2012年07月06日
【確かにスゴ本】『ローマ法王に米を食べさせた男』高野誠鮮
ローマ法王に米を食べさせた男 過疎の村を救ったスーパー公務員は何をしたか?
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、すでに百式の田口さんのこちらの記事でお馴染みの1冊。【書評】 ローマ法王に米を食べさせた男 【今のところ今年のベスト本!】 | IDEA*IDEA
田口さんが記事の中で「一応関係者でもあるのでステマっぽいですが汗」と言われていたこともあり、ちと警戒(?)していたものの、実際読んでみたところ、付箋貼りまくりの「スゴ本」でした。
アマゾンの内容紹介から。
CIAの戦略に基づいてメディアを駆使し、ローマ法王にアラン・デュカス、木村秋則にエルメスの書道家、そしてNASAの宇宙飛行士や総理大臣も味方につけて限界集落から脱却させた市役所職員。
ぶっちゃけ、公務員関係なく、ここまでアイデアと実行力を持ち合わせた方もなかなかいないのではないか、と。
いつも応援ありがとうございます!
【ポイント】
■1.あえて宣伝をしないで宣伝する人間は、山の過疎集落のようなまさかと思う場所に、本格的に自家焙煎したコーヒーを出してくれる店があったりすると、「ああ!」と驚くものなんです。そういう意外性のある体験をすると、別の人を連れて来て同じ体験をさせたがるんですよ。(中略)
それが店の宣伝をしようと国道筋に看板を置いたりすると人は来なくなる。「ああ、知ってるよ」と店の名前を認知する人間は増えるけど、そういう人はそれだけで興味を失ってしまうので、絶対に来ない。人を連れて来ようとも思わない。看板がないから来るんです。
■2.間接的にデパートに働きかける
東京の田園調布から電話があった時には絶対売りませんでした。白金の人にも売らない。成城や目白の人にも売らなかった。全部で60件近く断りました。高級富裕住宅街から電話があった時は、「先日まではございましたが、たった今、売り切れました」と答えるようにしたんです。
「行きつけのデパートにお問い合わせされてはいかがでしょうか。ひょっとするとあるかもしれません」
と。でも、ないですよ。私たち、デパートと取り引きしていないですから。
何をしたかったかといったら、神子原米を高級デパートの食料品売り場に置いてほしかったんです。
■3.業者や商社を通さないと格安になる
それ、嘘だと思ったんです。衛星ビジネスを知らないからだまされたんだと。調ぺてみると、専用のハードなんか買わなくても、家庭のパソコンでも十分わかるんです。知らないからだまされるんです。行政やJAはバカだと思って、赤子の手をひねるようにしてやって来る業者がいるんですよ。(中略)
デジタル・グローブ社に、何月何日にこの地区の上空を飛ぶ時に撮影してくれってオーダーを入れて、その画像解析をソフトがやって、データをダウンロードするだけなんです。家のパソコンでも十分です。初期投資はほとんどなく、あえていうならばソフトだけです。1人でも出来ますよ。
■4.コストをかけても生産者の励みになることを優先する
また、POSシステムを導入して、直売所のレジをピッて通ったら、メールなどで生産者に通知が届くようになっています。「高い金を出してそんなシステムを導入する必要なんかない、普通のレジでいい」と反対する声もあったけれど無視しました。生産者にとっては、売れたらすぐに反応が返ってくるわけだから、いっそうの励みになるんです。生産者側に立つと、それぐらいのコストはかけても必ず元はとれます。
■5.世界のVIPに働きかける
まずは羽咋の自己紹介を書き、そして、
「この羽咋でUFOによる町づくりを始めました。これに対してゴルバチョフ書記長はどのようにお考えになりますか。ご感想と出来れば我々に激励のメッセージを下さい」
と書いて出したんです。その次に書いたのは、レーガン米大統領です。3番目にサッチャー英首相。他にもローマ法王など、世界を動かせると言われているVIP120人に手当たり次第書いたんです。(中略)
だいたい45%くらい返事が来ました。けっこう来るもんなんです。それで返事が来たらマスコミに流したんですね。1粒で2度おいしいんです。
■6.外から情報を流す
「羽咋がUFOで町おこしを始めた」というニュースを、まず北海道に流しました。羽咋から遠ければ遠いほど効果があると思ったからです。(中略)
次は九州。各県ごとにメデイアを調べて、情報を流したんです。その次、東北地方です。石川、富山、福井という地元のメデイアには、半年間だんまりをきめこんだままだったんです。
