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2012年06月23日

【オススメ】『一億人に伝えたい働き方 無駄と非効率のなかに宝物がある』鶴岡弘之


一億人に伝えたい働き方 無駄と非効率のなかに宝物がある (PHP新書)
一億人に伝えたい働き方 無駄と非効率のなかに宝物がある (PHP新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、世間的には無名な中小企業たちの、ユニークな経営についてフォーカスした1冊。

「限られた資源でも、ここまで突き抜けることができる」という事実は、読む人を励ましてくれることウケアイです。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
3年にわたる日本各地の取材のなかから独創的な商品、サービス、経営手法で業績を伸ばしている11の会社を厳選して紹介。強い思いや信念に基づいた仕事への取り組みは、いかにして規模に左右されない経営の真実を生むのか。経営戦略の事例集としてだけでなく、自分もこのように働きたいという「幸せな働き方」の教科書として、万人に読んでもらいたい1冊。あなたの理想の会社は、町のそこの通りを曲がったすぐそばにある!

いくつかのエピソードでは、お恥ずかしくも感動して、ちょっぴりウルっと来てしまいました!


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【ポイント】

■1.栃木県No.1のサトーカメラが効率を追求しなくなったきっかけ
 商売を始めたときは、我々も客をよく見てなかった。売ったら終わりで、はいさよなら、はい次って感じで。効率を追求するのが世の中では正義だったからね。我々も知らないうちにそれをやってたんだ。(中略)

 でもあるとき、お客さんが、あんたのおかげよって言うんだよ。もう何年も前に初孫が生まれたときにうちでカメラを買って、それから写真が趣味になっちゃったおばあちゃんなんだけど。そのおばあちゃんが、あんたのとこでカメラを買ったおかげだよって言うんだよ。それまでの60年の人生より、あんたと出会ってからの毎日のほうが人生のなかでいちばん楽しかったって。
「えー!?」と思ったよ。ちょっと待ってよ、そんなこと想像もしなかったよ、そこまで思ってくれてたのって。じゃあ俺、もうちょっと真面目にやろうっていう気になったよ。そのときだよね、本当に気がついたのは。


■2.「一点突破」で他社をリードするトモエ精工
 自分たちがどのような製品をつくっているのかを振り返ってみた。そして気がついた。あれもこれもとさまざまな分野に手を出していたため、扱う製品の数は多いのだが、1つひとつを見ると「品質、納期、コスト、どれを取っても他社に劣っていた」のである。
「人間は何でも器用にこなせるものではない。分野を絞って、それだけを徹底的にやり続けてみたらどうだろう」。森本社長は思い切って1つの製品しかつくらないことに決めた。ディーゼルエンジンの心臓とも言える部品、ピストンである。「これだけをやり続ければ世界一にだってなれるかもしれない」。


■3.神社の鳥居を見てひらめいた"ゆるまないネジ"「ハードロックナット」
 そんなとき、気分転換に神頼みでもしようと思って、住吉大社にお参りに出かけた。すると、鳥居のつなぎ目が外れないように、要所要所にくさびを打ち込んであるのが目に入った。「これや、これやがな!」とひらめいた。ボルトとナットの間にくさびを打ち込むことを思いついたのである。
 しかし、本当にくさびを打ち込むわけにはいかない。若林社長は、くさびの役割をナット自体に持たせることにした。さまぎまな試行錯誤を重ねてついに誕生したのが、2個のナットのなかにくさびの機能を内在させたハードロックナットである。


■4.贈り物になる柔らかトイレットペーパーの秘密
「ホットケーキを焼くときに、あわててへラでぎゅうぎゅう押しつけたら、硬くなりますよね。逆に、とろ火でじっくりと焼いたら、ふんわり焼けます。それと同じように、ゆっくりゆっくり乾燥させる。すると、ふんわりとして温かみのある紙になるんです」(中略)

「柔らかい紙をつくるためには、できるだけ機械の回転速度を遅くしなければなりません。最適な回転速度について、さんざん試行錯誤してきました。その結果、うちの機械の回転速度は大手メーカーの10分の1ぐらいなんですよ」


■5.日本理化学工業が知的障害者を雇用したきっかけ
 住職は少し間をおいて、大山氏の顔をじっと見つめてこう答えた。
「人間の究極の幸せは何だと思いますか。それは次の4つです。人に愛されること。人に褒められること。人の役に立つこと。そして、人に必要とされること。
 愛されること以外の3つの幸せは、働くことによって得られます。障害を持つ人たちが働こうとするのは、本当の幸せを求める人間の証なんですよ」
 大山氏はその話を聞いて、はっと気がついた。2人の少女がなぜあれほど働くのか。それは、働いて褒められ、人の役に立ち、人に必要とされることで、生きる喜びを感じていたのだ。
大山氏は「少女たちが懸命に握り締めている『幸せ』を守らなければならない」と強く思った。そして、「少しでも多くの障害者に働く場所を提供しよう」と心に決めたのだった。


■6.子どもたちの夢をケーキにして配る「夢ケーキ」の舞台裏でのできごと
 夢ケーキの時期はちょうど全国的なお菓子コンクールと重なるので、10日から2週間ぐらい徹夜に近い状態が続くんですね。そのとき、僕は「本当にこの子たちに負担をかけてるだけなのかなあ」と思って、みんなの前で「数が数だし、全部受けるのはお断りして、数で区切ろうか」って、ぽろっと言ってしまったんです。
 そうしたら、うちのスタッフが「なに言ってんですかっ」って顔色を変えて言うんです。スタッフのある女の子が、「私たちが負担に思ってるなんて、そんな風に思われてたことがショックです」って言うんですね。「そんな気持ちでやってんじゃないんです」って言われて、僕は本当に涙が止まりませんでした。


