スポンサーリンク

       

2012年10月07日

【結論思考】『出来る人ほど情報収集はしないもの! ─情報洪水に溺れないために』津田久資


出来る人ほど情報収集はしないもの!  ─情報洪水に溺れないために (WAC BUNKO 171)
出来る人ほど情報収集はしないもの! ─情報洪水に溺れないために (WAC BUNKO 171)

【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、タイトルでドキッとして、思わず買ってしまった1冊。

著者の津田久資さんは、当ブログでは作品を取り上げておりませんでしたが、他書の著者略歴によると、「東大法学部卒、カリフォルニア大学バークレー校経営大学院(MBA)卒」であり、博報堂やボストン・コンサルティング・グループでの勤務経験もある「ロジカル」な方のようです。

版元にもアマゾンにも内容紹介がないので、本の帯から一部引用。
新商品・戦略等、何か新しいアイデアを出したい、出さなければならない局面になったら、「まず考える」こと。出来る人とは、日々勉強し、いざとなったら、まず考えて、最小限の情報収集で自らの確信と同時に人への説得を成し遂げる人である。

自分のやり方を見直す、よいきっかけとなるカモ?


人気blogランキングいつも応援ありがとうございます!




【ポイント】

■1.ビジネスの結果は「しまった」か「まいった」
「しまった」は「出来たはずなのにスピードで競合相手に先を越されてしまった」というようなときに出る言葉です。一方、「まいった」は「それはさすがに思いつくべくもなかった」というように、ある意味、完敗の際に出る言葉。「敵ながらアッパレ」と白旗を挙げるしかない状態ですね。
 ビジネスとは、極論すれば「戦い」です。競合相手に対して、勝つか負けるかでしかありませんが、ビジネスにおける勝ち負けのすべてのケースは、このふたつに分けて考えることができるのです。


■2.情報収集とは本来「考える」を伴う作業
本来は、自分にとって、今回の仕事にとって必要十分な情報とは何か? 情報を集める前に、まずはそこから考えなければいけないのです。情報収集とは本来、機械的にデータを集める作業ではなく「考える」を伴う作業だということです。
 ところが多くの人々は、そのことを明確には意識していません。おそらく現在の日本人のほとんどと言っていい人たちがそうなのではないでしょうか。そしてその理由は、本来は「考える」ことによって初めて着手できるはずの情報収集が、考えずにルーティンワークとして済んでしまっているからなのです。


■3.情報を集めるだけでよい「高級ルーティンワーク」
 考えなくとも、あるいは、しっかり考えなくても、漠然とでも何が必要な情報なのかわかっている。つまりこうした情報収集に関してはルーティンなワークです。筆者はこれを「高級ルーティンワーク」と呼んでいます。(中略)

 このタイプの仕事ばかりをこなしていると、意識的か無意識かを問わず「何処かに正解がある」という認識になってしまいます。
 だとすると、組み立て方をも情報収集しようとしても不思議はないでしょう。情報収集が何処かに既に存在する正解を見つけ出すためのプロセスに過ぎなくなってしまいます。
 この意味において「高級ルーティンワーク」は、考えなくても、一生懸命情報を集めて積み重ねていけばいい仕事なのです。


■4.「高級ルーティンワーク」に慣れると「必要な情報はある」と思いがち
 実例を挙げて言うと、売り上げの男女比率という情報が必要な小売店は、それが取れるシステムをレジに組み込んだりしています。
 しかし本来は、前述したとおり、売り上げ情報と言っても、無限にあるわけです。一日ごとの売り上げも、一時間ごとの売り上げも、県ごとの売り上げも、市ごとの売り上げも、お天気ごとの売り上げもすべて売り上げ情報です。
 ですから、調べて情報が存在することのほうが普通は稀なはずなのです。ですが、高級ルーティンワークに慣れてしまうと「調べれば情報は存在するはずだ」という無意識の前提を持ってしまうのです。
 実際のビジネスの会議において、「この情報がないので何とも言えないのです」と言う人がよくいませんか? それはこれです。