なぜそうしたかというと、理由があるんですね。自分の家で知らないことがあると気になるじゃないですか、何がおこっているんだろうと。(中略)
さらに次はもっと大きな「外堀作戦」だと、海外に目を向けました。APとかAFP、ロイターという外電にバンバン情報を流したんです。アメリカの「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙、旧ソ連の「コムソモリスカヤ・プラウダ」など16紙が書いてくれました。そういうことがあると、今度は東京の新聞も気になり、情報を流してくれたんです。
【感想】
◆著者の高野さんの肩書は「石川県羽咋市役所農林水産課ふるさと振興係課長補佐」であり、いわゆる「市役所職員」になります。ただし、上記でご紹介した通り、やってきたことはマーケッターや広告代理店、PR会社真っ青の破天荒ぶり。
そもそも、何でこういう人が市役所職員なのか疑問に思われる方も多いと思いますが、実は高野さんはアマゾンの「著者略歴」で触れられているように、以前は雑誌のライターやテレビの構成作家の仕事をしており、家庭の事情で帰京し、しかたなく(?)市役所の職員となったとのこと。
それを知って、やっと高野さんのアイデアの豊富さやユニークさが腑に落ちた次第です。
ちなみに構成作家時代の『11PM』の仕事の関係で、UFO評論家として有名な矢追純一さんともよく会っていたそうで、それが後の「UFOによる町おこし」につながってくるのですが。
◆さて、本書の中心となるのが、この「UFOによる町おこし」と、タイトルにもある「お米」のお話。
当初「ローマ法王にお米を献上する」とは、なんて大それたことを、と思ったのですが、上記ポイントの5番目にあるように、町おこしの時点で「VIPアタック」を経験済みだったんですねw
また、割愛しておりますが、袋の字を書いたのは、エルメスのスカーフをデザインしたことのある、書道家の吉川壽一先生。
平成23年度 神子原米 精米(標準精米)5kg
そのことも「あえて」クレジットしていないのも、「他人に話したくなる物語性」を作り上げるためなワケです。
この「神子原米」で展開されているブランド戦略だけでも、本書を読む価値はあると思われ。
◆こうしたマーケティング的なお話と並行して語られているのが、「コミュニケーション」のお話です。
「限界集落に都会の人を呼ぶ」と言えば「よそ者は村の秩序を乱す」と反対する村民。
「JAに頼らず、自分たちで売ろう」と言えば「おまえが売ってみせたら、俺らが売ってやってもいい」という農民。
シンポジウムを開くためにお金を集めたら、冬の除雪費用に回せという市議会議員。
それ以前に「事なかれ主義」で固まっているのが、公務員というものです。
何かやろうとすると、必ず「人」という障害が立ちふさがることばかり。
そんな中、人を納得させ、人を動かすために、高野さんがどうしたか、という部分もぜひお読み頂きたいな、と。
◆こうした「村おこし」「町おこし」のお話は、以前、こちらの本でも読んだことがありました。
そうだ、葉っぱを売ろう! 過疎の町、どん底からの再生
参考記事:【葉っぱがお金に?】「そうだ、葉っぱを売ろう! 」横石知二(2007年11月10日)
こちらの本も、なかなかに読み応えがありました(アマゾンでも高評価ですね)ですが、この高野さんの本は、より「広報・PR的エッセンス」が参考になりそうな。
そして、本書内で何度も出てくるのが「可能性の無視は、最大の悪策である」というフレーズ。
とにかく1%でも可能性があるなら、徹底的にやってみようよ。最大の悪癖は、やりもしないうちから、絶対出来ないと思いこむことなんです。
励まされ、奮い立たされる1冊!
ローマ法王に米を食べさせた男 過疎の村を救ったスーパー公務員は何をしたか?
第1章 「一・五次産業」で農業革命!
第2章 「限界集落」に若者を呼ぶ
第3章 「神子原米」のブランド化戦略
第4章 UFOで町おこし
第5章 「腐らない米」。自然栽培でTPPに勝つ!
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【オススメ!】「外食の天才が教える発想の魔術」フィル・ロマーノ(2008年03月20日)
【編集後記】
◆今日から発売の本。ハーバード流 自分の潜在能力を発揮させる技術
「ハーバード流」というだけで、食指がw
ご声援ありがとうございました!
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