2012年11月15日
【99】ナイナイが売れるためにした7つの事
【はじめに】
◆以前から気になっていたものの、なかなか読めないでいたのが『ナインティナインの上京物語』。ナイナイが大阪から上京してきた頃のことを、当時のマネージャーだった黒澤裕美さんが綴った1冊です。
お笑いにそれほど詳しくない私にとって「いつの間にか売れっ子になっていた」ナイナイが、実は陰でこんなに苦闘していた、というのは結構驚きでした。
そこで今般、この本の中から、ナイナイ(というか主に岡村さん)が「売れるためにやったこと」を7つご紹介してみようかと。
ブラウン管に映っていないところでは、こんな工夫があったとは!
いつも応援ありがとうございます!
【ポイント】
■1.あえて冠番組を持たない◆本書の冒頭部分である『「ナインティナイン」のキャリア』から。
人気が出始めた頃の岡村は、ゴールデンタイムの番組はすべて断っていた。「まだ早いと思う。今の俺たちにゴールデンをまわせる実力もないし、飽きられて一発屋で終わってしまう」というのが口癖。これは既に、ある程度売れてテレビに出まくっている頃のお話ですが、自らゴールデンを断る芸人がいたとは。
ようやく始まったゴールデン番組も、「ナインティナインの」と番組名に名前が入らないことを気にした。それは、万が一番組がコケた時に名前がついていると、自分たちも一緒に「視聴率がとれないコンビ」として認識されるからだ。これだけ真剣に売れることについて考えていた芸人は、なかなかいないと思う。
ただ、「番組名に名前が入らない」ことにこだわる、というのは、その後のブランディングの事も考えるとアリだったと思います。
■2.ボケる前にサインを出す
◆2人の人気を決定づけた番組とも言える『とぶくすり』。
私もナイナイのことを意識するようになったのは、この番組からだと思います。
この番組で岡村さんは、テレビにおける映り方を叩きこまれたのだそう。
テレビ慣れしていない芸人は、とにかくおもしろくしようとボケを焦る。しかし、みんなで一斉にあちこちでボケたり、合図もなくいきなりボケたりすると、カメラが追いつかずに、いい瞬間を押えられないという事態が起こる。テレビは映らなかったら意味がないのだ。これは吉本の舞台や、集団でワイワイやっていた「天然素材」では気づけなかったことです。
後に岡村に聞いたところによると、番組プロデューサーに、ボケる前に「あの〜ちょっと……」でも、「挙手する」でもいいから、とにかく「これからボケる」というサインを出して、1回カメラを自分に向けさせろ。と徹底的に教育されたらしい。
……それにしても、映っていないところで挙手する岡村さんを想像すると笑えますがw
■3.『いいとも!』出演の際に大量の花を用意する
◆ここからは、後半部分である黒澤さんとナイナイ2人それぞれの個別対談から。
『笑っていいとも!』のテレフォンショッキング初回出演の際に、岡村さんは周りに花を依頼したのだそう。
岡村 あと、1回からんだ人全員に、断られてもええから、とにかく「お花くれ」って頼んだ。大量の。そしたら、もうスタジオに入りきられへんくらいの花がきてん。確かに、陰で発注(?)してるとは思いませんから、それは驚きます罠。
黒澤 えー! それも作戦なん? しかもみんなくれたんや、ちゃんと。
岡村 くれた。『いいとも!』って言うとみんなくれるんや。そうしたら「いいとも!』のスタッフは、「何なの?『ナインティナイン』って」って。「どんだけ花来るねん」みたいに思うやろ。会場に入りきらなくて、通路にずらーって、花並んでたんやで。ただ俺が、「くれ」って言うただけや。でも、すごいねんなとまわりは見るわけや。
この辺は、テレビで見ている人もですが、テレビ局内に対するアピールとしても秀逸だったと思います。
■4.周りがコントなら漫才を選ぶ
◆以降は、ナイナイの2人が『ABCお笑い新人グランプリ』で優勝するためにやったことについて。
岡村 そう。だから、なんとか本選に残ろうと思ってたんや。目立たなあかんやろ? 予選もアホみたいに大勢受けにくるから。でも、あの時はみんなコントやってん。「天然素材」あるし、「2丁目劇場」でもみんなコントやってたし。「それなら漫才しよう」って思って。漫才のほうが絶対数少ないから。ナイナイの2人の漫才なんて、ほとんど観た記憶がないのですが、さすが「策士」岡村さん。
「トゥナイト」さんはいるけど、それ以外はほとんどがコントやったからね。だから俺らは漫才やって、やっぱり決勝に残ってん。
まさに「ブルーオーシャン戦略」です!(違
■5.服装で違いを出す
◆お笑いのスタイルだけでなく、見た目でも「違い」を強調!
岡村 まず、小ぎれいな衣装を着る。「バッファロー吾郎」さんとか「FUJIWARA」さんとか、当時はボロボロのジーパンとTシャツやってん。だから俺らは絶対にスーツ。相方は、ホトちゃん(蛍原徹)から借りたスーツで、俺は、「ぴのっきを」の蛸兄い(蛸島屋鶴千代)から貰ったスーツで決めて。考えてみたら、当時の若手芸人でスーツ、というのは確かにあまりいなかったような。
■6.勢いをつけてツッコむ
◆予選を通過した2人は、さらに漫才についても磨きをかけます。
本選の前日まで、岡村さん曰く「漫才講座」。
岡村 ツッコミの練習から。「俺が、ボケるなと思ったら、1回反対を向いてから振り返ってくれ」って、矢部氏に。もちろんアホみたいにネタ合わせもしてるで。その中で、「俺のボケが入ってきたら、1回俺の方じゃなく反対向いて、勢いつけてから『なんでやねん』って、こっちにツッコんでくれ」ってやった。当時の動画がないかと思ってYouTubeを漁ったのですが見つからず。
黒澤 え? そんなことしてたっけ?
