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2012年05月17日

【知的生産?】『0点主義 新しい知的生産の技術57』荒俣 宏


0点主義 新しい知的生産の技術57
0点主義 新しい知的生産の技術57

【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、サブカルチックなご活躍でお馴染みの、荒俣 宏センセイ勉強本

とはいえ、資格試験等で点を取るためのものではなく、それがゆえの『0点主義』というタイトルでもあります。

アマゾンの内容紹介から。
カネは狭間に埋まっている。無駄・無益・無用に見える「好き」を徹底的に掘り下げ、唯一無二の存在になった秘密の勉強法を初めて語る。

勉強本オタクとしては口惜しいのですが、むしろ「人生で成功する」には、こちらの勉強法が有効なのかもしれませぬ!?


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【ポイント】

■1.「並列感覚」で考える
 たとえば、新入社員が上司から「明日、これを売ってこい」とだけ言われるのと、「明日、静岡へ行き、山田さんにAという商品を100個以上売りなさい。ところで、山田さんは○○ということに興味がある人だよ」と指示されるのとでは、大きく違う。
 前者は1つの作業のことしか指示されていないため、新入社員は自分の仕事の流れをストーリーとしてとらえることができず、どうすればいいか即座にはわからない。こんな指示を毎回受けていたら、確実に仕事が嫌になるだろう。けれど後者であれば、「静岡へ行く」「山田さんに会う」「Aという商品を100個以上売る」「山田さんは○○に興味がある」といった事柄が並列的につながり、売り方のストーリーがつくれる。
 勉強にこのような並列感覚をもちこむことができれば、しめたものだ。とくに歴史の勉強はそれがやりやすい。


■2.記憶の秘訣はアドレスを与えること
「アドレス」というのは、多種多様な情報を、記憶の中から必要なときにすぐに取り出すための手がかり、つまリタグ(見出し)だとか「キーワード」のことだ。(中略)
 このキーワードは、バラバラの情報を一気に整理し分類できるように整理しておく必要がある。じつはその作業がアドレスを与えることなのだ。そして、アドレス化されたキーワードをコード(記号体系)と呼ぷ。人を覚える場合なら、「生まれ年」「趣味」または「出身校」などをかならず記録しておく。これで、「あ、同世代!」とか「同窓生!」などと、人々の情報に関する「取り出し口」ができる。

(詳細は本書を)


■3.インプットは大雑把でいい
 世の中の多くの人は、インプットのほうが大事だと考えているのではないだろうか。
 それゆえ、インプットの仕方やコツをああだこうだと考えがちだが、とりあえず、インプットに関しては網を広く張るような気持ちで、大雑把にどんどん入れていく感覚がいい。
 あくまでアウトプットが求められる場面に遭遇してはじめて、何が必要かが具体化するので、それを満たす情報を探し、ピンポイントのインプットをすればいいのだ。


■4.ノートとメモの違い
 前項までの話を思い出してほしい。知識や情報の憶え方は、1回目が通読、2回目からはピンポイント処理と書いた。そう、ノートは1回目の処理、メモは2回目以降の処理の具体例なのだ。
 ノートはシークエンシャルに取るが、メモはランダムなのだ。1冊になったノートに書くと、自然に流れが決まってしまう。しかし小さなメモ用紙に単元ごとに記入し、バラバラに切り離せるようにする。こうすると、あとでさまざまなつなげ方が可能になり、また見出しをつけることで検索、取り出しが自由になる。ノートは整理しながら書くが、メモは文字通リメモランダム。瞬時の勝負でピンときた話を単純に書きなぐっておくだけでいい。実際の整理は、試験前のように必要に迫られたタイミングでやるのだ。


■5.本のメモの取り方
 やり方は簡単。読みながら、話や論の展開で重要だと思われることを、少しスぺースを余しながら書き出していく。大事だと思うことは二重丸で囲んだりする。そこから派生したり、連想されることを「→」でもって別のキーワードへつないでいく。そうすると、「この部分は、あそこにつながるのか」という具合に、さまざまな事柄の関係性や論理の流れ、つまり内容の配線図ができあがる。
 この作業を進めていくと、さっき書いたように自然にメモとチャートが両立する。同時に、読んだ内容が頭の中でつながって、本1冊分のフローチヤートができあがる。ただ本を読んでいるよりもずっと頭に入る。これは絶対だ。


■6.未体験のプログラミングに親しめたワケ
生来新しい物好きの私は、1週間目に、コンピュータを操作しプログラムを書くことは「言語哲学の実践だ、文学なのだ」と気づき、がぜんおもしろくなってしまった。つまり、機械が仕事を予定通りにしてくれないのは、そのプログラムを組んだ自分の愚かさの証明ということなのだ。(中略)

 私は魔法学が好きで、なぜ「エロイム」と呪文を言っただけでマジックが実現するのか、などという本質的な問題を考えていたほどなので、その感覚はコンピュータのプログラミング作業にぴたりとはまった。機械と人間の間では、言葉が通じないとプログラムが動かない。「これは呪文と同じだ。言葉が通じないと、実効力が出ないのだ」と。
 以来、コンピュータが私にとって、仕事であると同時に遊び=知の探究の対象となった。おかげで9年勤めることができた。


■7.もっとも叶えたいベスト3を人生から外す
 成功したい。お金持ちになりたい。異性にモテたい。多くの人が人生で叶えたいもっとも人気の高いべスト3をあげるとすると、ざっとこんなところだろうか。
 だが、よく考えると、みんなが同じようなことを望んでいるなんてちょっとへンなのだ。(中略)

