2012年06月13日
一流職人もびっくり 驚愕の『究極の鍛錬』
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、勝間和代さんの新作『「有名人になる」ということ』の中で推奨されていた1冊。記事の編集後記に書いたようにアマゾンアタックしたものの、今般やっと読み終わった次第です。←遅杉w
アマゾンの内容紹介から。
世界的な業績をあげている人々はどこが違うのか? この問題を解くために気鋭のジャーナリストである著者は徹底的な調査を行います。そして、モーツァルト、タイガー・ウッズ、ビル・ゲイツ、ジャック・ウェルチ、ウォーレン・バフェットなど、天才と呼ばれる人たちは共通する原則に基づいて鍛錬を行っていたことがわかります。さて、著者が「究極の鍛錬」と呼ぶその方法とは?
俗に言う「1万時間の法則」を検証し、実践レベルにまで落とし込んだ内容はかなり濃厚でした。
思わず付箋も貼りまくり!
なお、記事タイトルは、お馴染み「ホッテントリメーカー」のお世話になっております。
いつも応援ありがとうございます!
【ポイント】
■1.数多く練習する調査結果ははっきりしていた。最高レべルの演奏をする者に音楽での早熟の兆し――我々誰もが存在すると考えている生まれつきの才能の証し――はまったくなかった。それとは逆に、幼少のころ特別なオ能と思われていたものが、どのグループでも見られる大変似通ったものだった。(中略)
しかしこの研究は偶然にもその質問への1つの回答を得ることができた。生徒が音楽的にどれだけ熟達できるかどうか予想できる唯一の要因を見つけた。それはどれほど多く練習するかだ。
■2.必ずフィードバックを得る
ゴールドマン・サックスのCLO(最高教育責任者)のスティーブ・カーは、リーダーシップ開発の分野において著名な研究者で、フィードバックのない練習は、目の前に膝までカーテンが垂れ下がった状態でボウリングをやるようなものだと語っている。訓練は好きなだけやってもかまわないが、訓練の成果がわからなければ、次の2つのことが起こるとカーは言っている。1つはけっして上達しないこと、もう1つは注意深く練習をしなくなってしまうことだ。
■3.心を込めて練習する
練習の熱心さを計測することは難しいかもしれないが、明らかに重要なことだ。ボイストレーニングは、楽しくストレスの解消になるとアマチュアの声楽家は感じているのに、プロの声楽家は厳しくかつ難しい努力が求められると感じることが、声楽家を対象とした研究で明らかにされている。傍目には両者は同じことをやっているにもかかわらず、内面でまったく異なる反応が起こっている。このことが重要なのだ。多数の被験者をべースに練習時間を比較すると重要な傾向が浮かび上がってくる。単に練習時間を比較するのではなく、どれだけ熱心に練習に打ち込んだかも見ないかぎり本当のことはわからないということだ。
■4.自動化を回避する
卓越した能力をもつ選手のやっていることを頻繁に見ていると、長い間練習し、何度もやっているので自動的にできてしまうのではないかという印象をしばしばもってしまう。しかし、実際のところこうした選手が身につけているものは、自動的にやってしまうことを避ける能力なのだ。(中略)
すなわち自動化の回避が究極の鍛錬を継続することの1つの効果なのだ。自分がうまくできない点を絶えず意識しながら練習するという鍛錬の本質から、自動化に基づく行動をとることが不可能となる。
■5.自分の問題だと考える
普通の人は、失敗は自分がコントロールできないことによって引き起こされていると信じている。たとえば、競争相手が幸運だったとか、課題が難しすぎたとか、生まれつき才能がなかったといったぐあいだ。それに対して達人は、失敗したのは自分に責任があると考える。(中略)
たとえば、ゴルフのチャンピオンの研究をみると、このパターンがはっきりと示唆されている。ゴルフのチャンピオンは平均的なゴルフプレーヤーに比べ、自分の問題を天候やコースあるいはその他の偶然のせいにすることはほとんどない。達人は容赦なく自分自身の実績をみることに集中している。
■6.できることよりできないことに注力する
2006年、イタリアのトリノで行われた冬季オリンピックで金メダルを獲得した荒川静香が、金メダル獲得までどんなことを経験したか考えてもらいたい。(中略)
荒川静香は、金メダルを獲得する技をすべてマスターするのに19年かかった。スケート選手を対象とした研究で、一流選手ではない人たちは自分がすでに「できる」ジャンプに多くの時間をつぎ込んでいることがわかった。一方、トッブレべルの選手は自分が「できない」ジャンプにより多くの時間を費やしていた。オリンピックで最終的にメダルをとる種類のジャンプであり、そうしたジャンプをマスターするには何度も転ばなければならないのだ。
【感想】
◆本書の原書のタイトルは『Talent Is Overrated』と言い、成功の要因を「才能」で済ませることを問題視。特に第2章の「才能は過大評価されている」においては、様々な事例を挙げて、成功における「才能」の重要性に疑問を呈しています。
中でも衝撃的だったのがモーツァルトで、一般的には「早熟の天才」と思われていますが、少年モーツァルトの手書きの楽譜は彼自身の手によるものではなく、また、モーツァルトに教え始めてから、彼に手ほどきをした父親がピタリと作曲をやめた、という事実があるのだとか……って本書ではハッキリ書いてはいませんが、これって、父親の作だと言うことですよね?
