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2012年03月10日

【記憶法?】『ビックリするほどよくわかる記憶のふしぎ』榎本博明


ビックリするほどよくわかる記憶のふしぎ 眠っているときに記憶が整理される? 記憶力を高める技術とは? (サイエンス・アイ新書)
ビックリするほどよくわかる記憶のふしぎ 眠っているときに記憶が整理される? 記憶力を高める技術とは? (サイエンス・アイ新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、「記憶」に関して分かりやすく掘り下げた1冊。

その反面、エビデンスはかなりしっかりしており、参考文献も巻末に大量に記載されておりました。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
私たちは毎日、身の周りで起こった出来事を記憶していきます。
でも、どんなに大切で重要な記憶でも、いつの間にか忘れていたり、内容が変わってしまったりします。
これはいったいなぜなのでしょうか?
本書では、記憶のメカニズムから記憶に関するさまざまな疑問、忘れることの定義、さらには記憶力を高めるさまざまな技術について、
どの本よりもわかりやすく解説していきます。

本書は記憶に関して幅広く取り扱っているのですが、当ブログの嗜好的に「記憶法」中心でお送りします!


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【ポイント】

■1.同じ文脈に身を置く
 記憶に刻むときと思いだすとき、つまり記銘時と想起時の気分伏態が一致していると思いだしやすい。これを気分状態依存効果という。(中略)

悲しい気分のときに記銘した単語は悲しい気分のときによく思いだすことができ、楽しい気分のときに記銘した単語は楽しい気分のときによく思いだすことができた。なにを思いだすかは、かつていまと同じ気分状態のときになにを記銘したかによって決まるというわけである。


■2.チャンクで記憶容量を増やす
 チャンクとは、記憶する人にとっての意味のあるまとまりのことである。1つの数字や1つの文字をバラバラに記憶するなら、平均7数字あるいは7文字程度しか記憶できない。しかし、3つの数宇を組み合わせて3桁の数字にしたり、3つの文字からなる3文字単語をつくったりすれば、3つの数字や文字が1つのチャンクを形成する。これをチャンキングという。
 3桁数字や3文字単語を7つ記憶できれば、記憶された数字や文字の数は21個となり、記憶容量は3倍に増えたことになる。さらに、数字を連ねた数式や単語を連ねた文を覚えることになれば、1つの数式や文が1つのチャンクを形成するため、7つの数式や文を記憶することができ、記憶可能な数字や文字の数は飛躍的に増大していく。


■3.暗記は多チャンネル化で忘れにくくする
 暗記の基本は、なんといってもリハーサル、つまり反復である。(中略)

 たとえば、イべントの標語を覚えなければならないとか、会社の経営理念を頭に入れなければならないなどというときは、目で読んで黙読でリハーサルするだけでなく、声をだしてみて耳にも音響効果を繰り返し与える。さらには、紙に書いてみて、手の感覚も繰り返し刺激する。できるだけ多チャンネル化してリハーサルするように工夫する。それによって、さまざまなかたちで手がかりが記憶に刻まれるため、忘れにくい。


■4.覚えたらすぐに寝る
 心理学者ハイネは、一連のリストを記憶する課題を2つのグループに課した。Aグループは、夕方早めの時間に覚えて、翌日の夕方の向じ時間に記憶テストを受けた。Bグループは、夜寝る直前に覚えて、翌日の夜寝る前に記憶テストを受けた。テストの成績を比較すると、寝る直前に覚えたBグループのほうが、成績がよかった。(中略)

 ここからわかるのは、覚えてすぐに寝ると記憶が定着しやすく、翌日の昼間によけいな情報が流入してきても干渉による妨害を受けにくいということである。


■5.深く考えながら覚える
 たとえば、「男がプラスチックを買った」という文を覚えさせるという課題で、「なぜ?」と自問しながら覚えることの効果を検証するための心理実験が行われた。その結果、「なぜ、その男がそのようなことをするのか」という質問に対する答えを考えさせることによって、記憶成績が向上することが確認された。
 たんに字面を覚えようとするのでなく、覚えるべき事柄を深く理解しながら覚えようとすることで、記憶にしっかりと刻まれる。


■6.実演して記憶を定着させる
 実演することの効果は、多くの心理実験によって検証されている。ある実験では、実演によって記憶成績が20〜30%も向上させられることが示されている。さらに、時間の経過とともに記憶内容の再生率は低下していくが、実演を用いると、言葉だけで覚えた場合よりも、時間経過にともなう再生率の低下も小さいことがわかっている。
 なぜ、実演することがこれほどまでに効果的なのか。これについてはいくつかの説があるが、説得力のある説明の1つが複数モダリティ符号化説である。これは、実演する場合、複数のモダリティを用いて符号化が行われるために効果があるというもものである。(詳細は本書を)


