2012年02月20日
【名著】『パラダイムの魔力―成功を約束する創造的未来の発見法』ジョエル・バーカー
パラダイムの魔力―成功を約束する創造的未来の発見法
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、結構昔の本でありながら、未だアマゾンのマーケットプレイスでもそれほど値崩れしていない「名著」。たまたまHONZのこのエントリー(関連書籍の部分)で、私も何冊か著作を拝読させて頂いている内田和成先生が激プッシュされていることを知り、「これはご紹介しておかねば」、と思った次第です(遅すぎw)。
アマゾンの内容紹介から。
1980年代、どん底に沈んだ数々の米国企業に新しい理念を吹き込み、復活への精神的支柱となった著者が、しなやかな発想と成功のルールについて解き明かす。人間を、企業を、そして社会を支配するパラダイムの驚くべき力。
つい先日付箋を貼った本の画像を載せたばかりなので今回は割愛しますが、貼った枚数からいったら、今までの上5冊に入るくらいの充実ぶりでした!
いつも応援ありがとうございます!
【ポイント】
■1.棚上げされた問題を解決するために行しいパラダイムが求められるあらゆるパラダイムが、新しい問題を発見していく過程で、解決できない問題を浮き彫りにしていく。そして、解決できない問題が引き金になって、パラダイム・シフトが起こる。
この意味は重要である。トンネルの向こうに、次のパラダイムの明かりが点滅するからだ。しかし、ちらちらするこの明かりが見えないと、かならず判断を間違う。いま使っているパラダイムで、いつかはきっと、残りの問題をすべて解決できると思い込んでしまうからだ。時間とカネの問題にすぎないと勘違いしてしまうからだ。
このため、現在のパラダイムで成功している人は、新しいパラダイムへの探検を開始しなければならないときに、はるか昔のモデルにしがみつくことになる。
■2.パラダイム・シフターの4つのカテゴリー
●カテゴリー1 研修を終えたばかりの新人
●カテゴリー2 違う分野から来た経験豊富な人
●カテゴリー3 一匹狼
●カテゴリー4 よろずいじくりまわし屋
(詳細は本書を)
■3.パラダイム・シフターによって放棄させられるもの
パラダイムを変えようという人は、現在のパラダイムに注ぎ込んできた投資を忘れろと言っているのである。そのとき、投資によって、どんなものを得ているだろうか。
1. 多くの重要な問題を解決するカ。
2. 問題を解決できる有能な人物としての高い評価。
3. それなりの報酬(パラダイムをいかに巧く使いこなせるかによって、給与が支払われているケースが多い)。
4. 自分のパラダイムを使いこなす能力が生んだ肩書と地位。
アウトサイダーは、苦労してつかんだこうしたものをすべて放棄しろと言ってくるのだ。
■4.パラダイム・シフターになる必要はなく、パラダイムの開拓者で十分
世界で、新しいパラダイムを発見するのがもっとも得意な国はどこか。
だれもが、アメリカと答えるだろう。(中略)
しかし、パラダイムを開拓するのが、もっとも得意な国はどこか。(中略)
日本である。
日本人は、パラダイム・シフトのアイデアを世界中から吸収してきた。VTR(アメリカ)、クオーツ時計(スイス)、ダイヤモンド薄膜(ソ連)。どれも、それぞれの分野に革命をもたらしたアイデアばかりだ。
その結果どうなったか。日本人は何度も何度も、新しいパラダイムにいちはやく飛びつき、そのルールを完全にマスターし、効率的に利用することができた。そして、いくつもの分野で、世界市場を制覇した。
■5.従来のパラダイムの力が強いため、専門家が過ちをおかした例(抜粋)
「蓄音機に、商業的価値はまったくない」
トーマス・エジソン、1880年、自分の発明品について、助手のサム・インスルに
「長距離移動の手段として、自動車が鉄道に取って代わるなどと考えるのは、たわいもない夢である」
アメリカ道路協議会、1913年
「世界で、コンピューターの需要は5台ぐらいだと思う」
トーマス・J・ワトソン(IBM会長)、1943年
「アメリカは1970年までに人類を月に着陸させるというケネデイ大統領の目標を実現できないだろう」
ニュー・サイエンティスト誌、1964年4月30日号
■6.どの自動車メーカーも耳を貸さなかった手榴弾会社のアイデア
この話を切り上げる前に、GMやフォードのことも少しは弁護しておこう。
「こんにちは。手梱弾を作っている会社の者ですが、お役に立てることがあってお邪魔しました」
こんな風に切り出されたら、自動車メーカーの人は普通、どう答えるだろう。
「わたしどもの技術者2人が、1年のうちに50万ドル以下の開発費で、おたくさまの業界が20年以上かけ、10億ドル以上を注ぎ込んでも解決できなかった問題を解決しました」
こんなことを言われて、どう答えればいいだろう。
自動車メーカーがブリードの提案を真剣に検討するのが、なぜそんなにむずかしかったのか。パラダイム効果のせいである。
■7.パラダイムに関する5つの名言
「スピードは大切だ。ただし、正しい方向にむかっていればの話だが」ジョエル・バーカー(筆者)
「車の跡がつづいている地平線の向こうに何があるか。その判断を間違えないことが重要だ」作者不明