さらに、16歳で書いた3つのピアノ協奏曲も、ロンドンで共に学んだヨハン・クリスティアン・バッハ(俗に言うバッハはヨハン・ゼバスティアン・バッハ)の作品の寄せ集めなのだそう。
一方、本当にモーツァルト自身の手による作品とみなされ、彼の最高傑作の1つでもある「ピアノ協奏曲第9番」が書かれたのは21歳の時ですが、その時点で既にモーツァルトは、18年もの専門的なトレーニングを受けていました。
つまり、これはもはや「才能」というより「鍛練」の賜物と言うべきかと。
◆この「鍛練」を意図的に行ったのが、ハンガリー教育心理学者ラズロー・ポルガーで、彼は「自分でも偉大な能力をもつ人間をつくれる」と信じ、自分の仮説を証明すべく、自分と結婚し子どもをつくってくれる女性を公募します(オイオイw)。
しかもそれに応募する女性が現れ2人は結婚。
すぐに最初の娘、スーザンが生まれ、彼女が4歳ときから将来チェスの競技者にするための訓練が始まります。
その後生まれた2人の妹たちにも「鍛練」が行なわれ、3人とも女性のプレイヤーとしては成功をおさめました。
スーザンは21歳のときに、女性としては初めてチェスの世界最高位であるグランドマスターとなり、末娘のジュディも15歳で世界最年少のグランドマスターになっています。
ちなみにジュディは現時点でも女性の世界ナンバーワン競技者であるとのこと。
ユディット・ポルガー - Wikipedia
◆ラズロー自身は平凡なチェス競技者に過ぎず、また妻のクララはチェスの知識はありませんでした。
そういう意味で、彼らの成功は「才能」によるものではなく、まさに「鍛練」によるものですが、3人のうち2番目の娘は、他の2人ほどの成績をおさめていません。
なぜ差が出たのか?
ただ「鍛練」をするだけではダメなのか?
「究極の鍛錬」の特徴とは何なのか?
それらに対する回答をお知りになりたければ、第5章の「何が究極の鍛錬で何がそうではないのか」をご確認アレ(ネタバレ自重)。
◆ところで「1万時間の法則」については、当ブログでもご紹介しているこの本でお知りになった方も多いのではないでしょうか?
天才! 成功する人々の法則
参考記事:【勝間さん激賞!】「天才!成功する人々の法則」がいよいよ発売へ!(2009年05月13日)
私もこの本を読んで「よーし、後5年くらいブログ書いたら1万時間になるぞ!」と密かに思ったものですが、ただ時間をかけてもダメだということが、本書を読んで良く分かりました。
さらには、『天才!成功する人々の法則』でも触れられていたように、子どもの成功には、「親のフォローが非常に重要」だと言うことも改めて認識した次第。
つまるところ、本書は「子育て」や「趣味」もしくは「ビジネス」(第8章をご覧下さい)において、コツコツと「鍛練」したい方なら必読の1冊と言えると思います。
努力を無駄にしないために!
究極の鍛錬
第1章 世界的な業績を上げる人たちの謎
第2章 才能は過大評価されている
第3章 頭はよくなければならないのか
第4章 世界的な偉業を生み出す要因とは?
第5章 何が究極の鍛錬で何がそうではないのか
第6章 究極の鍛錬はどのように作用するのか
第7章 究極の鍛錬を日常に応用する
第8章 究極の鍛錬をビジネスに応用する
第9章 革命的なアイデアを生み出す
第10章 年齢と究極の鍛錬
第11章 情熱はどこからやってくるのか
【関連記事】
【勝間さん激賞!】「天才!成功する人々の法則」がいよいよ発売へ!(2009年05月13日)これは凄い!『上達の技術』を便利にする7つのツール(2011年04月24日)
「上達の法則」岡本浩一(2006年10月02日)
【予測脳】『予測力 「最初の2秒」で優位に立つ!』ケビン・メイニー,ヴィヴェック・ラナディヴェ(2012年03月11日)
『第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい』 マルコム・グラッドウェル (著)(2006年03月01日)
【編集後記】
◆今日の本に関連して。達人のサイエンス―真の自己成長のために
かなり昔の本ですが、土井英司さんに薦められた名著です。
ご声援ありがとうございました!
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