スポンサーリンク

       

2012年04月09日

【オススメ】『「超」入門 失敗の本質 日本軍と現代日本に共通する23の組織的ジレンマ』鈴木博毅


「超」入門 失敗の本質 日本軍と現代日本に共通する23の組織的ジレンマ
「超」入門 失敗の本質 日本軍と現代日本に共通する23の組織的ジレンマ


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、名著『失敗の本質』のエッセンスを分かりやすく解説した1冊。

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)
失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)

さらに本書では、現代の企業経営の事例にも当てはめて、「日本人の本質」にまで迫っているのが特徴です。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
『失敗の本質』は素晴らしい示唆を含みながらも難解で、最後まで読み通せた人、きちんと理解できた人は少ないかもしれません。
そこで、本書は若手戦略コンサルタントが23のポイントに整理して、日本軍と日本企業が直面する「共通の構造」を、普通のビジネスマンでも理解できるようにやさしくまとめた本です。みなさんが所属するあらゆる組織への応用も可能です。
「あのとき」と変わらない日本人が陥る思考・行動特性を明らかにした名著には、組織再生、日本再生へのヒントが満載です。

想像以上に読みやすく、かつ、ためになるスゴ本でした!


人気blogランキングいつも応援ありがとうございます!




【ポイント】

■1.戦略とは「目標達成につながる勝利」を選ぶこと
 日本軍はミッドウェー作戦では戦力総数で米軍に勝ることに「成功」し、島の爆撃にも「成功」しています。ところが、戦史が教えるように目標達成につながらない勝利であり、劣勢の米軍は目標達成につながる勝利だけをつかみ取り、戦局を逆転させているのです。
 これらを戦略の差と考えると、大局的な戦略とは「目標達成につながる勝利」と「つながらない勝利」を選別し、「目標達成につながる勝利」を選ぶことだといえます。
 米軍を抑止する効果のない17もの島に上陸占拠した日本軍は、目標達成につながらない勝利を集めており、大局的な戦略を持っていなかったと判断できるのです。


■2.当たらなくても撃墜できる兵器をつくったアメリカ人
 猛訓練で達人的な技能を持つ日本軍へ、米軍はどのように対応したのでしょうか?
 日本軍へ対抗するため、彼らも「戦闘における達人」の育成を目標としたでしょうか?
 いいえ、違います。米軍はまったく逆の発想、「達人を不要とするシステム」で日本軍に対抗したのです。
 具体的には、
・操縦技能が低いパイロットでも、勝って生き残れる飛行機の開発と戦術の考案
・命中精度を極限まで追求しなくても撃墜できる砲弾の開発
・夜間視力が高くなくても、敵を捉えられるレーダーの開発
 など、達人ではなく「システム思考」的な方向へ、戦闘を段階的に転換させていきます。


■3.イノベーションの芽を奪う「組織」
 科学者たちの懸命なレーダー開発をよそに、海軍軍人の多くは当時、レーダー兵器を「守りの兵器」「使えない兵器」と小馬鹿にしていたのです。軍人側が価値観を覆せなかったことで、組織全体で日本人科学者たちを極めて厳しい状態に追い込んでいました。
 当時、レーダーの中核技術である電力磁電管(マグネトロン)の研究においては、日本はアメリカよりもはるかに進んでいたと言われています。
 これら優位性を活かすことができなかった大きな要因は、「日本海軍という組織が既存の認識を変えることできなかった」からです。海軍の強固な思い込みが、民間研究者たちの成功の扉を固く閉ざしていたのです。


■4.間違った「勝利の条件」によって起こされた悲劇
・ガダルカナル作戦では、実際は10倍近い米海兵隊が大火力で待ち構えているにもかかわらず、大本営の確認不足により、少数で急行することを現地軍は要求された

・インパール作戦の牟田口司令官は、最前線の兵士に「食料がなくても弾薬がなくても戦える」と叱陀したが、結果的には補給のほとんど届かない最前線では戦死者より餓死者が多かった

・沖縄戦では、現地軍が効果的に進めていた内陸部抗戦を、大本営の航空戦力至上主義により飛行場奪回の戦闘へ転換させて、無駄に兵力を損耗し沖縄陥落を加速させた


■5.日本軍における「コンコルドの誤謬」
 ノモンハン事件、インパール作戦当時の戦略立案関係者が、実際にどのような心理状態であったかを知る術はないのですが、推測される典型的なケースとして、「これほど味方兵力をつぎ込み、多大な犠牲者を出したのだから、この戦闘に勝つ以外に道はない(今さら撤退できない)」という心理に陥っていたのではないでしょうか。
 作戦関係者は、「埋没費用」を惜しむあまり、失敗の過程で無謀を指摘されても「ここまで犠牲が増えたら勝つまで!」という心理的バイアスから最後まで抜け出すことができなかったのかもしれません。


■6.保険をかけることと安全運転することは別問題
 企業・ビジネスに関わるリスク問題では、「食中毒」「設備安全性」などがよくニュースとなりますが、衛生管理がされていない状態でありながら、食中毒が起こっていないというのは、単純に「リスクをかわしている」だけであり、リスクの対策を取っていることとはまったく異なります。
「必勝の信念を鈍らせる」ことを理由に、万一の事態を想定し対策を取らないのは「保険をかけると安全運転をしなくなる」から自動車保険に加入しないと主張するのと同じです。
 日本軍は起こり得る可能性としてのリスクから目を背けて進軍した結果、残念ながら、作戦成功という最終目標までたどり着くことがついにできなかったのです。


