2012年06月17日
【サッカー】『宮本式・ワンランク上のサッカー観戦術』宮本恒靖
宮本式・ワンランク上のサッカー観戦術 (朝日新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、元サッカー日本代表キャプテンであった宮本恒靖氏によるサッカー本。知性派として知られる宮本氏だけに、「ライターじゃなくて本人が書いたんだろうな」と思わせられる説得力がありました。
アマゾンの内容紹介から。
サッカーを観戦するとき、選手を見るとき、「点を入れた、外した」「攻めている、守っている」だけでなく、「監督のイメージする戦術を実現させているのは誰か」「ボールがないところでどんな動きをしているか」などを頭に入れていれば、もっと面白くなる! 元日本代表キャプテンの宮本恒靖が、自身の代表、Jリーグ、海外チームでの実際の体験を元に、新しいサッカー観戦の方法を提案。五輪、W杯予選などの際、ワンランク上のサッカー観戦をしたい人にぴったりの1冊です。
本書は、やや専門的な内容が多かったため、サッカーブログではない当ブログとしては、分かりやすく宮本氏による「日本代表選手評」にフォーカスしてみました。
いつも応援ありがとうございます!
【ポイント】
■1.代えがきかない遠藤保仁選手ヤットのプレーを観ていると、パスを出そうとしている選手とそれを狙っている相手選手の動きが理解できます。パスを出しっぱなしでなく、出したら動く、出したら動くの繰り返し。そうした連続した動きの中から、相手の穴を見つけて、そこに高い質のパスを通せる。それを総合的にやれる選手がいないという意味で、ヤットは日本代表でも代えがきかない選手ということになるのです。
■2.フォワードとしての総合力に優れる前田遼一選手
もちろん背丈が高いとか、フィジカルの強さとか、テクニックがすごいといった「一芸型」のFWもイヤですが、DFは自分の引き出しの中のカードで、対応できます。DFにとっては、多くのプレーを高いレべルで実行できるFWは相手にしていて気が休まらないのです。
現在の日本代表では、前田遼一選手が、そのタイプだと思います。ゴールに向かって直線的に向かっていく李忠成選手も特徴的ですが、前田選手はポストプレーにも長けているし、シュートもうまい。下がったゾーンでは、MF的な動きもできる器用さを備えています。
■3.左右のサイドバック、長友佑都選手と内田篤人選手との違い
長友選手は、比較的低い位置、つまり自陣の深い位置でボールを持って止まった状態自分で仕掛けていくことができる選手です。特に相手チームが前がかりに攻めてきている状態で日本がボールを奪ったときに、相手サイドバックの前に広がる広大なスぺースを生かして、1人で持っていくことができる。
内田選手には、そうした動きはあまり見られません。自分でボールを持ったとき、内田選手は中の選手にパスを一度あずけて、上がっていこうとする。その違いがあります。
この2人は、ともに攻撃的なサイドバックという言い方がされます。現在のサイドバックは相手ゾーンのゴールラインに近づいたところで、勝負できる資質が絶対に必要で、2人ともそういった能力は持っているのですが、そこへのアプローチが違う。
■4.2列目としては異質な岡崎慎司選手
岡崎選手は、2列目の選手としては、異質のタイプです。チームがサイドから攻めてきて、香川真司選手や清武弘嗣選手といった選手が崩しの局面にからむ中で、ぺナルティーエリアの角のところから、前方の一番厳しいところに飛び込んでいこうとしている。日本代表にはうまい選手は他にもいますが、相手DFが突かれたらイヤなゾーンに、長い距離を走ることを厭わずに必ずゴールに向かって入っていく動きでいえば、この岡崎選手の右に出る選手はいません。
■5.使われることが得意な香川真司選手
日本代表で同じ2列目としてプレーする香川選手ですが、岡崎選手とはまた違ったタイプといえるでしょう。ドルトムントでは、トップに大きいFWを置いて、その後ろにシャドウ的に3人が2列目に並んだ中央が、香川選手の持ち場です。
同じラインでコンピを組む選手が、パスもできるし、ゴール前に走り込む能力も高い。そのメンバー編成の中に、非常にうまくフィットしている印象があります。香川選手は、特にぺナルティーエリアの中に入っていく動きで、周囲の選手に「使われる」ことが得意な選手だからです。
