2012年11月02日
【オススメ!】『スタンフォードの自分を変える教室』ケリー・マクゴニガル
スタンフォードの自分を変える教室
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、「全米主要メディアで軒並み絶賛を受けた世界的ベストセラー」。タイトルは普通の自己啓発書のようですが、これがまたどうして「意志力」に関する極めて実践的なライフハック本でした。
アマゾンの内容紹介から。
スタンフォード大学の超人気講義、ついに日本上陸。心理学、神経科学から経済学まで、最新の科学的成果を盛り込み、受講した学生の97%の人生に影響を与えた「驚くべきレッスン」。
既に丸善オアゾ店では、激売れの模様。
またまた付箋貼り過ぎワロエナイの巻!
いつも応援ありがとうございます!
【ポイント】
■1.呼吸のぺースを1分間に4回から6回までに抑えるBreathing / db_in_uk
これだと10秒から15秒でひと呼吸することになるので、ふつうに呼吸するよりもだいぶゆっくりですが、少し辛抱強く練習すればたいして難しくはありません。
呼吸のぺースを遅くすると前頭前皮質が活性化し、心拍変動も上昇します。
これが、脳と体をストレス状態から自制心を発揮できる状態に切り替えるのに役立つのです。このテクニックを数分間試すうちに、気分が落ち着いてコントロールが利くようになり、欲求や間題に対処する余裕が生まれます。
■2.お菓子の代わりにナッツを食べる
たしかに、非常時に糖分をとれば一時的に意志力はアップします。けれども、長い目で見た場合、やたらに糖分を取るのは自己コントロールのための戦略としてはよくありません。(中略)
多くの心理学者や栄養士が推奨しているのは「低血糖食」、すなわち、血糖値を一定に保つための食事です。
低血糖食品とは、脂肪分の少ないタンパク質、ナッツ類、豆類、食物繊維の豊富な穀類やシリアル、そしてほとんどの果物や野菜など、基本的には素材のそのままの状態が保たれていて、糖分や脂肪や化学物質などの大量の添加物が入っていない食品です。
■3.「魔法の言葉」に騙されない
organic Oreos / williac
厄介なのは、食べ物にせよ他の物にせよ、「いい」や「悪い」で判断すると、いい気分になったせいで常識が吹っ飛んでしまうことです。レストランやマーケティング担当者はそこにつけ込み、99パーセント悪いものに、たった1パーセントのいいところをくっつけます。(中略)
最近の研究を見ても、魔法の言葉が古いものから新しいものにすり替わっただけだとわかります。"ウォーガニック"という表示のついた<オレオ>クッキーは、ふつうの<オレオ>よりもカロリーが少ないように感じて、毎日食べても大丈夫だと思ってしまうらしいのです。
■4.失敗した自分を許す
The four capital mistakes of open source / opensourceway
最初の試験で直前まで勉強しなかったことで自分を責めた学生たちは、自分を許した学生たちに比べて、その後の試験でもやはり勉強を先延ばしにする傾向が見られました。最初の試験の準備に失敗したことで自分を責めた学生ほど、次の試験ではさらにのんびりしてしまったのです! 自分を責めるよりも許した学生のほうが、次回は着々と準備をする気になりました。
■5.誘惑を感じても10分間待つ
194: Ten minute waiting / niseag03
たとえば、10分待たなければ食べられないクッキーと、減量という長期的な報酬を比較しても、脳は「すぐに手に入る報酬」と比較したときのようなバランスを欠いた判断はしません。(中略)
脳を落ち着かせて賢明な判断をさせるためには、どんな誘惑に対しても必ず10分間は辛抱して待つようにします。もし、10分経ってもまだ欲しければ、手に入れてもよいでしよう。
■6.将来について想像する
my future (1) / Joelk75
ドイツのハンブルク-エッぺンドルフ大学医療センターの神経科学者たちは、「将来について想像すること」は欲求の充足を遅らせるのに役立つことを示しました。それも「将来の報酬」を思い描くのではなく、「ただ将来のことを考えるだけ」で、効果があるのです。
たとえば、プロジェクトをすぐに立ち上げるべきか、それとも延期すべきか、来週は予定通りミーティングに出席しようか、それともスーパーへ買い物に行こうか、そんなことを考えてみてください。頭のなかで将来のことを思い描くと、脳はあなたの現在の選択が将来に及ばす影響を、具体的に、即座にはじき出します。
■7.「やらない力」を「やる力」に変える
Well, It's About Time. / Emily Rachel Hildebrand
まったく同じことをするのでも、ときには2通りのやり方を考えることが可能です。たとえば、ある受講生の男性は「遅刻しない」という目標を「一番乗りで到着する」もしくは「5分前に到着する」という目標に置き換えることにしました。
たいしたちがいはないように思うかもしれませんが、そのおかげで彼は以前よりもずっとやる気が出ました。時間通りに到着したら「レースに勝った」と思うことで、めったに遅刻しなくなりました。やってはいけないことよりも、むしろやりたいことに注目すれば、皮肉なリバウンド効果を避けることができます。
【感想】
◆冒頭でも申しあげたように、本書はタイトルが「いかにも自己啓発っぽい」ので、人によっては書店でスルーされているかもしれません。というか、私自身も丸善オアゾ店で売れている、という情報がなかったら、多分手にとらなかったハズ。
あー、でもアマゾンの書影では帯がカットされているんで知りようがありませんけど、この手の本の著者さんとしては例外的(?)にお綺麗なんで、男性陣としては気になっちゃうことはあるカモw
もっとも、私は在庫があったお店でお取り置きをして買ったので、レジで初めて著者が女性であることを知ったのですがw
