スポンサーリンク

       

2012年06月09日

【オススメ】『ポーターの『競争の戦略』を使いこなすための23問』牧田幸裕


ポーターの『競争の戦略』を使いこなすための23問
ポーターの『競争の戦略』を使いこなすための23問

【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、以前『ラーメン二郎にまなぶ経営学』を取り上げさせて頂いた牧田幸裕さんの戦略本。

『二郎本』と違って(?)、今回はかなり「ガチ」な内容ですが、図表や具体例が多く、分かりやすかったです。

アマゾンの内容紹介から。
多くの日本企業で現状を打破する経営戦略が描けていないのはなぜなのか。経営戦略なる代物は、そもそも役に立たないものなのか。この問いに答え、多くの日本企業が経営戦略策定のどこで躓き、どうすれば経営戦略を機能させ、競争力を高められるのかを明らかにする。

相変わらずポーターの『競争の戦略』に手が出せていない方にもオススメです!


人気blogランキングいつも応援ありがとうございます!




【ポイント】

■1.差別化を感じるべき主体は企業ではない
 多くの日本企業では、企業の研究開発部門やマーケティング部門、営業部門が差別化を感じることができれば、それで差別化が機能すると勘違いしている。そうではない。差別化を感じるべき主体は、ポーター教受も指摘しているように、買い手=顧客だ。企業ではない。すなわち、差別化が機能するためには「顧客に有意差を感じさせることができること」が重要な要素になる。


■2.経営者が見ているのは顧客ではなく競合企業
 結局、日本企業の多くの経営者は、リアルに一人ひとり違う顔を持った顧客を見ようとしていない。見ているのは「全体市場」という「規模」である。だから、願客志向だとか顧客第一主義といいながら、本当は顧客を見ていない。
 見ているのは、競合企業だけだ。「競合企業がこういう機能を付加したから、ウチもその機能を追加しよう」「競合企業はこのような軽量化を実現した。ウチも対抗すべきだ」といって、商売相手である顧客から目が離れてしまっている。
 なぜ日本企業の多くの経営者は、顧客を見ずに競合企業ばかり気になってしまうのか。私は、以下のような仮説を持っている。それは「日本企業の経営者は、自分で責任をとりたくない。だから、誰かのモノマネをする」ということだ。


■3.「良さ」ではなく「違い」を意識する
 「良さ」とは、顧客が一般的に重視する属性が含まれる。例えば、機能の豊富さ、安さ、使い勝手などである。
 「違い」とは、顧客の驚きや違和感だ。例えば、意外性、新規性などである。そして、気持ち悪いだとか、奇抜だ、おかしいなどといった一見ネガティブにも見える属性も含まれる。
 このマトリックスで多くの日本企業は、1の「良いが違いはない」製品・サービス閉発を目指す。フォーカス・グループから高い評価を受けるからだ。(中略)

 その結果、ほとんどの製品・サービスは1の象限で、「似た者同士」の熾烈な競争を繰り広げている。
 「有意差」を生み出すために大切なことは、「違い」のある2と4の象限にー歩踏み出す勇気を持つことだ。

 (詳細は本書を)


■4.顧客ニーズの把握だけでは「今までにない」競争軸を実現できない
顧客ニーズを把握したところで、すでに存在する製品・サービスの延長線上でしか、顧客ニーズは顕在化しない。顧客ニーズとは、簡単にいうと、今ある製品やサービスを、さらに高品質低価格にしてほしいということだ。
 これが意味することは、戦略キャンバスの「これまでの」競争軸を高いレべルにしてほしいという分析結果しか得られないということである。だから、顧客ニーズをどれだけ把握しても「今までにない」競争軸を実現できない。
 では、どうすれば「今までにない」競争軸を実現できるのか。私は、製品やサービスを提供する企業の自信と信念だと考えている。信念を持って「これが、自社の考える最高の製品だ、サービスだ。願客がどう言おうとも、競合企業が何と言おうとも、俺たちはこれが最高だと思うんだ!」という製品やサービスを作り上げ、それを提供すればよい。


■5.全会一致を絶対に求めない
 全会一致を目指すと、差別化は機能しない。そもそも差別化とは、ある特定顧客には受けるが、その他の顧客には受けないものだからだ。だから、ある役員には受けるが、他の役員には受けない。言い換えれば、役員全員に受けてはいけない。
 したがって、企画会議では全会一致を絶対に求めてはいけない。会議で異論が続出してこそ、差別化は機能する。そこで、社長や事業担当リーダーは、企画会議で全会一致では決議しないことをルールにすべきである。


【感想】

◆引用部分のボリュームが多いのでこの辺で。

ホントは他にも付箋を貼りまくったのですが、諸事情によりほとんど割愛してしまいました(スイマセン)。

特に本書の場合、著者の牧野さんがコンサルタント出身なだけあって、図表も結構大きなウエイトを占めているため、その図表がないと理解しにくい部分は、どうしても後回しにせざるを得ず……。

上記ポイントの3番目でも、本来なら下記のような4象限の図を、さらに詳しくしたものがキチンと掲載されているのですが、これにてご勘弁を。

        |
 1.良いが    |  2.良くて         
  違いはない  |    違いもある
        |
――――――――+―――――――――
        | 
 3.良くもなく  |  4.違いはあるが
  違いもない  |   良くない
         |