 そこで、それを逆手にとった生き方をしてみたらどうだろう。つまり、人気べスト3を、とりあえず人生から外してしまうのだ。すると、それらが人生の相当な重しになっていたことに気づくはずだ。
 私自身が人生の早い時期にそれを実践しているので、実感としてわかるのだが、実際にそうしたものを外してみると、かなりいろいろな可能性が生まれてくる。生きることが楽で自由になって、さまざまなことができるようになる。


【感想】

◆勉強本については、今まで何度か申し上げたように、「狭義の勉強本」と「広義の勉強本」とに当ブログでは分けております。

前者は「試験に合格する(点を取る)」ため勉強本であり、記憶術や問題解答法等、俗に「ガチな勉強本」と言われるもの。

一方後者は「試験を目指さない」勉強本であり、ビジネスパーソンが仕事に役立てたり、一般教養として身につけるためのもの。

本書は明らかに前者ではないのですが、後者の中でも異質であり、「趣味」や「好きなこと」を極めて、それを「飯のタネ」にしよう、といったニュアンスです。

それもそのはず、著者の荒俣先生は、「博物学」「神秘学」「妖怪」といった、「ほかの人がほとんど興味をもたないこと」を追い続け、それが結果として自分の「ウリ」となった方。

冒頭の内容紹介にあった「カネは狭間に埋まっている」というのは、まさに「言い得て妙」です。


◆とはいえ、それだけだと「勉強本」にはならないので(?)、本書では荒俣先生の「知的生産的な部分」にもフォーカス。

上記のポイントは、「当ブログ仕様」と言うか、本書の中でも、特にその手の内容を中心に抜き出してみた次第です。

ただ、「競争のための勉強ばかりをすると死ぬときに後悔する」(小見出しより)なんて言われているので、どんな経歴なのかと思ってWikipediaを見たら、荒俣先生って「慶應義塾大学法学部」出身じゃないですかw

もともと地頭が良かったのかもしれませんが、マニュアル的な勉強法ではない、独自のスタイルでも試験突破はできるのだな、と。


◆割愛した中で面白かったのが、「音楽というキーワードで織田信長を学んだらどうなるか」というお話。

何でも信長は、安土城の隣に、欧州からの宣教師たちのために神学校をつくらせ、そこでグレゴリオ聖歌をよく聴いていたのだそう。

信長以前は、大将が名乗りを上げて、一人ひとりが戦う「個人を軸にした」戦争をしていたのですが、信長は鉄砲3000丁を用いた長篠の合戦など、「日本では革新的な」集団の戦い方を取り入れた事でも知られています。

集団が秩序をもって戦った裏に、「合唱」という音楽を使って自軍を団体行動させるテクニックがあったのかもしれない、というのが荒俣先生のお考え。

確かに「一見関係なさそうなこと」同士が結びつくと、記憶に深く刻まれそうですね。


◆思うに、一般的な勉強本(特に「狭義の」)が「ロジカルシンキング」だとしたら、本書は「ラテラルシンキング」。

資格試験等のペーパーテストには、あまり役には立たないかもしれませんが、アイデアや発想といった側面から見た場合には、「値千金」となるような気がします。

私は書店で、ポイントの最後で挙げた「もっとも叶えたいベスト3を人生から外す」を読み、「なるほど、そうだ!」と思って本書を購入したのですが、購入後良く読んでみたらアラびっくり。

……荒俣先生、最後の「異性にモテたい」というのは、「1ヵ月服を着替えない」「お風呂に入らない」という人にとっては、外す以前に「ムリ」だと思うッす!


累計書籍代約5億円(Wikipediaより)の勉強法がここに!

0点主義 新しい知的生産の技術57
0点主義 新しい知的生産の技術57
序章 0点主義の勉強法
第1章 偶然が訪ねてくる勉強法
第2章 情報整理なんていらない
第3章 勉強を高尚なものにしない
第4章 苦手な勉強こそ意外なチャンスをもたらす
第5章 不利な環境は最強の勉強空間だ
第6章 「人生丸儲け」の勉強法


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「プチクリ!」岡田斗司夫(著)(2006年07月10日)

「パーソナル・マーケティング」をうまく使う、たったひとつの冴えたやりかた(2009年11月18日)


【編集後記】

◆まだちょっと先の発売ですが、「狭義の勉強本」を。

毎日往復1時間で受かる!  資格試験「通勤電車」勉強法
毎日往復1時間で受かる! 資格試験「通勤電車」勉強法

私も電車内では勉強が捗った記憶があるので、これは要チェックかな、と。


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この記事へのコメント
               
荒俣先生の話。
 もっとも叶えたいベスト3を人生からはずす。 のところで、ガッテンしました。
 先生は人生の早い時期にそれを実践しておられたので、実感としてわかる。とおっしゃいましたが。
 私も遅ればせながら、会社での仕事によるストレスから心の病に陥り、約10年間の暗闇から抜け出した経験から実感したのです。
 実際にそうしたものをはずしてみると、・・・生きることが楽で自由になってさまざまなことができるようになりました。 本当に実感です。
Posted by 田邉 悌二 at 2013年03月14日 02:04
               
>田邉 悌二さん

コメントありがとうございます。

私は逆に外せなかった人間だと思いますが、田邉さんのように闘病までされた方が言われるなら、荒俣先生がおっしゃる通りなんでしょうねぇ……。
うーん、深い。

今後とも宜しくお願いします。

Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2013年03月14日 05:14