◆さて、本書をいったん手にとると、タイトルからも装丁からも想像がつかない展開に引きずり込まれます。
主たるテーマは「意志力」。
「誘惑」や「依存症」、さらには「物事の先延ばし」といった多くの人にとって改善したい問題について、その対処法を言及してくれています。
この辺は、先日ご紹介したこちらの本にも通じるところがありますね。
ヤル気の科学 行動経済学が教える成功の秘訣
参考記事:【スゴ本!】『ヤル気の科学 行動経済学が教える成功の秘訣』イアン・エアーズ(2012年10月30日)
この本との違いは、問題に対してのアプローチが「コミットメントか否か」と言ったところで、本書の場合は上記ポイントのようにコミットメント以外の方法について述べられているワケです。
◆ちなみに、ボリュームの関係で、ここでは7つしか選んでませんが、一足先に本書を紹介された丸善オアゾ店の田中さんのレビューにあるように、運動や睡眠、瞑想といったものも効果がありますし、他にもこんな方法が。
・(意志の弱い)もうひとりの自分に名前をつける
・選択した瞬間を振り返る
・オフィスから出て、近くの公園など緑のある場所に行く...etc
また、すぐにマシュマロを食べるのを我慢した子供の方が、将来成功する、という「マシュマロ・テスト」の話は私も聞いたことがありましたが、実は我慢できた子供の多くが「マシュマロを見ない」ようにしていた、という事実は、本書を読んで初めて知りました。
つまり
・欲望の対象を隠す
というのも、立派な作戦なんですね。
◆そして最も興味深かったのが、第4章の「罪のライセンス」。
なぜタイガー・ウッズがあのようなスキャンダルを起こしたのか(ちなみにダイエット中の人も浮気しやすいそうw)?
なぜファストフードの選択肢にヘルシーなサラダが入っていると、そうでない場合に比べてかえって太りそうな食べ物を選んでしまうのか?
なぜ環境にやさしい商品を購入した人にテストを受けてもらうと、カンニングをする傾向があるのか?
詳しくは本書を読んで頂くとして、ここだけでも1本記事が書けるほど、色々と考えさせられました。
◆本書は各章の終わりに「ポイント」としてまとめを収録しており、ここを読むだけでもエッセンスは吸収できます。
ただし、興味深い事例ともどもキチンと読み込み、実践(本来は各章を1週ごとに消化するプログラム)するのがキモかと。
1点だけ気になったのが、これだけ豊富に実験結果等を紹介しながら、巻末にエビデンスがないことなんですが、もし全て収録していたら、400ページ近くなっていたかもしれないので、これはこれで良しとしますw
いずれにせよ、今年ご紹介した翻訳本の中でも1,2を争うクオリティだと思いますので、また品切れにならないうちにお読み頂きたく。
これまたオススメせざるをえません!
スタンフォードの自分を変える教室
Introduction 「自分を変える教室」へようこそ : 意志力を磨けば、人生が変わる
第1章 やる力、やらない力、望む力 : 潜在能力を引き出す3つの力
第2章 意志力の本能 : あなたの体はチーズケーキを拒むようにできている
第3章 疲れていると抵抗できない : 自制心が筋肉に似ている理由
第4章 罪のライセンス : よいことをすれば悪いことをしたくなる
第5章 脳が大きなウソをつく : 欲求を幸せと勘ちがいする理由
第6章 どうにでもなれ : 気分の落ち込みが挫折につながる
第7章 将来を売りとばす : 手軽な快楽の経済学
第8章 感染した! : 意志力はうつる
第9章 この章は読まないで : 「やらない力」の限界
第10章 おわりに : 自分自身をじっと見つめる
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ビジネスの達人がこっそり教えてくれる『「先延ばし」にしない技術』の真実(2012年01月09日)
【編集後記】
◆『成功の心理学』のデニス・ウェイトリーの新刊。人生とは、一着にならなければならないような愚かな生存競争ではない
原著がかなり古いので、おそらく復刊というか新訳みたいなものかと。
ご声援ありがとうございました!
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スタンフォードの自分を変える教室作者: ケリー・マクゴニガル出版社/メーカー: 大和書房発売日: 2012/10/20メディア: 単行本 自己啓発書の集大成のような一冊。 最新の脳科学や認知系心理学の研究内容をまとめて、やる気を出す方法・悪い習慣を我慢する方法を伝わりやす
人事を尽くすために。:スタンフォードの自分を変える教室【本読みの記録】at 2013年07月14日 22:17
この記事へのコメント
付箋紙すごいですね!
わたしは、DogEar派なので、
上下4スミ折り折りになって、
笑えない感じです(^^;
わたしは、DogEar派なので、
上下4スミ折り折りになって、
笑えない感じです(^^;
Posted by 本シェルジュ村上 at 2012年11月04日 17:44
>本シェルジュ村上さん
コメントありがとうございます。
私は生理的な理由で、本に書いたりページを折ったりできないんですが、そのおかげで、付箋は欠かせません。
以前、本田直之さんのドッグイヤーした本を拝見したことあるのですが、本がその分だけ分厚くなっていました(笑)。
コメントありがとうございます。
私は生理的な理由で、本に書いたりページを折ったりできないんですが、そのおかげで、付箋は欠かせません。
以前、本田直之さんのドッグイヤーした本を拝見したことあるのですが、本がその分だけ分厚くなっていました(笑)。
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2012年11月05日 06:44
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