岡村 してんねん。そのままはツッコまんのよ。あえて1回逆を向く。そうすると動きが出んのよ。それをもう繰り返し繰り返し練習した。
そんな大きなモーションでツッコむところが見たかった……。
■7.「そ」を入れてリズムを出す
◆さらに岡村さんの指導は続きます。
岡村(前略)あと、ツッコむ前に、小っちゃい「そ」を入れてくれとかな。細かいですが、こういうリズムにまでこだわる岡村さん、スゴス!
黒澤 「そ」? それ変やろ!
岡村 いやいや、「そ、どないやねん」って、やんねん。一発の「どないやねん」、「なんでやねん」じゃなくて、「そ、なんでやねん」て言うとなんかリズムが出んねん。でも、この「そ」がまた難しい。俺がボケ切らんうちに「そ」を入れて、絶妙なタイミングで「なんでやねん」てツッコむ。そういうの散々やったわ。
ちなみに、漫才自体は「ベイブルース」さんを参考にしたとのこと。
こうした「漫才講座」や、たび重なる特訓の結果、ネタ時間が5分のところ、何回やっても4分55秒で終わるまでに仕上がったとのこと。
そして2人は狙ったとおり、『ABCお笑い新人グランプリ』で優勝を果たしたのでした……。
【所感などなど】
◆こうして「天然素材」でも「一番ケツ」(岡村さん談)だったナイナイは、テロップのトップに登りつめます。「天然素材」は、『吉本印天然素材』というテレビ番組を見かけたことがあり、ワイワイやってて皆仲がいいのかと思ってましたが、実は、ナイナイとその他のメンバーたちとの間では温度差があったのだとか。
というのも、ナイナイの2人は、「天然素材」の女性ファンにキャーキャー言われることを、当時快く思っていなかったから。
会社の方にも「天然素材」以外の仕事を入れてくれるよう頼んでいた結果、東京のテレビ番組の前説等を足掛かりに、『とぶくすり』の前身である『新しい波』への出演を果たします。
◆その間にも『吉本印天然素材』の放映は続いていたのですが、94年3月に放送終了。
その打ち上げの席でスタッフが「またこのメンバーで番組を作りましょう!」と宣言した際、ナイナイ以外のメンバーはその言葉を信じ、今までの思い出に浸ります。
その様子を冷ややかな目で見つめるナイナイ。
というのも、その後の新番組こそが、未だ放送が続く『ぐるぐるナインティナイン』だったから。
実はこの時点で、『吉本印天然素材』と同じスタッフで、すでに初回の収録を済ませていたのでした……。
◆今でも黒澤さんが人間関係で落ち込んでいると、岡村さんは
「オマエ、俺らが東京に来て、一番最初に学んだことを忘れたんか? 人は信用したらアカンってことやろ」と言うのだそう。
そうした人間不信や、過密なスケジュール、そして完璧主義なところが、岡村さんの先日の「病気」につながったようです(詳細は本書を)。
ただし、本書に収録された対談は、復帰後のモノであり、そこからひと皮むけた岡村さんは、昔よりも楽しそう。
もちろん、そんな岡村さんに寄り添う矢部さんと黒澤さんの対談も感動モノです。
岡村さんもですが、矢部さんは矢部さんなりに、苦労されてきたんだな、と(特に岡村さん休養中は)。
今までよりもっとナイナイが好きになる1冊!
ナインティナインの上京物語
第1章 上京時代
第2章 東京にテレビを教わる
第3章 東京に住む
第4章 売れっ子芸人が背負うもの
対談 岡村隆史と。
対談 矢部浩之と。
【関連記事】
【非道?】園子温監督の売れるための努力がパネェ件(2012年10月13日)【人心掌握】有吉弘行の人心掌握術がスゴすぐる件(2009年04月18日)
【モテ?】『ひな壇芸人のトーク術』に学ぶ合コンTIPS6選(2012年09月04日)
【人心掌握】有吉弘行の人心掌握術がスゴすぐる件(2009年04月18日)
日本人なら知っておくべき「お笑い芸人直伝!鉄板フレーズ100選」のこと(2010年02月03日)
【ビジネス書?】「THE 芸人学 スゴい!お笑い 戦国時代をサバイバルする30人の成功法則」ラリー遠田(2010年01月06日)
【紳助のヒミツ】「紳竜の研究」はスゴかった(2008年03月14日)
【編集後記】
◆今回、YouTubeで動画が見つからなかったので上記では割愛しましたが、『ABCお笑い新人グランプリ』での優勝と並んで、ナイナイのターニングポイントとなっていたのが、『ねるとん紅鯨団』と『お笑いウルトラクイズ』に立て続けに出演したこと。この辺の経緯は、こちらの記事に詳しいです。
ナインティナインがチャンスをもぎ取った時 - てれびのスキマ
『ねるとん〜』の方は、こないだまで動画があって、岡村さんが、バレーボールの益子直美さんにアタックして玉砕するところとか、かなり面白かったんですよね。
もうアップロードされることもないかもしれませんが、機会があったらもう1度観てみたいです……。
ご声援ありがとうございました!
この記事のカテゴリー:「マーケティング」へ
この記事のカテゴリー:「ブランディング」へ
「マインドマップ的読書感想文」のトップへ
スポンサーリンク
この記事へのトラックバックURL
●スパム防止のため、個別記事へのリンクのないトラックバックは受け付けておりません。
●トラックバックは承認後反映されます。
当ブログの一番人気!
12月16日まで
Kindle月替わりセール
年間売上ランキング
月別アーカイブ
最近のオススメ
最近の記事
このブログはリンクフリーです