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2012年03月11日

【予測脳】『予測力 「最初の2秒」で優位に立つ!』ケビン・メイニー,ヴィヴェック・ラナディヴェ


予測力 「最初の2秒」で優位に立つ!
予測力 「最初の2秒」で優位に立つ!


【はじめに】

◆今日お送りするのは、さまざまな分野の「達人」の思考法について論じた本。

一瞬で最適手を選び出す彼らの頭脳の秘密が、豊富な事例とともに紹介されています。

アマゾンの内容紹介から。
膨大なデータを分析しても答えは出ない。「最初の2秒」のひらめきこそが正しいのだ。だからこそ、スティーブ・ジョブズは先を見通せた。卓越した「予測脳」を持つ人物は何が違うのか。どうすれば「先を読む力」を磨くことができるのか。ベストセラー『トレードオフ』の著者が秘訣を公開する。

「脳科学」から「企業経営」まで、カバーしている範囲が広い1冊です!


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【ポイント】

■1.成功者は予測力に長けている
 グレツキーは文字通り、リンク上の誰よりも少しだけ早く次の展開を読むことができた。そしてパック(球に相当する円盤状のもの)が向かいそうな地点へと滑っていくのだった。彼は「パックのある場所へ滑るのではない。パックが向かうはずの場所へと滑り込むのだ」という名言を残している。解説者からはよく、グレツキーは他の選手の2秒先を行っているという言葉が出た。(中略)

 どの分野でも成功者はたいてい、プレー中のグレツキーと同じように、他の人々よりもわずかに早く、わずかに正確に、精緻な予測を休みなく行っている。これは成果を上げ続ける人ほぼすべてに共通の特徴である。才能ある人々は10年後など見通せなくてもかまわない。それどころか、10日後の予想さえもできなくてよい。隙間や機会を見つけるのに十分なだけの「ちょっと先」を、競争相手よりも一瞬だけ早く、高い確度で予測できればそれでよいのだ。これはスポーツ選手、アーティスト、ビジネスパーソン、いや、あらゆる分野のあらゆる人に当てはまる。


■2.脳の異なる2つのタイプ
 ホロウィッツはわたしたちに、「超優良企業の上層部にはふたつのタイプの人材がいると思います」と語ってくれた。タイプ1とタイプ2がいるということである。
 しかも、両者の脳はまったく違った働きをするという。
 タイプ1は優れた予測脳を持つが、タイプ2は膨大なデータに頼らないと判断を下せない。前者はCEOになるべきだが、後者はそうではない。(中略)

マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツはタイプ1、彼の後継CEOであるステイーブ・バルマーはタイプ2である。アップルの前CEOステイーブ・ジョブズは典型的なタイプ1である。ジョブズが迫放されていたあいだ、何人ものCEOがアップルの舵取りをしたが、彼らは全員がタイプ2だった。そして会社を瀕死の状態へと追いやったのである。


■3.ナポレオンの持つ「戦略的直感」
 コロンビア大学ビジネススクールのウィリアム・ダガンは、ナポレオンを研究していて戦略的直観というコンセプトを思いついた。ダガンがひも解いた1832年刊行の古典『戦争論』(カール・フォン・クラウゼヴィッツ)には、ナポレオンが最初の戦争にどう勝利したかが書かれている。ときにナポレオンは24歳。鼻っ柱は強いが小柄で、誰からも大した人物とは見られていなかった。戦場での経験はないも同然だったが、軍隊の歴史を詳しく調べ上げていた。戦いの帰趨がどう決まるかについては、特に緻密に研究してあった。その情報すべてを、自軍、敵軍、戦場の地形条件について得た全内容とともに頭に入れ、たいしたプランもないまま進軍していった。グレツキーが具体的な得点プランを持たないのと同じく、ナポレオンも個々の戦闘のプランをあらかじめ決めてはいなかった。プランを決めておく代わりに、戦況を眺めてそれを高度な戦略的視点からとらえ、ひらめき――クラウゼヴィッツの言葉を借りるなら「概観」――の瞬間を待ったのである。

