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2011年12月09日

【オススメ】『受験脳の作り方―脳科学で考える効率的学習法』池谷裕二


受験脳の作り方―脳科学で考える効率的学習法 (新潮文庫)
受験脳の作り方―脳科学で考える効率的学習法 (新潮文庫)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事で取り上げた、非常にコストパフォーマンスの高い勉強本

著者の池谷裕二さんが、2002年3月に出された『最新脳科学が教える 高校生の勉強法』(以下「旧版」という)の文庫版です。

ただし、本書の「はじめに」で池谷さんが言われているように、旧版が出てから、今年で約10年。

その間に新たに判明した脳科学の事実も多く、結果的に「文庫化にあたり、最新の科学的観点から内容や表現を徹底的に見直し、必要とあれば大幅な加筆を行った」のだそう。

その旧版を読んで、「★×9.5」という高評価を付けていたワタクシとしては、当然オススメせざるを得ません!


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【ポイント】

■1.池谷流「復習プラン」
 海馬の性質を考え、次のような復習のプランを提案したいと思います。
 学習した翌日に、1回目
 その1週間後に、2回目
 2回目の復習から2週間後に、3回目
 3回目の復習から1力月後に、4回目

というように、全部で4回の復習を、少しずつ間隔をあけながら、全2ヵ月かけて行うことです。


■2.脳は出力を重要視する
 もちろん、情報の入力と出力はどちらも大切なのです。入力のない出力はありえませんから。しかし、脳がどちらをより重要視しているかといえば、圧倒的に「出力」です。脳は出力依存型なのです。(中略)

大切なのは出力です。海馬の立場から言えば、「この情報はこれほど使用する機会が多いのか。ならば覚えなければ」と判断するというわけです。
 ですから、「詰め込み型」の勉強法よりも、「知識活用型」の勉強法のほうが、効率的だということになります。
 身近な例に応用するのであれば、教科書や参考書を何度も見直すよりも、問題集を何度も解くような復習法のほうが、効果的に学習できるはずです。


■3.「試験への不安を書き出す」と緊張がほぐれる
テスト直前の10分間に、次の試験科目のどの部分がどう不安に感じているかを具体的に書き出すと、緊張感がほぐれ、10%ほど点数が向上しました。試験に関係ないことを書くのでは効果がありませんでしたから、「不安な気持ちを素直に吐き出す」ことが重要であることが分かります。あがり症の人は、ぜひ試してみましょう。


■4.記憶力を増強する「ライオン法」

●「空腹」
 ライオンだったら空腹になれば、狩りに出ます。狩りをするときは、まさに記憶力を使う時間帯です。実際、腹がすいているときの方が記憶力が高いことが科学的に証明されています。
●「歩行」
 また、ライオンは狩りをするときに歩いたり走ったりします。歩くと海馬から自動的にシータ波が出ます。その結果、記憶力が高まります。歩くことは記憶カアップのスイッチになっているのです。
●「温度」
 動物は寒くなると危機感を感じます。冬になると獲物にありつけないことを本能的に知っているからでしよう。
 したがって、部屋の温度は若干低くした方が、学習効率が高まります。


■5.暗記に関しては、朝型より夜型が効率的
 朝に憶えたグループでは、12時間後の夜に行ったテストの成績は、ずいぶんと低下しています。昼聞にいろいろなことを経験するでしょうから、朝の記憶の鮮度があせても不思議ではありません。(中略)

 ところが、夜に覚えたグループでは、学習の直後に睡眠します。ですから、点数アップの効果がてきめんに現れます。朝型では決して到達できない点数まで達します。
 つまり、覚えたら忘れないうちに寝る、これが鉄則なのです。ですから、暗記に関していえば、朝型よりも夜型が効果的です。


■6.ひとつ習得すれば他も伸びる「学習の転移」
 こうした現象からも、脳はあるものごとを記憶するときには、その対象自体を記憶するだけではなく、同時に対象への「理解の仕方」もいっしょに記憶していることがうかがえます。そして、その理解の仕方を応用して、異なるものごととの間に潜む「法則性」や「共通点」を見つけ出して、ほかの対象をより速くより深く理解することができるというわけです。
 この点もまた、学習において重要なポイントになります。ひとつのことを習得すると、ほかのことを学習する基盤能力も身につくなんて、なんとも都合のよいことではありませんか。この現象は「学習の転移」と呼ばれています。


