2012年10月18日
【脱スキル】『なぜ、勉強しても出世できないのか? いま求められる「脱スキル」の仕事術』佐藤留美
なぜ、勉強しても出世できないのか? いま求められる「脱スキル」の仕事術 (ソフトバンク新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、前々回の「未読本・気になる本」の記事でも人気だったキャリア本。そこでも書いたように、予想通り少々「カツマーに喧嘩売っとんのか?」(?)的な内容でした。
アマゾンの内容紹介から。
「会社はアテにならない」「頼れるのは自分だけ」―華麗なキャリアアップを目指して、懸命にスキルアップに励んだ人たち。だが彼らの中には、努力が報われずに職場で冷遇されたり、転職を繰り返すたびにランクダウンしていくなど、不遇をかこつ人が多い。彼らはいったい何を間違ったのか?ブームに乗り、“スキルアップ教”にはまった人たちの現在を追うと同時に、今、本当に求められている能力とは何なのか?幸せな職業人生を送るための「脱スキル」の仕事術を紹介する。
今回は本書の中から、サブタイトルにもある『「脱スキル」の仕事術』を7つ抜き出してみます。
いつも応援ありがとうございます!
【ポイント】
■1.地方を目指すCountryside near Amberley / Jim Mead
これまでの章で、弁護士、医師、税理士など「士業」の冷遇ぶりについて書いたが、これは東京をはじめとする都会に限った話に過ぎない。
第3章で、今日本の医師を取り囲む現状は「不足」ではなく、「偏在」だと書いたが、これと同じ現象が、弁護士、税理士にも起こっている。つまり、弁護士も医師も税理士も、地方ではまだまだ人手不足なのだ。したがって、地方を目指す限り、将来性は十分に高いと言っていい。
■2.仕事を選ばない
Ecstatic Peole in Concert from Bergfest of Erlangen / epSos.de
ビジネス書著者の中には、「スキルにならない仕事はやるだけ無駄だから、違うと思ったら早く転職しないとキャリアにならない」というような趣旨のことを言う人がいるが、鵜呑みにはしないほうがいい。大抵の場合、こうした著者自身、雑用を馬鹿にする傲慢な性格のせいで、組織不適合者だったりする。
反対に、一代で東証一部上場の会社を立ち上げた社長のような大人物は、今でも大売出しの日は自らハッピ着用で旗を振るなど、汚れ役や冴えない仕事を少しも厭わず買って出るものだ。
■3.勉強に逃げない
study. / billaday
リスクなしの安全地帯でぬくぬくとやっていて得られることは少ない。前出の経営共創基盤パートナーの塩野氏はこんなことを言っていた。
「20代でちゃんとイジメられてない人はダメ。ちゃんと傷ついてきた経験のない人にタフな交渉はできないので、うちでは採りません」
スキルアップ族の多くが、昔から勉強のできる優等生だ。だから、ついつい自分の得意な「勉強」で勝負したくなるのは分かるが、あえて、不得意なことをやって無様な姿を人にさらすことも必要なのではないか。
■4.職場の「デキる人」を真似る
Maryland Business Roundtable For Education Meeting / MDGovpics
スキルアップ族は、往々にして、会ったこともない人に憧れる。(中略)
それよりは、自分の職場にいる、「デキる人」にもっと目を向けたらどうだろうか。営業だったら営業でトップを張ってでもいない限り、自分より実績のある人はいるはずだ。
だったら、彼ら・彼女らを、食い入るように観察して、どうやってお客の信頼を獲得しているのか、懐に入り込んでいるのか、商品知識を増やしているのか、内部の技術者との連携がなぜうまいのか、とことん観察し、その技を徹底的に真似することから始めてみてはどうだろうか。
■5.スキルと実務能力の違いを理解する
Superman / aka Kath
前出の経営共創基盤パートナー塩野氏が、こんなことを言っていた。
「"東大君"が外資コンサルなどに入って、うまくいかなくってクビになり、うまくいかなかったのは『まだ偏差値が足りないからだ』とばかりに、資格やMBAに走る。そういう人は、いわば『飛べないスーパーマン』。飛べなかったら意味がない。つまり実務ができなければ意味がない」
資格を取る時間があったら、足を動かして、タダ働きでもいいから働かせてくれと現場に入るほうが、よっぽど実務能力を得るのに役立つことは言うまでもない。
■6.人を使うのではなく、自分が動く
Creatives need paper, card, glue and pencils.. / jmmcdgll
上昇志向、昇進願望の強い人は、若いうちから、高級そうな仕事ばかりやりたがる傾向がある。交渉団の一員になりたがる、プレゼンをしたがる、戦略を考える仕事をしたがる、などだ。(中略)
しかし、こういう人に限って、だいたい出世しない。なぜか? 簡単に言えば、人望がないからだ。では、人望とは、どうやれば身に付くのか? それは、下の人に優しくするといった単純なことだけではない。最も効果的なのが、どんな格好悪い仕事でもえり好みせず、自ら率先してやることだ。