【感想】

◆冒頭の内容紹介にもあるように、本書には11の中小企業が登場します。

それぞれの会社同士で繋がり等はなく、抜き出すことのできる数に限りがある以上、まったく触れてない会社が5つあるわけでして。

なのに、それら触れていないの会社のお話も、皆一様に素晴らしく、読み応えがありました。

せめても、と思い、下記目次部分にて、各企業のHPのリンクを掲載しておきますので、宜しかったらご覧ください。

……というか、取り上げた会社でも、今回フォーカスした以外にも付箋をガッツリ貼った部分等があったりするので、これでもスッキリとはいかないのですが。


◆本書のサブタイトルは「無駄と非効率のなかに宝物がある」なんですけど、まず初っ端のサトーカメラからして、まさにそう。

一眼レフカメラの説明に1時間半かけるとか、ザラのようです。

また、「立って注文するのが当たり前」のセルフプリント機の前にはソファーを設置。

安売りもポイントもないものの、顧客満足度を高めることによって、カメラ販売シェアは14年連続で栃木県No.1なのだとか。

しかも舞台となる宇都宮店のまわりには、コジマ、ヤマダ、ケーズ、ヨドバシと役者が揃っているにも関わらず、です。

これだけでも納得しにくいと思いますので、詳しい経営方針や接客方法等については、本書にてご確認を。


◆一方、一番最後の「夢ケーキ」とは、全国の小学生以下の子どもに、自分の夢を絵に描いて送ってもらい、その絵をもとにケーキを作って、子どもたちに無料でプレゼントするというものです。

そのスタイルでの最後の年となった2009年には850個のオリジナルケーキを配ったとのこと。

そのケーキも、ショートケーキではなくデコレーションケーキで、普通に売ったら1個4000〜5000円くらいはするものですから、850個タダで配ったら、400万円ほどの損失になるわけです。

とはいえ、絵をケーキにするわけですから、スタッフの技術も向上し、とにかく通常売られているケーキの種類からして豊富なのだだそう。

確かに、これだけの種類を揃えているお店はなかなかないと思います。

スイーツメニュー 一覧 | スイートオアシス菓匠Shimizu

ちなみに現在は、応募してきた家族をお店に招き、スタッフのフォローのもと、自分たちでケーキを作ってもらうスタイルになったのだとか。

これはこれで、いい思い出作りになりそうです。


◆ところで本書を読んでいて、ふとこのCMを思い出しました。



無駄をなくし、効率を追求する人から見たら「クレイジー」な人々が、本書ではたくさん登場します。

ただ、そこには信念や、ロマンや、哲学があることにより、結果的に新たな「価値創造」に繋がっているという。

そしてブランディングとは、意図的に行うものでなく、ここまで突き抜けることによって、後から付いてくるものなのだと思った次第です。


これはオススメせざるを得ません!

一億人に伝えたい働き方 無駄と非効率のなかに宝物がある (PHP新書)
一億人に伝えたい働き方 無駄と非効率のなかに宝物がある (PHP新書)
第1章 顧客とまっすぐに向き合う
 喧嘩上等のカメラ店が「ど素人」に教わった商売の極意―サトーカメラ
 大型店舗に車の行列!日本海からやって来た「規格外」の魚屋の秘密―角上魚類
 産みたて卵に開店前かに行列―コッコファーム
 繊維から土木へ転身、「本当の商売」をしたかった―前田工繊

第2章 最高の品質を追求する
 20年かけて売り上げを10倍にした町工場―ミヤジマ
 「一点突破」だから世界一になれる―ともえ精工
 経営に脈打つ「世界一の職人」の教え―斎藤金型製作所
 新幹線もジャンボジェットも大丈夫!町工場で生まれた「ゆるまないネジ」―ハードロック工業

第3章 幸せをみんなに届ける
 贈り物になるふわふわトイレットペーパー―望月製紙
 知的障害者が人生を教えてくれる工場―日本理化学工業
 「アホか」と言われたイベントに家族が涙する理由一度訪れるとファンになってしまう洋菓子店―菓匠Shimizu


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【目から鱗の経営本】『どうする? 日本企業』三品和広(2011年08月21日)

【草食系のススメ】「こころの価値を売る世界にただひとつだけの会社」小屋知幸(2010年03月04日)

【豪華!】「心に書きとめておきたい名経営者の至言」日経ベンチャー編(2008年08月16日)

【革新的?】「アルファドッグ・カンパニー」フェン・ドナ(2007年10月20日)


【編集後記】

◆ちょっと気になる本。

ケタ違いに売る人の57の流儀
ケタ違いに売る人の57の流儀

「フェラガモ・ジャパン伝説の店長、初の著作」で、なんでもこの方のお店は、フィレンツェの本店を上回ったのだそう。


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この記事へのコメント
               
著者の鶴岡です。素晴らしい書評をどうもありがとうございました。私が考えていたこと、言いたかったことを、見事に的確に汲み取ってくださって、まことに嬉しい限りです。ブランディングの話もまさにその通りだと思います。本当にありがとうございました。
Posted by 鶴岡弘之 at 2012年06月26日 16:11
               
>鶴岡弘之さん

スイマセン、メールにお返事だけしといて、こちらのレスを漏らしておりました(汗)。
ご本、大変良かったです!
必ずしも当ブログのニーズにマッチしていないのが残念でしたが、個人的には得るところも感動したところも多くお気に入りとなりました。
ありがとうございました!
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2012年07月05日 05:35