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2012年08月20日

【オススメ】『常識にとらわれない100の講義』森 博嗣


常識にとらわれない100の講義
常識にとらわれない100の講義


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、ミステリィ作家として確固たる地位を築かれている森 博嗣先生のエッセイ。

私自身、小説を読む習慣がないため、森先生の作品を読むのはこれが初めてでしたが、きわめてロジカルな考え方(工学博士ですし)は、私たちビジネスパーソンにも得る点が多々ありました。

アマゾンの内容紹介から。
生きるうえで、どれだけの「理屈なき常識」に流されているのか? あなたが本当の「正論」を手にするための一冊!

想定外に濃い内容に、思わず付箋も貼りまくりです!



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【ポイント】

■1.感情や直感に流されず、客観的に判断する
 判断というのは、多くの場合、感情的に、直感的に行われ、そのあと理屈を考え、論理を構築し、その判断の補強をするのである。冷静に、情報を分析して、客観的な判断ができる人は少ない。それは、常日頃から、自分の感情をコントロールし、他人の感情を観察し、物事のどこに本質があるのか、ということを、自分や相手といった人間関係から切り離して考える癖がついていないと、難しいかもしれない。
 客観的判断が、結果として正しい確率は、感情や直感による場合に比べてはるかに高い。失敗をしない確率が高い、という意味だ。


■2.新しいものを作りたかったら、削るものを考える
 一般論であるけれど、新しいものを作りたかったら、今あるものに何を加えようか、と考えていては駄目だ。そうではなく、今あるものの何を犠牲にするか、何をやらないでおくか、を考えた方が良い。「しないこと」が新しさを求める勇気なのである。この手法は、唯一のものではない。当然ながら、まったく新しいものをゼロから生み出すことが正統であるけれど、それはなかなか簡単にできるものではない。それに比べると、削る方法は簡単なのだ。なにしろ、今存在する多くの製品は、あまりにも多くのものを含みすぎて複雑になっている。だから、必要と思い込んでいるものを削るだけで、少し新しいものができる、というだけのからくりだ。


■3.仕事以前に自分の刃を研ぐ
 鋭い刃物を使うと、切り口も綺麗だし、力も必要ないし、なによりも安全だ。しかし、その切れ味は、仕事がないときにも毎日刃を研ぎ、磨き上げたものだけが発揮する。この場合、「手応え」は、切るまえに既にある。仕事の以前に、自分に対する手応えがある。(中略)

 忙しいときは、とにかく必死に作業をするしかない。問題は、暇なときに、どれだけ自分の刃を研ぐことができるか、ではないだろうか。


■4.「すぐに結果を出したい」ものはすぐに結果が出ない
「すぐに結果を出したい」という場合、えてして「すぐに手を打つ」ことになる。しかもそれは「すぐに打てる手」でしかない。手っ取り早い方法しか選択されないから、根本的な解決になっていないものが多い。根本的な解決とは、やや時間がかかったり、手順を踏む必要があるからだ。そういういい加滅な手を打っておいて、「なにもしなかったわけではない、やれることはやった」なんて言うのだから困ったものだ。なにもしなかった方がまだましだったし、その時点でやれることしかしなかったのが最大の問題だったのは明らかである。こういう言葉だけの綺麗事で片づける傾向が大変多い。とばっちりを避けたかったら、よく本質を見よう。


■5.たいてい場合、金で解決するしかない
「金で解決できると思っているのか?」と怒る人がいるけれど、たいていの場合、結局は金で解決するしかないのである。これは綺麗とか汚いといった問題ではない。そもそも、金は綺麗でもないし汚くもない。金というのは「数字」である。数字が汚いといっても意味がない。数字にしようとする人間が汚いということらしいが、しかし、数字にしないと「気持ち」とか「心」なんてものは伝わらないのだから、しかたがない。(中略)