本書の図では、それぞれの象限に「調査では非常に高評価」「市場に投入しやすい」等の特徴も付されております。


◆また同様に、具体的な事例も多々登場しているのに、今回は割愛しまくってしまいました。

事例の中で、特に「なるほどね」と思ったのがわが国の「牛丼業界」の例。

前提として「クープマン目標値」というのがありまして……。

これに当てはめると、業界トップのすき家(ゼンショー)のシェア49%というのは、本来「相対的安心シェア(41.7%)」を超えているので安定するハズ。

ところが2位の吉野家のシェア31%が、「トップを狙えるポジション」である「市場影響シェア(26.1%)」を余裕で超過。

さらに3位の松屋のシェア19%も、「複数のライバルが拮抗し、覇権争いが起こる」であろう「並列的競争シェア(19.3%)」に拮抗しているため、まさにカオス状態。

お互い低価格戦争をしかけて、シェアを取り合っているうちに、3社とも収益性が悪化してしまったという、まさに「手詰まり型事業」の典型的なパターンになっています(詳細は本書を)。

そう言えば今朝の日経新聞でも、この大手3社の売上高自体が減少している旨の記事がありましたね。


◆そして本書で強調されているのが、日本企業のこうした「シェア至上主義」に対する批判。

実は牛丼業界以外でも、似たような「覇権争い」が起きているという事実があります(プリンタ、デジカメ等)。

さらに、そのシェアを奪うための戦略も「低価格化」か「高機能(多機能)化」くらいしかない、というアリサマ。

もっともそれは、上記ポイントの4番目にあるように、「顧客ニーズ」を汲み上げた故でのことなんですね。

「ならばどうすれば良いか」については、そのポイントの最後で触れたように、「自分たちが最高と思う製品やサービスを作り上げる」こと。

「実際にどうするか」や、具体的な製品例については、本書にてご確認を。


◆本書では、ポーター先生の『競争の戦略』をべースに、

「 日本企業が策定する事業戦略は、なぜ結果を出せないケースが多いのか?」

「 なぜ『競争の戦略』は実際のビジネスの事業戦略策定で使いこなすのが非常に難しいのか?」

「なぜ日本企業の差別化の賞味期間は短いのか?」


といった、興味深い「問い」にこたえる形で内容が展開されていきます。

経営者や、戦略立案担当者はもちろん、実際に製品開発に携わるに方もぜひお読み頂きたく。

ちなみに本書には、自分の開発した商品が、販売現場で否定された(顧客にワゴンへ投げ返される等)製品開発担当者が涙する話が登場します。
 その製品開発担当者は言っていた。「僕たちが社内で豪語していた製品機能は、世の中ではまったく差別化できていないものだった。それを売れないのは、営業の頑張りが足りないからだと勝手に考えていた。でも、それは違う。僕たちの力が足りなかったんです。戦略立案担当者と協力して、製品を作り上げる努力が全然足りなかった……」

もっと早くに読んでおくべき1冊でした!

ポーターの『競争の戦略』を使いこなすための23問
ポーターの『競争の戦略』を使いこなすための23問
PART1 なぜ事業戦略は機能しないのか?
PART2 なぜ『競争の戦略』を使いこなせないのか?
PART3 顧客に「有意差」を感じさせられるか?
PART4 簡単に真似されない差別化を実現できるか?
PART5 次から次へと差別化を実現できるか?
PART6 プロフェッショナルの戦略立案担当者になれるか?


【関連記事】

【ネタ?マジ?】『ラーメン二郎にまなぶ経営学 ―大行列をつくる26(ジロー)の秘訣』牧田幸裕(2010年12月12日)

【これはスゴイ!】『経営学を「使える武器」にする』高山信彦(2012年05月20日)

【オススメ】『「超」入門 失敗の本質 日本軍と現代日本に共通する23の組織的ジレンマ』鈴木博毅:マインドマップ的読書感想文(2012年04月09日)

【スゴ本】『ストーリーとしての競争戦略』楠木 建(2010年10月20日)

【オススメ】「異業種競争戦略」内田和成(2010年02月04日)


【編集後記】

◆ちょっと気になる本。

表現の技術―グッとくる映像にはルールがある
表現の技術―グッとくる映像にはルールがある

あまり広告屋さんの本は読まない私ですが、これは面白そうな。


人気blogランキングご声援ありがとうございました!

この記事のカテゴリー:「企業経営」へ

この記事のカテゴリー:「マーケティング」へ

「マインドマップ的読書感想文」のトップへ
Posted by smoothfoxxx at 09:00
Comments(2)企業経営このエントリーを含むはてなブックマーク

スポンサーリンク




                               
この記事へのコメント
               
著者の牧田です。ご紹介を頂きましてありがとうございます!

いつの間にか周りの目を気にしてしまう戦略立案担当者や製品開発担当者の方々に、「周りの目など気にするな!誰かに嫌われても、誰かに絶賛されればそれで良いんだ!」ということをお伝えしたく、本書を書きました。

素敵な書評に感謝申し上げます。
Posted by 牧田 幸裕 at 2012年06月11日 21:15
               
>牧田幸裕さん

著者様直々のコメントありがとうございます。
以前コメント頂いて、この本もいつか読まねばと思っておりましたが、やっと拝読できました。

記事では割愛しまくりましたが、事例がそれぞれ腑に落ちて、大変勉強になりました。
次回作も期待しております!

今後ともよろしくお願いします!
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2012年06月12日 18:19