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2011年12月13日

【このマンガがすごい!2012】男編第1位が『ブラック・ジャック創作秘話』だった件


ブラック・ジャック創作秘話~手塚治虫の仕事場から~ (少年チャンピオン・コミックス・エクストラ)
ブラック・ジャック創作秘話~手塚治虫の仕事場から~ (少年チャンピオン・コミックス・エクストラ)


【はじめに】

◆先日発売になった、『このマンガがすごい! 2012』

このマンガがすごい! 2012
このマンガがすごい! 2012

これは「書店員」「雑誌編集部」「各界のマンガ好き」等々のアンケートにより、2010年10月1日〜2011年9月30日の期間に単行本が発行された作品をランク付けしたものです。

「男編」「女編」と別れているうち、男編の第1位となったのが、上記の『ブラック・ジャック創作秘話』

日頃あまりマンガを読んでいない私なのですが、「ワケあって」この本を読んでおりました。

確かにこれはスゴイ作品です!


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【『ブラック・ジャック創作秘話』について】

■知ったきっかけ

◆上記で「ワケあって」と書きましたが、これは実は、日頃からお世話になっている川田浩志先生のブログで拝見したから。

自分の限界をひろげる良い本に出会いました♪|Dr川田浩志のアンチエイジングワールド・リポート

このエントリーで川田先生は、
好みや、読むタイミングなどにもよると思いますが、
自分が忙しい人間で、
もはや時間的にも能力的にも限界にさしかかっている
と思っている方に、オススメです。
と書かれているのですが、まさにその通り。

というか、手塚先生、余裕で限界超えてましたよ、マジでw

私も睡眠時間5時間取れないことが多いのですが、「手塚先生に比べたらまだまだ……」と、さらに泥沼に入ることができました。←違うww


■いつも締め切りとの戦い

◆元々は「週刊少年チャンピオン」の「ブラックジャック特集号」に読切企画だったこともあり、お話は『ブラック・ジャック』誕生の辺りから始まります。

それに先立つ昭和48年に8月に虫プロ商事、同年11月に虫プロが倒産して、その頃手塚先生はどん底の状態にいました。

先生曰く「長い長い冬の時代」。

そこに登場するのが、チャンピオンの当時の編集長、壁村耐三さんでした。

今回、壁村さんのWikipedia読んで初めて知ったのですが、壁村さんが編集長になってから、チャンピオンは実売でジャンプやマガジンを一時的にせよ上回ったんですね(スゲー!)。

壁村さんは手塚先生に新連載を依頼し、そして生まれたのが、名作『ブラック・ジャック』。

というか、これまた上記Wikipediaによると、この『ブラック・ジャック』は手塚先生最後の作品として企画されたものだったとのこと。


◆さて、その手塚先生ですが、『ブラック・ジャック』はヒットしたものの、原稿の仕上がりは、いつも締め切りギリギリ(と言うか過ぎてる)w

ある日、仕上がった原稿が面白いかどうかをアシスタント一人ひとりに確認していた手塚先生、皆がOKを出していたのに、とあるKYのアシスタントに「ちょっとイマイチかな〜って」と言われて、急きょ書き直しを決意します。

締め切りはとっくに過ぎているのに、さらに8時間待つように担当の編集者に告げ、それを上記壁村編集長に伝えてほしい、と。

当然、壁村編集長は「ふざけるな」と激怒。

そう言われた編集者は「うおおおお〜!」と叫びます。

当時アシスタントとして、その場に居合わせた漫画家の石坂 啓さんのお話。
「突然ドカッと殴って壁に穴を開けた編集者がいた。こわくてだれも声をかけられなかった」

お金の思い出 (新潮文庫)
お金の思い出 (新潮文庫)


◆そこからの8時間の手塚先生の執筆の様子(見開き2ページですが)は、本書の見どころの1つ。

天才と言われた漫画家とは思えないような泥臭い格好で、手塚先生は汗まみれになって原稿を仕上げていきます。

当初、手塚先生のマンガのイメージがあったためか、本書を開いたときの第一印象は「え?こんなディープな絵なの?」というものでしたが、結果的には吉本浩二さんの画風は大正解。

一人の人間として苦闘する手塚先生の姿は、感動的でもありました。

ただ、もうちょっと締め切りは守れるようにせんと……。


■集いし若者たち

◆実はこの『ブラック・ジャック』連載当時、手塚プロには後にプロとしてデビューする漫画家が、アシスタントとして数多く在籍していました。

上記石坂 啓さん以外にも、このような錚々たる面々が。

●三浦みつるさん

The〓かぼちゃワイン (1) (双葉文庫―名作シリーズ)
The〓かぼちゃワイン (1) (双葉文庫―名作シリーズ)

●小谷憲一さん

テニスボーイ 1 (集英社文庫―コミック版)
テニスボーイ 1 (集英社文庫―コミック版)

●寺沢武一さん

コブラ 1 完全版 (MFコミックス)
コブラ 1 完全版 (MFコミックス)

●わたべ淳さん

レモンエンジェル 1 (ヤングジャンプコミックスセレクション)
レモンエンジェル 1 (ヤングジャンプコミックスセレクション)

●高見まこさん

いとしのエリー 1 (ヤングジャンプコミックス)
いとしのエリー 1 (ヤングジャンプコミックス)

これだけの面子を揃えても締め切りギリギリだった理由の1つは、とにかく連載が多かったこと。

上記小谷さんによると、手塚先生は当時、『ブラック・ジャック』『ユニコ』『三つ目がとおる』『シュマリ』『火の鳥』『どろんこ先生』『ブッダ』『メタモルフォーゼ』の8本の連載を抱えていたのだそう。

