重くて大変ですが、それだけの効果はあるのです。
 そうした大量の資料を持参することで、相手は「向こうはこれだけの資料を用意しているのか、それでは到底太刀打ちできない。早めに妥協したほうがいいかもしれない」と勝手に萎縮してくれるのです。


【感想】

◆本書を読むまで私も知らなかったのですが、現在日本の裁判所はパンク状態であり、裁判は1ヵ月に1回のみで、判決になるまでそのペースで裁判が続くのだとか。

つまり、裁判になった場合、解決するまで1年や2年かかることはザラだということ。

ゆえに、たとえどんなに有利な状況であったとしても、裁判になったらその時点で「負け」というケースもありうるわけです。

例えば、「時間」というコストは、裁判になった場合跳ねあがりますし、それに比例するように弁護士費用という「お金」も増加。

200万円のお金を取り戻す裁判に、弁護士費用に150万円かけるよりは、裁判をしないで100万円で妥協する方がお得、ということもあるのだそう。

実際、世の中で起きているトラブルや事件のうち、8割程度は裁判にならず、示談等によって解決しているとのことですから、むしろこうした「寝技」こそが、ある意味「正攻法」なのかもしれません。


◆実は著者の間川さんは、かつて「従業員の解雇」をめぐって会社から依頼を受けた事案で、「法律上解雇は有効」と強硬な姿勢を貫いたところ、その従業員と裁判になり、結果的に会社として大きなコストを費やしてしまったことがありました。

ところが和解の席で、本当はその従業員は、社長とじっくり話すことができれば、裁判まで持ち込む気がなかったことを知ります。
 もちろん交渉は相手があることで、確実な結論というのはありませんから、話をしていたからといって、問題がうまく解決していたかどうかはわかりません。
 ただ、そのとき私が「寝技」を身につけていなかったばかりに、社長が直接話し合いをするという解決の選択肢を自ら放棄してしまったことになるのです。
一方で、間川さんが勤められていた弁護士事務所のボスは、こうした「寝技」が得意なことで有名でした。

そこで間川さんはその技術に注目。

手帳に書き留め、繰り返し読み返して実践し、自ら使えるようになったのが、本書に掲載されたテクニックの数々になるわけです。


◆なるほど、と思ったのが、第2章の『「優位に立つ」ことができない9の理由』にあった「自分の目的を忘れない」というお話。

たとえば一般的に、会社から解雇された従業員がいた場合、彼の当初の目的は「解雇を撤回させて安定収入のある生活を取り戻すこと」なのですが、交渉の過程において会社からは「なぜその解雇が有効だったのか」という主張、すなわち「その社員がいかにダメ社員だったのか」という主張がされることになります。

それを知った従業員は「心外だ。許せない!」と強烈な怒りの感情を持つことに。

すると交渉の目的であった「安定収入のある生活を取り戻す」が「会社に自分が有能であったことを認めさせる」に変わってしまいます。

返す返すも、感情的になると良いことはないのだな、と……。


◆裁判ネタが続いてしまいましたが、もちろん、これらテクニックは、弁護士だけが「使える/使うべき」ものではありません。

本書の第5章では、ケーススタディとして、「会議編」「商談編」「お願いごと編」「お断り編」として、私たち一般ビジネスパーソンが登場する計13のケースを収録。

「会議編」「商談編」は、まぁいいとして、「お願いごと編」にある「どうすれば妻が気持ちよく釣りに送り出してくれるか?」は、タイトルだけで笑いました(違

いずれにせよ、本書にあるのは「交渉のプロ」である弁護士ゆずりのテクニックですから、その効果は期待できると思います。


戦わずして勝つために!

気づかれずに相手を操る交渉の寝技
気づかれずに相手を操る交渉の寝技
第1章 弁護士の「戦わずして勝つ」方法
第2章 「優位に立つ」ことができない9の理由
第3章 じっくり固める「寝技」の基本
第4章 イザというときに決める「寝技」
第5章 ケーススタディ シーン別「寝技」実践編


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【編集後記】

◆ちょっと気になる本。

できる5%のビジネスマンは潜在意識を必ず活用している
できる5%のビジネスマンは潜在意識を必ず活用している

テーマの割に著者さんが結構お年の方なので、意外と真っ当なのではないか、と。


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