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2012年05月19日

『サッカー「海外組」の値打ち』と『Number 2012年 5/24号』を読んで海外移籍を考える


サッカー「海外組」の値打ち (中公新書ラクレ) Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2012年 5/24号 [雑誌]


【はじめに】

◆週末なので、サッカーの話題でも。

最近、ポータルのトップページを朝開くたびに、「香川、マンU移籍」という記事が出てないか、ドキドキしているワタクシ。

香川に限らず、今オフに移籍すると噂される(もしくは決定した)選手は多いですが、その成功を占う上でも参考になるのが、小宮良之さんの『サッカー「海外組」の値打ち』です。

また同時期に発売された、『Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2012年 5/24号』も、海外の若手選手について特集しており、併せて読むと理解が深まること必至。

丁度日本代表の23日のアゼルバイジャン戦には、海外組が多数選出されていますので、是非予習してみてください。

(注:書籍に合わせて、敬称等は略させて頂きます)


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【ポイント】

■国によっては語学力大事!マジ必須!!

◆『サッカー「海外組」の値打ち』では、第2章「成功と失敗を分けるもの」において、「コミュニケーションの重要性」について説いています。

中でも大事なのが「語学力」

ただ、海外組でも大して現地の言葉をしゃべれなくても成功している選手もいるわけで、その違いは何なのか?

これがどうも、国というか、国民性によるらしいんですな。


◆特にスペインは語学力必須!

思えば、多くの有名選手がスペインに挑戦しつつも、複数年に渡って大きな成功を収めた例というのがほとんどないのも、どうも「言葉が通じないから」のよう。

「ドイツで日本人が成功し、スペインで失敗しているワケ」という章では、中村俊輔が成功できなかった理由について、次のように記しています。
「パスセンスはファンタステイックだ」
 チームの司令塔であるイバン・デ・ラ・ぺーニャも絶賛した。プレシーズンまでの中村は順風満帆だった。
 ところが、リーグ開幕後は急に失速した。選手たち、とりわけ若い選手の間で囁かれていたのが、「スぺイン語を話す気がないし、何を考えているのか分からない」という不満だった。その風聞は他のクラブの関係者にも伝播したほどだから、意思疎通の面で溝ができていた。あからさまにパスを出さないシーンが見え始め、日本人MFはいつしか孤立していったのである。
これは中村だけの話しではなく、スペインでプレーした選手全体にも言える事。
 城彰二、西津明訓、大久保嘉人、そして中村。リーガでプレーした選手はいずれも合格の判を押せる成績を残せずに旗を巻いている。共通しているのは彼らがスぺイン語を習得できていないことだ。


◆最近では、元ガンバ大阪の家長昭博も、結局スペインを去っています。
スべインを去ることになった主な理由は、語学力不足だった。
「アキ(家長)は語学力に問題があったね」と首脳陣の一人が明かしている。
「2年目の選手だし、もっと言葉を喋れないと話にならない。監督はチームの結束を重んじるから。まずは言葉だ」
ただ、これは日本人だけの問題ではない模様。

かつてスペイン2部でプレーした福田健二のお話から。
「仲間がいてこそ、のゴールなんです。スぺイン時代にそれを実感したのは、アフリカ人FWにあまりにもパスが出なかったとき、ロッカールームで僕がそれを問い質したんです。その選手の答えは『なんで言葉も喋れない奴にパスを出さないといけないんだ? あいつのことを俺たちはなにも知らない』と。FWとして自分の意志を伝えるのは、サッカーの基本だと思いました。意思疎通の結果、ゴールは生まれるんです。(後略)」
逆に、先日トゥーロン国際大会メンバーに選ばれた、指宿洋史はスペインでも問題なさそうです。
 指宿はゼロから始めたスぺイン語を、今やほぼマスターした。コミュニケーションになんのストレスも感じない。精神的に健全な状態が保てることでサッカーに集中することができ確実な成熟が望める。多くの日本人選手が越えられなかった壁を彼は取り払っている。
指宿のインタビューは、『Number 2012年 5/24号』にも掲載されていますので、そちらもご参考の事。


◆ちなみに、スペイン同様にラテン系のイタリアも、語学力が必要なよう。
 長友は語学レッスンを欠かしていないし、中田英寿、森本貴幸など長くセリエAのクラブに在籍した選手たちは、それぞれイタリア語をマスターしている。一方で小笠原、柳沢、大黒などイタリア挑戦が"短命"に終わった選手たちはイタリア語をほとんど話せずに終わった。
まぁ、長友は「特別枠」なので、参考にしちゃいかん、という話もありますが……。



その点、ドイツはラテン系の国々ほどは、語学力が重要視されていないようです。

『Number』によると、香川もドイツ語を勉強しだしたのは2年目からだそうですし(あわよくば1年で移籍するツモリだったらしいww)。


■国やチームよってサッカースタイルも違う!

