2011年12月30日
【ゴーン流!?】『日産 驚異の会議 改革の10年が生み落としたノウハウ』漆原次郎
日産 驚異の会議 改革の10年が生み落としたノウハウ
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事で取り上げた時点で、結構な反響があった1冊。最近好調な日産の秘訣は、「クロスファンクショナルチーム」と並んで、日産独特な「会議のやり方」にありました。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
日産の会議は考え抜かれ、合理的・効率的で、工学的に美しい。かつての日産と今の日産の違いは、この会議の在り方に集約されるといってもいい。
「意思決定者が出席しない!」「議事録もつくらない!」などの驚くべき会議手法を、日産自動車V-up推進・改善支援チームの全面協力のもと、日産の会議で使われる「11のツール」や「憲法」と合わせて明らかにする。つまらない会議、無駄な会議を連日繰り返す日本のサラリーマンや組織人にとって衝撃の書。
日本人の会議が明日から変る!
「クロスファンクショナルチーム」の方は、簡単には導入できませんが、こちらはその気になればかなり実践可能なハズ!
いつも応援ありがとうございます!
【ポイント】
■1.会議の2つのプロセス◆日産で行われている特有の会議(以下「日産の会議」と略す)は、そのプロセスで2つに分けられています。
「大きな問題に対してじっくりと解決策を作っていくためのプロセス」と「すぐに対処できる問題に対して素早く解決策を決めるプロセス」。
社員は前者を「DEVICE」、後者を「V-FAST」と呼んでおり、本書では主に後者について深堀がなされています。
■2.「日産の会議」のメリット
◆「日産の会議」は、とにかくスピーディです。
そのことによるメリットは、「ダラダラと結論を出すのを長引かせる会議」と比較すれば一目瞭然。
「さまざまな無駄を出さずに済む」「環境変化が起きる前に対策を実行に移せる」「モチベーションを高める」という効果をもたらします。
また、1日の会議で決着をつけられるのであれば、多忙なキーパーソンを引っ張り出すこともしやすくなる利点が。
■3.思考を視覚化する3大ツール
◆「日産の会議」にはさまざまな「ツール」が登場します。
その中でも中心となる「思考を視覚化する3大ツール」がこちら。
●系統図
⇒1つの問題を原点に「なぜ」「なぜ」と原因を深めていくことによりできるツリー構造の図
●親和図
⇒「日産の会議」では、会議参加者が考えたアイデアをポストイットに書きだして、それを壁の模造紙に貼っていくが、それらをグループ化するのに用いる
●ペイオフ・マトリクス
⇒グラフの縦軸に実現性、横軸に実効性をとり、各方策を最低評価の1点から最高評価の5点までで評価し、それらが書かれたポストイットをグラフ上に貼っていき、優先順位を決める
いずれも具体的な使い方や判断の仕方については、本書にてご確認を。
■4.意思決定者は会議に参加しない
◆これは「日産の会議」の大きな特徴の1つかと。
会議メンバーが出したアイデアをもとにまとまった方策案に対して「採用」か「不採用」の判断をする意思決定者は、会議本体には参加しません。
最初にメンバーに挨拶をして、質問を受けた後、意思決定者はいったん退室してしまうのです。
もちろん、退室してしまうことによるデメリットもあるのですが、メリットと天秤にかけた結果、日産では「出ない」ことを選んだのだそう。
メリット、デメリットについての考え方については、やはり本書をお読み下さい。
(なお、同様に意思決定者が会議本体に参加しない会議手法としては、GEの「ワークアウト」と呼ばれるものもあるとのこと。)
■5.議事録をつくらない
◆最近では、会議をやりながら同時にパソコンで議事録を打つ会議スタイルもありますが、日産の場合は、デジカメで対応します。
壁一面に貼られている模造紙上の、「課題についての質問」「系統図」「親和図」「ペイオフ・マトリクス」「課題達成計画書」を順に撮影。
それらをファシリテーターが後で参加者たちにメールで送ることによって、議事録つくりを省略しています。
これにより、議事録作成の手間を省くのと同時に「言った/言わない」「あー言ったのはそういう意味じゃない」といった、会議後のトラブルも未然に防ぐことができるという。
