2012年04月05日
【オススメ】『小さく賭けろ!―世界を変えた人と組織の成功の秘密』ピーター・シムズ
小さく賭けろ!―世界を変えた人と組織の成功の秘密
*Kindle版アリ
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、起業家やクリエイティブな作業に従事する方なら「マスト」な1冊。実はもう、TechWaveさんで大々的に取り上げられちゃっているのですがw
必読→4/5発売の日経BP刊「小さく賭けろ!」でスべりまくろう! 【増田(@maskin)真樹】 : TechWave
アマゾンの個別ページが、今回のこの記事を必要としないくらい良くできているので、本の帯から本書のコピーを。
グーグル、ピクサー、アマゾン、スターバックス、P&G、グラミン銀行、大物コメディアン、有名建築家に学ぶ最新・仕事の進め方思わず付箋も貼りまくり!?
みんな小さく儲けて、素早い失敗、素早い学習を繰り返していた!
いつも応援ありがとうございます!
【ポイント】
■1.失敗や挫折を恐れない「実験的イノベーター」クリス・ロックやサーゲイ・ブリン、ラリー・ぺイジ、ジェフ・べゾス、そしてべートーべンなどの実験的イノべーターは、これからやろうとしていることを始めからあまり深く分析はしない。標的が未知であるのに、あまりに狭い範囲に目標を絞り過ぎることになるからだ。それは1回の賭けですべてを得ようとすることにつながる。実験的イノべーターは、「こうすれば成功するはず」という計画を細かく立てる代わりに、何をなすべきかを知るために今できることをさっさとやる。彼らは「小さな賭け」を繰り返すことで驚異的な成功を収める。
■2.ヒューレット・パッカードの「小さな賭け」
ビル・ヒューレットは、「とりあえず1000台くらい作って様子を見たらいい」と指示した。1000台なら、さほど深刻な賭けではない。5ヵ月もしないうちに、HPは毎日5000台のHP-35を売っていた。製造が追いつかないほどだった。
その後長い間、ビル・ヒューレットとデピッド・パッカードがトップにいる間、HPは伝統的な市場調査を一切しなかった。その代わり、非公式に観察したり話し合ったりして顧客の問題やニーズを把握することで、HPはほとんどの新製品のアイデアを得ていた。事実、HPの最初のコンピュータは、「HPの電圧計が6桁の読み出し値を毎秒プリントアウトしてくれるといいのに」という顧客の要望に応えようとした小さなプロジェクトから始まった。
■3.過程をほめられると成長志向になる
ドゥエックの称賛の効果に関するこうした発見は、「称賛は自信を養うのに効果的だ」という以前から広く信じられてきた見解と対立するものだったが、彼女の研究は強い批判を受けることなく受け入れられた。事実、その後スタンフォード大学とリード大学で実施された150の称賛の事例研究などによるフォローアップでも、ドウェックの発見の核心が正しいことが証明された。能力だけを称賛すると粘り強さに悪影響があるのに対して、問題解決のための努力やその過程でいかに学んだかを称賛した場合は、成長志向のマインドセットの発達をうながすことが確認された。
■4.プロトタイピングで成功したP&G
P&Gでは細部まで完璧に製品を完成させてから消費者の前に出すのではなく、フランク・ゲーリーのチームがそうしていたように、ガムテープや段ボールで作った粗削りなプロトタイプをまず作るようになった。プロトタイピングが導入されて、P&Gの開発スタッフには、「作りながら考える」習慣ができた。(中略)
製品が想定しているユーザーは、プロトタイプが対象であれば、正直な意見を言いやすい。同時にP&Gの開発チームの側でも、ひとつのアイデアに心理的に強く肩入れし過ぎる危険を減らせる。
「消費者からフィードバックを得る際の障害がずっと低くなる。同時に会社の側ではそのフィードバックを受け入れる際の障害も低くなる」
とトゥーンは説明する。
■5.生産性も質も高いアジャイル方式
アジャイル方式の大きな利点のひとつが、早く失敗するためにも優れた方法だということに注目されたい。ヴァニアーの説明によると、もしライバルが機能を1種類提供する間に、自分たちは10種類提供できれば、何がユーザーに受け入れられ、何が受け入れられないかのテスト結果を10倍体験できることになる。
アジャイル開発には、たとえば大きなチームが一体となって動く必要がある場合など、制約がないわけではない。しかし、うまく運営されたアジャイルチームのほうが、通常のウオーターフォール方式より生産性も質も高い。このことは、インテュイット、ヤフー、セールスフォースなどの実績ある企業が、アンドレ・ヴァニアーの会社のような俊敏なスタートアップに追随してアジャイル方式を採用している理由の説明にもなる。
■6.スターバックスの「小さな勝利」
われわれの知っているスターバックスは、小さな勝利を通じて、顧客のフィードバックに注意深く適合することから生まれた。シュルツはスターバックスの精神構造を「独断と柔軟性の価値」であると説明している。その考えが会社の原則に沿っている限り、社員は顧客の要求にイエスと答えるべきだと、シュルツは信じている。
たとえば、シュルツは当初、無脂肪乳は使わないと決めていた。普通の牛乳より味が劣ると思っていたし、イタリアのコーヒー体験とも調和しないからだ。顧客から無脂肪乳の要望が続くと、シュルツはは折れた。それぞれの飲み物の成功は小さな勝利となり、すぐにもっと大きくなった。無脂肪乳はスターバックスのラテとカプチーノの約半分に使われるまでになる。