■7.参考書は左ページに図があるものを
 図がより有効になるためには、視野の左側に図が配置されていることが肝心です。人は左側に見たものをよく覚えられるのです。おそらく右脳の働きです。反対に、読んだり聞いたりしたものごと、つまり「言葉」に関連したものごとは右耳から入カされた左脳の方が覚えられるようです。そうした気配りのある参考書ならなおよいでしょう。


【感想】

◆今般、旧版が見つからなかったので、初めて読むツモリで付箋を貼ったら、貼る箇所が多くて大変なことになってしまいましたw

「脳の仕組み」と結びつけた勉強本は多いですが、その中でも池谷先生は日本を代表される専門家であり、本書に書かれた様々な事象は、現時点での「脳科学」の最前線と言えるかと。

本来であれば、旧作からの変更点を挙げるべきところなのですが、正直、どの段ボールに入っているかわからないので、参考までに、旧作紹介記事で作成したマインドマップを。

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いくつかのポイントは、今般ダブって挙げてしまいましたが、大事な部分なのでお許し頂きたく。


◆今回ポイントとして挙げた中で注目したいのが、2番目の「出力重視」のお話。

今まで類書でも「記憶するなら出力を多めに」と言われていたものですが、改めてその想いを強くしました。

同様に見逃せないのが、5番目の「暗記するなら、朝型より夜型」。

これは「夜型が何でも優れている」わけではなくて、あくまで「記憶するなら寝る前に」ということなので、朝型の方でも、夜寝る前の学習に暗記科目や暗記すべき部分をシフトすれば大丈夫です。

なお、私のように昼寝をする場合は、やはり「その前に暗記しろ」、とw


◆また、割愛した部分は鬼のようにあるので、サクッと見出しだけでも。

●覚えたい対象は、丁寧に整理整頓する

●カゼ薬は「アセチルコリン」を抑制する成分が入ってないものを

●時間が経つと学習した内容が身に付く「レミニセンス」現象

●「分からない」ところは「分ける」

●成績はあるとき一気に伸びる
等々。

どれも本来なら抜き出したいところなのですが、ボリューム的に無理でした(スイマセン)。


◆本書は類書とかぶるネタはありますが、それも元々は本書の旧版の方が先だったりしていそう。

それらの情報を含め、すべて池谷先生がアップデートされているものなのですから、およそ「脳ネタの勉強本」としては決定版ではないかと。

しかも巻末には、「索引」と「参考文献一覧」もアリ。

おまけに文庫本ということで、お値段も515円と大変お求め易くなっております。

これはもう買うしかないでしょ?


極めて真っ当な「オススメ勉強本」です!

受験脳の作り方―脳科学で考える効率的学習法 (新潮文庫)
受験脳の作り方―脳科学で考える効率的学習法 (新潮文庫)
第1章 記憶の正体を見る
第2章 脳のうまいダマし方
第3章 海馬とLTP
第4章 睡眠の不思議
第5章 ファジーな脳
第6章 天才を作る記憶のしくみ


【関連記事】

【語呂合わせ】『マンガでかんたん!暗記丼』が、結構キテる件(2011年12月02日)

【記憶術】『記憶力世界チャンピオンカールステン博士の頭がよくなる勉強法』グンター・カールステン(2010年10月05日)

知らないと損する「記憶力」活用法(2010年06月25日)

【脳力UP!】「脳力育成HACKS!」に学ぶ7つのポイント(2010年03月17日)

【暗記の真実】『東大の先生が実践する「ロジカル」暗記術』に学ぶ5つのポイント(2009年08月28日)

「最新脳科学が教える高校生の勉強法」 池谷裕二 (著)(2005年03月17日)


【編集後記】

◆池谷先生のご本では、こんなのもありました。

のうだま―やる気の秘密
のうだま―やる気の秘密

「勉強」ではなくて「やる気」のお話なのですが、レビューが結構高評価なので、気になります。


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この記事へのコメント
               
smoothさん

早速の紹介ありがとうございました。確かに、前著と被る部分もあるかもしれませんが、新しい研究の成果を知りたい気持ちも強いですし、安価ですし、またsmoothさんの記事を読み、買いたい衝動に駆られてしまったので購入します。
Posted by がってん at 2011年12月09日 14:58
               
>がってんさん

ご購入ありがとうございます(涙)。
私の場合、旧版が見当たらない(笑)のと、池谷先生の本はもっとも信頼できる、ということもあって買いましたが、正直買って良かったです。
がってんさんにも気に入ってもらえると良いのですが。
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2011年12月10日 03:57