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2012年05月14日

【12の力】『竹中式 イノベーション仕事術』竹中平蔵


竹中式 イノベーション仕事術
竹中式 イノベーション仕事術


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、小泉内閣時でのご活躍がまだ記憶に新しい、竹中平蔵さんの仕事術本。

幻冬舎さんお得意の(?)「1000円ぽっきり単行本」にて登場です。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
人生、勝ち負けだけではない!
竹中流、グローバルな基準で生涯挑戦しつづけるための、12の革新的ヒントとは?

偏差値よりも時頭の時代!
闘うための12の力

仕事や人生において重要な12の力とは!?


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【ポイント】

■1.現在と未来の履歴書を書く
 自分をプロデュースするひとつの方法として、私が若い人たちに薦めていることがあります。それは、「履歴書」を書くことです。
 まずは、現在の履歴書を書くことから始めます。それを書くことで「自分には何ができていて、何ができていないのか」が明確になります。(中略)
 そして次に、10年後の履歴書を書いてください。これは夢のようなものです。たとえば今20歳の人が、10年後に30歳になったときの履歴書として、「会社で2回転勤し,つい先日係長になになった。自分の会社もグローバル化を進めているので、将来のことを考えて英語の勉強を始め、TOEIC**点をとった」とか……。とにかく、それを一度書いてみることが大切です。


■2.ひとつのテーマに5年間本気で打ち込む
 私はぜひ若い人に伝えたいのです。何かを熱心にやるために、日本はすごく恵まれた社会であるということをです。日本にはこれまでゼネラリストは数多くいました。しかし、スぺシャリストを必ずしも育ててこなかったために、はっきりいえば専門の底が浅い社会になってしまいました。
 たとえば、経済の分野でいえば、ひとつのテーマに5年間本気で打ち込めば、5年後にはこの国で5本の指に入ることは難しくないでしょう。それほど専門家が少ない国なのです。


■3.現実の意思決定をする
「こうなればこうなる」という議論をいくら緻密にしても、そこからは現実の意思決定は何も生まれません。実は学校秀才の中にはそういう際学の人が多くて、企業に入っても中間管理職まではある程度こなせるのですが、大きな組織のトップに立つと、とたんに役に立たなくなってしまうのです。現実に日本では、そういうことが頻繁に起こっているのだと思います。


■4.相手の目的関数を明確に見抜く
 相手と交渉を進めたり、プランを実現するための戦略を考えるとき、相手の目的関数を明確に見抜くことが大変重要です。私の経験からいえば、人は驚くほどシンプルに自分の目的関数に従って行動しています。官僚はいろいろなことを言っても自分の影響力を最大化しようと思っているし、政治家は得票数を増やそうと思っています。(中略)

 目的関数を見抜くことで、真実が見えてきます。それは、交渉を優位に進めるうえで、そして自分のプランを実現するためにも不可欠なことです。


■5.連立方程式で考える
商売をしているときに、このオファーを出したら顧客企業はどうするだろうか? ライバル企業はどんな対抗策を講じてくるだろうか? 顧客企業は、今の財務内容から考えてどのような答えを出してくるだろうか? それをある程度描けないといけないわけです。
 そのためにはどうすればいいか。前述の連立方程式を使うわけです。この企業の財務部門はこうする、ライバル企業の営業戦略はこうなってくる、という答えを常に考えておかねばなりません。この「常に考えている」ということが、私は極めて重要なポイントだと思います。


■6.敵ができることを覚悟する
 通常の穏やかな社会生活をしている人たちにとって、誰かと敵対するというのはやはり嫌なものです。危害を加えられるといった不安がたとえなくとも、不快なものであることは確かです。「和」を尊ぶ日本社会では、なおさらそうでしょう。
 しかし、社内の改革や先の賃金切り下げなど、思い切った行動をとるときは必ず反対論が出ることを覚悟し、敵ができることを当然のことと覚悟を決めましょう。


