2012年06月21日
【激白!】『30代が覇権を握る! 日本経済』冨山和彦
30代が覇権を握る! 日本経済 (PHPビジネス新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、元・産業再生機構業務執行最高責任者で知られる冨山和彦さんの新作。帯に過激なフレーズが並んでおりますが、実際、中身もかなり過激でした。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
本書では、高齢社会のための負担増を真っ向から否定。「おカネがある人間は、自力で生き抜く」ことを前提に、消費増税、年金負担額アップ、医療費の増など、ビジネスマンを追い詰める愚策を柔軟なアタマで、ひっくり返す!
働き盛り世代のモチベーションが上がり、立ち上がる気力が湧く本。また、団塊世代が日本の未来のために、品格を見せる気分になる経済オピニオン書。
「これからの日本を、私たちはどうしていくべきか」について考えさせられた1冊でした!
いつも応援ありがとうございます!
【ポイント】
■1.最低限の保障は強制加入&掛け捨てですべての国民に憲法第25条の言う「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するために、公的年金があると考えればスッキリする。
そしてこの最低限の保障を約束する部分は、自賠責保険のように強制加入&掛け捨て的要素をきわめて濃厚にして構わないと思う。公的年金は、一定年齢に達した人が申請すれば、原則支給されるが、一定以上の所得にある人やストックのある人に対しては、非給付または減額される仕組みにする。現在、導入が進められている納税者番号制が実現すれば、個々人の所得状況、資産保有状況はかなり詳細かつ正確に捕捉できるので、制度運用は十分に可能だ。
■2.既存の公的年金は一度清算する
私が提案する一つのフェアな方法は、これまで払い込んできた金額は、(「消えた年金問題」の未解決該当者を除くと)はっきりしているのだから、その金額に、たとえば過去から現在までの国債の長期金利分を上乗せして、それを全員に返し、現行制度はいったんすべて解散する方法だ。つまり、もし国に払った分の保険料を貯蓄していたとしたら、貯まっていただろう金額を返却するのである。
■3.高齢者でも医療費は3割負担に
原則70歳以上の人々の1割負担というのも、現在の70歳で廃止し、ラクをしてきた団塊の世代には応分の負担を強いるのが筋である。もちろん、団塊の世代に限らず、いまの60代より下は、基本的にはみな同じ条件だ。(中略)
新しい医療保険では、全世帯一律で3割負担。年寄りだからという理由だけでは、負担軽減の理由にはしない。こうすれば自己負担が増える2割分の差額(これは現在でも数兆円分あるはすで、今後、団塊世代の高齢化の進展でさらに巨大な額になる)の支出削減効果は甚大だ。
■4.解雇規制緩和と引き換えに定年は廃止する
だから私は、「解雇規制を緩和して、解雇自由の原則に戻る代わりに、定年は廃止する」ことを主張したい。もちろん解雇自由の原則というのは、いつでも好きなように解雇できるということではない。裁判所の言う解雇4要件はそのままでいいから、そこに金銭的補償の程度を加味して、総合的に解雇の正当性を認めるべきということだ。要するに雇用契約の根本は、やはり経済的な契約なのだから、最終的にはお金で解決することを認める世界である。
■5.高校や大学は職業訓練校にする
文系の学生には、必ず簿記の知識を学ばせるべきだろう。
仕訳ができて、エクセルで複雑な演算を計算するとか、経営の数字が読めて、電卓をブラインドで素早く打つ。さらにはビジネス文書が書けて、インターネットで必要な情報にアクセスして、パワーポイントでプレゼンができて……。(中略)
もう一度繰り返すが、コンピュータや最新ITデバイスを使いこなし、インターネットのリテラシーを高め、コミュニケーション能力を磨き、英文メールを読み書きし、正しい契約の知識を身につける。そういうことを高校や大学で教えればいいのだ。
■6.教育の格差解消はバウチャーで
収入格差が子どもの教育機会を奪っている。ならば、教育のための公的な補助があってもいいはずだ。
私は、こと教育に関しては、現物給付を支持している。いわゆる「教育バウチャー」である。私立学校の学費や資格試験の受験料など、教育に使途を限定したクーポンを支給する。現金を渡してしまうと、親のパチンコ代に消えてしまうかもしれないので、現物給付がいい。
【感想】
◆なかなか論議を呼びそうな内容でした。当ブログでは、基本的に宗教や政治といったデリケートな内容は避けており、そういう意味ではスルーしても良かったのですが、冨山さんは過去の著作のいずれもが高クオリティでハズレがなかったため、今回も読んでみた次第です。
でも、ここまで過激だとあらかじめ分かっていたら、果たして買っていたかどうかw
上記ポイントのいくつかをお読み頂ければお分かりのように、どう考えても、現在の70歳以上の人のほとんどが、本書の内容に多かれ少なかれ異議を唱えると思います。
◆もっとも、その主張のいくつかは、既に類書や新聞等で目にしているものもチラホラ。
また、それぞれについて、高齢者でなくとも、反論をお持ちの方はいらっしゃるのではないでしょうか?
ただ、当ブログではポイントを絞って引用しており、本書では記されているそれぞれの主張の特殊ケースなり成立要素なりが漏れている可能性もあるので、できれば本書にて、まずはご確認頂ければ幸いです。
例えば、上記ポイントの4番目の定年廃止の件も、「雇用規制緩和」「定年制の廃止」に加えて「完全能力給化」の3点を「全部セットにして同時に導入しなければ、体系として機能しないのだそう。
同様に5番目の「職業訓練校」のお話についても、上位のいくつかの学校は訓練校ではなく「アカデミックスクール」として残すように言われています。
◆思えば冨山さんは、「債務超過」となり「潰れそう」な会社を再生するプロだったワケでして。
その時の経験から導き出された主張は、さすがに説得力アリ。
例えばJALの再建における「年金支給額の削減」の実現には、受給者の2/3以上の賛成が必要でした。
多くの人が「絶対可決しない」と言っていた中、年金削減賛否投票締め切りの最終日に、一気に賛成票が集まり、削減案は可決。
どのような根拠を持って、どのように説得したかについては、本書にてご確認を。
ただし、私企業と違って、国で同じことをやるには、かなりの抵抗が予想されそうですが。
◆ハック系やノウハウ系の本と違い、本書は基本的には「国」レベルでのお話がほとんどであり、私たち一人ひとりが何かできる部分はあまり多くはありません。
それでも本書の第6章では、「30代が覇権を握る」ために私たちができることが挙げられています。
まずは当たり前ですが「選挙に行くこと」。
そして「●●の対話」(ネタバレ自重)。
今から5年後くらいがヤマらしいので、その時に備えて頂きたく。
子どもたちにこれ以上ツケを回さないために!
30代が覇権を握る! 日本経済 (PHPビジネス新書)
第1章 若い世代の活力を甦らせるために
――団塊世代よ「悠久の日本国民」の声を聞け!
第2章 塩漬け預金を社会に還元する方法
──年金と医療の見直しで上の世代のストックを吐き出させる
第3章 日本人に合った税体系と働き方
──労働市場改革で若年層へ雇用と所得を移転する
第4章 グローバル時代の人材育成
──大学再生と格差解消のための教育システム
第5章 日本の強みを生かした成長戦略
──医療とエネルギー分野でイノベーションを
第6章 リアル革命のススメ
──近未来、いまの三〇代がこの国の覇権を握るために
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【編集後記】
◆神田昌典さんが、こんな本を監修されているよう。ザ・マーケティング【基本篇】&【実践篇】2巻セット
これは読んでみたいです!
ご声援ありがとうございました!
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