■5.一文が短い文章を書くようにする
どうせ文章を書くなら一文が短い、即ち句点(丸)と句点との間が短い文が接続詞や接続助詞でつながっている文章にすることです。違う言い方をすると、「一文の中に多くの接続詞や接続助詞を入れない」と言ってもいいでしよう。それが文章の質・思考の質を高めます。(中略)

 まず、一文が短くなると、その文の内部の構造、即ち言葉と言葉の組み立てを、検討し易くなります。そして、一文の構造が整理されると、今度は文と文との組み立て、つまり文章の組み立ても検討し易くなるのです。


■6.数字や固有名詞で境界線をはっきりさせる
収隻すべきかどうか迷う情報というのは、この暖昧な境界線の付近にある情報の話であり、そして境界線がはっきりしていない限り、この付近の情報を片っ端から集めることになってしまいます。その結果、余計な情報収集に時間を取られる結果になるわけです。(中略)

 明確性を持たせるための境界線を引くのに適しているのは、数字や固有名詞などです。定量化できるものは数字で「ここからここまで」と境界線で分ける。そうでないものは、固有名詞を使うなどして、可能な限り明確にすることが大切です。


【感想】

◆少々引用量が多かったので、この辺で。

本書は、今現在日本で主流を占める「高級ルーティンワーク」の問題点等について、下記目次の第2章までかけて丹念に解説しています。

そもそも著者である津田さんの大学時代、周囲には、こうした「正解のある問題」を解くのが得意な人が多かったのだそう……って、ご出身が東大法学部ですから、さもありなん。

そしてそれは、政治の世界でも同様で、鳩山元総理(東大工学部卒)も本書の表現を借りれば「答えを『探す』ことしかしなかった」ということになります。

もっとも鳩山元総理の場合、本来必要な情報をも把握してなかった気もしますが……。


◆さて、この「高級ルーティンワーク」的な仕事のやり方でも、かつては問題がありませんでした。

景気は右肩上がりで、ちょっとした改善・改良でも業績もアップしたわけですから。

ただし、今の時代のように「イノベーション」や「新しいアイデア」が要求されるのなら話は別。

まず仮説を立て、しっかり考え抜いた上で、問題に対処する必要があります。


◆本書ではそれを「結論思考」と呼び、第3章以下で展開。

さらには、第4章ではおなじみ「MECE」の使いこなし方について指南してくれています。

正直、切り札がMECEというのは少々拍子抜けに思われる方もいらっしゃいそうですが、なかなかこれがどうして。

本書によると「MECEは仮説思考とセットになってこそ、その威力を発揮する」とのことですから、既に身につけてらっしゃる方でも、一読をオススメしたいところです。


思考停止に陥らないために!

出来る人ほど情報収集はしないもの!  ─情報洪水に溺れないために (WAC BUNKO 171)
出来る人ほど情報収集はしないもの! ─情報洪水に溺れないために (WAC BUNKO 171)
Part.1 出来る人ほど情報を集めない
Part.2 出来る人の仕事に「正解」はない
Part.3 これが、出来る人の「結論思考」だ!
Part.4 「MECE」というルールを常に意識しよう
改めて「まず考える」──終わりに代えて


【関連記事】

【これはスゴイ!】『経営学を「使える武器」にする』高山信彦(2012年05月20日)

【問題解決】『イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」』安宅和人(2010年11月30日)

【オススメ!】『3分でわかる問題解決の基本』大石哲之(2010年09月03日)

【必読】『問題解決のためのファンクショナル・アプローチ入門』横田尚哉(2010年08月18日)

【面白】『頭がよくなる「経済学思考」の技術 』木暮太一(2010年06月07日)


【編集後記】

◆ちょっと気になる本。

天才脳をつくる!: 潜在能力をぐんぐん伸ばす、計算と記憶のテクニック
天才脳をつくる!: 潜在能力をぐんぐん伸ばす、計算と記憶のテクニック

翻訳本で350ページというのは、読むのに結構骨が折れそうですがw


人気blogランキングご声援ありがとうございました!

この記事のカテゴリー:「ビジネススキル」へ

「マインドマップ的読書感想文」のトップへ

スポンサーリンク




               

この記事へのトラックバックURL


●スパム防止のため、個別記事へのリンクのないトラックバックは受け付けておりません。
●トラックバックは承認後反映されます。