ある弁護士に聞いた話だが、その人の弁護士事務所の代表は、今でも訴状の袋とじ作業を、他のどの所員より上手に早く、大量にやるという。
■7.資格を取るなら、自分の専門を強化する資格を
Income tax / Alan Cleaver
自分の専門性をより深く追求するための資格取得やスキルアップなら、仕事に差し障りのない範囲であれば、むしろトライすべきだろう。例えば、長らく、メーカーの経理部に勤めていた人が、税務一般を税理士に丸投げするのではなく、より明確な指示が出せるように、税理士資格を取得する。あるいは、人事専門のジャーナリストが、人事について体系的な知識を積むために、人事を学べる大学院に進学する、といった具合だ。
税理士資格を持った経理部員は、どう考えてもリストラはしにくいだろうし、「博士」の肩書を持ったジャーナリストは、対外的に箔が付き、押し出しがよくなるのは言うまでもない。
【感想】
◆本書は下記目次にもあるように、まず第1章で日本のスキルアップをめぐる、現象やブームについて確認しています。私は当ブログの読者さんの多くの方と同じく(多分)、本田直之さん、勝間和代さんの登場の頃、つまり2006年終わりから2007年にかけて「スキルアップ」というフレーズを意識するようになりましたが、実は日本ではもっと以前からスキルアップはブームになっていました。
まずはバブル期のMBAブーム。
当時の日本企業は、エリート社員のスキルアップに積極的であり、確かに私の会社員時代の同期も2人ほど、MBAを取りに社費で渡米しています。
また気がつかなかったのがリクルートの戦略で、自社の雑誌を売る(というか広告を取る)ために、転職ブーム、資格ブーム、起業ブーム等をしかけたのだそう。
さらには、昨今の不況もあって、就職、転職、独立、さらにはリストラ回避のために、資格取得やTOEICの勉強に励む人も激増しています。
◆しかし、それらが期待したほど効果を上げられていないのは何故か、というのを解説したのが本書の第2章「 なぜ勉強しても、出世できないのか?――スキルアップのウソ」。
具体的な理由はアマゾンの目次ページにあるように、9つほど挙げられていますが、ここがある意味本書のキモでしょう。
細かい内容については本書にてご確認頂くとして、怖いのが理由の1番目にあげられている「コモディティ化」。
国の政策によって、それまでより大量に合格者が増やされた弁護士や公認会計士は、今や就職難に陥っています。
本書では触れられていませんが、こうした資格取得者は登録等により周辺資格業務を兼ねることができるケースもあるので、他の資格取得者(税理士を含む!)もうかうかしてはいられません。
さらには、理由の2番目の「グローバル化、IT化」の典型例が、まさに「会計ソフトの普及で苦境に陥る税理士事務所」のような気が。
◆といった資格取得者の現状について事例を挙げて紹介しているのが、本書の第3章「スキルアップに振り回される人々」で、ここでは、税理士、会計士、弁護士、医者、外資系コンサルといった業種の方々の悲哀が語られています。
加えて「英語公用化」を打ち出した、「日本一のアパレル企業」や「大手インターネット企業」の社員たちが、TOEICに振り回される状況等々。
確かに、英語を使った実務とTOEICとの関連性の薄さについての指摘は多いですが、こういう「会社の基準がTOEIC」の場合、TOEICの点数を上げることが最適解ですから、それはそれでしょうがないと思います。
ただ、「英語が喋れるようになればなるほど、TOEICの点数が上がらない」といって、社員が続々と英会話学校を辞めている、というのはいかがなものかと……。
◆第4章では「わりに合わない勉強」を叩いているのですが、ノマドやフリーランス、朝会といった、「スキルアップ好き」の方が好みそうなものは軒並みアウト(利害関係者がアマゾンレビューでdisりそうな)。
そしてそれに続く第5章が、上記で一部を抜き出した、「脱スキル」の仕事術(本書では28紹介されていますが)になります。
結局、日頃の業務をしっかりやって、勉強していることを鼻にかけず、周りと協調性を持てるなら、それで幸せになれる、ってまとめちゃいけませんかw
いずれにせよ、資格取るなら、取ってからどうするのかの「出口戦略」も必要なのかと。
スキルアップの勉強をする前に読んでおきたい1冊!
なぜ、勉強しても出世できないのか? いま求められる「脱スキル」の仕事術 (ソフトバンク新書)
はじめに――スキルアップを煽った私
第1章 日本を覆った"スキルアップ教"
第2章 なぜ勉強しても、出世できないのか?――スキルアップのウソ
第3章 スキルアップに振り回される人々
第4章 最も「わりに合わない」勉強はコレだ!
第5章 「脱スキル」で幸せな職業人生を作る28の仕事術
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【編集後記】
◆私もファンである橘 玲さんの新刊がいよいよ登場!臆病者のための裁判入門 (文春新書 883)
内容紹介を読むと、ウチでご紹介できるかは微妙ですが、とりあえず読んでみるツモリです。
ご声援ありがとうございました!
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