戦略は直観に従う ―イノベーションの偉人に学ぶ発想の法則
戦略は直観に従う ―イノベーションの偉人に学ぶ発想の法則

参考記事:【戦略】『戦略は直観に従う』ウィリアム・ダガン(2010年10月10日)


■4.ボストン市長トム・メニーノの予測脳
 トム・メニーノは、生まれつき政治家としての特殊な才能に恵まれたわけではない。一流大学出身の知能指数の高い人たちとも違う。だが何十年もかけてボストンについてあらゆることを丹念に学び、その深い知識をうまくまとめて効率のよい発想の枠組みを脳内に設けた。それによって、ボストンに影響しそうな込み入った政治状況をたちどころにつかみ、見えるものすべてを分析するのである。
 こうして彼は「直観」に頼るようになった。世論調査やコンサルタントを当てにしないのは、自分の予測脳を活かしたほうがうまく先を見通せるからだ。ついには政敵や批判者をを寄せつけなくなったのだが、これは、ボストンについての予測や分析を相手より少しだけ早く正確に行えるからである。政治の世界で最初の2秒を制したのだ。


■5.予測テクノロジーを採り入れたカジノ「ハラーズ」
たとえばジョーの負けが250ドルになっていて、サイコロの次のひと振りで、彼にとっての上限である300ドルに到達する可能性があるとしよう。システムは現状を把握してカジノの顧客サービス担当者に注意を促す。ジョーが家族を連れてたびたびマジックショーを観に行くという情報も押さえている。建物内の商業活動すべてをモニターしているから、この日はマジックショーのチケットが大量に残っていることがわかる。そこで、「ジョーにマジックショーの無料チケットを4枚渡すように」と顧客サービス担当者に連絡する。ジョーにしてみれば、狐につままれたようだろう。だが、賭けに負けてふくれっ面でその場を去ろうとしていたところに、かゆいところに手の届くサービスを受けたから、気を取り直して賭けを続けるだろう。さらに負けが込むかもしれないが、ハラーズには好印象を持つはずだ。


■6.子どもの脳に関する知見(抜粋)
・タラールの研究によれば、言葉を身につける力は、学業成績、ひいてはほぼすべての知的能力との相関関係がきわめて高いという。子どもの言語能力を伸ばすには、楽しいこと、前向きなことをたくさん話しかけるとよい。

・同じことを繰り返すと予測力が培われ、予測が当たると嬉しいからやる気が高まり、いっそう予測力が磨かれる。子どもが同じ本を何度も読んだり、ピアノで同じメロディをひっきりなしに弾き続けたり、同じスポーツの練習にばかり打ち込んだりするなら、親としてはイライラするかもしれないが、こうした繰り返しは実力をつけるうえで欠かせないのだ。


【感想】

◆ちと引用量が多かったので、今回はこの辺で。

上記でダガンの本をご紹介しておりますが、本書では、他にも当ブログで取り上げた本が何冊か出てきてきました。

まずは、タイトル的にもかなり関係のあるこちら。

第1感  「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい (翻訳)
第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい (翻訳)

参考記事:『第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい』 マルコム・グラッドウェル (著)(2006年03月01日)

そして、こちらも「1万時間の法則」のからみで。

天才!  成功する人々の法則
天才! 成功する人々の法則

参考記事:【勝間さん激賞!】「天才!成功する人々の法則」がいよいよ発売へ!(2009年05月13日)

どちらもマルコム・グラッドウェル作品であり、この手の本が好きな方には、本書はかなり「ツボ」なハズ。


◆なお、上記で脳のタイプのお話について、1点補足をしておくと、企業にとってはタイプ2も「きわめて貴重な存在」なのだそう。

これは「細かい点に注意を払って実行役を果たす」ため、タイプ1から必要とされるためです。

ただし、ベン・ホロウィッツによると「タイプ2がタイプ1のような予測脳を磨くことはまずない」とのこと。

ジョブズ不在時の昔のアップルについて触れられてますけど、今後のアップルは大丈夫なんですかね……?