【感想】
◆今回は引用のボリュームが大きいのでこの辺で。本書の「訳者あとがき」には、著者のピーター・シムズが本書を書いたそもそものきっかけについて触れられています。
それによると、シムズがスタンフォード大学のビジネススクールに在学中、クラスメートの間に「何か優れたことをするには最初に優れたアイデアが必要だ」という誤解が広まっていることに気づいたからだそう。
しかし本書を読むと、その考えが間違いであることが、分かりやすい事例により「これでもか」と証明されています。
事例の対象となった企業も、冒頭でご紹介した帯にあるように「グーグル、ピクサー、アマゾン、スターバックス、P&G、グラミン銀行」と有名どころがわんさか。
ちなみに、それに続く「大物コメディアン」とは、クリス・ロックですね。
◆名前が挙がっている中では、ピクサーの事例が漏れてしまいました。
本書によると、ピクサー映画の絵コンテは、当初は「つまらない」ものに過ぎないのだそう。
しかしその後「何千という難問を苦労して解決」していくうちに、それが「つまらなくない」ものに完成するのだとか。
事実、公開9ヵ月前に『ファインディング・ニモ』の極秘プレビューを見たディズニーCEOのマイケル・アイズナーは、「前作とはくらべものにならない」と切って捨てましたが、最終的には大幅な手直しがあり、映画は大ヒット。
ファインディング・ニモ [DVD]
確かに、当初案を読むと手直しして正解だと私も思いました(詳細は本書を)。
余談ですが、このDVDはうちでも購入しており、以来、子供たちは水族館でエイを見ると「エイ先生だ!」と叫んでおりますw
◆また、意外なところでは、アメリカ陸軍も「小さな賭け」を採り入れている、とのこと。
かつての冷戦時代は、ロバート・マクナマラ国防長官の下、「比較的予測しやすい」ソ連軍相手に、「チェックリストを暗記させる」と言うやり方で大丈夫でしたが、その後のベトナム戦争ではベトコンに対応できず大失敗。
マクナマラは、このドキュメンタリー映画で「戦争というものはあまりにも複雑であり、そのすべての要因を正確に計算することは人知を超えている」と痛恨と共に認めているとのこと。
フォッグ・オブ・ウォー マクナマラ 元米国防長官の告白 [DVD]
それに対し、現在のアメリカ陸軍は、なんと「デザインの適用」に取り組んでおり、イラク戦争では、アルカイダ系武装勢力に支配されたタル・アファル市で「小さな賭け」とも言える戦術が取られていたのだとか(これまた詳細は本書を)。
◆そう考えると、冒頭で本書を読むべき人を「起業家やクリエイティブな作業に従事する方」としてしまいましたが、「問題解決」をする必要のある方なら、ほぼすべてが対象になるかと。
中心的な企業(特にピクサー)の事例が、章をまたがって異なるテーマとして登場するのが、ちと紛らわしい気がしましたが、原書にない小見出しを付けたことによって、原書より分かりやすさはアップしている模様。
特に日本人においては、失敗を毛嫌いする傾向にあると思いますので、本書を読んでメンタルブロックを乗り越えて、どんどん「小さな賭け」を繰り返して頂きたいと思います。
……って、自分も「失敗が怖い」典型的なヘタレなんですがw
これはオススメせざるを得ません!
小さく賭けろ!―世界を変えた人と組織の成功の秘密
【関連書籍】
◆本書の巻末に参考文献が収録されていましたので、当ブログでごご紹介しているものを列挙しておきます。ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代
参考記事:「ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代」ダニエル・ピンク (著), 大前 研一 (翻訳)(2006年05月25日)
アイデアのつくり方
参考記事:「アイデアのつくり方」 ジェームス・W・ヤング (著)(2006年04月14日)
デザイン思考が世界を変える―イノベーションを導く新しい考え方 (ハヤカワ新書juice)
参考記事:【問題解決】「デザイン思考が世界を変える―イノベーションを導く新しい考え方」ティム・ブラウン(2010年04月29日)
メディチ・インパクト (Harvard business school press)
参考記事:「メディチ・インパクト」 フランス・ヨハンソン (著)(2006年05月15日)
【関連記事】
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【スゴ本】「20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義」(2010年04月06日)
【スゴマニュアル】「完全網羅 起業成功マニュアル」ガイ・カワサキ(2009年06月07日)
【スゴ本!】「はじめの一歩を踏み出そう」マイケル・E・ガーバー(2008年09月10日)
【編集後記】
◆この本、読んでみたいのですが。人生を変える! マンガ名言1000
肝心の元ネタのマンガを知らないと、感動できるのかどうか……。
ご声援ありがとうございました!
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