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2012年02月12日

【コンビニ三国志?】『コンビニだけが、なぜ強い?』吉岡秀子


コンビニだけが、なぜ強い? (朝日新書)
コンビニだけが、なぜ強い? (朝日新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、コンビニ上位3社を分析しまくった1冊。

著者の吉岡秀子さんは、「自他共に認めるコンビニウォッチャー」であり、以前『セブン-イレブンおでん部会』を書かれた方でもあります。

アマゾンの内容紹介から。
不況にあえぐ小売業界のなかで唯一右肩上がりの業績のコンビニ。「小売」だけに留まらず「サービスステーション」の道を歩みだしたコンビニの現在を徹底取材。セブン-イレブン「御用聞きへの道」、ローソン「多面化で個性のある店舗展開」、ファミリーマートの「グローバル展開」……。三者三様の戦略から、不況日本の生きる道が見えてくる。

さすが右肩上がりだけあって、ビジネスヒントが満載でした!


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【ポイント】

■1.震災後に顕著になった2つの傾向
(1)女性やシニアの来店数が増えた。(セプンの場合、約2割増し)

(2)食品よりもサーピス(コピー、宅配便、各種チケットなど)利用の伸び率が目立つ。(JFA調べでは、2011年11月度の売上高前年同月比 日配食品プラス4%、サービスプラス18%)


■2.ポイントカードデータとPOSシステムの違い
「一般的なPOSデータでは"いつ、どこで、○歳代の人が、何を、いくつ買ったか"ということがわかります。しかし、性別や年齢はレジで店員が打つので誤りが多いですし、何よリ"誰が"ということがわかりません。ポイントカードデータですと、氏名や住所などの個人情報までは把握できませんが、例えぱ43歳の女性Aさんが、"いつ、どこで、何と何を、いくつ買ったか"までわかるわけです。これをひも付けで追いかけていくと、Aさんがローソンで買い物をする頻度や、何と何をよく買いあわせていくかといった"購買傾向"が見えてきます。(後略)」(ローソン・倉持 章氏)


■3.女性にこだわるローソン
「飲み会帰りの男性がスイーツを買って、これおいしいよ、と翌朝女性の同僚に薦めたとします。その女性、買うと思いますか? それより、隣の部署の女子社員が、あれ、おいしかったよと言えば、たちまち、みんな食べたくなるでしょう。ウチカフェは徹底的に女性向きだから、万人に愛されるブランドに育ったのです」(ローソン・福田浩一氏)


■4.SNSを使った商品開発
 例えば、ファミマはFacebookで「みんなで作るおむすび選手権」と銘打って、おむすびのアイデアを募集しました。1000件を超える投稿から、「なめたけマヨおむすび」や「焦がしネギマヨおかかおむすび」「焼きカレーおむすび」などが人気投票ランキングの上位になり、2012年2月には、これらのアイデアを使った新商品を店頭に並べるそうです。


■5.抜群の相乗効果を生み出す「"エンタメ"×"販促"」
 店内をぐるりと1周してみましょう。アーティストやタレント、アニメ、テレビドラマ、映画にバラエティ番組と、常にひとつやふたつ、「エンタメ・コラボ商品」が出ていることに気づきませんか。このコラボ、各チェーンのオリジナルなのですから、商品が売れるだけでなく、"ロイヤルカスタマー"の囲い込みをもくろむことができます。


■6.自治体と包括協定を結ぶコンビニ
 本書で何度も出てきた「コンビニ=社会インフラ」の役割は、超高齢化社会の日本で、さらに大きくなることは間違いありません。多くの自治体が、コンビニと包括協定を結んでいることがその証拠です。セプンとローソンは各40、ファミマは33の自治体と締結(2011年12月現在)。協定には、震災時など非常時の救援体制だけでなく、観光や地産地消にもカを貸すという側面もあります。店内で「北海道フェア」や「沖縄フェア」など、ご当地の「食」を販売するキャンぺーンを見たことがあるでしょう。そんなイべントなどを企画し、地域活性化を後押ししているのです。コンビニにとっても、ふるさとの味は売れ筋ですから、原材料や郷土食は手に入れたいところ。両者の狙いが合致しての握手というわけです。


■7.お客さまの変化を見続ける
「要は、難しく考えないことです。ただ素直に"お客様の変化"を見続ける。そしてどんな小さなことでも『あれ? おかしいぞ』と思ったら、想像力を働かせて"仮説"を立てて"実行"し、結果を"検証"してみることです。その"仮説―実行―検証"を繰り返していれば、必ず何らかの突破口にたどりつき、新しい価値や市場を見つけることができるのです。(中略)

