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2012年05月24日

【文章術】『小田嶋隆のコラム道』


小田嶋隆のコラム道
小田嶋隆のコラム道

【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、コラムニストである小田嶋隆さんが、ご自身のコラム執筆の秘訣を語った1冊。

丸の内某店のマイスターがゲラ読んだ時点で「マジ最高に面白い1冊」と言われていたので、読んでみたところ、確かに納得の面白さでした。

アマゾンの内容紹介から一部引用します。
なんだかわからないけど、めちゃめちゃおもしろい! ! 足掛け5年、ミシマ社ホームページ及び「ミシマガジン」に掲載された人気連載「コラム道」、ついに書籍化。深遠かつ実用的、抱腹絶倒間違いなし。天才コラムニスト、本業を初めて語る! (中略)……書き出し、オチ、文体と主語、裏を見る眼…天才コラムニストによる「超絶! 文章術」。内田樹氏との夢の対談も収録。

特にブロガーの方なら、役に立つこと必至かと。


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【ポイント】

■1.困ったときは「会話」
 で、コラムニストは、会話に逃げる。
 というのも、会話文として書いた文章は、筆者の文責から離れるからだ。
「架空の話者(←実際には書き手が捏造した架空人格なのだが)が、バカなことを言いました」ということにしておけば、書き手は、とりあえず安全地帯に待避していることができる。

 ジョーク以外にも、用語解説や付帯状況みたいな、本文の流れとは別の独立した事柄について書いておきたいときにも会話文は、重要な役割を果たす。
 読者に話しかけるカタチで話題を転換しても良いし、強引に質問者を召還する方法もある。


■2.書き出しはたいした問題ではない
 仮に不味い書き出しというようなものがあるのだとして、そのダメな書き出しで始められた文章があるのだとしても、その数行先で地の文がドライブしはじめているのなら、それはそれで味になる。何の問題もない。
 そう。抵抗感のある書き出しや、違和感のある書き出し、あるいはとってつけたような書き出し――すべてアリだ。なんとなれば、「書き出しがすべてを決定する」という格言は、文章のマエストロを詐称する嘘つきが、素人を脅迫するために発明した呪いにすぎないからだ。


■3.良い文章には個性と普遍性が必要
他人に読まれるための文章には、一定の普遍性(あるいは「凡庸さ」と呼んでも良い)の範囲にとどまっていなければならない。より実態に即した言い方をするなら、良い文章は、95パーセントの普遍性に5パーセントの個性を付加したぐらいのバランスの上に成立している。そういうことだ。

 このことを別の方向から見ると、文章を書く人間は、書き手の頭を備えていると同時に「読み手」の眼を持っていなければならないということになる。


■4.結末は「流れ」より「印象」重視で
 であるから、「流れ」と「印象」のうちのいずれかを選ばなければならないとき、コラムニストは、なにより「印象」を選択すべきだ。武士じゃないから? そう。原理より実質。覚悟より結果。生き方より技巧。それが職人の覚悟だ。
「全体を受けてはいるものの、凡庸な一行」と、「結末以前の流れとは無縁だが、フレーズとして魅力のある一行」があるのだとしたら、コラムを書く人間は、迷わず後者を採用せねばならない。

(詳細は本書を)


■5.推敲は別途時間をとって
 乗れていないときの書き手は、書き直してばかりいる。(中略)

 一方、乗れているときの書き手は、そもそも自分の原稿を読み直さない。アタマの中からどんどん生まれてくる新しい考えをタイプする(あるいは紙に書き写す)のに忙しくて、読み直しているヒマがないからだ。読み返したところで、彼のアタマは、「読む」モードになっていない。だから誤字すら発見できない。(中略)

 結局、乗れている場合でも乗れていない場合でも、有効な推敲のタイミングは、「アタマが冷えてから」が標準になる。昔からの格言にある通り「恋文は翌朝読み直せ」ということだ。


■6.要約で描写力をつける
 さて、初心者が描写力を身につけるにあたっては、自分のオリジナルの考えを書き起こすよりは、すでにあるもの(ドラマでも、小説でも、映画でも何でも良い)を利用したほうが合理的だ。
 理由は、先人の作品は、理路整然としていて、確固たる基盤を備えていて、優秀で、整理しやすいからだ。(中略)

 たとえば、自分の好きなテレビドラマを、自分で決めた長さで要約してみる。代表的な文字数としては、40字、600字、2000字、4000字ぐらい。それぞれ、まとめ方に工夫がいる。繰り返しているうちに、コツがわかってくるはずだ。


