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2012年05月04日

【オススメ】『競争優位で勝つ統計学---わずかな差を大きな勝利に変える方法』ジェフリー・マー


競争優位で勝つ統計学---わずかな差を大きな勝利に変える方法
競争優位で勝つ統計学---わずかな差を大きな勝利に変える方法

【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、勝間さんの新刊『「有名人になる」ということ』で知り、速攻でアマゾンアタックかけた1冊。

今見たら在庫が薄いのも、その『「有名人になる」ということ』を読んで、同じように購入した方が多いからのような気がします。

アマゾンの内容紹介から。
ビジネスで勝つために必要なのは、経済学より統計学! 映画『ラス・ヴェガスをぶっつぶせ!』のモデルとなった天才数学者、伝説の人物が教える「競争優位」の極意とは?

統計学というと数式やら表やらが多発されてそうですが、全くそんなことはなく、面白い事例が多々。

当然付箋も貼りまくりました!



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【ポイント】

■1.オプション会社の面接での質問
 面接は簡単な質問から始まり、すぐに本題に移った。「私が六面サイコロを振って、どの目が出てもきみにいくらか支払うというゲームを持ちかけたとしよう。たとえば、私が1を出したら1ドル払い、6を出したら6ドル払う。きみはこのゲームに参加するとしたら、ひと振りにつき、私にいくら払うかね」
 たちまち緊張が解けた。これは金融論ではなく統計学の問題だ。答えは簡単だ。
「そうですね、各回の期待値(サイコロの目の平均値)は3.5です。だから3ドル払うことにします」私は答えた。面接担当者をうならせるには十分だった。私は次の面接へと進み、カードカウンティングの話題でおおいに盛り上がり、採用を手に入れた。


■2.トレーディングのギャンブル性
カードカウンティングのシステムは純然たる数式に基づいており、ブラックジャックのルールが変わらないかぎりその数式も不変だ。賭けには毎回理論上の優位性があり、長期的にはその優位性が実現することになる。偏差の影響に耐えるだけの資金があれば、リスクはきわめて低い。私たちがカジノでやっていたことにギャンブルの要素はほとんどなかった。ところがトレーディングはまるで違った。本質をつきつめてみれば、トレーディングにはブラックジャックに備わっている確実性が欠けているのだ。


■3.ギャンブラーの誤謬
 だが実際のところ、13回連続で赤が出る確率はどれほど低いのか。ホイールには38個のポケットがあり、そのうち赤は18個だから、赤が出る確率は38分の18(47.4パーセント)になる。それが13回続く確率はじつに1万6544分の1だ。確かに、驚くべき数字である。しかし、ブライアンは「13回連続で赤が出ない」ことに賭けていたのではない。あくまでも、1回ごとのスピンで黒が出る可能性に賭けていたのだ。彼が勝つ可能性は依然として47.4パーセントにすぎない。


■4.あらゆる状況でデータの利用を試みる
 カードカウンターにとって、何よりも重要なのはデータ、すなわち過去だ。使用済みのカードを把握することこそがカジノ側の優位性を打破する鍵だった。私たちの徹底したデータ重視の文化には、土台にこの根本的な教訓があった。データ主導型の文化の充実は、私がビジネスの世界に入ってから一貫して呼びかけてきたことである。(中略)

 人生においても、ビジネスにおいても、自らの優位性を確立しようと思うなら、自分が利用できる過去データは何か考えるべきだ。きっと、普段は見過ごして利用していない情報が見つかるだろう。


■5.確証バイアスを防ぐプリ・コミットメント
 また、プリ・コミットメント(事前の約束)という方法も提唱されている。これは、株を買う前に、投資姿勢を変更する理由となる状況や出来事を書き出しておく方法だ。たとえば、アップル社の株を買うと決めた時点で、CEOのスティーブ・ジョブズが第一線から退くか、マイクロソフトがアイフォーンの競合製品を発表するかしたら、保有するアップル株を売ると決めておく。そうすれば、どちらかが現実のものとなり、株価が下がり始めたとき、ためらわず損切りできるだろう。なぜなら、あらかじめ自分に約束をしているからだ。


■6.結果で決断を判断しない
 意思決定の妥当性は決して結果のみからは評価できない。結果が好ましくないからといって必ずしも意思決定が間違っていたことにはならない。また、結果が好ましくても意思決定が正しかったとは限らない。
 このことを直観で理解している人は実に少ない。ほとんどの人は、好ましい結果は意思決定の正しさを裏付けるものと捉える。しかし、極端な例で考えてみれば、その問違いに気づくだろう。たとえば、私は今夜、職場から車で帰宅するとしよう。他に交通手段はなく、いつかは帰宅するのだから、これは正しい決断といえる。では、途中で交通事故に遭遇したらどうか。これは明らかに好ましくない結果だが、だからといって、車で帰宅するという最初の決断が問違っていたことにはならない。

 
■7.決断しないことも1つの決断
 この研究によれば不作為の代償はかなり大きい。というのも、同じハンドについて、最適戦略を実践するプレイヤーは、負けを恐れて慎重になるプレイヤーより20倍の勝利を収めていたからだ。
 ビジネスにおいては、不作為バイアスの存在を認識することで、行動することと行動しないことを同等に扱えるようになる。とはいえ、常にきわどいプレイに挑むよう奨めているわけではない。ブラックジャックでいえば、21になるかバストするまで必ずヒットし続けよと言っているのではない。要は行動するか否か(ヒットするかスタンドするか)を等しく検討せよということだ。失敗して後悔したくないというだけの理由で現状維持を優先すべきではない。


【感想】

◆本書の著者のジェフリー・マーを主人公にしたこの本のことは、私も一応知っていました。

ラス・ヴェガスをブッつぶせ!
ラス・ヴェガスをブッつぶせ!