 つまり、過去のデータや成功体験にとらわれることが企業にとって一番危険なこと。だから、私は昔から『お客さまの変化だけを見なさい』と、しきりに社員に言い聞かせているのです」(セブンイレブン・鈴木敏文会長)


【感想】

◆下記目次をご覧頂ければお分かりのように、本書は第2章からの3つの章がそれぞれのコンビニについての論点で構成されています。

ただ、ネタが豊富なだけあって付箋を貼りまくったものの、抜き出すにあたっては、3つのコンビニのバランスを考えた結果、「それ以外のまとめの章」が中心になっているという。

実際、3つのコンビニがそれぞれ違った路線を歩んでいるため、どれを選んでどれを削るか、という判断が付けにくいといいますか。

例えば、冒頭に挙げたように、ファミマは「海外展開」が特徴的ですし、ローソンは「脱・コンビニ」、逆にセブンは「これからもコンビニ」。

セブンに関しては、巻末の特別インタビューで、鈴木会長がこんな風に言われています。
セブン-イレブンは、いつまで経ってもセブン-イレブンなんですよ。ほかのビジネスに手を広げようとは思いませんし、ましてや看板の色を変えようなんて思わない。
ちょww、それってローソン(ry


◆そのローソンですが、「脱・コンビニ」を目指しているだけあって、ネタ的には一番面白かったです。

今回割愛した中では、例えば、公式アカウントの「あきこちゃん」のお話とか。



mixiやTwitter、Facebookあたりまではまだしも、InstagramやPixiv、Ustream、ロケタッチ、foursquare等々、ソーシャルメディアアカウントを15のサイトで取っているという徹底ぶり。

正直、この辺の戦略だけでも本が1冊書けそうな気がw


◆同じくローソンでは、「マネジメントオーナー制度」なる制度で「やる気のあるオーナー」に複数店舗を持たせる試みを進めているそう。

本書では、法人形態にしてローソン16店舗を経営する方が登場されているのですが、お話を聞いていると、「強い本部と零細規模のオーナー」というありがちな図式とは一線を画しているのが分かります。

何たって学生時代にローソンでバイトしていたのがきっかけで、大卒後すぐ契約し、まだ34歳という若さ。

なのに「もっと店を増やしたい」「売上を上げたい」と、さらに高い目標を掲げられているのですから、頭が下がります。

まー、オーナーさん皆が皆、ここまでアグレッシブではないにせよ、こういう人材が出てくる制度はなかなか優れているのではないか、と。


◆ところで、「コンビニ」と言えば、はてな村のこの方のブログがお馴染みですね。



すごく読ませる「コンビニネタ」の合間に、耐性のない方にはアレなネタが混ざっているので、「しごと」と題されたカテゴリを読まれることをオススメ。

[しごと] - G.A.W.

この仕事のカテゴリだけで、本が1冊できると思うので、業界の方はアタック汁!

と言うか、この方に本書を読んでもらって、レビューを書いて欲しいんですがw


◆本書を読むまで、私は「コンビニなんて皆同じ」「違うのは弁当だけ」と思っていました(結構マジで)。

ただ、少なくともこの3社の経営方針はかなり違いますし、目指すところも違います。

それぞれの商品開発の考え方からサービスの中身まで掘り下げた本書を読めば、何かしらの「ビジネスヒント」が得られることウケアイ。

業界として「右肩上がり」なのは、伊達ではないことがきっと分かると思います。


ビジネス書好きなら、ツボにはまる1冊!

コンビニだけが、なぜ強い? (朝日新書)
コンビニだけが、なぜ強い? (朝日新書)
序章 震災からわかったコンビニの本当の実力
第1章 近づいてくる店舗 セブン‐イレブン
第2章 ナンバースリーは「外」で勝負する ファミリーマート
第3章 脱コンビニ ローソン
第4章 コンビニが強い5つの理由
特別インタビュー コンビニが伸び続ける理由(セブン‐イレブン・ジャパン・鈴木敏文会長)


【関連記事】

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【スゴ本】『おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ』正垣泰彦(2011年07月24日)

【ユニクロ流】『柳井正の希望を持とう』(2011年06月12日)


【編集後記】

◆吉岡秀子さんの過去の著作から。

砂漠で梨をつくる ローソン改革 2940日
砂漠で梨をつくる ローソン改革 2940日

こちらも面白そうです。


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