2012年05月06日
【サッカー】『俺にはサッカーがある』『フットボール・ラブ』を読みました
【はじめに】
◆GW最終日は、日頃控えめにしているサッカー本を2冊ご紹介します。『俺にはサッカーがある』は、速水健朗さんのこちらのエントリーを読んで購入。
世界と直結しているサッカーは競争を避けて通れない - サポティスタ
読みながら、先日読了した似たようなスタイルの『フットボール・ラブ』を、ふと思い出したという。
どちらも複数のサッカー選手や周囲の人に話を聞いてまとめており、サッカーファンなら一読の価値がある作品です!
いつも応援ありがとうございます!
<以下、敬称略>
【『フットボール・ラブ』について】
フットボール・ラブ ~俺たちはサッカーをあきらめない~ (SHUEISHA PB SERIES)
急逝した松田直樹をはじめ、田中誠、南雄太、カレン・ロバート、古賀正紘、成岡翔、豊田陽平、小澤英明が登場。
ケガやチーム事情によって崖っぷちに立たされながら、それでもサッカーを諦めない8人の元日本代表の不屈の物語。先日急逝した松田直樹最後のノンフィクションと、彼の遺族のインタビューも収録。
◆アマゾンの評価は1人のレビュアーによって下げられてますが、個人的には★4つは堅い1冊。
亡くなった松田直樹や、引退した田中誠を含め、皆どこかで一度は「挫折した」選手の肉声が詰まっています。
年齢的にも、これから日本代表に選ばれる可能性があるのは、VVVフェンローのカレン・ロバートと、サガン鳥栖の豊田陽平くらいで、残りはベテラン勢。
ただし、世代別等の「日本代表歴」がある選手ばかりということで、その時期その時期にサッカーを観戦していた方なら、懐かしい面子とも言えるかと。
◆たとえば、今はロアッソ熊本に所属する南雄太。
世代的には小野伸二や稲本潤一らがいた、いわゆる「黄金世代」で、スターティングメンバーだったゴールキーパーです。
若い世代のサッカーファンにとっては、「自陣ゴールにボールを投げ入れてのオウンゴール」でネタ的な印象しかないかもしれませんが、ワールドユースで準優勝した時のメンバーの1人。
柏レイソルの中心的存在だった彼は、横浜FCから移籍してきた菅野孝憲との正GK争いに敗れ、「自分を見つめ直す」ようになります。
「スゲ(菅野)にポジションを取られた当初は、悔しかったですよ。"ゴールキーパーとしてのタイプが違うだけだ"と強がっていました。(中略) 自分はずっと柏のゴールを守ってきた誇りもあったし、たやすくは現実を受け入れられなかった。その後、J2に転落したチームのコストカットのあおりを受けて、ロアッソ熊本に移籍するも、「勝利のメンタリティを持つ選手」として、チームを鼓舞し続けているそう。
でも、石崎さん、高橋(真一郎)さん、ネルシーニョ、監督3人ともスゲを使ったんです。自分には何が足りないのか。次第に深く考え込むようになりました」
◆逆に、本書を読むまで知らなかった(スイマセン)のが、アルビレックス新潟のGK、小澤英明。
38歳と大ベテランですが、2010年にパラグアイのスポルティボ・ルケーニョに移籍するまでの17年間で、出場試合数25試合という「控え人生」を送った選手です(2009年10月17日にはベンチ登録252試合の最多記録を樹立)。
その辺のことは、この動画でも明らかにされているのですが。
◆ところが実のところ、本書での読みどころは、パラグアイでの彼の奮闘ぶり。
最初は単身赴任したものの、途中から奥さんが幼い娘さん二人を連れて、パラグアイに乗り込んできます。
そしてその奥さんの泣かせること!