■7.肩書きを2つ持つ「ハイフニスト」になる
 ハイフニストになることは、非常にいい効果をもたらします。人生にはいろいろなことが起こりえます。ライフ・イズ・ノット・イージーです。ひとつのことがうまくいかずに、落ち込むこともあるでしょう。そのときに別の専門分野があれば、それが助けてくれます。まさに一種のリリース効果です。
 もうひとつは、ひとつのことを極めれば、その道が他の道にも通じていることがわかります。専門というのは突き詰めれば突き詰めるほど、共通点が出てきます。相通じるところがあるのです。これは、分野が違っても名人同士が相通じるのと同じです。


【感想】

◆竹中さんの幻冬舎さんからの本と言えば、このシリーズの前作として、「竹中式マトリクス勉強法」があります。

ただし、勉強本オタクとしては、この本は色々と思うところがあって、最終的に記事にできなかったため、本書も実のところ、読むまで若干不安な部分がありました。

しかし、結論から言うと、本書は「仕事術の本」としてはクオリティは悪くないですし、コストパフォーマンス的にもかなりのもの。

過去や現在の竹中さんの主張に必ずしも同意できなくとも、「ビジネスパーソンが読む本」として、当ブログで取り上げるに十分な内容だと思います。


◆1つにはネタが豊富なこと。

やはり「勉強」と比較すれば、社会人がやるべきことは多く、その分、主張されているポイントにも必要性や重要性が感じられました。

そもそも「勉強」自体、その「社会人がやるべきこと」の1つなわけですし、実際、本書の第6章の「洞察力」では「古典を読め」と、主張。

アダム・スミスから、ロバート・マルサスやカール・マルクス、さらにはケインズ、ハイエク、フリードマン、と一連の経済学の流れを追われていると言う。

この辺は、竹中さんのこちらの本にも詳しいらしいです。

経済古典は役に立つ (光文社新書)
経済古典は役に立つ (光文社新書)

2年以上前の本なのに、値崩れしてないとは。


◆もう1つは、具体的なエピソードが豊富なこと。

収録されているエピソードとしては、やはり小泉内閣時のお話が多かったです。

とはいえ、小泉元首相を単に持ち上げるというのではなく、本の流れで必要に応じて、という感じかと。

そして小泉さんといえば「キャッチーなフレーズ」が印象深いのですが、本書も部分部分で比喩的表現が登場しています。

例えば上記ポイントの中でも「際学」や「目的関数」「連立方程式」といったところがそう。

このうち「際学」というのは、経済学者の下村 治さんが、竹中さんに語った話の中にあったそうなのですが、さまざまな質問に対して「こういう条件だったらこうなる」「ああいう条件だったらこうなる」と議論するだけで、「現実にどうなるか」について議論してないようなことを言います(詳細は本書を)。

「目的関数」や「連立方程式」については、ニュアンスが分かると思いますので割愛しますが、この辺の言葉の使い方が特徴的だったな、と。


◆本書は読みやすい割には、内容が充実しており、私個人としては意外な(失礼!)「良書」でした。

もちろん、ポジショントーク的な部分がないわけでもないものの、その辺は読む側がバッファを持たせれば良いだけのこと。

また、レビューで指摘されている「12の力に関連性がない」という点も、私はビジネス書に「使えるネタ」を探すタイプなので、それほど気にならなかったですし。

元政治家の方が書かれる本は、どうしても色眼鏡で見てしまう(私だけ?)のですが、フラットに読んだとしても面白かったです。


コストパフォーマンスが高い1冊!

竹中式 イノベーション仕事術
竹中式 イノベーション仕事術
1.プロデュース力 自分で自分をプロデュースする
2.熱心力 熱い心で「思い込め」、熱い心がなければ人生無意味
3.基本力 BtoB(Back to Basics)繰り返せ、「飽きない力」に目覚めよ
4.判断力 常に目的関数を見抜け
5.情報力 馬鹿は相手にしなくていい
6.洞察力 心に宇宙を描け
7.結合力 組み合わせが力を生む
8.徹底力 妥協しない力、敵ができても恐れるな。敵ができれば味方もできる
9.切り捨て力 1日は24時間で人生は短い
10.健康力とリリース力 人生でスイッチングを怠るな
11.サポーター力 志のSFCを貫け
12.達観力 人生「塞翁が馬」と知れ


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【編集後記】

◆現在熟読中の本。

心がおぼつかない夜に
心がおぼつかない夜に

速読しちゃいけない、大事な本であります……。


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