■7.文章を読むスピードと書いたときのスピードは逆
小田嶋 三島由紀夫がどこかで書いていた文章論に、文章を読むスピードと、それを書いたときのスピードは逆だ、というのがありました。高校生ぐらいのときに読んでいまだに覚えてるんですが、書くときにすごく時間をかけた文章は、読む側にとってはすばらしいスピードで読める。反対に書き飛ばした原稿は、読む側にとっては時間がかかる。

内田 それはすごくわかる。

小田嶋 だからすごく手間をかけてあちこち直して、やっとできあがった文章というのは、読んでみるとすごくスピード感があるんですよね。

内田 ああ、そうだな。文学作品も昔のもののほうが圧倒的に読みやすいもの。ぐいっといっきに引きこまれて読める。今のもののほうが表面的にはさらっとしているんだけど、それは書き手の身体的な滑らかさじゃないんだな。だから、ガヅンガツンと引っかかる。


【感想】

◆当ブログのスタイル上、いつも通り付箋を貼った中からピックアップしましたが、本来、こうしてポイントというかTIPSをまとめるのが失礼な気がする1冊でした。

そもそも、コラムはビジネス文書とは違うもの。

本書の「はじめに」にも、『コラムが運んでいるものは「事実」や「メッセージ」のような「積荷」ではなくて、船そのものを運んでいる」とあります。

つまり、必ずしも伝えるメッセージが重要でなくとも、「味わい」があればOKということ(多分w)。
 ということはつまり、空っぽの船であっても、そのフォルムが美しく、あるいは航跡が鮮烈ならば、でなくても、最低限沈みっぷりが見事であるのなら、それはコラムとして成功しているのである。
沈んじゃうのかYO!!


◆というわけで、その「航海」のための基本的スキル等が、絶妙な文体で語られていきます。

例えば上記ポイントの4番目では、「どう締めくくるか」についての考察が。

「流れ」を受ける代表例がスポーツ新聞の記事で、文章の最後に「要約じみた一行」をつけ加えることが多いそう(例:「遼のドライバーは米ツアーを制するのか」)。

逆に「印象」を強くするためのテクニックとして挙げられている中の1つが「季語」。

小田嶋さんは滅多に使わないものの「季節の話を持ってくる終わり方」は「純真な人々の心をわしづかみにする」のだそうです(詳細は本書を)。


◆また推敲のお話は、まことにごもっともで、私もブログの記事を投稿する際、最低でも一晩おいてから読み返すと、「これはw」ということが何度かありました。

「ありました」というのは、最近は諸事情により、一晩寝かすどころか「投稿30分前にやっと書き上がる」ことが多いもので。

ただ、基本的に当ブログは何かを批判したり、自分の意見を主張する、というより「こういう本があって面白かったです」的なエントリーがほとんどなので、一晩寝かしても、それほど大幅に手直しすることは、なかったハズ。

むしろ細かい表現で、「つい買ってしまいました」だと「不本意にも」と取られかねないので「思わず買ってしまいました」に直したりとか、そんな感じです。

ただ、実はそれ以上に多いのが、誤字と、ハンディスキャナでスキャンした引用部分のタイポなんですけどね(スイマセン)。


◆なお、巻末には「あの」内田 樹先生との対談が(上記ポイントの最後はその対談からになります)。

内田先生、小田嶋さんのことをえらく買ってらして、「日本を代表する批評的知性として、ずっと尊敬してる」のだそう。

特に「説明の名手」として、「橋本 治、村上春樹、三島由紀夫の3人と匹敵する」とまで評価されてます。

その対談も単なる雑談ではなく、「文章の『塩抜きをする』「接続詞はいらない」等々、読みどころも多々。

必ずしもビジネス文章の執筆には役に立たないかもしれませんが、オフタイムで文章を書いたり、作家(やコラムニスト)を夢見る方なら、必読だと思います。


読むだけで文章が上手くなれる(ような気がするw)1冊!

小田嶋隆のコラム道
小田嶋隆のコラム道

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【文章術】『文は一行目から書かなくていい』藤原智美(2011年06月06日)


【編集後記】

◆その内田先生のこの本も、チェックしておかねば……。

街場の読書論
街場の読書論

内容については、HONZさんのこちらのエントリーをご参照のこと。

内田先生に学ぶ『街場の読書論』 - HONZ


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