「試合では、向こうの選手が"日本人ゴールキーパーを潰せ。手柄になるぞ"とわざと蹴り上げてきたから、とにかく無事を祈っていました。敵選手も生きるために必死なんでしょうけど、それならこっちだって一緒ですよ。"家族みんなで燃えて戦うぞ"と心を1つにしました」その後の奮闘ぶりは本書にて。
日本とは違って、実際に試合に出て、マン・オブ・ザ・マッチに選ばれたりもし、シーズン終了後は契約更新のオファーやパラグアイの有力チームからのオファーがあったものの、鹿島時代の戦友だった黒崎久志監督からの誘いもあって、最終的には新潟に移籍。
つい先日の試合でも控えのメンバーにもまた入っているのがスゴイです。
【『俺にはサッカーがある』について】
俺にはサッカーがある: 不屈のフットボーラー16人
幼少時の親との死別、壮絶なイジメ、選手生命が危ぶまれるケガ・病気、伸び悩み・スランプ、突然の戦力外通告…幾多の困難を乗り越えて、力強くサッカーとともに生きてきたプロ選手たちの生き様。
◆最初に申しあげておきますが、この本の著者の「川本梅花」氏は、男性ですのであしからず(関係ないかw)。
さて、上記『フットボール・ラブ』が216ページであるのに対して、この『俺にはサッカーがある』は318ページ。
アマゾンで買ったので気がつかなかったのですが、かなり厚くなっています。
収録されている選手も、元日本代表だった波戸康広や、ドイツで頑張っている岡崎慎司、オリンピック代表の可能性もある水沼宏太とさまざま。
その分、幅広い意味で「読み応え」がありました。
◆また、本書の特徴として挙げられるのが、ビジネス書ではお馴染みの(?)太字強調。
基本的に発言部分で用いられているのですが、おそらく感情がこもった部分がそうなっているのかと。
例えば、岡崎慎司が滝川二高時代に、同じサッカー部員だった実の兄の姿に励まされたお話から。
「自分のスタイルでトップチームに上がったわけじゃないですか。『同じスタイルの俺も上にいける』というのを見せてくれたんですよ。俺のスタイルは、がむしゃらにプレーしてゴール前では相手に競り負けないこと。そしてシンプルにプレーして結果で力を証明するところです。それを兄貴が見せてくれた……暗闇の中で光を見たというか。ここで頑張れば絶対に上手くなれると確信しました」同じサッカー本である『走り続ける才能たち』にも岡崎は登場してましたが、お兄さんがいたとは知りませんでした。
参考記事:【サッカー】『走り続ける才能たち - 彼らと僕のサッカー人生』安藤隆人(2012年01月29日)
◆もしくは、この太字強調は、サッカーファンのみならず、ビジネス書や自己啓発書の読者層にまでアピールするためのものかもしれません。
実際本書は、サッカー以外にも通ずる「教え」のようなお話もちらほら。
例えば、大宮アルディージャから移籍を考えていた波戸康広が思い直すシーンから。
「僕は、あらためて思い知らされたんです。大切なものは人だということを。えー、話や……。
『この人のもとで存分に力を発揮したい』と思える人がたくさんいればいるほど、絶対にそのチームは強くなる。僕は、気持ちの部分が大切だと悟らされたんです。サッカーの世界でもそれ以外の世界でも、一番大事なのは人と人との関係だと思うんです」
◆サッカーという競技自体、選手としてプレイできる期間が短いわけで、その分「普通の人の人生を凝縮」したかのようになるのかもしれません。
本書では、上記内容紹介にもあったように、いじめや怪我や病気、さらには嫉妬やチーム消滅等々、さまざまな困難が彼らに降りかかります。
その時彼らはどうしたか?
そして最終的にはどうなったか?
自分より、はるかに年下のサッカー選手たちに「いかに生きるか」を学ばせてもらった次第です……。
【関連記事】
【サッカー】『走り続ける才能たち - 彼らと僕のサッカー人生』安藤隆人(2012年01月29日)【サッカーファン注目!】『観察眼』遠藤保仁,今野泰幸(2012年01月18日)
「野洲スタイル」山本佳司(2007年01月18日)
「オシムジャパンよ!」フィリップ・トルシエ(2007年05月17日)
「敗因と」金子達仁,戸塚 啓,木崎伸也(2007年01月05日)
【編集後記】
◆記事内でもご紹介していますが、今日の2冊と一緒に、こちらも是非。走り続ける才能たち - 彼らと僕のサッカー人生
現・サッカー日本代表の中心をなす「北京世代」と「調子乗り世代」の素顔がここに(上記関連記事にエントリー有り)!
ご声援ありがとうございました!
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