2012年10月04日
【東大式?】『もう「東大話法」にはだまされない 「立場主義」エリートの欺瞞を見抜く』安冨 歩
もう「東大話法」にはだまされない 「立場主義」エリートの欺瞞を見抜く (講談社プラスアルファ新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、東京大学東洋文化研究所教授である安冨 歩さんによる「日本のリーダー達によく見られる不誠実な話法」の解説本。安冨先生はこの話法を「東大話法」と呼び、本書の中で糾弾しています。
アマゾンの内容紹介から。
わざとややこしく話して問題をウヤムヤにし、ケムにまいて責任逃れをする、徹底的な不誠実にごまかされないために。立場を守るために、なりふりかまわず周囲を欺く日本のリーダーたちの「法則」を、現役東大教授が斬る。
意外なことに、私たちもこの話法を知らないうちに使っていたという……。
いつも応援ありがとうございます!
【ポイント】
■1.わけのわからない見せかけの自己批判によって、誠実さを演出する「創業家一族には絶対的服従で、逆らえない風土があった」立場上やったことなので、許してちょうだいというわけです。もちろん、これも「東大話法」であることは言うまでもありません。ルール(15)「わけのわからない見せかけの自己批判によって、誠実さを演出する」というテクニックで、この「東大話法」によって、大王製紙に向けられている「公正さへの意識がそもそもないのではないか」という批判を、いつの間にか、井川一族バッシングへとすり替えることに成功したのです。
■2.ああでもない、こうでもない、と引っ張っておいて、自分の言いたいところへ突然おとす
たとえば、「原子力は使うべき」ということを前提として、「世界的にリサイクルの流れだから原発もリサイクル」など意味不明な自分に都合のいい話が次々と述べられていきます。そして、支離減裂なまま都合のいい話で畳み掛けていき、トドメとしていきなり「ただ止めればいいということではすまされないような気がします」と落とします。
ルール(18)「ああでもない、こうでもない、と引っ張っておいて、自分の言いたいところへ突然おとす」の典型的なパターンです。
■3.自分の信念ではなく、自分の立場に合わせた思考を採用する
「我々の仕事は原子力の推進であって、安全ではない」前にも述べましたが、鈴木達治郎原子力委員会委員長代理は、福島第一原発事故直後にこう語って、周囲を驚かせました。
まず勝手に自分の「立場」を先に決めておいて、「原子力の推進」が「役」なので、安全には責任がないという理屈です。東大教員が学生にいう「まず立ち位置を決めてから議論しろ」を実践されているわけです。
■4.自分を傍観者と見なし、発言者を分類してレッテル貼りし、実体化して属性を勝手に設定し、解説をする
「なんやかんや言っても、サラリーマンはラクやからな」今思えば、これも捻りの利いた「東大話法」なのです。ルール(8)「自分を傍観者と見なし、発言者を分類してレッテル貼りし、実体化して属性を勝手に設定し、解説をする」というのがありますが、それと同じで、自分自身のことであるというのに、まるで傍観者のように、「サラリーマンという仕事の解説」をしています。
■5.「誤解を恐れずに言えば」と言って、ウソをつく
若手のサラリーマンは、会社の歯車なんです。上司の指示通りに黙々と働くべきです。まず「サラリーマンは会社の歯車」という立場を表明します。そこから都合のいい話をすすめていくので、「自分らしさ」はいらないというところにもっていき、ルール(9)「『誤解を恐れずに言えば』と言って、ウソをつく」で、「自分らしさ」を悪いことのように言います。
人は誰しも、「自分らしさ」を大切にしたいと考えます。しかし、誤解を恐れずに言えば、若いころは自分らしさを捨てた方がいい。
■6.「もし●●●であるとしたら、お詫びします」と言って、謝罪したフリで切り抜ける
「気分を害したなら、謝るよ。ごめんなさい」一見、なにやら誠実な印象を与えますが、これは典型的な「東大話法」です。自分が謝罪をすべき当事者であるにもかかわらず、傍観者に成りすましているという語り口で、信用のできる人間ではありません。
【感想】
◆今回もちと引用量が多いのでこの辺で。そもそも著者である安冨先生が「東大話法」というものを着想したのは、2011年の東日本大震災による福島第一原発事故がきっかけだったのだそう。
「専門家」の多くが、たいした事故ではないような発言をするのを聞いているうちに、やがて先生は「こんな話し方をする連中は、東大界隈では珍しくない」と気がつきます。
ただし、これは東大に限られたことではありません。
古くは太平洋戦争時の政府の発表から、最近では尖閣諸島問題や沖縄の米軍基地問題での専門家の発言、さらには大津のいじめ問題における大津市教育委員会の発言等にも「東大話法」は垣間見れます。
果たしてその裏に潜むものは何なのか?
◆安冨先生は、それは「立場」である、と指摘。
東大話法を操る機関や組織は、それぞれの「立場」に即した見解や、「立場」を守るための理屈(先生は「屁理屈」と言われれてますがw)を「東大話法」を用いて述べている、と言われています。
典型的なフレーズが「私はその質問に答える立場にありません」というもの。
日本社会においては、「人」よりも「立場」のほうが地位が高いので、なにか重要なことを答える権限があるのは、人ではなくて「立場」であるワケなんですね。
◆それならば、この「東大話法」は、ある程度の「立場」のある社会人でなければ関係ないか、というとあにはからんや。
例えば、電車の中で騒ぐ子供を親が叱るとき、「他の人に迷惑がかかるでしょ」と言うのは、実は他の乗客という「立場」を侵害してはいけない、と諭しているのであり、ここにも「東大話法」の片鱗を見ることができる、と安冨先生は言います。
さらには、本書の第5章でも明らかにされているように、「女房が」を繰り返す男というのは「立場」に縛られているケースが多いとのこと。
そしてこのような「立場上の夫」を演じる男性には、稼ぎに関係なく、「ある特徴」があるのだそう(詳細は本書を)。
◆ちなみに、上記ポイントの6番目のフレーズも「典型的な東大話法」とのこと。
「気分を害したなら、謝るよ。ごめんなさい」なんて、誠実な発言かと思ってましたが「信用のできる人間ではありません」とバッサリです。
……思い当たるフシのある方もいらっしゃるのでは?
私自身、仕事上だけでなく、子育てや男女関係についても考えさせられました。
多くのビジネスパーソンに、一読をオススメ!
もう「東大話法」にはだまされない 「立場主義」エリートの欺瞞を見抜く (講談社プラスアルファ新書)
はじめに 「絆社会」を訴えることの危うさ
第1章 「東大話法」とは何か
第2章 「東大話法」の温床は「立場主義」
第3章 日本社会を呪縛する「立場」
第4章 「東大話法」がこじらせる男と女
第5章 実践されている「東大話法」
第6章 「立場」と「幸福」の呪縛から逃れる
おわりに 「立場主義」から解き放たれるために
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【編集後記】
◆今日の気になる1冊。出世するキレ方
『夢をかなえるゾウ』の著者である水野敬也さんによる初の編集本だそうです。
ご声援ありがとうございました!
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