ちなみに、このベン・ホロウィッツは、シリコンバレー周辺で「起業家の目利き」として名高く、「起業家を品定めして選り抜き、コーチングする腕前にかけて、彼の右に出る者はほとんどいない」人物だそうです(私は知りませんでした)。


◆そういえば、先日ご紹介したこの本でも、ピーター・ドラッカーが、「『乱気流時代の経営』という本の中で、乱気流の時代にもっとも重要な経営能力の1つに「先見性」を挙げている」というお話がありましたっけ。

パラダイムの魔力―成功を約束する創造的未来の発見法
パラダイムの魔力―成功を約束する創造的未来の発見法

参考記事:【名著】『パラダイムの魔力―成功を約束する創造的未来の発見法』ジョエル・バーカー(2012年02月20日)

「先見性」を持つ経営者と、タイプ1の経営者とは、まったく同じではないとは思いませんが、タイプ2の経営者は、上記記事で図解した「問題解決」の「対応」に長ける従来の経営者像に近いかも。

ひょっとしたら、タイプ1の経営者は、「古いパラダイム」に囚われずに、「新しいパラダイム」が採用できるのかもしれません。


◆さて、上記では事例がそれほど紹介できませんでしたが、実は意外な「達人」も本書には収録されています。

例えば、ナンパの達人「ミステリー」。

モテ本として以前取り上げた『ザ・ゲーム』の中で、主人公のスタイルと最初にコンビを組む「カリスマ」として登場した人物です。



ザ・ゲーム 退屈な人生を変える究極のナンパバイブル
ザ・ゲーム 退屈な人生を変える究極のナンパバイブル

参考記事:【あのセレブも!?】ナンパバイブル『ザ・ゲーム』が、かなり濃厚だった件(2011年05月16日)

本書によれば、このミステリーが身に付けるにいたった「能力」は、企業にとっても役立つのだとか(詳細は本書を)。


◆実際本書では、個人だけでなく、企業が「予測脳」を採り入れた例も紹介されています。

上記ポイントの5番目の「ハラーズ」(現・シーザーズ・エンターテイメント)はさておき、例えばスマートシグナル社の「エンジン等のデータをモニターして異常を予測する」ソフトウェアは、人命にもかかわるもの。

これは、飛行機のジェットエンジンや、発電所等の「軽微な不具合」を検知し、事故を未然に防ぎます。

事実、33年前から稼働するルイジアナ州の原子力発電所内にある発電機の異常が、これにより見つけられたのだとか。

よりによって3月11日の記事の本に、こんな記述があるなんて……。


ビジネス書好きにもノンフィクション好きにも楽しめる1冊!

予測力 「最初の2秒」で優位に立つ!
予測力 「最初の2秒」で優位に立つ!
第1部 天才の脳
 第1章 ウェイン・グレツキーの予測脳
 第2章 タイプ1とタイプ2、そして大脳皮質
 第3章 優れた頭脳
 第4章 ふつうの脳の優れたソフトウェア
第2部 優れたシステム
 第5章 頭脳さえあったら
 第6章 優れたテクノロジーと優れた企業
 第7章 脳のようなコンピュータとコンピュータのような脳
第3部 最初の二秒の優位
 第8章 最初の二秒の優位とよりよい世界
 第9章 最初の二秒の優位とよりよい頭脳


【関連記事】

『第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい』 マルコム・グラッドウェル (著)(2006年03月01日)

【勝間さん激賞!】「天才!成功する人々の法則」がいよいよ発売へ!(2009年05月13日)

【戦略】『戦略は直観に従う』ウィリアム・ダガン(2010年10月10日)

【あのセレブも!?】ナンパバイブル『ザ・ゲーム』が、かなり濃厚だった件(2011年05月16日)

これは凄い!『上達の技術』を便利にする7つのツール(2011年04月24日)


【編集後記】

◆著者の一人であるケビン・メイニーの前作。

トレードオフ―上質をとるか、手軽をとるか
トレードオフ―上質をとるか、手軽をとるか

こちらも必読かと。


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