◆語学の話が長くなったので、以下簡単にw

当たり前と言われそうですが、国やチームによってもサッカースタイルが違うので、自分のスタイルと合うか合わないかは要検討事項です。

『サッカー「海外組」の値打ち』から。
 セリエA、メッシーナに所属していたMF、小笠原満男は自身のイタリア挑戦を「ボールが頭上を行き交うようなサッカーで、パスをつなぐ自分のプレーは許されなかった」と括っていた。監督の号令の下にチームが守備的な放り込み戦術を採用していた場合、技巧派の攻撃的MFはお手上げだ。(中略)

「レべルの高いチームで日本人が通用しない」という意見は的はずれ。鍵はチームが採用する戦術にある。格上のチームは自然と攻撃的な戦い方をしていることが多く、フィジカルパワーよりもテクニックに長所のある日本人に合っている。ドルトムントは2010-11シーズン、プンデスリーガを見事に制覇したが、強豪クラブで香川のカを出せる環境だったことが成功を助長した。
同じことは中村俊輔にも言えました。
中盤でボールをつなぎ、リズムを作る、攻撃を展開する、というプレーが省略された場合、技術を武器にする中村の存在は無用の長物だった。セルティックで成功したのは彼を中心にした攻撃が成立するクラブだったからだ。周囲に汗をかいてくれる選手、スぺースに入り込む選手、へデイングで競り勝つ選手がいた。ボールが集まってきたからこそ、中村は輝いたのである。


◆そこで気になるのが、香川のマンU移籍。

プレミアリーグに関しては、こんな記載がありました。
「プレミアだったら絶対にファウルではないタックルに、審判の笛が鳴る。正直、困惑の連続だった。完璧だと思っていたプレーを否定されるのは、選手には異物を飲み込んだままのようなストレスになるんだよ」
 レアル・マドリーに所属していた頃のデイビッド・べッカムも、デビューシーズンは大いに嘆いていた。
 べッカムの仕掛ける積極果敢なスライディングタックルは、プレミアの基準ではフェアだった。しかし、リーガでは再三ファウルと判定され、審判によってはカードさえ出された。
逆に、プレミアでプレーする(と思われる)香川にとっては、「これ、ファールだろJK!」というタックルが普通に流されることになりそう。

元々フィジカル的にはそれほど秀でていない香川ですから、怪我が心配です……。


■ポジションの適性も考えるべし!

◆『サッカー「海外組」の値打ち』の第4章では「ポジション別適性」として、各ポジションごとの選手の可能性を探っています。

著者の小宮さんが、スペイン事情に明るいこともあってか、スペインの識者の日本人選手評が掲載されており、これが結構興味深くて。

主だったところでは、こんな方々が。

フアン・マヌエル・リージョ

ヘスス・スアレス

詳しくは、本書を読んで頂くとして、いくつかお言葉を拾ってみます。

「川島と西川(周作)を比較した場合、リーガに向いているのは西川だろう」(スアレス)

「遠藤はタメを作りながらゲームを運ばせるのがうまい。頭のいいプレーメーカーだ。欧州でもボランチとして通用するだろう」(スアレス)

「岡崎はストライカーとして非凡な才能を持っている。天性の得点感覚を持っており、スペインでも間違いなくその名を轟かせるだろう」(リージョ)

「(ハーフナー・マイクは)もしスペイン2部のデポルティーボ・ラコルーニャに来れば、シーズン15得点は狙える。(中略)私はバルセロナでジョゼップ・グアルディオラに会ったとき、youtubeでハーフナーのプレービデオを彼に見せたほどだ」(スアレス)

……ここら辺だけ読んでると、「ニッポン、始まったか!?」って感じですけどねw


【感想】

◆『Number』の方は、雑誌ですからパラパラと若手海外組のインタビューを読むだけでも結構楽しめます。

一方、『サッカー「海外組」の値打ち』の方は、かなり読み応えがありました。

特に上記で執拗に触れた「語学力」のことは、まさかここまで重要だった(特にラテン系の国では)とはホントに知らなくて。

ちなみに割愛しましたが、フランスで9シーズン目となる松井大輔もフランス語がペラペラだとか。

今後海外移籍を考える選手は、まずは移籍する国と、自分の語学力とをよく考えるべきだと思った次第。


◆なお、こうした「華々しい」海外移籍とは別に、人知れずマイナーなリーグに挑戦する選手もいます。

上記で触れた福田健二はパラグアイ、メキシコ、スペイン、ギリシャと渡り歩いており、そんな福田に影響を受けた選手も少なくないそう。

先日ご紹介した『フットボール・ラブ』に登場した小澤英明もその一人ですし、今は浦和でプレーしている相馬崇人も福田の姿を見て、海外挑戦を志したとのこと。

またアジアでも、シンガポールリーグであるSリーグに所属していた中島ファラン一生は、デンマークの2部ヴィレレに引き抜かれ、その後チームが1部昇格。

川口能活がいたノアシュランにも在籍し、デンマークリーグで6シーズン奮闘しているのだとか。


◆というわけで、新書の割には(?)中身が濃いのでご紹介してみました。

そういえば、肝心の香川の移籍の件ですが、先日記者会見が開かれましたね。

香川が語る ドイツでの2年目とこれから(会見全文) (ゲキサカ) - Yahoo!ニュース

これをよく読むと
―(移籍の決断は)最終予選後になる?
「どのタイミングになるかは分かりませんが、はい。ここ数日で決まることではないと思います。多分。分かりませんが。まだこれから話をして決めるところなので。代表期間中は代表のことに集中してやっていきたいと思います」
ということなので、少なくとも「ここ数日ではない」模様!?

毎朝ドキドキして損したww


ロンドン五輪やサッカー日本代表戦を観戦する前に!

サッカー「海外組」の値打ち (中公新書ラクレ) Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2012年 5/24号 [雑誌]


【関連記事】

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【サッカー】「察知力」中村俊輔(2008年06月09日)


【編集後記】

◆海外組ではないですが、この人の活躍に日本の未来がかかっております。

フットボールサミット 第6回 この男、天才につき。遠藤保仁のサッカー世界を読み解く
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頑張れ、ニッポン!


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