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2012年05月05日

【トラップ?】『試験勉強という名の知的冒険』に学ぶ6つのひっかけのパターン


試験勉強という名の知的冒険
試験勉強という名の知的冒険


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、代々木ゼミナールの人気講師である富田一彦さんによる勉強本

と言っても、日頃当ブログでご紹介している勉強本とはちょっと違い、「試験問題の構成」レベルから解法を探るような深い内容でした。

アマゾンの内容紹介から。
「問題を解く」ということの根本原理がわかり、あらゆる問題に応用可能。一度身につけたら、受験はもちろん、すべての「試験」に役立つ。まるで推理小説を読むかのようにスリリングな論考。

今回は本書の中から特に、「手がかりを解答者の目から隠すための技術」である「雑音」(いわゆる「ひっかけ」ですね)についてフォーカス。

全部で11紹介されているうち、6つピックアップしてみます。


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【6つの「雑音」のパターン】

■1.無関係な情報
 解答するのに全く使わない情報を与えることで解答者を混乱させたり問題を難しく見せたりする方法であり、「雑音」の中ではかなり初歩的な部類に属する。(中略)

問:空所に入る適切な表現を下から1つ選べ。
 We should look about and see (  ) is open to us.

1. why other course
2. when other course
3. what other course
4. how other course

 さて、どうだろうか。答えは3である。正しく答えられた人はわかったはずだが、この問題(実際に慶感義塾大学の入試問題である)、実は本文自体が完全に雑音で、解答には関係がない。

(詳細は本書を)


■2.無関係に見える情報
「雑音」の中には一見無関係に見える、といった種類のものがある。実は関係があるのだから「手がかり」なのではないかと考える人もいるだろうし、それも一理あるのだが、それをいかにも「無関係」であるかのように装うことそれ自体が「雑音」といえる。(中略)
目の前に手がかりをでかでかと示してあるのに、それに気づかないように何らかの化粧が施されている類の雑音である。


■3.未知の情報を見せる
 これはかなり古い手である。解答者が見たことのない情報を投げつけることで解答者を混乱させ、それによって相手が手がかりを見出す冷静さと明晰さを失うことを狙っている。英語の試験では「知らない単語の意味を問う」などというのが典型的にこの種の雑音を持っている。
 志の低い学生の中には知らない単語が出ただけでもうすっかり諦めてしまい、頭の中で「蛍の光」を歌いだす手合いがいるものだが、実に情けない。本当の勝負はそこから始まるのに。


■4.絶対に解けない問題を混ぜる
 もちろん「絶対に」解けないといっても、それは通常の知識や理解を前提としている。通常の学習をしてきた人間が知っているはずのないことや聞いたことのないはずのことを問えば、当然それは「絶対できない」問題になる。(中略)
 こういう雑音が共通して求めているのは「発想の転換」である。その転換の内容を簡単に言えば、「知らない情報」は使わないで解く、ということだ。


■5.時間に対して分量が多すぎるように見せる
問題の中には30分以上の長考を要求するものもあれば5分で解答可能なものもあり、それぞれにバランスよく時間を与えていくことも試験における重要な技術の1つである。だが、はじめに言ったように、最初に問題冊子を開いたときなど、こんなにたくさんあって最後まで解ききれるのだろうか、と不安になることもかなりあるだろう。もちろん、これにはちゃんとしたからくりがあるのだ。


■6.一部にだけ注目させる
 これは「手がかり」から解答者の気を逸らすために、手がかりとは無関係な情報にあえて注目させるような手法を言う。ひとつながりの表現の中に別の要素を入れ込んでその流れを分断したり、考えるべき箇所の一部にだけ下線を引いたりして、そこだけに注目させたりする、という手である。簡単に言えば、手品師のよくやる、あれだ。

問:次の文の空所に適切な前置詞を補いなさい。(大阪市立大学)
 Mexico is aging five times faster than the U.S., due primarily (  ) a dramatic fall in fertility.

