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2012年11月11日

【働き方】『サラリーマンは、二度会社を辞める。』楠木 新


サラリーマンは、二度会社を辞める。 (日経プレミアシリーズ)
サラリーマンは、二度会社を辞める。 (日経プレミアシリーズ)

【本の概要】

◆今日お送りするのは、以前『人事部は見ている』という本を当ブログでもご紹介している、楠木 新さんの最新刊。

『人事部は見ている』が会社側からの視点だったのに対して、本書では個人の側からの視点で「働くこと」に関して掘り下げられています。

アマゾンの内容紹介から。
頑張っても、自分には返ってこない。結局、実力より協調性で決まる。40歳になったら自分の評価は変えられない…。多くの会社員は、在籍したまま会社から心を離すが、本当の人生はそこから始まる。会社員はライフステージごとにどう考え、どう働くべきか、多くの事例を交え具体的に考える。

「会社人生」にふと疑問を感じることがあるなら、一読の価値アリです!


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【ポイント】

■1.自分自身のために働かない
 長い経済の低迷もあって、社内に閉塞感が漂っている企業が増えていることは間違いない。だからといって、頼れるのは自分自身だけだと、自分のためだけに働いてはいけない。
 自分のためだけに働いていたら、何かで自分を鼓舞しないとエネルギーは湧き上がってこない。無理を続けるとすぐに燃え尽きてしまうだろう。教授が述べているように、誰かの役に立っていると実感できることが、長く働ける要件である。


■2.少なくとも3年努力する
 第5章でも述べるが、実は私はこの3年間ということに興味を持っている。会社員から転身した人々の話を聞くと、「3年で1つの目処がついた」と話す人が圧倒的に多い。学生から社会人への切り替えにも、この程度の時間が必要だと思う。
 落語家の桂枝雀師匠は弟子に、「まず8000時間稽古をしたら」と話した。1日8時間とすればほぼ3年である。比較的転勤の多い業界でも、1つの職場に在籍する目処を3年としている会社は多い。
 人は一定の時間をかけないと自分の立場を変えることはできない。人の感覚という尺度においては、最低3年程度の時間が必要なのだろう。逆に言えば、少なくとも3年程度はとにかく努力してみることだ。


■3.現場の仕事にコンテンツを求める
 たしかに「会社の仕事は収入を得るため」と割り切る考え方もあるだろう。しかし時間と労力を考えると、仕事とはまったく別の何かに取り組むのは、現実的には難しい。若いうちは日常の仕事から何かを学び取るほうがうまくいくことが多い。加えて、立場や考え方の異なる仲間と一緒に働くことは会社を離れてはなかなか得られない経験なのだ。


■4.協調性を持つ
『人事部は見ている。』を執筆する際に、数多くの人事担当者に取材したが、その時に彼らが評価する社員の条件として挙げていたのは、一緒に気持ちよく仕事ができる人であり、組織のパフォーマンスが上がる環境づくりができる人だった。誰とでもオープンに意思疎通ができる、あるいは皆がスムーズに仕事を進めることができるよう縁の下の力持ちになれる人なのである。


■5.人によって磨かれる
 組織の中で、私が化けたと感じる人材は、必ず人に鍛えられ、他人の目をくぐりぬけている。1人だけでは知識・スキルを得ることはできても成熟には至れない。ドブ板を踏む営業で見違えるようになる人はいるが、1人地道に研究に取り組むだけでは「化ける」まではいかない、というのが実感である。


■6.身銭を切る
 評論家の渡部昇一氏は、その著書の中で「凡人の場合、身銭を切るということが、判断力を確実に向上させるよい方法になる」と述べている。
 会社の接待でいくら高額の会席料理を食べても、私は美味しいと感じたことがない。一方、自分でお金を出せば五感がそれだけ研ぎ澄まされる。味わいが違ってくる。
 また丸抱えの出張時と、自分でお金を出す旅行ではやはり感じることが異なる。タダで学ぶことはできない。身銭を切ったものでないと、文字通り自分の身にならないのである。


