2012年01月23日
【世界レベル?】『突き抜ける人材』波頭 亮,茂木 健一郎
突き抜ける人材 (PHPビジネス新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、「東大卒」のお二人による「誌上対談」本。現状の日本の問題点や、これからの時代を担う人材について、熱く語ってらっしゃいます。
アマゾンの内容紹介から。
アニマル・スピリッツ、深い教養、独立自尊で立つ覚悟―スティーブ・ジョブズ、マーク・ザッカーバーグ、ラリー・ペイジら、時代を切り開き、危機の時代に頭角を現すビジネスパーソンの凄さを、豊富なエピソードで語り尽くす。さらに彼らのモノの考え方、行動力を分析。ビジネススキル向上につながるヒントが盛りだくさんの一冊。
想定外にキワドイ話が多くて、ちょっとビックリしましたw
いつも応援ありがとうございます!
【ポイント】
■1.オピニオンリーダーはポジション取りに熱心文系のオピニオンリーダーと呼ばれる人たちと話していて、ときどき驚くことがあります。彼らには理想やビジョンがほとんどなく、ポジション取りこそ最重要事と考えているのです。たとえば『朝日新聞』の書評委員になる、月刊『文芸春秋』に原稿を書く。そんなポジション取りに熱心で、かつ、どの雑誌に書いているかで、「あいつは最近、落ち目だ」などと評するのです。
まさに実用主義そのもので、日本という部分社会における"おいしい部分"を取ろうと腐心しているように見えます。そこに「世界に届くような普遍的な思想を出そう」といった熱意は感じられず、実際そのような思想は日本から出ていません。
■2.目立つ人間が国を救う
グローバリゼーションの世界では、目立つ人間が出てこないと国は救われません。グーグルのブリンとぺイジ、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグのような人が出る必要があるのです。
ザッカーバーグは日本にいたら、かなり初期の段階で絶対に潰されていたでしょう。彼は社会的スキルは必ずしも高くなかった。しかしフェイスプックがあることで、アメリカがどれだけ助かっているかを考えると、彼のような人を排撃するのは、国家に対する罪です。
■3.「色物」を評価すれば強くなれる
「専門性」を「職人性」とほとんど同じものと思う傾向が、日本の学者にはあります。そして波頭さんのように分野を越境する人は、「色物扱い」されます。日本のヒーローはイチローや羽生善冶といった、野球の職人であり将棋の職人なのです。
しかし「この分野に通じている」という専門性と、「これ一筋に賭ける」という職人性は違います。分野を越境していろんなことを知り、いろんなことをやる人が「色物」なら、グーグルやフェイスブックはその典型です。そして彼らは評価され、話題になる。外からきた「色物」を有り難がるのであれば、そろそろ日本人の「色物」も評価すべきでしよう。そうすれば、日本は強くなれるのです。
■4.0点に近いアインシュタインを合格させた大学
アインシュタインがチューリッヒ工科大学に入るときの、有名なエピソードがあります。入試で数学は満点だったけれど、語学は限りなく0点に近かった。そのため、いったんは不合格になるのですが、当時の校長が数学者で、アインシュタインの解き方の美しさに感心し、入学を許可するのです。
もしチューリッヒ工科大学に行っていなければ、アインシュタインもあれほどの業績は残せなかったかもしれません。やはり特殊な才能を持った人が、その能力を開花させ得るような社会の仕組みと価値観が必要です。
■5.ジョブズのいう「バカ」の意味
アメリカのカリフォルニアでイノべーション(新機軸、変革)を打ち出している人たちは、学力や偏差値が低いことを、必ずしも劣っているとは考えません。
ある意味、「バカ」かもしれないけれど、一味違った「バカ」と思われる人たちがいて、社会的評価も受けている。その「バカ」がどういうことを指すのか、日本人はもっと理解しなければならない。日本の東大法学部の人たちは、ジョプズのような枠にはまらないタイプの人間も、「バカ」と評価して見下しますが、アメリカではそういう人がヒーローにもなるのです。
■6.若くして頭角を現すための共通項
アメリカの経営学者であるジョン・コッターの調査によると、若くして頭角を現した人には、二つの共通項があるそうです。一つは、アジェンダを持っていること、もう一つは、ネットワークを持っていることです。
アジェンダとは、日本ではよくミーテイングで「その場での主要テーマ」といった意味で使われますが、ジョン・コッターのいうアジェンダは、「その人がつねに抱くこだわり」、つまり「執着するテーマ」のことです。(中略)
コッターが指摘しているもう一つのの共通事項のネットワークとは、社内や取引先、あるいはまったく無関係な外部にも、何かやろうとしたときにお願いできる人がいることです。
(詳細は本書を)
■7.国民に支持される人々とは?