■7.人に話して記憶を強化する
 まず第一に、人に話すことによって、二重に符号化が行われるいうことがある。1人で考えたり覚えたりしたときの場面が符号化されるのに加えて、それを人に話しているときの場面が符号化され、記憶に刻まれる。(中略)
つまり、言葉による音響に加えて、視覚的にも記憶される。二重の意味で、二重の符号化がなされやすいのである。
 第二に、人に話すことによって、記憶内容が精緻化されるということがある。(中略)
人に話すときは、ただ一方的に話せばよいといううものではない。相手にわかってもらうような説明ができなければ対話にならない。質問されて答えたり、説明を繰り返したり、相手に納得のいくように説明の素材や論理を組み直したりといった工夫が必要になる。そうしているうちに精緻化が進み、話した内容がしっかりと記憶に刻まれていく。


【感想】

◆冒頭で申しあげたように、今回のエントリーは特に「記憶法」にフォーカスしております。

ぶっちゃけ「勉強本オタク」の皆さんにとっては、内容的には既知のものが多いかと。

ただし、それぞれの項目において、ほとんど「実験結果」が付されており、説得力は大。

「サイエンス・アイ新書」お馴染みの「右ページの図解」にも、グラフが多用されております(イラストの方が多いですがw)。

いずれにせよ、エビデンスがある記憶法ですから、合う・合わないは別にして、実践してみる価値はあると思われ。


◆また、類書によくある「エビングハウスの忘却曲線」を安易に用いてない点も興味深かったです。

いつもなら、忘却曲線の話が持ち出された後「だから復習は大事なんですよ」という流れになるのですが、むしろその理論は「20世紀の終盤には強い批判にさらされるようになった」とのこと。

エビングハウスの考え方だと、「保存されたオリジナルの記憶が、想起されるときにはそのまま引き出される」のですが、現在主流の考えですと「記憶は思いだすときにつくり直される」のだそう(詳細は本書を)。

何も考えずに「丸暗記」ばかりしてきた私には、にわかには理解しにくいところですが……。


◆ただ、本書ではそれに関連して、「現在の状態が過去の記憶に与える影響」も指摘しています。

たとえば、同じような幼児期を過ごしていたとしても「今の生活がうまくいっている人」は幼児期を肯定的に想起し、「今の生活がうまくいっていない人」は、肯定的に想起しないのだそう。

これって、ある意味「過去の記憶は変えられる」という、自己啓発書にある話に近いような……?

「記憶法」とは直接関係ないのでこれ以上は割愛しますが、「記憶」の奥深さを今さらのように感じた次第です。


◆もう1つ興味深かったのが、「過去のエピソードを思いだす能力と、すべきことを忘れない能力は別」というお話。

私たちは当たり前のように「記憶力」で一緒にしていますが、「いついつまでに何をしなくてはならない」という「記憶」は、「未来のある時点にしなければならないこと」であり、「過去を振り返る記憶」とは本来違うものです。

前者は「展望的記憶」、後者は「回想的記憶」と呼ばれ、両者は異なるメカニズムの上に成り立っているとのこと。

そしてこの「展望的記憶」は、若者の方が成績の良い「回想的記憶」と違って、年齢差が見られないそうなので、「最近年を取ったのか物忘れが」といって、大事な予定を忘れがちな方はご留意を……って、それ、私じゃんww


◆今回、記事カテゴリを勉強本にしておりますが、本書の内容は、もうちょっと多岐に渡るものです。

下記目次にあるように、いわゆる「勉強ネタ」的なのは第4章で、今回抜き出したポイントも、5つがこの章から。

ですから、ガチな勉強本を求められている方だと、ちとキツい気がしないでもありません。

ただし、「記憶」に関する深い知識を持つことが、勉強法に好影響を与える可能性もあるので、本書のコンテンツは受験生にとっても無駄ではないと思います。

実際、本書を読んで新たに得た知識があったことで、私自身は満足していますがw


「記憶」について興味があるなら要チェック!

ビックリするほどよくわかる記憶のふしぎ 眠っているときに記憶が整理される? 記憶力を高める技術とは? (サイエンス・アイ新書)
ビックリするほどよくわかる記憶のふしぎ 眠っているときに記憶が整理される? 記憶力を高める技術とは? (サイエンス・アイ新書)
第1章 なんで記憶ってこんなにあいまいなの?
第2章 記憶のメカニズム ── 記憶はこうしてつくられる
第3章 忘却のメカニズム ── 人はなぜ忘れるのか
第4章 記憶力を高める技術
第5章 潜在記憶は発想の宝庫 ── 潜在記憶を使いこなそう


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【編集後記】

◆昨日コメント欄で教えて頂いた本。

「1分スピード記憶」勉強法
「1分スピード記憶」勉強法

『速読勉強術』の宇都出先生新作です。


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この記事へのコメント
               
理解はできても実践するのってなかなか難しいんですよね…

努力あるのみですね!
Posted by あけび at 2012年03月10日 14:30
               
>あけびさん

レス遅れてスイマセン(汗)。

私も偉そうにレビューしてますが、自分ができるかというと、ちと自信がなく。
税理士試験の受験中は頑張っていたのだとは思いますが……。

また遊びに来てくださいマセ!
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2012年03月12日 05:26