「それはできないと言う人は、それをやっている人の邪魔をしないよう、そこをどくべきだ」作者不明
「ほんとうの発見とは、新しい土地を発見することではなく、新しい目で見ることだ」マルセル・プルースト
「未来からの衝撃を真正面で受ける企業はない。かならず、思いがけない方向から頭を殴られる」デイック・デービス(コンサルタント)
【感想】
◆冒頭で触れたように、本書には付箋を貼りまくっているので、割愛したお話は多いです。特に事例。
どの章にも事例は登場しているのですが、特に第8章では「パラダイム効果の実例」として、大小さまざまな事例が紹介されていますので、興味のある方はご確認を。
ちなみに、その第8章に含まれている上記ポイントの6番目の事例は、本当は具体的に何の話かまで書こうとしていたのですが、アマゾンの内容紹介ではネタが伏せられていたので自重しております(スイマセン)。
◆一方第13章では、本が書かれた当時から見た「これからのトレンド」「新しいパラダイム」について言及(本書の原書は1993年発行)。
この辺は、「今になって振り返ってみれば」というお話もあるので、個々の内容を検討するよりも、「考え方」を参考にしたいところです。
そもそも本書の第1章では、「日本のクオーツ時計に席巻されたスイスの時計メーカー」のお話が出ているのですが、その後セイコーは、香港の安価メーカーとスイスのスウォッチグループに敗北していますし。
この件について興味のある方は、こちらのご本をご覧ください(パラダイムシフトとはちと違いますが)。
どうする? 日本企業
参考記事:【目から鱗の経営本】『どうする? 日本企業』三品和広(2011年08月21日)
◆なお、同様に割愛した中で、なるほど、と思ったのが「先見性」のお話。
なんでも、ピーター・ドラッカーは『乱気流時代の経営』という本の中で、乱気流の時代にもっとも重要な経営能力の1つに「先見性」を挙げているのだそう。
予見
↑ 機
| A予見 会
| 発
問 | 見
題←―――――+―――――→・
解 | 問
決 | 題
R対応 | 回
| 避
↓
対応
本当は、こんなピンポイントではなくて、AとRを含む楕円形の範囲がそれぞれ「新しい経営能力」と「古い経営能力」として図示されているのですが、そこまで図解できませんのでお許しを。
いずれにせよ、現時点で成功している企業は「問題解決」という「対応能力」(R部分)を持っているが、その反対側の「予見能力と問題回避・機会発見能力」ゾーン(A部分)を高めねばならない、とのこと。
「新訳」乱気流時代の経営 (ドラッカー選書)
確かに将来の変化を予見することができれば、経営の舵取りを誤らなくて済みます。
……まさに「古いパラダイム」に囚われずに、「新しいパラダイム」が採用できるか否かということかと。
◆ところで本書の最後には、上記ポイントの7番目の「5つの名言」に続いて、「ブタとブス」というエピソードが収録されています。
これは、内田先生がブログで「峠の豚」と題して紹介されていますが、要は「見通しのきかない急カーブで、ぶつかりそうになった車の女性に『ブタ!』と言われ、カッとなって『ブス!』と返したら、その先にブタがいて衝突してしまった」というもの。
まさしく「パラダイムが硬直していたから」、せっかくのアドバイスを受け入れられなかったという好例です。
教訓。次の10年間、見通しのきかないカーブにさしかかったとき、大声を発してくれる人はいるかもしれない。しかし、わざわざ車をとめて、カーブの向こうに何があるか、教えてくれる人はいないだろう。それを突き止められるかどうかは、あなた次第である。本書読めば、「その声の意味」に気づけるかもしれません。
新しいパラダイムを見落としたくないなら必読!
パラダイムの魔力―成功を約束する創造的未来の発見法
はじめに 将来の三つのキーワード
1.将来を見つめる
2.先見性が勝負を決める
3.パラダイムとは何か
4.新しいパラダイムはいつ現れるのか
5.だれがパラダイムを変えるのか
6.だれがパラダイムを開拓するのか
7.パラダイム効果とは何か
8.パラダイム効果の実例
9.20世紀のもっとも重要なパラダイム・シフト
10.振り出しに戻る
11.パラダイムの重要な特徴
12.管理者とリーダーとパラダイム
13.1990年代のパラダイム・シフト
14.そして、時は行く
【関連記事】
ビジネスの達人がこっそり教えてくれる『7つの危険な兆候』の真実(2011年11月07日)【目から鱗の経営本】『どうする? 日本企業』三品和広(2011年08月21日)
【成功者のヒミツ】『敗者の錯覚―あなたの努力が実らない40の理由』鈴木信行(2011年04月18日)
【スゴ本】『ストーリーとしての競争戦略』楠木 建(2010年10月20日)
【オススメ】「異業種競争戦略」内田和成(2010年02月04日)
【編集後記】
◆今日の本に関連して。イノベーションのDNA 破壊的イノベータの5つのスキル (Harvard Business School Press)
『イノベーションのジレンマ』でお馴染みの、クレイトン・クリステンセンの新作です。
でもこの本も、読んだからと言って、おいそれとは記事にできなさそうなヨカン。
ご声援ありがとうございました!
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