ただし、彼および彼のチームが行う、ブラックジャックにおける「カードカウンティング」なる行為は、一種のイカサマかと思っていましたが、あにはからんや。

こちらのサイトにもあるように、「配られたカードから、ディーラーとプレーヤーのどちらに有利なカードが多く残っているか推測する」ことであり、基本的にはイカサマではありません(チームを組むこと自体がイカサマ、という話もありますが)。

ブラックジャックのカード・カウンティング

これはつまり、「過去のデータ」が意思決定に重要な役割を果たすワケです。


◆逆に、「過去のデータ」が未来の意思決定にまったく関係しないのがルーレット。

上記ポイントの3番目の話では、8回連続で赤が出ているテーブルで「次こそは黒!」と賭け続け、5000ドルを失う著者の友人が登場します。

確かに13回連続で赤が出る確率は極めて低いものの、1回1回の確率を見た場合には、過去の結果は関係ないんですよね。

それなのにあえて電光掲示板で、それまでの結果を表示しているのが、カジノ側の作戦なんでしょうがw


◆本書では最近映画が上映されて話題の『マネーボール』さながらに、こうした統計学の考えをスポーツに活かしている事例が登場します。

例えば、バスケットボールにおける「トゥー・フォー・ワン戦略」。

これはNBAの試合では、ボールを保持したチームはルール上24秒以内にシュートを打たねばならないため、各クォーターの終了間際の「残り何秒」の時点でシュートを打てば、自分たちが2回攻撃できて、相手が1回に収まるかを考えるもの。

抜け目ないチームは間違いなく研究しているはずですが、結果は公表されておらず、著者は独自に研究し、結論を出します(ネタバレ自重)。


◆他に割愛した中で面白かったのが、アメリカン・フットボールにおける、「ギャンブル」の確率のお話。

例えば「フォースダウンで相手ゴールまで2ヤード」の状態で、もっとも正しい選択は何か?

この場合基本的には(「負けていて3点では足りない」等のケースを除いて)、どのチームもほぼ100パーセント成功するフィールドゴールを狙います。

ところが、確率と、そこから得られる点数を比較すると、このケースでの正解は、タッチダウンを狙う「ギャンブル」。

なのに、どのチームもそうしない(できない?)理由が、トヴェルスキーとカーネマンが指摘するところの「損失回避の法則」である、と。

確かに「確実に手に入る3点」を失いたくない、という気持ちは分かりますし、実際に調査した過去3年間のデータの中で、この状況に置かれたチームがギャンブルに出たことはないのだそう。


◆このように本書は、スポーツやギャンブルについて、ある程度の知識がある方の方が楽しめると思います。

ただ、直接的ビジネスに言及しなくとも「意思決定」に関する興味深い事例や考え方が数多く紹介されている点で、全てのビジネスパーソンに役立つことは間違いないハズ。

ここだけの話、外出して打ち合わせをした帰りに、喫茶店に籠って読破してしまったくらい面白かったという。

昨年の秋に出た時に、どうしてチェックしておかなかったのか悔やまれます。


「身も蓋もない話」が好きな方ならぜひ!

競争優位で勝つ統計学---わずかな差を大きな勝利に変える方法
競争優位で勝つ統計学---わずかな差を大きな勝利に変える方法
第1章 統計学という宗教―統計上の優位を信じ、偏差を恐れない
第2章 データ主導型の意思決定―「過去」を正しく読む
第3章 バイアスにとらわれない―予測力のあるデータを探す
第4章 正しい問いを発する―意思決定の第一歩
第5章 ツキは存在するか―ホットハンド理論の真偽
第6章 偽統計学に惑わされない
第7章 最悪の事態を想定する
第8章 結果で決断を評価しない―「正しい決断」とは何か
第9章 個人の勝利はチームの勝利―正しい決断を導くインセンティブ
第10章 統計嫌いの人に対処するには
第11章 「直観」は過去データに基づく


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【スゴ本】「予想どおりに不合理」ダン・アリエリー(2008年12月15日)

ヤバい経済学 [増補改訂版](2007年05月16日)


【編集後記】

◆上記『ラス・ヴェガスをブッつぶせ!』のDVDがこちら。

ラスベガスをぶっつぶせ [DVD]
ラスベガスをぶっつぶせ [DVD]

えらく安くなってますし、GW中に観るのも良いカモ。


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