■6.発言者の名前を記録しない
◆「日産の会議」にはグラウンドルールと呼ばれる「憲法」があるのですが、その中の1つが「安全なシェルター」というものです。
これは「誰が何を言ったかは口外しない」というルールであり、壁のない建設的な討議を促すためのもの。
そのため、ポストイットに書いたアイデアには、発案者の記名はありません。
本書には、ポストイットの貼られた模造紙の画像が掲載されているのですが、確かに記名されてませんでした。
【感想】
◆ここまでが、だいたい本書の第4章で、第5章からは「日産の会議」の実践例が登場。第5章では「日産リーフ」、第6章では「店頭対応向上プロジェクト」、第7章では「横浜F・マリノス」がテーマとして取り上げられています。
ただ、「衝撃的」という意味では、実は第1章に登場する、東日本大震災直後の日産の対応のお話が一番だったかもしれません。
今年の6月23日、日産自動車社長のカルロス・ゴーン氏は、「もし、本当に同業他社より早く回復しているのであれば」と、仮定表現を使って、日産の生産体制の回復ぶりをアピールしたのですが、実は今年の5月の時点で、日産の国内生産台数は前年の同じ月を0.8%上回っていました。
ちなみに同じ時点で、トヨタは54.4%、ホンダは53.4%、前年同月を下回っていたのですから、恐ろしいまでの差です。
◆本書の第1章では、そんな大震災直後の日産の本社の状況を描写。
電話やメールで得た各工場の被災状況をポストイットに書いて、次々とホワイトボードに貼っていきます。
それも1部門ではなく、すべての部門で。
その結果、全社的に情報が共有され、「何が足りなくなるか」が次第に判明していきます。
そしてわかったのが「半導体」が不足するであろうという事実。
「半導体は、製造開始から納品までの期間が長く、約3か月かかります。被災直後は、商社に半導体の在庫があるので取り寄せることができました。しかし、ルネサスエレクトロニクスが大きく被災したため、3か月後の6月ごろには半導体の在庫がなくなることは明らかでした、他の部品をつくる設備は復旧しても、半導体が足りなくなりそうだという問題が出てきたのです」
◆いち早く問題が判明したため、対策も迅速に行われ、日産は生産体制の早期復旧を果たします。
5月の大型連休が明けた頃には目途が立ち、6月までには、災害対策本部もその役目を終了。
逆に、日産の社員は、新聞で他社の生産体制の復旧の遅れを知り、「自分たちが間違えているのではないか」「重要なことを見落としているのではないか」と不安になったとのこと(他社にしてみれば失礼な話ですが)。
まさに、日頃から行っていた「日産の会議」の勝利と言えましょう。
◆本書では、この第1章を読んだ時点で「日産でやってる会議はそんなにすごいのか」と興味を惹かれることウケアイ。
ツール的にも、ポストイットやホワイトボード、デジカメといった、どこにでもあるようなもので行うことができます。
私も社会人の頃は、時間ばかり食う割には不毛な会議に辟易していたので、当時この「日産の会議」が取り入れられていたら、と思ってみたり。
今、私自身は、会議を滅多にやりませんが、それでも上記の「思考を視覚化する3大ツール」はすぐにでも使えそうです。
新年から、このスタイルで会議をしたい方に!
日産 驚異の会議 改革の10年が生み落としたノウハウ
第1章 震災対応がどこより迅速だったわけ!
第2章 その日にはじまり、その日に結論を出す!
第3章 意思決定者は会議に出席しない!
第4章 議事録をつくらない!
第5章 イノベーションは会議からも起こせる!
第6章 会議が変われば店頭も販売も変わる!
第7章 横浜F・マリノスも変わった!
第8章 会議こそもう一つの共通言語である!
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【編集後記】
◆日産絡みでこの本も(書影がアレですがw)。英語だけではダメなのよ。 結果を出す!NISSANのグローバル仕事術
それにしても、ゴーンさんが来てからの日産は、スゴイと思います……。
ご声援ありがとうございました!
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