それは徹夜の連続にもなります罠。

ちなみに本書では、こうした方々が、手塚プロというか手塚先生から何を学んだか、という点にも触れられており、この部分はクリエイターとしての手塚先生の姿が垣間見れます(他はほとんどドロドロですがw)。


■アメリカから原稿指示するの巻w

◆また手塚先生は、原稿を上げずにアメリカの「コミック・コンベンション」に参加したことがありました。

しかも帰国日とブラックジャックの最終校了日が重なり、編集部一同ハラハラドキドキ。

手塚先生曰く「『ブラック・ジャック』の人物のペン入れをしてアメリカから送るので、それを日本でアシスタントが背景を入れて完成させる」と。

ところが恐れていた通り(?)、期限までに原稿が出来上がらないハメに。

そこで手塚先生が考えた方法は、「先にアシスタントが背景を描き、帰国後、先生のペン入れした人物を切り抜いて貼り合わせる」というものでした。


◆とはいえ、その背景も手塚先生が指示を出す必要があったのですが、当時はネットはおろかファクスもありません。

果たして先生のとった奇想天外の指示方法とは……(ネタバレ自重)?

ちなみに、お金のあって(?)アメリカまで原稿を取りに行った『火の鳥』の編集者は、その場で手塚先生のとった方法を目の当たりにし驚愕します。

こういう部分では、本当に「天才」なんだと思うのですが、そもそも締め切りまでに仕上げてアメリカに行けば(ry

なお、この時一緒にアメリカに行った面子の中には、あの永井 豪先生もいて、「締め切りを破ったことがない」永井先生と手塚先生の対比が面白かったですw

もっとも、その永井先生も、帰りの飛行機の中で、一心不乱に『ブラック・ジャック』を描き続ける手塚先生を見て、「もっと頑張ろう」と思われたのだとか。


【所感などなど】

◆とにかく本書を読んで、手塚先生がいかに妥協せずにマンガに取り組んでいたかが良く分かりました。

結果的に締め切りに間に合わなかったこともあったのかもしれませんが、とにかく時間ぎりぎりまで良いものを生み出そうとされていたのは事実。

何でそこまで仕事を詰め込むのかと思いきや、当時のマネージャー氏によると、手塚先生は「忙しくても仕事を断るな」と言われていたのだそう。

先生曰く「1本でも10本でも同じ! いつでも僕はしめ切りギリギリなんです!」

それは徹夜にもなりますよ……。

あのスティーブ・ジョブズも妥協しませんでしたが、彼の場合はどちらかと言うと、他人を働かせていた気が。

それに対して手塚先生は「ひとりジョブズ」なんですな。


◆本書には、他にも興味深いエピソードがわんさか出てくるので、単純に手塚先生のファンでなくとも、楽しめると思います。

そして何かを作る方なら、背筋が伸びる思いになることウケアイ。

『このマンガがすごい!』で選ばれる作品は、必ずしも単刊ではないのですが、本書は1巻完結ですから、これ1冊読むだけでOK!

今年のベストの1つとも言えるマンガですから、ぜひお読み頂きたく。


急がないと品切れになるカモ!?

ブラック・ジャック創作秘話~手塚治虫の仕事場から~ (少年チャンピオン・コミックス・エクストラ)
ブラック・ジャック創作秘話~手塚治虫の仕事場から~ (少年チャンピオン・コミックス・エクストラ)
<第1話>壁の穴
<第2話>若者たち
<第3話>逆鱗(げきりん)
<第4話>アニメ地獄
<第5話>夜明け前
<第6話>原稿を上げずに手塚先生はアメリカへ飛んだ(前編)
<第7話>原稿を上げずに手塚先生はアメリカへ飛んだ(後編)



【関連記事】

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【編集後記】

◆その『このマンガがすごい! 2012』の「女編」第1位がこちら。

花のズボラ飯
花のズボラ飯

このマンガも面白そうですw


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この記事へのコメント
               
smoothさん

おはようございます!私も川田先生のブログを拝見して即ポチしました〜。
これを読むと手塚先生の作品にかける熱意とか、プロとしての妥協を許さない仕事っぷりに圧倒されまくりです。ダメだと思う前に何かできることがあると思わされますね(笑)。

これからもブログ記事楽しみにしています☆
Posted by ニャロメ at 2011年12月13日 09:28
               
smoothさん

私のブログ記事と、そして本書をご紹介していただき、感激です。そして、『このマンガがすごい!2012』男編第1位に選ばれていたことをこの記事で知り、私のことのようにたいへん嬉しいです。この記事、さっそく本日の私のブログ記事とリンクさせてください。今後とも宜しくお願い申し上げます。
Posted by 川田浩志 at 2011年12月13日 10:09
               
>ニャロメさん

ニャロメさんも川田先生のところでチェックされていましたか〜!
即ポチとはさすがです。
それにしても手塚先生の働きっぷりはスゴイですよね。
私もブロガーとして、あそこまで妥協せずにできるかどうか……(汗)。

>川田先生

コメントありがとうございます!
実は、最初に記事を読んだ際にそちらにコメントしようと思ってたのですが、(失礼ですけど)もし本がハズレだったら気まずいと思いまして(汗)。
ところが読んだら大当たりだったので、今度はナイショで自分のところで記事にしたというww
いや、ホント良い本のご紹介ありがとうございました。
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2011年12月14日 06:10