■7.形よりもありように留意する
 世の中では、起業することをことさら強調したり、会社員は、自立するために武器を持たなければならないなどという主張が闊歩している。
 しかし働き方はあくまでも形、器に過ぎない。起業・独立やフリーランス、会社員といった働き方自体に優劣や意味があるのではなく、やっていることが楽しいかどうかがポイントである。何をしているかよりも、そのありようが重要なのである。


【感想】

◆タイトルにある「二度会社を辞める」ですが、これは実際に会社を退職することだけではなく、もっと広い意味でのこと。

例えば「会社人間を辞める」「働き方を変える」「二足のわらじを履いてみる」等々。

確かに、かつての「右肩上がり」の時代とは違って、頑張っても必ずしも報われない会社人間はかなり増えています。

そこで直面するのが「このままでいいのか?」という想い。

これを楠木さんは「こころの定年」と呼んでいます。

実際、楠木さんも、40代後半に「いきなり仕事を投げ出した」ことがあるのだそう。


◆実は、あのドラッカーも著作『明日を支配するもの』で「第2の人生」について真剣に考えていたのだとか。

明日を支配するもの―21世紀のマネジメント革命
明日を支配するもの―21世紀のマネジメント革命

ドラッカーによると、解決策は以下の3つ。

「文字どおり第2の人生を持つこと」

「パラレルキャリア(第2の仕事を持つこと)」

「ソーシャル・アントレプレナー(篤志家)になること」
(詳細は本書を)

そして楠木さんの言うところの「こころの定年」の解決策は、この中の「第2の人生」に近いとのこと。

本書では第4章以降で、その解決策について探っています。


◆割愛した中で興味深かったのが、楠木さんが取材している中で、違う人と何回か黒澤明監督の映画「生きる」の話題が出たというくだり。

生きる (映画) - Wikipedia

生きる<普及版> [DVD]
生きる<普及版> [DVD]

この映画では、主人公の市役所課長が、癌の告知を受けたことにより、生きることや働くことの意味を考えます。

同じように、転身者の中には阪神・淡路大震災が転機になったという人が多かったのだそう。

確かに、自分の人生に限りがあることを意識すると、生き方や働き方を問い直すのも自然だと思います。


◆本書は、通常当ブログで主にご紹介しているようなビジネススキルを上げたり、出世するためものではありません。

場合によっては、昇格を断わることを推奨する結果にもなりうるでしょう。

それもひとえに「人としての幸せ」のため。

むしろ、「出世一辺倒」の方にこそ読んで頂きたい1冊です。


悔いのない人生を送るために!

サラリーマンは、二度会社を辞める。 (日経プレミアシリーズ)
サラリーマンは、二度会社を辞める。 (日経プレミアシリーズ)
プロローグ 人事部には見えないものがある
第1章 仕事で自己実現を目指してはいけない
第2章 会社人間になってみる
第3章 こうして会社人生への疑問は生まれる
第4章 会社はサラリーマンの家なのか
第5章 会社員のまま2つの自分を持つ方法


【関連記事】

【出世の秘訣?】『人事部は見ている』に学ぶ出世の6つのポイント(2011年07月10日)

【給料UP?】『うっかり一生年収300万円の会社に入ってしまった君へ』平康慶浩(2012年10月23日)

【必読!】『会社人生は「評判」で決まる』相原孝夫(2012年02月17日)

【オススメ】『35歳までに読むキャリア(しごとえらび)の教科書』渡邉正裕(2010年10月14日)

【オススメ】「キャリア・ショック」高橋俊介(2009年04月11日)


【編集後記】

◆今日の本に関連して(?)。

週刊 東洋経済 2012年 11/17号 [雑誌]
週刊 東洋経済 2012年 11/17号 [雑誌]

……さすが東洋経済はエグいところをw


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