【感想】

◆今回も引用量が多かったのでこの辺で。

お恥ずかしながら私も、『失敗の本質』を読んでいない者の一人でした。

アマゾンレビューを見ても評価が高いですし、いつかは読まねば、と思いつつ、リアル書店で平積みになっているのを手に取ると、文字がギッシリで思わずめまいがw

それに比べると本書はページ数で4割減。

さらに小見出しも豊富で、いわゆる昨今の「ビジネス書の書式」で書かれており、読みやすい事この上ないです。

書店でパラパラ見た時より、実際に買ってから読み込んだ時の方が、すんなり理解できたくらい。


◆さらに最初の方で、『ざっくり知っておきたい戦史』『失敗例としての「6つの作戦」』といった予備知識もアリ。

特に後者の「6つの作戦」については、それぞれの特徴を一言で説明しており、附属高校上がりで、この辺がぁゃιぃ私にとってもありがたかったです。

参考までに、その「6つの作戦」とは以下の通り。

ノモンハン事件 - Wikipedia

ミッドウェー海戦 - Wikipedia

ガダルカナル島の戦い - Wikipedia

インパール作戦 - Wikipedia

レイテ沖海戦 - Wikipedia

沖縄戦 - Wikipedia

……いやもう、これらを読んでいるだけでお腹いっぱいなんですが。


◆本書では、こうした作戦や戦いの失敗から、日本軍、そして現在の日本企業の問題点を指摘。

上記ポイントには挙げておりませんが、現在における具体例も豊富に紹介されています。

例えば、ポイントの2番目での「当たらなくても撃墜できる兵器をつくったアメリカ人の対応」は、今で言うなら「ゲームのルールを変えた」ことに他なりません。

かつては「高い生産性」「高品質」を誇った日本のメーカーが、品質以外の部分で(品質も悪くないですが)iPodに勝てないこともその1つです。

地道に改善していくだけでは敵わない場合に、なかなか対応できないという……。


◆また、今回ポイントで挙げなかった中で大きいと思われるのが、日本独特の「空気」の存在です。

これに関しては、こちらの本にも詳しいところ。

「空気」の研究 (文春文庫 (306‐3))
「空気」の研究 (文春文庫 (306‐3))

軍事的には無謀だった「大和」の沖縄出撃も、この「空気」によるもの、とのこと。

ただし、歴史的事実として、大東亜戦争開始時には、戦争に反対する日本人より、肯定的な日本人が多かったのだそう。

私たちも、情報に踊らされることなく、「間違った空気」に惑わされないようにしなくては。


◆余談ですが、何でもこの本、都内某大手書店でも売れているよう。

たまにオリジナルを水増し(?)した、『図解「○○」』のような安易な図解本を見かけますが、本書は、そういった「お手軽本」とは一線を画しています。

もちろん、本来であればオリジナルの『失敗の本質』を読みこなすべきなのでしょうが、冒頭でも触れたように「現代の事例」が収録されている分、学べる点は多いと思われ。


幅広い層にオススメしたい1冊です!

「超」入門 失敗の本質 日本軍と現代日本に共通する23の組織的ジレンマ
「超」入門 失敗の本質 日本軍と現代日本に共通する23の組織的ジレンマ
序章 日本は「最大の失敗」から本当に学んだのか?
第1章 なぜ「戦略」が曖昧なのか?
第2章 なぜ、「日本的思考」は変化に対応できないのか?
第3章 なぜ、「イノベーション」が生まれないのか?
第4章 なぜ「型の伝承」を優先してしまうのか?
第5章 なぜ、「現場」を上手に活用できないのか?
第6章 なぜ「真のリーダーシップ」が存在しないのか?
第7章 なぜ「集団の空気」に支配されるのか?
おわりに――新しい時代の転換点を乗り越えるために

参考記事:なぜ、今『失敗の本質』なのか? これから読むための7つのヒント|「超」入門 失敗の本質――日本軍と現代日本に共通する23の組織的ジレンマ|ダイヤモンド・オンライン

【関連記事】

【名著】『パラダイムの魔力―成功を約束する創造的未来の発見法』ジョエル・バーカー(2012年02月20日)

ビジネスの達人がこっそり教えてくれる『7つの危険な兆候』の真実(2011年11月07日)

【目から鱗の経営本】『どうする? 日本企業』三品和広(2011年08月21日)

【成功者のヒミツ】『敗者の錯覚―あなたの努力が実らない40の理由』鈴木信行(2011年04月18日)

【スゴ本】『ストーリーとしての競争戦略』楠木 建(2010年10月20日)

【オススメ】「異業種競争戦略」内田和成(2010年02月04日)


【編集後記】

◆この本、とうとうアマゾン総合でベスト5に入ってきましたね。

勝ち続ける意志力: 世界一プロ・ゲーマーの「仕事術」 (小学館101新書)
勝ち続ける意志力: 世界一プロ・ゲーマーの「仕事術」 (小学館101新書)

自分がゲームをやらないのでスルーしてましたが、ちょっとチェックしてみなくては。


人気blogランキングご声援ありがとうございました!

この記事のカテゴリー:「企業経営」へ

この記事のカテゴリー:「ビジネススキル」へ

「マインドマップ的読書感想文」のトップへ

スポンサーリンク




               

この記事へのトラックバックURL


●スパム防止のため、個別記事へのリンクのないトラックバックは受け付けておりません。
●トラックバックは承認後反映されます。