 金で解決するのも、なにか力で捩じ伏せられた印象を抱くのだろう。しかし、金をもらえば、少なくとも「利」がある。これが、力で捩じ伏せられた場合と大きく違っている。ようするに、「交換」なのだ。これ以外にトラブルを解決する方法はないといっても良い。


■6.非常識な行動ではなく非常識な思考をする
 非常識な行動というのは、あまりに利がない。社会の抵抗が大きいからだ。単なる変わり者と思われるくらいで、むしろ損をする。(中略)

 一方、非常識な思考というのは、利が大きい。人が考えないことを考える。そして、そこに理屈を見つける。そうなると「新しいアイデア」になる。商売に利用すれば、競争相手がいなくて独占できる。また、他者を説得する力があれば、人を動かすこともできる。非常識であったものが、新しい常識に、正しい常識になることだってあるかもしれない。


【感想】

◆冒頭で触れたように、本書は私にとっての「初・森 博嗣体験」だったのですが、正直かなり面白かったです。

具体的には「身も蓋もない」ところ。

例えば上記ポイントの5番目の「金で解決するしかない」なんて、なかなか口にはできないものです。

同様に『金というのは「数字である」』というセリフがありましたが、森先生は今までも自分の業績や実績について述べられているそうで、これらも別に「自慢」ではなく、あくまで「数字」「情報」を提供しているだけである、と。

ちなみに、本書内にも「印税で10億稼いだ」との記述がありましたw


◆また、上記ポイントの1番目にもあるように「感情」を切り分けることの重要性も、何度か主張してらっしゃいます。

割愛した部分では、マスコミについても『「集団感情増幅装置」である』とバッサリ。

とにかく意見や考えは「好き」「嫌い」という感情ではなく、その内容で評価すべきである、と。
 誰が言おうが、意見はその内容で評価すべきである。(中略)
科学というものは、そういうものだし、また、仕事もそういうものだ、と僕は理解している。
この辺は、さすが工学博士だけあって、理系思考だな、と思った次第です。


◆一方で、「仕事の本質」みたいなお話もあって、思わず唸ってみたり。

やはり割愛したお話であったのが、森先生が仕事や趣味で「これは完璧にできた」という時は、治具作りに等しい回り道を選択しているのだそう。

この治具というのは、ある特定のものを製作するための道具で、そのただ1回の工作でしか使われないもの。

治具 - Wikipedia

この治具にかける時間や手間を惜しむのがアマチュアで、プロはこうした回りくどい手順でものを作るわけである、と。

まさに「成功に近道なし」ですね。


◆とにかく本書は、ざっくばらんな100の講義から成り立っていますので、どこから読んでもOK。

冒頭の画像の付箋の多さでもお分かりのように、ネタはザクザク詰まっています。

他にも「自炊」の問題や「原発」のお話なども付箋を貼ったのですが、デリケートなテーマなので、詳細は本書にてご確認を。

やはり、日頃手にしないジャンルの著者さんの本だけあって、目からウロコがボロボロ落ちまくりました。


新たな視点を得られる1冊です!

常識にとらわれない100の講義
常識にとらわれない100の講義
1限目 森教授の「新しい常識」論
2限目 マイナスを武器にする思考論
3限目 王道を行く「型破り」仕事論
4限目 孤独を楽しむ人間観察論
補講 「新しい常識」に気づく21の視点


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【羽生流】『結果を出し続けるために (ツキ、プレッシャー、ミスを味方にする法則)』羽生善治(2010年12月13日)


【編集後記】

◆私の観測範囲内では、森先生の本をレビューされた方はあまりいない、と思っていましたが、小飼 弾さんがこの本を記事にされていたのを忘れていました。

科学的とはどういう意味か (幻冬舎新書)
科学的とはどういう意味か (幻冬舎新書)

参考記事:404 Blog Not Found:ほんと馬鹿 - 書評 - 科学的とはどういう意味か

こちらもなかなか面白そうです。


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