 答えは●である(ネタバレ自重)。理由は●●という表現の一部だから、なのだが、dueと空所の間にprimarilyが入っているのがミソである。レベルにもよるけれど、このように単語1つでも無関係な表現が入るだけで、つながりを考えられなくなることがある。すると、後ろのa fallだけとの意味の関係から前置詞を選ぼうとしてまんまと罠にはまるのだ。


【感想】

◆引用部分が長くなった割には、ちょっと分かりにくくてすいません。

やはり、具体例があるのとないのとでは、理解の度合いが違ってきそうな。

実は本書では、各「雑音」ごとに最低でも2つ以上の具体例が紹介されているのですが、引用するととんでもない量になってしまうので、問題自体が短いもののみ選んでおります。

富田先生が英語の先生である、ということもあってか、やはり英語の例が多いものの、数学や現代文等の具体例もあり、「雑音」ごとに問題を見れば、「なるほど、そういう意図があったのか」と納得できるハズ。


◆もっともこれらは、「そのひっかけに気づけば問題が解ける」というものであり、それに先だつ「知識」や「情報」がなければ、ひっかけが分かっていても、解きようがありません。

私が受験した税理士試験は、ひっかけというよりも、単純に「記憶量の勝負」な部分が大きいため、あまりこういった「問題の仕組み」について考えたことがありませんでした。

ただし、資格試験の中でも「択一式試験」であれば、当然「ひっかけ」もあるでしょうし、問題を解く上で有益かと。

がむしゃらに勉強する傍ら、今回取り上げたような「雑音」の知識も併せて学んでおきたいところです。


◆さて本書の第2部では、「有効かつ有意義な勉強法」と題して、富田先生が推奨する勉強法について論じられています。

当ブログの趣旨からすると、本来こちらを抜き出すべきなのでしょうが、いつものように引用するだけで中身が分かるかと言うと、ちと難しかったと言いますか。

例えば「観察力を高める3つのキーフレーズ」として
(1)目の前の現象を正直に見る
(2)答えではなく、手がかりを探す
(3)ほかの何かを持ってきて比べる
とあるものの、富田先生ご自身「一読しただけではその重要性はおろか、そもそも何を言っているのかさえわからないかもしれない」と言われているという。

もちろん、それに続いて事例とともに解説がなされていますので、全部を精読すればよく分かるのですが、いつものようにタイトルだけ拾うと、かえって誤解されるかな、と思い、丸ごと割愛した次第です。


◆あとがきにおいて、富田先生は本書について「学習参考書というにはターゲットと内容が明確ではなく、啓蒙書に分類するには内容が技術的で、随筆というには話が具体的すぎ、実用書というには内容が抽象的すぎ(後略)」と言われており、これには私も思わず納得してしまいました。

私はアマゾンで注文したのですが、果たして本書はリアル書店であれば、何処に置かれるのやら。

「実用書というには内容が抽象的すぎ」というのが、ビジネス書好きには若干ネックで、さらさらっと立ち読みしたくらいでは、具体的に何が得られるかが分かりにくい気がします。

私個人としては、バカ正直に勉強しているものの、思ったほど点数が伸びない人に本書をオススメしたいところ。

それ以前の絶対的な勉強量が不足していて、覚えなければいけないところが覚えられていない方は、まずタイムマネジメント本や具体的な記憶術本から読まれるべきだと思います。


考えながら読む勉強本でした!

試験勉強という名の知的冒険
試験勉強という名の知的冒険
第1部 問題はどのようにしてできているか

第1章 問題は野原に咲いている花ではない
第2章 雑音の正体

第2部 有効かつ有意義な勉強法

第1章 試験準備に向けた勉強のあり方
第2章 どのような知識を手に入れるべきか
第3章 観察力とは何か、いかに手に入れるか
第4章 得点力の鍵「判断力」


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【編集後記】

◆芸能人ブログの中では、唯一私が愛読している酒井若菜さんのブログ本がいよいよ登場!

心がおぼつかない夜に
心がおぼつかない夜に

タイトルにもなっているエントリー、「心がおぼつかない夜に」は、はてブ1000超という人気ぶり。

文章を書く人すべてに読んで欲しい1冊デス。


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