たとえばライブドア事件で有罪判決を出した最高裁の判事と堀江さんを比べ、どちらにより共感や応援する気持ちを持てるかというと、多くは堀江さんではないでしょうか。既得権益者に対する目は意外に冷めていて、いつかは不満が爆発すると信じたいですね。ここで政治家が、生活者の熱狂をかき立てるような行動に出れば、人々はついていくでしょう。(中略)
新しいリーダーを求めるにあたって、人々の気持ちはもう準備できているはずです。官僚組織やメディアに対する人々の気持ちが冷めているなか、人々の熱狂をかき立てるリーダーの出現はあり得ます。ただ、それはよくいわれるヒトラーのような独裁者ではない。そこはもっと民衆を信じていい気がします。
【感想】
◆本書は、波頭さんと茂木さんが直接対談しているのではないのですが、あるテーマについて、1〜3ページほどの文章でのやりとりが続くスタイルになっています。おそらく手紙のやりとりのように、ある程度の分量の原稿を相手に渡して、それを見て続きを書く、といった形で作業が進んでいたのではないか、と。
これが面と向かっての対談だったら、お互い数行ずつでやりとりをしていたでしょうから、「自分の思考を掘り下げる」という意味では正解だったかも。
もちろん、実際に対談していたら、話が予想外の方向に発展して違った意味での収穫があった可能性は否定できませんがw
◆ちなみに上記ポイントでは、あえて(?)発言主を記載しませんでしたけど、4番目と6番目が波頭さんで、それ以外は全て茂木さん。
付箋を貼りつつ割愛した部分でも、茂木さんの方が多かったです。
ぶっちゃけ読み始める前は、むしろ波頭さん目当てでこの本買ったものの、読みどころというか、キワドイ話は茂木さんの方が多かった気が(波頭さんも結構キワドイんですけどねw)。
勉強本オタクである私としては、茂木さんの勉強本にはあまり実用性を感じなかったため、それ以外の本もあまりチェックしていなかったのですが、本書での茂木さんはかなり「面白かった」です。
ただ、茂木さんの言われる「世間」や「人々」が、ツイッター上で茂木さんが観測されている範囲内ではないか、と思われるフシもありましたがw
◆また、本書で多くのページを割かれていたのが、上記ポイントにもあるように「現状の問題点の指摘」や、それに対して「日本はどうあるべきか」「社会はどうあるべきか」というお話でした。
私としては、もうちょっと具体的に、私たち「個人」が「どのように"突き抜ける"べきか」についてが語られているのかと思ったのですが、そういう「ノウハウ本」ではなかった模様w
……はいはい、そういった「すぐに"答え"を求める」思考がいけないんですね、ゴメンナサイ!
一応割愛した中で、茂木さんの「陽明学」のお話や、波頭さんの「シンプルな公理だけで世界を再構築する」お話が、その"答え"に近いと思いますので、気になる方は本書にてご確認を。
◆もう1つ、現状を打破するための施策として挙げられているのが、第4章のテーマでもある「私塾」です。
かつての松下村塾、そして現代の松下政経塾等々。
現首相である野田さんも、松下政経塾のご出身ですしね。
議員・首長一覧 | 松下政経塾
要は、現状のシステムからは「突き抜ける人材」を輩出するのが難しいため、こういった「私塾」が重要な役割を担うのではないかということ。
なんでも茂木さんが、「1年後を目途」に「茂木塾」なるものを開設されるそうなので、こちらにも期待(茂木さん曰く「セレクションはめちゃくちゃ厳しいものにする」とのことw)したいところです。
「日本のジョブズ」を目指したい方へ
突き抜ける人材 (PHPビジネス新書)
第1章 世界から置き去りにされる日本
第2章 突き抜ける人材、組織はここが違う!
第3章 ガラスの天井を打ち破れ!
第4章 私塾のパワーで日本人を変える
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【編集後記】
◆昨夜の「情熱大陸」は、インテルの長友選手の特集でした。日本男児
そのせいで、この本もアマゾンランキング急上昇中w
参考記事:【メモ】長友佑都選手の『日本男児』を読みました(2011年05月25日)
ご声援ありがとうございました!
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