■6.フォワードとして使いたい本田圭佑選手
本田選手はフィジカルが強く、足腰がしっかりしているので、相手DFが前に出てボールをカットしようとする動きを、プロックすることができます。また体のバランスがいいので、相手のプレッシャーを後ろから受けながら周囲を見て、周りにいる選手を使うことができる。ところが、機動力と突破力を求められるザックジャパンのトップ下に置いてしまうと、彼の持ち味は、半減してしまいます。
彼のプレースキック、特に直接フリーキックは、日本の大きな武器であることには変わりありません。彼をいまのチームの中で効果的に生かすことを考えたときに、1つの答えは、トップでの起用なのです。
【感想】
◆何だか宮本氏が見たら怒りそうな抜き出しになってしまいましたw本書というか、宮本氏の特質である「高度な観戦術」そっちのけで、「選手評だらけ」というのは正直どうかと自分でも思います。
ただ、逆に宮本氏から見た、現在の「日本代表選手」というのも、非常に興味深いものでした。
ベーシックな部分は、サッカーファンならかなりの部分で同意できるところかと。
◆一方、本田選手のトップ起用については、確かに「アリ」だと思いつつも、その布陣が論ぜられたのは、昨年初旬のアジアカップ辺りまでだったような気が。
あの大会で、本田選手はトップ下に起用され、李忠成選手の決勝ゴールで優勝したことで、以降、「代表フォワードは李と前田とハーフナーの誰がベストか」という話になりつつあります(多分)。
そこをあえての「本田フォワード起用」。
もっとも、前田選手と本田選手は、その特徴がかぶっている、という話もあります。
「フィジカルコンタクトが強くてテクニックがあるが鈍足なのが欠点ってのが一緒」むしろ、最近の論調は、「本田と香川とどちらがトップ下にふさわしいか」みたいな感じでしょうか。
アジアカップ日本代表メンバー紹介 - pal-9999の日記
他にも長谷部主将や、吉田選手&今野選手のCBコンビについても触れられていますので、ファンの方はご安心をw
◆また、これからの代表とも言うべき、ロンドン五輪の選手たちについても一部言及アリ。
こちらはつい先日、予備登録メンバーが発表されたばかりですね。
五輪予備登録メンバー35人発表 OA枠に吉田、林、徳永 ― スポニチ Sponichi Annex サッカー
現日本代表選手の多くが、前回の北京大会の主力メンバーだったことを考えると、今回のロンドン大会も見逃せないところ。
とはいえ、その北京大会では3連敗して、当時選手たちは散々叩かれたのも、今では懐かしい想い出です。
◆そして肝心の(?)「観戦術」についても、帯にあるように「ボールを観るな、ゾーンを観ろ」を初めとして、「なるほど」と思わせられるお話が多々ありました。
中でもFCバルセロナの敵陣を崩すやり方は、図入りで分かりやすかったのですが、ブログでは図解が出来ないため、詳細は本書の第2章「ピッチを観る技術」にてご確認を。
さらに、第4章では「セットプレーを観る技術」と題して、フリーキック、コーナーキック、PKの裏側まで解説されており、まさに至れり尽くせりです。
本書を読んで、宮本氏は、いつか日本代表の監督まで狙える器ではないかと思ったワタクシ。
サッカー観戦のお供に是非!
宮本式・ワンランク上のサッカー観戦術 (朝日新書)
第1章 「良い選手」を観る技術
第2章 ピッチを観る技術
第3章 代表チームを観る技術
第4章 セットプレーを観る技術
第5章 Q&A 20本のパス交換
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【編集後記】
◆サッカー絡みで、今回の『Number』は面白そうです。Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2012年 6/21号 [雑誌]
表紙だけ見て、普通のEuro(ヨーロッパ選手権)の特集かと思ってましたが、日本代表選手や識者がEuroについて語っているよう。
ご声援ありがとうございました!
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